2006年、南極。アルゼンチン軍が英南極基地を急襲、占拠した。近辺にあった唯一の軍艦、最新鋭ステルスか駆逐艦〈カニンガム〉が急行する。援軍は見込めない。〈カニンガム〉はアルゼンチン軍の猛攻に、ハイテクと機略と胆力を武器にたった一隻で戦いを挑む。苛烈な南極の自然の中、迫真のディテールで描く新たなる軍事冒険小説。 内容紹介より
作品が発表されたのは1996年なので、2006年に時代設定した本書は近未来軍事スリラーの形をとっています。しかし、現在2012年ということを割り引いても、軍隊の装備や武器に詳しくないから読んでいても近未来感がしませんでした。それはともかく、わたしのような素人でも現代の軍事スリラーの流行言葉は「ステルス」であり、それとともに様々な最先端科学技術がストーリーの全面に出てくる傾向があって、また、それを操るのはコンピューターに大部分を依存していることが分かります。本書においてもアルゼンチン軍の戦闘機との戦闘が始まると、武器のほとんどすべてがコンピューター制御され、戦闘指揮所にいる軍人の多くは手持ち無沙汰状態になっていると言ってもいいくらいです。この傾向は、本書の作者のような軍事関係者または元軍人などハイテク装備に精通している者にとっては軍事ミステリーを執筆する上で有利に働くでしょうし、リアリティのある描写が可能でしょう。一方、ハイテク装備した軍艦が登場する作品がみな似たような印象しか残せないのは、そこに人間ドラマが希薄だからでしょう。概ね軍事関係者や軍事評論家などの作品には、これが欠ける傾向にあると思います。本書では艦長と部下の恋愛を描くという、個人的には暴挙としか思えないような、軍事スリラーにはあり得ないことをしていて、こういう物語を緩くぬるくする人間ドラマは要らないのです。
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