『ガラス瓶のなかの依頼人』シャロン・フィファー コージーブックス

2017-08-16

Tag :

☆☆☆

アンティーク雑貨の拾い屋ジェーンはついにお宝を引き当てた! とある老婦人の邸宅でひらかれたハウス・セールで、グラスやシェーカーなど、年代物の貴重な酒場グッズを手に入れたのだ。居酒屋の娘として育ったジェーンにとっては,どれも子どもの頃の思い出がよみがえる懐かしい品々。ところが、持ち帰った戦利品をほくほく顔できれいに洗っていると、そばにいた夫と息子の顔が凍りついた。その視線の先をたどると、なんと持ち帰ったガラス瓶のなかに、男性の親指が! わたしったら、またお宝でなく事件を掘り起こしちゃったの!? ジェーンは拾い屋のタブーを破って、売り主に事情を訊きにいくことに、すると出迎えてくれたのは、とても風変わりな老婦人で……!? 蒐集家の鋭い観察眼がきらりと光るシリーズ第2弾! 内容紹介より



シリーズタイトルは〈アンティーク雑貨探偵〉です。第一作目の『掘り出し物には理由がある』は未読。
とにかくアンティークというよりジャンクな品物についての話題が多くて、ミステリの部分がそれに埋まりそうになりかけているみたいな印象が残りました。しかもヒロインの興味はボタンとかベークライト、それに古い個人写真、私信といったものなので、アンティーク業界を舞台にしたミステリに付きものの家具や調度品についての、興味深いいわれやうんちくがほとんど語られないため魅力を感じませんでした。そもそも品物自体に百年以上の歴史がある「アンティーク」じゃなく、「ビンテージ」か「レトロ」という用語を使うべきではないのかと。ミステリ部分もなんだかよく判らないような,全体的に整理が付いていないような判然としない感じがします。大量のジャンク品がまき散らされなかで、ただ一点光るのがヒロインの誘拐された母親の活躍シーンで、こういうコミカルな部分を強調していく方向性のほうが良いのではないでしょうか。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺人者は夢を見るか』ジェド・ルーベンフェルド 講談社文庫

2017-08-09

Tag :

☆☆☆☆

1909年、摩天楼建築ブームにわくニューヨークにフロイトがユングとともに到着した夜、豪華アパートメント〈バルモラル〉で、若い娘が鞭打たれ、絞殺される。続いて襲われたノーラ・アクトンは記憶と声を失っていた。市長じきじきの依頼を受けたフロイトは、若き分析医ヤンガーとノーラの精神分析治療にあたる。内容紹介より



摩天楼がそびえ立つなか、道路には馬車と自動車が混じりあって行き交い、指紋が裁判では証拠として採用されないくらいまだ現代の科学捜査が一般的でない時代背景。そんなニューヨークへ、後に寝椅子に横たわって精神分析を受けるアメリカ人のイメージの発端とも言えるフロイトがユングらと共に訪れ、そのいわば接待役みたいなアメリカ人の分析医ヤンガーが主人公です。なのでフロイトが名探偵役として活躍する訳ではありません。しかし、NY市警のリトルモア刑事の飄々としたキャラクターがとても好感が持て、その存在感が安定し、捜査活動の軸になっている印象でした。主人公のシンガーもなかなか良いキャラなのですが、犯罪被害者の娘への恋愛感情を交えて描かれているためにそれほど突出したものがないように感じました。アメリカに置ける精神分析の黎明期と社会の転換期、猟奇的な犯行、大がかりな悪巧みを思わせながらの冒険小説風な展開に、さてこれからさらに面白くなるだろうと考えていたら、下巻の三分の二くらいで結局は男女の感情にスタンスをおいたからくりが明らかになって,別方向へ矮小化されたように感じて興味が冷めてしまいました。精神分析学が主題なだけに仕方ないのですけれど……。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『無意識の証人』ジャンリーコ・カロフィーリオ 文春文庫

2017-08-04

Tag :

☆☆☆☆

南イタリアの海辺の町で、九歳の男の子が殺され、出稼ぎのアフリカ人が逮捕される。圧倒的に不利な被告の弁護を引き受けたグイードは、妻に逃げられて憂鬱な毎日を送る三十八歳。正義を振りかざすような柄でもない……が、ジェフリー・ディーヴァーが「最良の法廷スリラー」と評した見事な論証で、物語は大逆転! 内容紹介より



何かの志や使命感を持って法律家を目指した訳ではなく、何がしたいのか見つかるまでの時間稼ぎで弁護士になった主人公は、まさしく中年になりかけたモラトリアム型人間です。彼の何となく生きてきた人生が妻との別居を契機に壊れそうになり、精神のバランスが崩れてしまいます。そんなどん底の状態で引き受けたのが殺人容疑で逮捕されたセネガル人の弁護です。物語は、リーガルミステリと主人公の再生過程の二つが割合を占め、こういうジャンルに付きもののどんでん返しによる急転直下の解決みたいな醍醐味は薄く、現実的な帰結ではあるもののディーヴァーの言葉にある「最良の法廷スリラー」とまでは感じませんでした。しかも、20ページに渡る最終弁論が意味もなく長過ぎでした。翻訳された文体を見ただけですが、アメリカ文化をかなり意識し,作品もアメリカナイズされているような印象を受けました。シリーズニ作目の『眼を閉じて』よりは出来が良いです。

『眼を閉じて』



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『騙す骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2017-08-02

