『隠密部隊ファントム・フォース』ジェイムズ・H・コッブ 文春文庫

2018-04-18

Tag :

☆☆☆☆

インドネシア各地で武装集団によるテロが多発、多数の島々を擁する同国は内戦の危機に陥った。テロ組織を支援する富豪ハーコナンを密かに排除せねばならない。隠密作戦の指揮をとるのは戦略の天才アマンダ・ギャレット。アマンダ自身が構想した新戦略〈ファントム・フォース〉が始動する。現在最高の軍事冒険シリーズ最新作! 上巻内容紹介より



本書は、紛争地域において、民間の貨物船に擬装した軍艦が敵の不意をついて襲う、という戦時国際法からみてどうなんだろうかと思うような設定がある軍事スリラーです。舞台は多数の島嶼と様々な民族からなるインドネシアで、各民族を煽って中央政府と対立させ、最終的にインドネシアの分裂後に自らの王国を創ろうとする海賊の頭目と彼が起こした争乱に乗じて軍事クーデターを企てる海軍の提督の二人が敵役になります。内戦状態に陥ったインドネシアに介入するのが、主人公が率いるアメリカ海軍の隠密部隊という話です。面白くない訳ではないのですけれど、まず対戦するインドネシア軍、それもその中の反乱軍、しかももっぱら海軍の戦力、装備なりが、超近代的最新装備を誇るアメリカ海軍に比較して、当たり前にあまりにも負けているところ、敵が強ければ強い程話は盛り上がるというのに、相手がやられすぎなところが目立ってしらけてしまいました。それに軍事冒険小説における恋愛話が個人的に受けつけないのでその点も目障りでした。嵐など自然の驚異という要素を持ち込んでいないところはアリステア・マクリーンの作品に比べると冒険譚の弱さを感じてしまいます。

『ステルス艦カニンガム出撃』




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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『レディ・スティンガー』クレイグ・スミス ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2018-04-11

Tag :

☆☆☆☆

マギーは詐欺師。ホテルのバーに一人座り、下心を覗かせて近づいてくる男から金品を失敬するのが仕事だ。ところがある日、網にかけた男シャンクスから逆に仕事を持ちかけられてしまう。ある男をカモにしてフロッピーを盗めば、一万ドル出すというのだ。話に乗ったマギーは、ジャマイカに飛ぶが……二転三転する展開で一気に読ませる洒落た大人のサスペンス 内容紹介より



本書は1992年に発表され、1993年のMWA賞最優秀処女長篇賞候補にノミネートされた作品です。ちなみにその年の受賞作は、マイクル・コナリーの『ナイトホークス』です。
棚ぼたで手に入ったマフィアの大金を一般人や小悪党がねこばばしてしまったために、マフィアから追われるはめに陥る、というプロットは良くありますが、本書もそのパターンのひとつです。主人公は色仕掛けで気を惹いた男に薬物を飲ませて、金品をくすねる女詐欺師で、盗品を処分する役をする男のパートナーがいます。そんなヒロインがある晩引っ掛けた男から、多額の謝礼金を示されてある計画を持ちかけられます。彼女は依頼人を怪しく思いながらも、報酬目当てに話に乗ってジャマイカへと向かいます。根っからの詐欺師のパートナー、ある事情からFBIを辞めた男、マフィアのボスとその組織の金を横領している会計士、ひと癖もふた癖もある登場人物のなかでも魅力的なのがヒロインです。プロの詐欺師なのに妙に素人ぽさがあり、依頼人に恋心を抱いてしまう女らしさを持っています。そういう魅力を描きながら、物語がありきたりのラブロマンスに堕ちなかったのは、クライマックスにおける依頼人との対面シーンでしょうし、そのために作品が締まっている印象を受けました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『マイアミ殺人 懲りないドクター』ダーク・ワイル 集英社文庫

2018-04-06

Tag :

☆☆☆

マイアミの医学校で学ぶベンは博士号取得を目前にした生体臨床医学の専門家。その知識を見込まれ巨額の報酬で、製薬会社の買収を検討している依頼人から、内部調査を引き受けた。革新的な抗癌剤開発の情報は真実なのか?ひと癖もふた癖もあるドクターたち。頭脳明晰、かつ人間味あふれ自らもドクターの卵ベン・キャンディーディ。フロリダの陽光の下、陰謀と殺人の渦に巻き込まれ…。 内容紹介より



主人公は恩師の友人から、抗癌剤を開発している研究所の買収に伴う調査を依頼され、新たな抗癌剤の真価や特許関連を調べることになります。しかし、彼の前任者の失踪、研究所のオーナーの怪しい動きなどが調査するにつれて浮かび上がってくるうえに、不審な言動をとっていた開発責任者が急死を遂げてしまいます。博士号取得を目前に控えた、高いIQを備える主人公が専門知識を用いて真実を明らかにする、という話の流れです。恋人とヨットを愛する自由人である主人公のキャラは、一方では秀才過ぎる気味がありますが、嫌味がなくかといってくだけすぎることもなく、そつがないけどやや青臭い感じもする好青年です。これが役所に上手くはまっている印象を受けました。物語は、研究成果の真贋を見分ける主人公の活動が多くを占め、殺人らしきものが起きるのはかなり後半になってからですので、ミステリ自体の深みはあまり感じませんが、クライマックスの冒険小説みたいなアクション場面は結構盛り上がっています。作者は、英国の冒険小説の古典に傾倒しているのか、少なくとも影響を受けていそうな印象を受けました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『死を告げる絵』トマス・アドコック ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2018-04-01

