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『フロスト始末』 R・D・ウィングフィールド 創元推理文庫

2023-06-30

Tag :

☆☆☆☆

今宵も人手不足のデントン署において、運悪く署内に居合わせたフロスト警部は人間の足遺棄事件と連続強姦事件、スーパー脅迫事件を押しつけられる。そこへ赴任してきたスキナー主任警部は、さながらマレット署長の小型版(体型は大型版)で、フロストを異動させるべくやってきた御仁だ。署長と主任警部のイヤミ二重唱を聞かされ続け、超過勤務をぼやきつつも、フロスト警部は捜査をやめない、やめられない。経験の浅い見習い婦人警官や、頼りにならない駄目刑事と行動を共にするうちに、さらなる難事件が……。超人気警察小説シリーズ最終作。 上巻内容紹介より



今回も相変わらず子供が被害者となる残酷な事件が起き、読んでいて胸が悪くなりました。さらに主要登場人物がかなりあらっぽい仕方で処理されていて、もっと上手く溜飲を下げられる方法もあったのではないかと感じた次第です。本書がシリーズを通して主人公の様子が違っている点は、しばしば病死した奥さんとの生前の関係を振り返っているところでしょう。新婚時代の相思相愛の仲がやがて冷え切ってしまった原因を自分の責任だと後悔し感傷的になっている姿が描かれています。ここら辺りは実際に著者が奥さんと死別したことの影響が現れているのでしょうか。ミステリとしては行きあたりばったり風な展開と詰めの甘さが目立っているように思いました。今回は新たに上司による主人公の追い出し工作が企てられます。全体として面白くないわけではないけれど、展開はワンパターンです。

『フロスト気質』
『冬のフロスト』





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『やさしい小さな手』ローレンス・ブロック ハヤカワ文庫

2023-06-17

☆☆☆

妻の目の前で、理由もなくいきなり拳銃で自殺した男。その拳銃はリヴォルヴァーだったか、オートマティックだったのか?スカダーの脳裏に警官時代のある事件がよみがえる……探偵マット・スカダー登場の「おかしな考えを抱くとき」をはじめ傑作14篇を収録。男女の心の闇でくりひろげられる闘い、人生の皮肉さを見せつける奇妙な出来事、人の記憶に沁みついた事件などなど、ハードボイルド魂を抱く巨匠が描く人間絵巻! 内容紹介より



〈現代短篇の名手たち7〉

収録作品
「ほぼパーフェクト」「怒れるトミー・ターヒューン」「ボールを打って、フレッドを引きずって」「ポイント」「どうってことはない」「三人まとめてサイドポケットに」「やりかけたことは」「情欲について話せば」「やさしい小さな手」「ノックしないで」「ブッチャーとのデート」「レッツ・ゲット・ロスト」「おかしな考えを抱くとき」「夜と音楽と」

「ほぼパーフェクト」から「どうってことはない」までの作品がスポーツを題材にした作品で、「三人まとめてサイドポケットに」から「やさしい小さな手」までが主にサイコパスやソシオパスをテーマにしたもの。「ノックしないで」はセンチメンタルな恋愛もの。「ブッチャーとのデート」から「夜と音楽と」までがマット・スカダーものになっています。

ゴルフを題材にした「ボールを打って、フレッドを引きずって」では、ラウンドの途中で急死したゴルフ仲間を引きずってプレイを続ける男の小話が紹介されますが、これが大して巧いとは言えないプロットに効果的に作用して、薄気味悪い嫌な、いわばストーリー重視の物語に仕立てられています。こういったマット・スカダーの存在が中和していない短編は、ひと皮めくると、その下にある狂気や気持ち悪さ、不気味さ、嫌なものを長篇よりさらに抽出し濃縮させているわけで、それを垣間見せてくる傾向があるように思いますが、この短篇集もそういった作品が多いようです。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ワニの町へ来たスパイ』ジャナ・デリオン 創元推理文庫

2023-05-19

Tag :

☆☆☆

超凄腕CIA秘密工作員のわたしは、潜入任務でちょっぴり派手に暴れたせいで、狙われる身となり一時潜伏を命じられる。ルイジアナの田舎町シンフルで、“元ミスコン女王の司書で趣味は編みもの”という、自分とは正反対の女性になりすましつつ静かに暮らすつもりが、到着するなり保安官助手に目をつけられ、住む家の裏の川で人骨を発見してしまう。そのうえ町を仕切る老婦人たちに焚きつけられ、ともに人骨事件の真相を追うことに……。人口三百に満たない町でいったい何が起きている?アメリカ本国で大人気、型破りなミステリ・シリーズ第一弾。 内容紹介より



極秘任務中、敵に正体がバレてしまったCIA工作員のヒロインが身分を偽って潜伏したルイジアナの田舎町で騒動に巻き込まれてしまう話です。個人的には、もっとクールなヒロインの造形を期待していたのですけれど、基本的にはコージーもののヒロインとさほど変わらないタイプのような印象です。ストーリーもコージーのパターンを踏襲し、ミステリ的には大味な感じを受けました。シリーズ第一作ということかもしれませんが、CIA工作員という設定においても、射撃や格闘などのテクニックがエピソードとして描かれていて、それ以外の心理面やテクノロジーを使ったシーンがなかったのは物足りないところです。一方、町を裏で仕切る老婦人たちのキャラクターが良い味を加えていて、存在感があります。





