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『贋作と共に去りぬ』ヘイリー・リンド 創元推理文庫

2018-08-18

Tag :

☆☆

世界的な贋作師である祖父に仕こまれたアニーは、本物そっくりの偽物を作る画家兼疑似塗装師(フォーフィニッシャー)。腕前は超一流だが、贋作作りの前科のため美術館での絵画修復師の職を失い、サンフランシスコの美術業界では鼻つまみ者になっている。美術館キュレーターの元カレに呼び出され、古巣の美術館でカラヴァッジョの真贋を鑑定すると作品は贋作、殺人事件が起こり元カレは行方不明に。一流の画廊主から巨匠の素描の鑑定を頼まれたがそれもまた贋作、真作の行方を探すアニーのもとにはハンサムな探偵が……。アップテンポで小気味よいアートミステリ開幕。 内容紹介より



「何日も仕事をほったらかしたまま、調子に乗って絵画泥棒を自認する男と駆けずり回り、不法侵入に探偵ごっこ、ハルクをぶちのめし、置いてきぼりをくらい、誘拐され、ハルクにぶちのめされ、ついにはスタジオに放火されるとは」(p327)。三十一歳の女性画家を主人公に、美術業界を舞台にしたソフトボイルドみたいな、ドタバタ調コージーミステリの一種。ヒロインが惹かれる良い男が二人登場して、一人はワルでもう一人は堅物というお馴染みの設定。ライトなユーモアミステリでありながら、死体と殺人がわらわら、しかしミステリの出来は箸にも棒にも引っかからないレベル。エピソードには事欠かないがストーリー自体は単調で強弱に乏しく、行動と思考がティーンエイジャー並みのヒロインの軽口がかなりうっとうしい。「アート・ラヴァーズ・ミステリ」シリーズの第一作で、アガサ賞候補作になり、続編も全米でベストセラーになっている(藤原えりみ氏の解説より)そうですが、わたしはp270あたりで読み始めことを久しぶりに後悔するくらい、個人的にあわない作品でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『さよなら、シリアルキラー』バリー・ライガ 創元推理文庫

2018-08-15

Tag :

☆☆☆

ジャズは高校三年生。田舎町ロボズ・ノッドではちょっとした有名人だ。ある日町で衝撃的な事件が起きた。指を切りとられた女性の死体が発見されたのだ。連続殺人だとジャズは訴えたが、保安官はとりあわない。だが事件はそれだけでは終わらなかった。なぜジャズには確信があったのか。それは彼が21世紀最悪といわれる連続殺人犯の息子で、幼い頃から殺人鬼としての英才教育を受けてきたからだった。親友を大切に思い、恋人を愛するジャズは、内なる怪物に苦悩しつつも、自らの手で犯人を捕まえようとする。全米で評判の異色の青春ミステリ。 内容紹介より



本書は三部作の一作目に当るそうで、シリアルキラーである父親との対決がシリーズのテーマになっており、一作目は序章みたいな仕上がりなのでやや不満が残ります。ヤングアダルト小説としては、かなり過激かつ異様な内容になっていて、YA作品が持つイメージとのギャップが全米で受けているのでしょうか。確かにYAらしく17歳の主人公をはじめとして、彼の恋人や親友の造型や言葉のやり取りはそれらしいYA臭さがあり、それがシリアルキラー・ミステリと危ういバランスを取っているような気がしました。狡猾な連続殺人鬼になるための技や考え方を父親から仕込まれ、自らも否応なく殺人鬼になってしまうのではないかという恐れを抱く主人公の苦悩や葛藤がシリアスに描かれ、また恋愛や友情を感じる心の移ろいがとくに青春小説っぽさを感じさせています。父親を始めとしたシリアルキラーの造型が型にはまったもので新鮮味がないのは残念なところです。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『チューダー王朝弁護士 シャードレイク』C・J・サンソム 集英社文庫

2018-08-12

Tag :

☆☆☆☆

16世紀イングランド。国王ヘンリー8世の摂政クロムウェルの命により、弁護士シャードレイクはスカーンシアの修道院で起きた殺人事件の真相究明に向かう。彼を待ち受けていたのは曲者ぞろいの修道士や修道院の暗い秘密……。自身を追い詰める劣等感と戦いつつ奔走する彼だったが、やがて自らの信念を揺るがす衝撃の事実が明らかになる!イギリスで大人気のCWA賞受賞シリーズ待望の第1弾。 内容紹介より



イングランドの宗教改革を時代背景に、王の側近で修道院解体を取り仕切ったトマス・クロムウェルの部下である三十五歳の弁護士が主人公です。地方にある修道院の不正や腐敗を調べ、解散させるために派遣された監督官が何者かに斬首されたため、主人公が調査のために当地へ派遣されます。主人公は権力者の寵愛され、また、宗教改革の理想に共鳴する立場でありながら、生まれつき脊柱後弯症の障碍を負っており、偏見や劣等感に苦しんでいるという設定がなされています。さらに彼は、ある女性をめぐって同行させた助手に嫉妬心さえ抱きます。このようないわゆる時のエリートでありながらも様々な感情や弱さを見せるキャラクターが非常に魅力的に映りましたし、一つの成長物語として捉えられると思います。それに加えて当時の社会状況や市井の様子、修道院内部の有様がよく描かれていて興味を引きました。容疑者となる修道士たちも各々描き別けられ、ミステリとしてもかなり巧くまとめられていると思います。




