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☆☆☆☆☆

夜が来る。ネヴィルは一人、キッチンで夕食の用意をする。冷凍肉をグリルに入れ、豆を煮る。料理を皿に盛っているとき、いつものように奴らの声が聞こえてきた。「出てこい、ネヴィル!」……突如蔓延した疫病で人類が絶滅し、地球はその様相を一変した。ただ一人生き残ったネヴィルは、自宅に籠城し、絶望的な戦いの日々を送っていた。そんなある日……戦慄の世界を描く名作ホラー、最新訳で登場!(『地球最期の男』改題)   内容紹介より



新訳ということで久しぶりに再読。
この時代に書かれたSF作品に見られる第三次世界大戦や核戦争への恐怖感、不安感に吸血鬼伝説を見事に融合させた作品であり、個人的には、(ネタばれ→)「主人公の立場の逆転」という驚愕の展開が初めて読んだ時からずっと記憶に残っている物語です。さらに誉めますが、本作品がすべてのゾンビ作品のひな形と言う点では、生物学で言えばタイプ標本であり、また、本書を祖にして適応放散し数多くのゾンビ作品が生まれたことを考えるとこの作品の偉大さをあらためて感じます。 

それから、マシスンはすでにゾンビ(吸血鬼)自体にスラップスティック・コメディの要素を見いだしている点も注目すべきでしょう(p96)。
とにかくリチャード・マシスンの傑作ですね。



アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫 NV マ 6-5)アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫 NV マ 6-5)
(2007/11/08)
リチャード・マシスン

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08/29|☆☆☆☆☆コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
☆☆☆

模範的な黒人警官が豹変し、白人に銃口を突きつける。彼は止めに入った同僚に銃を向け、逆に射殺された—事件を調査するワシントンの私立探偵デレクは、家族思いの男の素顔を知るが、その妹は兄の葬儀の直後に失踪し、麻薬に溺れていた。やがてデレクは、男を凶行に走らせた兄妹の過酷な運命に直面する……欲望が渦巻き、銃弾が飛び交う街で正義を貫く男を描いた現代の挽歌。ハードボイルド界を担う著者の新シリーズ。     内容紹介より



ジョージ・P・ペレケーノスの〈デレク・ストレンジ・シリーズ〉第一作目。
まるでオセロゲーム(例えが不適切でしたらすみません)を見ているように黒人と白人の関係を強く意識させられる物語です。

目新しいのは、主な調査対象となる加害者の白人(元)警官が調査に加わっているところです。主人公は彼を伴って事件現場、相棒だったパトロール警官を訪れたり、私生活でも交流を持ちます。問題は彼の潜在意識の中に黒人への差別感情があるのではないか、もし相手が白人だったら発砲しなかったのではないか、という点です。そして、この元警官がキレやすい性格なのではという疑いも相まってストーリーに緊迫感を与えています。

女性にたいして、「男ってのは、ダイヤモンドを探して世界中を旅するが、自分の家の裏庭を探そうとはしない」(p303)の古いたとえ話同様の生活を送ってきた主人公のデレクがジャニーンというダイヤモンドを“裏庭”で見つけたものの、家庭を背負うことの漠然とした不安からまだ他を探そうとする往生際の悪さ、フラフラ具合が巧みに描かれていると思います。

シリーズ二作目
『終わりなき孤独』



曇りなき正義 (ハヤカワ・ミステリ文庫)曇りなき正義 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2001/11)
ジョージ・P. ペレケーノス

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08/27|☆☆☆コメント(1)トラックバック(0)TOP↑
☆☆☆

田舎町の若き警察署長ベンは、麻薬組織が牛耳るボストンの無法地帯に乗りこむ。検事殺しの容疑がかかる極悪ギャングを追っているのだ。殺人捜査など未経験のベンは、隠居中の敏腕刑事の助力を得る。しかし、癒着、裏切り、沈黙の掟、数々の障害に捜査は迷走、証人も次々と殺されていく。だがやがて、ベンの抱えていたある秘密が事件の突破口になるのだった— 発表前から世界中のミステリ界を揺るがした必読の新世代小説。     内容紹介より



ネタばれ気味です!ご注意ください。



どの部分をして「新世代小説」と呼ぶのかどうかは分かりませんが、コージー風から始まり、成長小説、警察ミステリ、ハードボイルド、ノワール風と様々に変化していくのが新しいと言えば新しいかも。ただ、そのすべてが75点平均の出来です。成長小説の部分は先生となる引退した刑事ケリーの役割と行動が中途半端、彼から学ぼうとしたのは警棒の回し方くらいか。しかもギトゥンズと役割がダブっています。警察ミステリおよびハードボイルド部分では悪役のスケールが小さすぎ。さらに長すぎて同じ所をグルグル回っているようで(ギトゥンズやブラクストンに対する評価が繰り返されるところ)、カバー写真みたいにボストンの街を駆け抜ける疾走感がまーたく感じられません。作品全体が冗長なためにラストのサプライズ効果が弱くなった感じがします。ページ数をこの半分におさえていたらもっとシャープな作品になっていたのでは。気に入った箇所は第一部冒頭の町の住人たちとのやり取りです(作者よ、ダイアン・ハーニドのその後を語れ)。
 
質量とも645ページに薄めたジム・トンプスンというのがわたしの印象です。



ボストン、沈黙の街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ボストン、沈黙の街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2003/09)
ウィリアム ランデイ

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08/25|☆☆☆コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
☆☆

