『小悪魔アザゼル18の物語』アイザック・アシモフ 新潮文庫

2009-12-14

☆☆☆

アザゼルがね、とジョージが話し出した。絶対秘密だけど、奴は親しくしている悪魔なんだ。身長2センチのちびだけど、人が、いや悪魔が好くてね、困っている友達の願いを何回も叶えてくれた。女の子を美人にしたし、刑事に嘘を見抜く力を与えた。科学狂の運ちゃんに空を飛ばせたこともある。でもなぜか皆幸せにならないんだ……。著者の友人ジョージが語る奇想天外なエピソード18編。 内容紹介より



「身長二センチの悪魔」「一夜の歌声」「ケヴィンの笑顔」「強い者勝ち」「謎の地響き」「人類を救う男」「主義の問題」「酒は諸悪のもと」「時は金なり」「雪の中を」「理の当然」「旅の速さは世界一」「見る人が見れば」「天と地と」「心のありよう」「青春時代」「ガラテア」「空想旅行」収録。

ジャンルで分けると、本書はファンタジーの範疇に入ると思うのであまり比べる意味はないかもしれないけれど、面白さでいえば『黒後家蜘蛛の会』よりは劣りますが、『ユニオン・クラブ綺談』よりは上だと個人的には思います。
題名に悪魔と付けられていますが、アザゼルは異界に棲む生き物なだけで、願い事を叶えたからといって人の死後の魂を要求したりはしないし、叶えられた願い事が意地悪な結果に終わるように仕向けたりするわけではありません。アザゼル自身は要求されたことをいちおう一生懸命に、どちらかと言えば魔術でなく科学的に叶えるも、理解不足だったり、何か不手際が生じたり、やり過ぎだったりして残念な結果に終わってしまうのです。このひねりが、悪魔と人間の願い事にある古来からのパターンと違っているところです。
アザゼル、彼を呼び出すジョージ、ジョージが語るアザゼル物語の聴き役のわたし。この一匹と二人が互いに交す憎まれ口が辛辣すぎてかなり可笑しかったです。

タグ:アイザック・アシモフ




小悪魔アザゼル18の物語 (新潮文庫)小悪魔アザゼル18の物語 (新潮文庫)
(1996/04)
アイザック・アシモフ

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テーマ : ファンタジー・ホラー
ジャンル : 本・雑誌

『ロボットの時代 [決定版]』アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫SF

2009-05-09

☆☆☆☆

月世界開発用に調整されたロボットが地球上で行方不明になって起こったとんでもない大騒動を描く「AL76号失踪す」、地球から派遣されたロボットと木星人との奇妙な遭遇「思わざる勝利」、美男子の召使いロボットのトニイと女主人クレアのただならぬ関係を描く「お気に召すことうけあい」、ロボット心理学者スーザン・キャルヴィンが活躍する「校正」など、愛すべきロボットたちを描きだす『われはロボット』の姉妹短篇集 内容紹介より



「AL76号失踪す」「思わざる勝利」「第一条」「みんな集まれ」「お気に召すことうけあい」「危険」「レニイ」「校正」収録。

巻末に水鏡子さんが「ロボットから人間に」という一文を寄せていて、そのなかで
アシモフとフィリップ・K・ディックのロボットにたいする考え方の違いを指摘されています。以前にも書きましたが、わたしにとってもディックの作品の中のロボットは、短編「変種第二号」や「ジョンの世界」に登場するヒト型クローと呼ばれる傷痍兵型、女兵士型、少年型をした対人殺傷用ロボットの恐いイメージが強くて、本書でアシモフが描くロボットたちとは非常に対照的です。なぜアシモフのロボットたちのほとんどがこうも安全で安心なのか、というとそれは当然「ロボット三原則」という安全弁が取り付けられているからですね。唯一そうでないのが「みんな集まれ」のヒューマノイドで、これはディックのクローと同じ対人用の兵器だからです。はたしてアシモフは対人殺傷用ロボットの悪夢を見ることがあったのでしょうか?