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『マシューズ家の毒』ジョージェット・ヘイヤー 創元推理文庫

2018-08-09

Tag :

☆☆☆

嫌われ者のグレゴリー・マシューズが突然死を遂げた。すったもんだの末に検死を実施したところ、死因はニコチン中毒で、他殺だったことが判明。だが故人の部屋はすでに掃除されており、ろくに証拠は残っていなかった。おかげでハナサイド警視は、動機は山ほどあるのに、決め手がまったくない事件に挑むはめに……。巨匠セイヤーズが認めた実力派が、練りに練った傑作本格ミステリ。 内容紹介より



シリーズ第二弾。
当主である被害者、被害者の独身の実姉、未亡人の義妹とその子供である甥と姪、これらが同居し、近くには被害者の姉夫婦が住んでいるという状況。甥は自ら始めた事業が傾き、被害者から南米行きを強制され、それが原因で義妹との間にひと騒動があり、姪はかかりつけの医師との結婚を反対されていました。そんななか被害者のお気に入りながら、その他からは鼻つまみ者であるもう一人の甥の存在も。これらを始めとして色々な人間関係のトラブルを抱えていた邸で毒殺事件が発生するという本格推理小説です。こういう料理人を始めとした使用人たちが容疑者として一顧だにされないところは、いかにも古典にありがちです。しかし、事件を解決するのが警察官でも探偵でもないのは、毒殺犯御用達の青酸カリを使わず、ニコチンを使用したのと同様に他と異なっている点でしょう。こういった警察ものでは、次々に行われる事情聴取の場面がいささか退屈に思えてくるものですが、様々な工夫でそれを軽減させているところに作者の趣向を感じました。それぞれの人間関係と彼らの会話のやり取りがこの作品の面白さだと思います。

『紳士と月夜の晒し台』




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『渇きにふるえる街』トマス・アドコック ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2018-08-06

Tag :

☆☆☆

ある事件が、酒に溺れたニューヨーク市警の刑事ホッカデイの目を覚ました。広告代理店に勤める妻の上司が惨殺死体で発見されたのだ。現場の状況から彼の密かな趣味が判明し、ホッカデイは街で続発している殺人事件との関係を探りだす。が、手掛かりがつかめぬうちにさらなる殺人が!不屈の刑事魂で醜悪な事件に挑む男の姿を情感豊かに描くシリーズ第四弾 内容紹介より



未読なのですが、シリーズ三作目『復讐をささやく詩』の後で、酒浸りになったらしい主人公は六週間の断酒施設暮らしをし、その後停職させられてしまいます。しかし、妻が復職した広告代理店の共同経営者が自宅で惨殺死体で発見されたため、元同僚でアル中仲間の私立探偵の元で事件の調査にあたることになります。折しも同性愛者への憎悪犯罪が頻発しており、今回の事件もその一つではないかと考えた主人公は、同性愛者専用のクラブに赴きますが、そこでさらなる事件に遭遇してしまいます。社会はもとより警察内部でも根強い同性愛への偏見や差別意識がある状況で、同性愛者側寄りの主人公が、断酒と慣れないゲイの環境のなかにあってあたふたする姿がユーモラスさを醸し出しテーマの重さを軽減させているように感じました。ただ、本題に入る前にぶつ色々なものに対する諧謔を込めた一家言にうんざりさせられることもあります。メインストーリーを埋め尽くすかのような戯れ言はちょっと整理が必要なのではないかと思いました。なお、殺人現場の描写は結構グロいので注意が必要です。

『死を告げる絵』




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『最後の訴え』リザ・スコットライン ハヤカワ文庫HM

2018-08-03

Tag :

☆☆☆

法廷弁護士のグレースは、第一審で死刑判決が下された事件の控訴審の準備に追われていた。そんな折り、彼女は首席裁判官のアルメンから愛を告白される。二人は幸せな一夜を過ごすが、翌日、アルメンが自殺したという驚くべき知らせが飛び込んできた。死因に疑いを抱き、密かに事件の真相を探るグレースに何者かの卑劣な罠が……アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペーパーバック賞に輝く、話題沸騰のリーガル・サスペンス! 内容紹介より



リーガル・サスペンスやリーガル・ミステリというと弁護士や検察官が裁判官を交え、陪審員の前で丁々発止のやり取りを行うイメージがあるのですけれど、本書の舞台は控訴裁判所というところで、裁判は陪審制ではなく、高瀬素子氏の訳者あとがきによると、「審理は公判記録を含め、地方裁判所が検討した記録だけに基づいて行われ」、「公判で提起されなかった焦点はいっさい考慮されず、新しい証拠・証人を持ち出して争うこともできない」(p452)のだそうです。しかもヒロインはあくまでも裁判官の補助役であるため、検察官と対決するわけではありません。そういう点で本書は従来の法廷ものとは異なっています。話は、死刑判決の事件の控訴審を担当する裁判官が自宅で拳銃自殺を遂げ、不審に思った彼の下で働いていたシングルマザーのヒロインが調査を始める、というものですが、高瀬氏のいう「ユーモアとウィットたっぷりの筆」(p450)が、いわゆるわたしの苦手な軽口でしかなくてうんざりする部分がありました。内容も極端にいえば、裁判所を舞台にしたコージーミステリみたいで、動機付けも乱暴で犯行も短絡的でしかなく、そういったところもコージー色が伺える原因かも知れません。ドライでクールではなく、ウェットでウォームな感じのリーガルものに仕立てたのは珍しいかもしれません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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