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『手ごわいカモ』ピート・ハウトマン ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2021-07-28

Tag :

☆☆☆

今年の祭りはどうなってるんだ?タコスの店の経営者アクセル・スピーターは首を傾げた。手伝いの娘は当てにならないし、店長は売上げをごまかしているらしい。おまけに彼の金を狙って何者かが部屋に侵入したのだ。仲間が見かけた怪しげな若造の仕業なのか?アクセルは犯人を追い始めるが……おかしなやつらの危険な駆け引きを描く、パワフルな必笑痛快作。 内容紹介より



例年八月下旬から開催され、百万人以上の来場者のあるミネソタ・ステート・フェアという共進会会場を舞台に、毎年そこに出店するタコス店経営者のアクセル(73歳)を主人公にして、庶民と小悪党との絡む出来事を描いた、ノワールやハードボイルドなんかを混ぜたような、おかしな味をした作品です。個性豊かな主要登場人物は、主人公の恋人ソフィア、彼女の不仲な娘カーメン(薬物依存)とその男友達ディーン(ドラッグ密売の前科者)、主人公の昔ながらの友人(怪しげな賭けポーカー仲間)サムとトミー。主人公が貯めた大金を手に入れようとするカーメンとディーンの悪企みを軸にして、タコス店で起きる騒動や老境にある旧友たちとのやり取りを描き、祭りの雰囲気を添えている、やり過ぎ感のないドタバタ喜劇ですが、ちょっとしんみりさせるシーンもあります。 

『時の扉をあけて』創元SF文庫





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ウォールフラワー』スティーブン・チョボスキー 集英社文庫

2021-07-25

Tag :

☆☆☆

チャーリーは15歳、明日から高校生活が始まる。兄は大学のフットボール選手、姉は美人で有名な高校生。末っ子の彼はパーティで部屋の隅から動かない「ウォールフラワー(壁の花)」のよう……。そんなチャーリーが経験する数々の出会い。傷つきながら成長するチャーリーの、瑞々しい言葉の数々が、読む者の心を打つ。『ライ麦畑でつかまえて』の再来ともいわれる、青春小説の新たな金字塔! 内容紹介より



1999年に発表された本書は、日本で2001年にアーティストハウスより刊行され、2013年の映画化にともない、新たに集英社文庫から新訳で出された作品です。ジャンルとしてはヤングアダルトにあたるのでしょう。新しい高校生活に馴染めない、情緒不安定な傾向がある繊細な少年を主人公にした物語です。彼の学生生活において一番に気付かされるのは同級生たちの不在です。ケンカをふっかけてきた生徒、その際、証人になってくれた生徒、廊下で声をかけた、自死した友人の元彼女、短いやり取りをした学校のロッカーの隣同士、ほぼ、この三つの場面しかありません。
代わりの目立って重要な役割を担っているのが、偶然知り合った上級生の兄妹と彼らの友人たち、そして主人公の才能に目をかける国語の教師です。前者によって主人公は酒、タバコ、ドラッグを経験し、同性愛というものを身近に接し、女性を愛することに目覚め、それがどういうことかを知ります。後者からは文学への関心を高められます。 一方、家庭環境においては、両親と兄はほぼ背景に過ぎず、姉は恋愛事情にまつわるエピソードの担い手としか機能していません。





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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『罠から逃げたい』パーネル・ホール ハヤカワ文庫HM

2021-07-22

☆☆☆

足元をすくわれそうなんです。そんな陳腐な台詞をひっさげ、投資会社重役の男が依頼を持ちかけてきた。取締役会の新会長の座をめぐり、ライバルたちが彼を陥れようとしている証拠を見つけてくれと訴えるのだ。数日前も巨乳の女を餌に彼を罠にはめたという。わたしは当の女を探しだすが、やがて女と依頼人の男が殺され、わたしにまたしても殺人容疑の濡れ衣が!天才的不運の持ち主ひかえめ探偵が罠から逃げまわる第12作 内容紹介より



このシリーズは会話文が多いため、本書のように紙数が500ページ近くあっても、かなりスラスラと読むことができます。ただ今回は主人公による事件関係者などへの事情聴取的な場面が多く、同じようなことが何回か繰り返される感じがして変化に乏しい気がしました。映画やマスコミなどの華やかな業界ではなくて、被害者が投資会社のいわゆる会社勤めということもあり、各関係者についてのエピソードがほとんどなく、業種に興味を惹かれず、面白みがありませんでした。動き回るたびに、どんどん殺人容疑がかかってくる主人公ですが、その姿がスラップスティックコメディにもブラックユーモアにあまり繋がらず、最後は担当刑事への意趣返しに終わったところは、求めていたものと違ったので感心しませんでした。

ユーザータグ:パーネル・ホール




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『スリーピング・ドール』ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋

2021-07-19

☆☆☆☆

キャサリン・ダンス―カリフォルニア州捜査局捜査官。人間の所作や表情を読み解く「キネシクス」分析の天才。いかなる嘘も、彼女の眼を逃れることはできない。
ある一家を惨殺したカルト指導者ダニエル・ペルが、脱獄、逃走した!捜索チームの指揮をとるのはキャサリン・ダンス捜査官。だが、狡知な頭脳を持つペルは大胆に周到に裏をかき、捜査の手を逃れつづける。鍵を握るのは惨殺事件の唯一の生き残りの少女テレサ。事件について何か秘密を隠しているらしきテレサの心を開かせることができるのは、尋問の天才ダンスしかいない……。
ハイスピードで展開される逃亡と追跡。嘘を見破る達人ダンスvs他人をコントロールする天才ペルの頭脳戦。「言葉」を武器に悪と戦うキャサリン・ダンスの活躍を描くジェフリー・ディーヴァーの最新作。ドンデン返しの魔術師の超絶技巧がまたも冴えわたる。 内容紹介より



本書は、リンカーン・ライム・シリーズの派生作品にあたり、『ウォッチメイカー』で初登場したキャサリン・ダンスを主人公に据えた作品です。まず感じたことは、リンカーン・ライム・シリーズのこれまでの悪役たちと比べると、その悪党ぶり、モンスターぶりのスケールが小さく思えたことです。カルト指導者といっても、五、六人のグループを率いているに過ぎず、そこには宗教的または政治的な背景はありません。実際に起きたカルト系の事件と比較しても、かなり穏やかに感じてしまうほどです。冷酷無比、機械を思わせるような犯行の緻密さ、感情を持たないかのような冷血な、これまでの犯人像に対して、本書の犯人が人間らしく見えるのは、被尋問者の挙動や言動を分析して嘘を見破り、真相を探り出す専門家を主人公にしたために、犯人像は、当然人間味を持たせざるを得なかったのでしょう。その意図が作品の物足りなさに繋がる一方、リンカーン・ライム・シリーズとの差別化にもなっているのだと思います。不必要なものもあるけれど、ドンデン返しは相変わらず健在です。

ユーザータグ:ジェフリー・ディーヴァー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ブルックリンの少女』ギヨーム・ミュッソ 集英社文庫

2021-07-16

Tag :

☆☆☆

人気小説家のラファエルは、婚約者のアンナと南フランスで休暇を楽しんでいた。なぜか過去をひた隠しにするアンナに彼が詰め寄ると、観念した彼女が差し出したのは衝撃的な光景の写真。そして直後にアンナは失踪。友人の元警部、マルクと共にラファエルが調査を進めると、かつて起きた不審な事件や事故が浮上する。彼女の秘められた半生とはいったい……。フランスの大ベストセラーミステリー。 内容紹介より



以下、ネタバレ気味です。ご注意ください!

フランスで発生した連続少女拉致監禁事件から11年後、事件の被害者がある写真を婚約者に見せたことにより、フランスや米国で起きた過去の事件や事故がまたたくまに繋がり、またあらたな殺人事件が……、という三日間の出来事を描いた作品です。作風はなんとなくフランク・ティリエを軽くしたような感じで、物語の展開はスピーディーかつスムーズでかなり読みやすく、ラストに至るまで気の抜けない趣向が凝らしてあります。全体的にハリウッド映画風、ないしはグローバルな娯楽作品の装いをまといながらも、ある謀殺事件の決着の付け方には、おそらくアメリカでは受け入れられないような非常にフランス的なもの、フランスらしさを感じさせる作品だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『逃げる幻』ヘレン・マクロイ 創元推理文庫

2021-07-13

Tag :

☆☆☆☆

幾度も家出を繰り返していた少年が、開けた荒野(ムア)の真ん中から忽然と消えた―ハイランド地方を訪れたアメリカの軍人ダンバー大尉が地元の貴族ネス卿の娘に聞かされたのは、そんな不可解な出来事だった。宿泊先のコテージで話に出た家出少年ジョニーを偶然発見したダンバーは、その目に恐怖が浮かんでいることに気づく。同様の理由で学校を退学になったという少年はなにを怖がり、なぜ家出をやめないのか?そして二日後、新たな事件が発生する―スコットランドを舞台に、名探偵ウィリング博士が人間消失と密室殺人に挑む傑作謎解きミステリ。 内容紹介より



本書の時代設定はヨーロッパでの戦争が終結して間もない1945年です。一週間の休暇でスコットランドのハイランド地方を訪れたダンバー大尉が出くわした、少年の消失事件から密室殺人に当地の言い伝えや奇譚を絡ませつつ、少年非行についての精神分析、そして、147ページに見られる登場人物の一人にまつわるファシズム批判(著者の意見を表してるのでしょう)が、ミステリ作品として、ややバランス的にどうだろうかと思うほど言及されているように感じました。また、消失や密室のトリックは取り立てて言うほどのものではありませんでした。しかし、精神科医という別の顔を持っているバンバー大尉のシニカルな人物評が随所に見られて面白く、彼が帯びた密命からの犯人の意外性へと結ぶからくりは非常に驚かされました。個人的にはマクロイの傑作ではないかと思います。

『暗い鏡の中に』
『幽霊の2/3』
『殺す者と殺される者』
『歌うダイアモンド』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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