ロボットの時代 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)ロボットの時代 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
(2004/08/06)
アイザック・アシモフ

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

「16品の殺人メニュー」アシモフ 他編 新潮文庫

2008-07-07

☆☆☆

ママ特製チキン・スープ、自宅の庭に生える珍しい茸のシチュー、自家菜園でとれた野菜サラダ、愛情のこもったラム・レッグのロースト、もちろん年代物のワイン……。みんなおいしくて、完璧な凶器です。ひと味足りないから塩を取ってほしい?それはとても危険! なぜって塩も立派な凶器ですから。名シェフのアシモフが、16品のフルコースの献立にちなんで殺人事件を集めました。 内容紹介より



創元推理文庫の短編集『ディナーで殺人を』の新潮文庫版みたいなもの。

「毒薬ア・ラ・カルト」レックス・スタウト、「特別料理」スタンリー・エリン、「おとなしい凶器」ロアルド・ダールが重複。これらの作品とダンセイニ卿の「二本の調味料壜」は老舗の定食ですかね。いまさらコメントするまでもない感じ。

有名料理人の屋号の料理が、レンデル「茸のシチュー事件」(ウェクスフォード警部)、アシモフ「追われずとも」(黒後家蜘蛛の会)、ホック「使用済みティーバッグ窃盗事件」(怪盗ニック)、マリック「ギデオンと焼栗売り」(ギデオン警視)。レストランチェーン店料理人のプロンジーニ「いつもの苦役」。手堅いし特色があるけれど、食べつけていて少し飽きてきたのでアクセントが欲しいような。

キャロル・カイルの「凶悪な庭」は無気味で面白かった。ネドラ・タイアー「幸せな結婚へのレシピ」は異色味。ジャズ・エイジ風のR・L・スティーヴンス(ホック)「チキン・スープ・キッド」、いかにも中南米料理風のT・S・ストリプリング「亡命者たち」、ポテトチップスみたいなフランシス・M・ネヴィンズJR.「ドッグズボディ」。料理名だったら舌を噛みそうなヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリングの「死の卵」、ジェイムズ・ホールディングのたわいない味「ノルウェイ林檎の謎」。



16品の殺人メニュー (新潮文庫)16品の殺人メニュー (新潮文庫)
(1996/12)
アイザック アシモフ、

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「ミニ・ミステリ100」(下)アイザック・アシモフ他編 ハヤカワ・ミステリ文庫

2008-05-30

☆☆☆

こんなことになるなんて、夢にも思わなかった。フライト・スケジュールが狂って目的地から離れた町に寄り道したのだが、そこで財布をなくしてしまった。困り果てたすえ、他人から金を借りようとして、強盗と間違われ、警官にも追われる身となった。一文なしのわたしは、ホテルにももどれず、さまよううちに、いつの間にか、こぎれいな住宅地にさしかかっていた……日常のささいな出来事が男の運命を狂わせてゆく恐怖を描いた上記「あなたにだって……」をはじめ、ヘンリイ・スレッサー、ビル・プロンジーニらが彩る最終巻。(本巻は34篇収録) 内容紹介より



「あなたにだって……」ジョン・ラッツ
わたしにだって……、あるかもしれない人を殺したことくらい…夢の中で…。
悪夢みたいな話。ショート・ショート形式より、徐々に男が追いつめられていく過程を丁寧に描いた短編で読みたい、そんな設定です。

「果てしなき探索」トマシーナ・ウィーバー
別れた妻を探す帰還兵のスリラー・サスペンス。サイコパスの男の一途な愛情が哀れで悲しい。読み手に様々な想像をさせる切り取り方だと思います。

「旅の子供」フレッド・S・トビー
現代版(ネタばれ→)サキの「開いた窓」みたいな話。ジェット旅客機の中で知り合った大学教授と少女。

「ミセズ・トゥイラーのお買い物」ラール・J・リトク
「旅の子供」の少女が歳をとったらこんなおばあさんになるのでしょう。私設の猫福祉センターの餌代を調達するために万引きするミセズ・トゥイラーと地獄のエンマ様の話。人(特に男性は女性)を外見やイメージで判断するととんでもない目に遭うという教訓が含まれていると思いますね。おばあさんのしたたかさが愉快。

