『原始の骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2017-03-10

☆☆☆

ネアンデルタール人と現世人類の混血を示唆する太古の骨—この大発見の五周年記念行事に参加すべく骨の発掘されたジブラルタルを訪れたギデオン。だが喜ばしい記念行事の影には発掘現場での死亡事故をはじめ、不審な気配が漂っていた。彼自身まであわや事故死しかけ、発見に貢献した富豪が自室で焼死するに至り、ギデオンは疑いを深めるが……。一片の骨から先史時代と現代にまたがる謎を解く、スケルトン探偵の名推理 内容紹介より



今回は嫁のジュリーも同行して、久々にこれぞトラベルミステリという趣がする作品で、小さい土地ながらヨーロッパのなかでアフリカ大陸に最も近い位置を占め、古代からの要衝の地であり、現在はイギリス領土となっている、様々な文化が入り交じったエキゾチックな雰囲気を醸し出すジブラルタルを舞台にしています。『われらが英雄スクラッフィ』に登場した野生猿も取り上げられていて、描かれているその姿が愉快です。そのジブラルタルにある遺跡で発掘された子供の遺骨が、ネアンデルタールとホモ・サピエンスが交配した証拠になるものではないか、との議論を呼んだ過去の大発見の現場を訪れた主人公に降り掛かる奇妙な出来事と遺跡のある洞窟の崩落事故で亡くなった女性考古学者、自宅で焼死した遺跡発掘のスポンサーである素人考古学者、これらの不審死。発掘作業でブラシや刷毛によって古代の遺骨が徐々に姿形を現わしていくように、大発見にまつわる隠された真実がギデオンの手によって明らかにされていきます。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『密林の骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2016-11-16

☆☆☆

アマゾン河を旅する格安ツアーに参加したギデオンだが、同乗者は奇妙な人間ばかりだった。不穏な雰囲気の漂う民族植物学研究者一行,秘密を持つ船長,出自不明のガイド。やがて事件が勃発する。岸の方から槍が飛来し、船内に突き刺さったのだ。そしてその穂先の基部に巻かれていたのは……さらに接岸した場所で不思議な穴のあいた骨が発見され……一片の骨から名推理を展開するスケルトン探偵ギデオンが密林の闇に挑む。 内容紹介より



アマゾンの密林で起きた大学教授がまだ学生だった頃にコカを栽培する首狩り族との間で起きたトラブルを序章にし、アマゾン河流域でのフィールドワークを目的とした、民族植物学の大学教授、同僚の助教授、大学院生、フリーライター、民族昆虫学者の一行に主人公らが同行するという展開です。引率者である大学教授に対して、他のメンバーが敵意なり反感を抱き、また、なにか得体の知れない現地のガイド、それに、一行が利用する船の船長は教授となにやら密約を結んでいるという設定です。
世界有数の大河と高湿度の密林,そこに生息するピラニアを始めとしてピンクのカワイルカ、鳥をも襲う大蜘蛛などの生物、これまで以上に異国情緒豊で野性味溢れた旅を舞台にしているのですけれど、ミステリに関しては、スケールの大きなアマゾンという舞台を生かしきれていないような、ちょっと食い足りないような感じが否めないし、ギデオンが原住民に連行される場面や真新しい骨の欠片も取って付けたかのような印象を受けました。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『水底の骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2016-08-08

☆☆☆

十年前、ハワイで大牧場を経営するマグナスが失踪を遂げた。その遺骨が海の中から発見され、遺族の証言では当時のマグナスは殺し屋に命を狙われていたという。彼は逃亡の末にかわりはてた姿になったのか?現地を訪れていた人類学教授ギデオンは調査を開始。当初、それはごく普通の骨に思えた。だが、やがてその骨の異常さが明らかになり、遺族の隠されていた秘密が露わに……スケルトン探偵をも惑わせる遺骨の正体は? 内容紹介より