ミネソタの小さな町レイク・エデンは、いつになくにぎわっていた。
ハートランド製粉主催による手作りデザートコンテストの第一回開催地に選ばれたのだ。
町いちばんのケーキ作り名人としてハンナも審査員に選ばれたが、審査員の中には意外な顔ぶれも。そのひとり、高校のバスケットボール・コーチであるボイド・ワトスンがこてんぱんに参加者のデザートを批評した夜、彼は何者かに殺された。そばにはハンナがあげたストロベリー・ショートケーキが—。またまた死体の第一発見者になってしまったハンナはやっぱり探偵役をやるはめに……。大好評のお菓子探偵ハンナ・シリーズ第二弾!   内容紹介より



ジョアン・フルークさんちの『シュガークッキー』、『ファッジ・カップケーキ』に続いて『ストロベリー・ショートケーキ』を食べてみました。ごちそうさまでした。
…さて、今回、ハンナがホームズ役でアンドリアがワトスン役みたいに描かれていました。作者が意図して古典的パターンを踏襲したのではないでしょうが、そのためこの姉妹の会話部分が多くなって変化に乏しく、退屈なところもありました。それから女性記者の身に起きた事態は、読者には早くから予想がつくことなのに、それが判明するまでの経過を長く引っ張り過ぎてしまった感があります。読者には結果に見当が付いているのに探偵役がなかなか気が付かない間抜けな状況に陥っていて、これは読者をイライラさせるだけですね。

ミステリ自体はいつもの場当たり的な事件なので特別な感想はありません。たまには綿密に仕組まれた計画殺人事件なんていうのも取り入れていただきたいです。



ストロベリー・ショートケーキが泣いている (ヴィレッジブックス F フ 2-2)ストロベリー・ショートケーキが泣いている (ヴィレッジブックス F フ 2-2)
(2003/08)
ジョアン・フルーク

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08/23|☆☆コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
☆☆☆☆

妻と息子と別れ、失意の日々を送るマーカス。彼は貧しさから母親と離れて暮らす少年アンソニーと出会い、驚くべき事実を聞かされた。炎上する車から若者が金を盗み出す現場を偶然目撃したというのだ。その金が麻薬密売の元締のものだったことから、組織は情報を握るアンソニーの行方を追う。やがて少年の身に危険が及ぶにいたってマーカスは組織との対決を決意する! 男たちの生きざま、哀しみを叙情的に謳い上げた傑作。 内容紹介より



とにかくジョージ・P・ペレケーノスの作品はとても分かりやすい。ヤクザ映画じゃないけれどなんだかそんな雰囲気を感じます。高倉健!みたいな。渋いっ!みたいな。

ジョー・R・ランズデールの作品とは友情とバイオレンスという共通点がありますが、
ランズデールの『凍てついた七月』や『人にはススメられない仕事』で暴力が目的化し、暴力と死に魅了されつつある危うさが描かれているのに対し、ペレケーノスの作品の暴力はまだ手段であり、コントロールできているところに作者の昔気質というか古風さが現れていると思います。しかし、ここには古来の「卑しい街を行く騎士」など存在せず*、主人公は汚職警官のひとりであり、そもそも「卑しい街」どころか市長からして麻薬常習者で、十一歳の子供がコカインを売り、尊敬を集めるのは麻薬密売の総元締という汚濁にまみれた街になってしまっています。この街の変遷を描いているところに、当シリーズが〈ワシントン・サーガ〉と呼ばれる由縁を強く感じます。

甘々な結末はやはり古典的な印象です。それよりも『ローリング・ストーン』を読んでいるかのごとく、音楽のタイトルとアーティストの名前がうじゃうじゃ出てくるのには少し辟易しました。

*マーカス・クレイはその絶滅寸前の生き残りかもしれませんが、家庭や店という守るべきものを持ちディフェンス専門になっている。




明日への契り (ハヤカワ・ミステリ文庫)明日への契り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1999/10)
ジョージ・P. ペレケーノス

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08/21|☆☆☆☆コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
☆☆

クロゼットの町は大騒ぎになっていた。町をあげて南北戦争の戦闘を再現する歴史イヴェントの開催が近づき、誰もがその準備に奔走しているのだ。騒然とした雰囲気のせいか、それまでは目立たなかった微妙な人間関係までが話題にのぼる。そして迎えたイヴェント当日、再現劇では発射されないはずの実弾が人間に射ちこまれた!右往左往する人間たちを尻目にトラ猫ミセス・マーフィー率いる動物探偵団が事件解決に乗り出した!   内容紹介より



作者としては事件の解決より犬猫のボリショイサーカスもどきの活躍を書きたかったみたいな。南北戦争の再現劇中に銃撃事件が起きる設定は、ジル・チャーチルの『エンドウと平和』に先例がありますから少し二番煎じな印象を受けます。しかも再現劇の話題で引っ張るわけでもないし、町の貯水池計画やタッカーが見つけた骸骨、ハリーの曾祖父にまつわる話とか色々あり過ぎてまとまりが悪い気がします。それから、作者が犬猫たちに言わせる人間についての意見や考えがネタなのか真面目なのか、ユーモアの描きどころで笑えない会話になるんですよね。作者は人間という生き物に生まれたことをはかなんでいるのですか。

以前の作品では飼い主のハリーが曲がりなりにも事件を解決するか、その手助けくらいはしていた記憶があるのですが、今回は主従が逆転してしまって、犬猫らの「知性は高度なのに、人間の尺度では測れなかったということは大いにあり得ることなのだ」(p401)と感心しきりで「無数にある生命形態に対して謙虚な気持ちに」(同)なって変な方向にいってしまい、これまでの彼女の魅力的なところがでていませんでした。たぶん続編が出ると思いますので、それに期待しましょう。




散歩をこよなく愛する猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 15-7 トラ猫ミセス・マーフィ)散歩をこよなく愛する猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 15-7 トラ猫ミセス・マーフィ)
(2007/02)
リタ・メイ・ブラウンスニーキー・パイ・ブラウン

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08/19|☆☆コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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