Tag :

☆☆☆

ストゥールに腰掛け、バーテンに話しかける緑色のドレスの女—その光景は、ピカソと自称する老画家の絵とそっくり同じだった。そして、彼女はそのバーで何者かに殺された。ニューヨーク市警の刑事ホッカデイはその老画家の行方を追い始めるが、彼の絵を模して、第二、第三の殺人が。情感豊かに描くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペーパーバック賞受賞作 内容紹介より



1991年に発表された作品です。もし物語のなかにおいてパソコンや携帯電話が登場するか否かよってミステリ史を前後期に分けるとするならば、この作品は前期にあたります。主人公はヘルズ・キッチンに住む、NY市警のマンハッタン街頭犯罪捜査班に属する私服刑事です。しかし、彼はほとんど単独で捜査するため、警察小説の色合いは薄く、また警察ミステリというより私立探偵小説の雰囲気を強く感じました。いわば国家権力を背景にしつつ、組織に縛られない一匹狼を主人公にしたハードボイルドなのでしょう。これはなかなか都合の良い設定なのですが、昨今のミステリと比べるとなにか古めかしく感じてしまいます。物語は、四月のある日の午前中に公園において、主人公がピカソと名乗る初老の絵描きから殺人計画を打ち明けられるところから始まり、彼のもとへ届く、犯行現場を描いたかのような絵のとおりの殺人事件が連続して発生します。戦死した夫のことを話そうとしない主人公の母親にまつわる記憶やコニーアイランドでの少年期の思い出など、彼の内に秘めた心情やノスタルジックな感情をメインストーリーに絡めて展開するスタイルを採っています。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『記憶なき殺人』ロバート・クラーク 講談社文庫

2018-03-26

Tag :

☆☆☆☆

MWA賞最優秀長篇賞に輝いた傑作ハードボイルド!美貌のダンサーが絞殺された。捜査の途中で第二の美女殺人が。連続殺人の容疑で挙げられたホワイトは、曖昧な記憶のまま自白を強要され終身刑に。同僚の尋問に疑念を抱いたホーナー警部補は、ホワイトの日記を丹念に検分しだすと、恐るべき真相が……。 内容紹介より



出産時の後遺症のせいで記憶障害のハンディを持つ孤独な主人公は、子供時代や直近の過去以外の記憶が曖昧になるため日記をつけるとともに、新聞記事などをスクラップブックに保存することを日課にしています。行きつけのクラブのダンサーの絞殺事件が起こり、主人公に似た人物が死体発見現場で目撃されて容疑者となります。その事件を担当するのが人生に疲れたもうひとりの主人公の警部補です。過去と未来とは一体何なのか、というテーマがあって、“文学”寄りで探偵小説としての犯人探しと事件解決のカタルシスを期待して読むと満足しないかもしれません。その他にも真犯人についての人物像の掘り下げが足りないような印象が残るし、その人物が最後に採った行動にも、なぜそれを選択したのかという説明が不十分のように感じました。裁判において弁護士が不在なこととか証拠品の扱いとかの粗さが気になったりしました。真犯人をあやふやのまま特定せずに、主人公の犯行の余地を残すというグレーゾーンを設けても良かったような気もします。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ピーチツリー探偵社』ルース・バーミングハム ハヤカワ文庫HM

2018-03-16

Tag :

☆☆☆

女性探偵サニーが勤めるのは、大統領とも懇意の有名探偵が営むピーチツリー探偵社。放浪癖を持つ社長不在の今、彼女は窮地にあった。盗まれた絵を取り戻そうと赴いた泥棒との取引場所で他殺体に遭遇。容疑者にされた挙げ句、絵は戻らず。さらに期間内に十万ドル納めないと探偵社が倒産すると銀行の催促が。サニーの捻り出した起死回生の秘策とは?どんでん返しの連続回転記録に挑むジェットコースター・ハードボイルド 内容紹介より



女性探偵サニー・チャイルズを主人公にしたシリーズは、MWA賞ペーパーバック賞を受賞した『父に捧げる歌』が先に邦訳されましたが、本作がシリーズの第一作目にあたるそうです。
三十四歳の小柄な主人公は、著名な探偵が社長を務める探偵社のほぼ共同経営者的な地位にあります。しかし、その社長が大金を持って失踪したため、会社の資金繰りが危機的状況に陥ってしまいますが、折しも保険会社によって画廊から盗まれた印象派の絵画を取り戻す依頼を受け、その仕事が成功すれば会社の経営も持ち直すという状況にあります。犯人との取引場所へ向かったヒロインは、犯人グループの一員とみられる女性の死体を発見する羽目に……。
何度も離婚歴があり、その度にお金持ちと再婚する母親、音楽の才能があると信じながら、母親の干渉から弁護士になった弟、このふたりにいろいろ思うことがあるヒロインは妻子ある男性と不倫中の身です。不倫は別として、こういう既視感を覚えるような家庭と家族の設定に、事が上手く運びそうですんでのところで駄目になり、その度に死体を発見してしまうという、やや型にはまったスラップスティックをおびたな展開にちょっと食傷気味になりました。ラストにおけるヒロインとある人物との出会いの場面を発展させ、その人物を真犯人と確信させたらさらに意表を突く結末になったのではないかと思いました。

『父に捧げる歌』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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