「とらわれびと」エドワード・ウェレン
ルース・ウィスマンの「マチネー」とともに解説の都筑通夫氏が褒めている一作。

この本に限らず、ショート・ショート集または超短編集のなかで得てして上手くまとめようとしている作品は、結果こじんまりとしてしまい、読者に想像または解釈の余地を残していないものが多く、作者、とくに著名な作家の「どうだ」感あるいは「どんなもんだい」みたいな鼻息を感じる場合があるように思います。まあ、読めば読むほどスタンダードな作品には飽きてしまうこちらの事情もありますが。



ミニ・ミステリ100 下    ハヤカワ・ミステリ文庫 89-3ミニ・ミステリ100 下  ハヤカワ・ミステリ文庫 89-3
(1983/01)
不明

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ミニ・ミステリ100 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ミニ・ミステリ100 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/05)
アイザック アシモフ、

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「ビッグ・アップル・ミステリー マンハッタン 12の事件」アシモフ 他編 新潮文庫

2007-01-12

☆☆☆

あらゆる人種がひしめく大都会ニューヨーク。ビッグ・アップルと呼ばれるこの街に事件の絶えたためしはない。グレニッチ・ヴィレッジで、パーク・アヴェニューで、五番街で、今日も起きる強盗、殺人、コン・ゲーム……。Dr.アシモフが精選したこれら12のミステリーで、世界最大の犯罪都市を徹底ガイド。アシモフ自身のほか、クイーン、ウールリッチ、レックス・スタウトなどの作品を収録。 内容紹介より



5番街の殺人『春爛漫のママ』(注:本書では漫は火偏)ジェイムズ・ヤッフェ
57丁目の殺人『緑の氷』スチュアート・パーマー
グレニッチ・ヴィレッジの殺人『ジェリコとアトリエの殺人』ヒュー・ペンティコースト
リヴァサイドの殺人『あの世から』クレイトン・ロースン
西12丁目の殺人『殺人の“かたち”』フランセス&リチャード・ロックリッジ
45丁目の盗難『一ペニー黒切手の冒険』エラリー・クイーン
ニューヨーク港の事件『世紀の犯罪』R・L・スティーヴンズ
西35丁目の殺人『殺人は笑いごとじゃない』レックス・スタウト
パーク・アヴェニューの殺人『一場の殺人』Q・パトリック
ブロードウェイの殺人『地下鉄の怪盗』コーネル・ウールリッチ
5番街のコン・ゲーム『スペード4の盗難』エドワード・D・ホック
ミドタウンの災難『よきサマリアびと』アイザック・アシモフ

巻頭に、北は57丁目から南はニューヨーク港まで、西はリヴァサイドから東はイースト・リヴァまでのニューヨークの簡単な地図が付いていまして、それぞれの作品につけられた地名、通り名とを参照すれば、各々の事件がニューヨークのどこらあたりで起こったのかが良く分かる仕組みになっています。

「ブロンクスのママ」が5番街の殺人を解決したり、ミドタウンで起きた書籍強奪傷害事件を解決しようとダウンタウンを警察本部へと向かうクイーンがいたり、西35丁目に住むネロ・ウルフの助手アーチーがタクシーで東54丁目に聞き込みに向かったり、怪盗ニックが西43丁目で知人に出くわしセントラル・パーク近くの65丁目とハーレムの126丁目にトランプを盗みに入るはめになったり、老婦人を救った若い男の住所を「黒後家蜘蛛の会」のメンバーが推理したり…。

数々の名探偵たちが活躍したニューヨークでミステリー・スポットを観光する際に参考にしたい一冊(行ければの話ですが)。1885年のニューヨーク港で犯罪者が狙った五十万ドル相当の積み荷の正体はこれだったんだと眺めたり、いつもの感じと違うウールリッチが描いた地下鉄に乗ってみるのも良いかも。

ビッグ・アップル・ミステリー―マンハッタン12の事件 ビッグ・アップル・ミステリー―マンハッタン12の事件
I・アシモフ、常盤 新平 他 (1985/01)
新潮社

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