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『血のペナルティ』カリン・スローター ハーパーBOOKS

2023-03-20

Tag :

☆☆☆

血の海と切断された薬指を残し、元刑事の女性が自宅から連れ去られた。駆けつけた捜査官ウィルはすぐにある事件に思い当たる。4年前、彼女の率いる麻薬捜査課の部下たちが汚職にまみれて刑務所送りになった。彼女だけは無罪放免となったが、ウィルは証拠が握り潰されたことを疑っていた。事件を洗い直すためウィルは服役中の元部下を訪ねる。ところが面会の直後、彼が獄中で殺害され―。 内容紹介より



ウィル・トレント・シリーズの第5作。前回読んだ『贖いのリミット』は第10作になります。
早々から銃撃シーンに始まり、凄惨な犯行現場が描かれている物語は、過去に起きた警察内部の汚職事件とその関係者、犯罪組織による隠された金目当ての犯行という筋道が立てられて進んでいきます。そういう作者からの読者への目くらましがやや強引な感じがしたのと、ある襲撃者が自死する場面のように、犯罪組織は統率のとれた玄人集団に見せながら、実は練度が高いとは思われない若者で構成された集まりに思われるという不自然さも覚えました。今回は身内が被害者になったために、ウィルのパートナーが捜査に加われず、彼の上司のアマンダが登場する機会が多く、そのキャラによる存在感の強さが目立ちました。母親と子供の関係が背景にあり、主人公たちの過去も相まって相変わらず読んでいて鬱々としました。

『贖いのリミット』






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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン ハヤカワ・ミステリ

2023-03-07

Tag :

☆☆☆☆

引退者用の高級施設、クーパーズ・チェイス。ここでは新たな開発を進めようとする経営者陣に住人達が反発していた。施設には、元警官の入居者が持ち込んだ捜査ファイルをもとに未解決事件の調査を趣味とする老人グループがあった。その名は〈木曜殺人クラブ〉。経歴不詳の謎めいたエリザベスを筆頭に一癖も二癖もあるメンバーたちは、施設の共同経営者の一人が何者かに殺されたのをきっかけに、事件の真相究明に乗り出すが―新人離れした圧倒的完成度でイギリスで激賞を浴び、大ヒットとなった傑作謎解きミステリ。 内容紹介より



秘密工作に携わっていたことを思わせるような謎の経歴の持ち主エリザベスを中心に、元精神科医、元労働運動家、そして新加入の元看護師、高級老人ホームの住居者であるこの四人が施設の経営者が被害者となった連続殺人事件と施設の敷地内で発見された遺骨の謎に挑むという物語です。語り手の一人である元看護師の日記の部分がおおらかな雰囲気を出し、警察関係者はクラブのメンバーの翻弄されがちであり、怪しげな神父も登場するなど、どこかアガサ・クリスティからのヴィレッジ・ミステリの流れを汲んでいるみたいな感じも受けました。そんなのどかさを時に引き締めているのが、経歴不詳のエリザベスのユニークさと、そして殺人による死とは別に、老いたメンバー自身に早晩訪れるであろう死という見えつ隠れつしている存在感なのでしょう。施設の内と外に謎を配していますが、全体としてミステリは弱く、登場人物、キャラクターの妙で読ませる作品のように思います。個人的にはかなり好みな英国らしい推理小説です。





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『冬のフロスト』R・D・ウィングフィールド 創元推理文庫

2023-02-19

Tag :

☆☆☆☆

寒風が肌を刺す一月。デントン署の管内では、いつものように事件が絶えない。二ヶ月以上も行方の知れないの8歳の少女に続き、同じ学校に通う7歳の少女も姿を消す。売春婦殺しは連続殺人に発展し、ショットガンを振りまわす強盗犯に、酔ったフーリガンの一団、“怪盗枕カヴァー”といった傍迷惑な輩が好き勝手に振る舞う、半ば無法地帯だ。われらが名物親爺ジャック・フロスト警部は、とことん無能で好色な部下の刑事に手を焼きつつ、人手不足の影響でまたも休みなしの活動を強いられる……。史上最大のヴォリュームで贈る、大人気警察小説第5弾。 上巻内容紹介より



子どもたちが行方不明になったり、猟奇的な連続娼婦殺し、頻発する空き巣などの重大事件や凶悪事件が山積するなか、売家の敷地から白骨死体まで発見されて、主人公のフロスト警部は多忙を極めているのですが、署長は上層部の顔色をうかがって経費削減にうるさく、さらに、とんでもなく無能な部下まで抱えてしまい、状況はまるで内憂外患といった有様です。たしかに何度も挿入されるフロスト警部と署長との経費や提出書類についてのやり取りはいささかワンパターン化してきらいがありますが、意外と署長のキャラが鼻に付くような嫌味なものでもなくて、結局フロスト警部にやり込められてしまう場合が多く、物語の中の息抜きのような場面になっているように感じます。すべての事件捜査の責任をを一人で引き受け、何だかんだいっても結局解決に導いてしまう、このブレない作者の姿勢が今回もはまっています。

『フロスト気質』






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テーマ : 推理小説・ミステリー
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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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