☆☆☆

妻ジュリーの親族に招かれメキシコの田舎を訪れたギデオン夫婦。だが平和なはずのその村で、不審な死体が二体も見つかっていた。銃創があるのに弾の出口も弾自体も見当たらないミイラ化死体と、小さな村なのに身元が全く不明の少女の白骨死体だ。村の警察署長の依頼で鑑定を試みたギデオンは次々と思わぬ事実を明らかにするが、それを喜ばぬ何者かが彼の命を狙い……一片の骨から迷宮入り寸前の謎を解くスケルトン探偵! 内容紹介より



古代の人骨やミイラ化した遺体に違和感のないメキシコという土地柄。しかし、のどかな田舎の村で不審な謎の死体が見つかるとなると話は別。骨に残った痕跡や特徴から死因や身元を判明させる手掛かりをいつものごとくギデオンが解き明かす展開へ。今回は、石臼でついた穀物を食べていた古代人とメタンフェタミン中毒者それぞれの歯の状態の話は大変面白かったです。主人公が命を狙われるけれども、サスペンス性はさほど効果的には盛り上がらなかったし、容疑者にあげられる人物も少なく、真相もたまに見かけるネタで予想がつきやすく意外性が感じられませんでした。歯の本数やある習い事はちょっと都合良くもって行き過ぎの気もしました。観光地としては地味で華やかさに欠けるし、メキシコを舞台にするならオカルトチックな話や出来事、影の部分を取り入れてミスリードしてみても良かったのでは。ギデオン夫婦の相変わらずの熱々ぶりに若干引き気味になりました。

ユーザータグ:アーロン・エルキンズ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『年寄り工場の秘密』コリン・ホルト・ソーヤー 創元推理文庫

2017-07-29

☆☆☆

高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉にちょっとした変化が起きた。長年暮らしていたトッツィが,近くにできた老人ホーム〈黄金の日々〉に引っ越したのだ。そして三週間がたち〈カムデン〉に勇名を轟かすアンジェラとキャレドニアのもとを、そのトッツィが相談に訪れる。どうやら〈黄金の日々〉に幽霊が出るらしく、正体を見極めてほしいと言うのだ。かつて同じ屋根の下にいたよしみで……というよりは退屈しのぎが目的で、名物コンビふたりは体験入居を装い“潜入捜査”を開始するが、思わぬ大事件が待っていた!老人探偵団シリーズ第七弾。 内容紹介より



〈老人たちの生活と推理〉シリーズ第七作目。別にどうでもよいのですけれど、本書では珍しく老人ホームの支配人であるトゥーガスンの登場機会が多く、毎回彼の存在意義が気になっていたわたしにとってはちょっと満足でした。そして作品全体もこれまでよりミステリの体裁を整えてきたのではないかと感じた次第です。序盤の別の老人ホームにおける幽霊騒ぎは、まさにお騒がせ程度の効果しかあげていませんが、効率重視で規則に縛られた〈黄金の日々〉と比較して、優雅な建物にはガタがきているにしても昔ながらのアットホームで居心地が良く食事も美味い〈カムデン〉を七作目にして改めて読者に認識させる一工夫になっているように思いました。また、試験的にペット(猫)可になったことも話に新味を加えていますし、ミステリの伏線にも仕上げています。小さなおばあちゃんがゴミ箱をあさって宅配フードの容器を集めてまわる場面がコミカルですし、主人公の凸凹コンビ以外はその他大勢扱いだった登場人物たちのキャラもこなれてきたし、このシリーズとしてはこれも珍しい犯人との対決シーンも盛り込んであって、コージーミステリの本道に近づいている印象を受けました。

ユーザータグ:コリン・ホルト・ソーヤー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ベストセラー「殺人」事件』エリザベス・ピーターズ 扶桑社ミステリー

2017-07-26

Tag :

☆☆☆☆

世紀の大ベストセラー「氷のなかに裸で」の原作者キャスリーンの失踪から七年後、続編の出版が決定した。厳選なる審査のすえ、続編の執筆者に抜擢されたジャクリーン。彼女はよりよい原稿を仕あげるべく、原作者が暮らしていた田舎町に活動の拠点を移した。だが、過去の資料をひもとくにつれ、彼女に関する謎は深まるばかり。しかも、偶然とは思えない事故が重なり,ジャクリーンの身に危険がせまるようになり……。1989年度アガサ賞受賞、本格ユーモア・ミステリー。〈解説・穂井田直美〉 内容紹介より



大ベストセラー小説の著者キャスリーンは、幾度か事故に見せかけて命を狙われた末に行方がわからなくなった。殺人か、自殺か、失踪か、判らないまま彼女が行方不明になって七年後に死亡宣告がなされる。それとともに家族の要望でベストセラーの続編が書かれることになり、公募された作家のなかから選ばれたヒロインはキャスリーンが生まれ育った町に執筆の調査のために赴くが、彼女にも事故や謎の出来事が降り掛かってくる、という展開です。これまでは大学図書館の司書だったヒロインは、『ロマンス作家「殺人」事件』を経て、本書からロマンス作家に変わっています。司書時代の豊富な読書経験に加えて独立心旺盛、したたかで辛辣でSっ気のある性格、目から鼻に抜けるような聡明さ、こういう気質が今回はプラスに働いていて大変魅力的でした。このシリーズは、主人公のキャラクターで読ませる作品なので、ヒロインのキャラクターのさじ加減で評価が変わりそうです。一方、ミステリでは,動機はともかく、真犯人の行動がふに落ちません。三度も犯行を重ねていたら、被害者の家族が異変に気づきそうですけれど……。ただ、ある人物の正体は結構意外でした。

『リチャード三世「殺人」事件』
『ロマンス作家「殺人」事件』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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