牧場経営者の兄弟のうち、焼失した建物から兄が射殺体で発見され、弟が失踪、妹の証言により殺し屋による犯行で、怯えた弟が自家用機で逃亡したことが判明する。その事件から十年後、海中に沈む飛行機の残骸が発見され、中からパイロットと弟のものとみられる遺骨が見つかり、被害者の甥の屋敷に滞在していたギデオンが遺骨を鑑定する、という流れです。わたしの記憶に無いだけかもしれませんが、たしかハワイを舞台にした作品はシリーズ初のような気がします。それにしてはいつものトラベルミステリ風な観光案内や情報が少なく、嫁のジュリーも一緒だというのに添え物程度でエピソードに乏しい感じがしました。プロットにしても、取ってつけたような終盤の殺人事件、これまた同様な真相でして、全体的に盛り上がりに欠けた印象でした。どうしてその場所に遺骨が残ったのか、という真相は捻りが効いているように思います。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『略奪』アーロン・エルキンズ 講談社文庫

2016-05-07

☆☆☆

「どうやら盗品らしいんだ。見てくれないか」旧知の質屋シメオンに頼まれ私が鑑定した絵は、大戦中ナチに奪われ行方知れずになっていたベラスケスの〈トリーホス伯爵〉だった!まさか、この絵をめぐって次々殺人が起こるとは予想だにしなかった―美術探偵リヴィア初登場。巨匠エルキンズが贈る待望の新シリーズ! 内容紹介より



美術ものの新シリーズということで、〈クリス・ノーグレン〉シリーズではありません。主人公は四十歳前後の男性で、学生時代にポスターの通販事業を起こして成功した後、その権利を売って大学に入り直して美術史の博士過程を終了し、ボストン美術館の学芸員になり、そこを辞めるとハーバード大学で教職に就きますが、またそこも辞めるという経歴の持ち主で、愛想を尽かした妻に離婚されています。“美術探偵”とありますが、探偵業を生業にしているわけではありません。経歴からくるモラトリアムな臭いや人物像なんかが、デイヴィッド・ハンドラーの主人公に雰囲気が重なるような気がしました。物語は、終戦間際に輸送トラックごと不明になった大量の名画の行方を追って、ボストン、ウィーン、サンクトペテルブルク、ブタペスト、チューリヒを主人公が駆けめぐり(〈スケルトン探偵〉シリーズみたいに各地の観光案内もしつつ)、旧伯爵も登場し、殺人事件に巻き込まれたり命を狙われたり、冒険小説風な色合いも帯び、ラブロマンスも当然ありで軽快に進んでいきます。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『楽園の骨』アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレスハヤカワ文庫

2014-05-26

☆☆☆

親戚の死因を調べてほしい―FBI捜査官ジョン・ロウの依頼でギデオンはタヒチへ飛んだ。ジョンの伯父が経営するコーヒー農園では最近不穏な出来事が続いており、今度は娘婿が不審な死を遂げたのだ。彼の死と一連の事件には何か関係が?やがて、平穏に見えた農園の秘密が明らかに……陽光輝く南の島でスケルトン探偵が鮮やかな推理を見せるシリーズ第八弾 内容紹介より



今回の舞台は常夏のリゾートタヒチですけれど、嫁ジュリーは同行していません。
このシリーズにおいて主人公ギデオンが事件に関わり合いになる発端は、たいがい彼が出かけた先で人骨が発見され鑑定を依頼されるというパターンが多いような気がするのですが、今回はジョン・ロウのプライベートな頼みで、事故死だと判断された身内の遺体を調べ直すという、当然骨自体も新しい、これまでとはやや違った幕開けになっているところが新鮮に映りました。過去に起きた農園主とマフィア間のトラブル、それからコーヒー農園一帯への買収話をめぐる家族間の意見の不一致、この二つの要因を設定して容疑者と犯行動機とを読者に提示しているのですけれど、容疑者たちのキャラクターが若干ぼんやりした印象を受けて、もう少しいわくありげな様が欲しいような気がしました。被害者の骨に残された痕跡の謎も、作中のギデオンによるミスリード発言があるにもかかわらず見当を付けやすいと思います。

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楽園の骨楽園の骨
(1997/12/15)
アーロン・エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『邪悪なグリーン』アーロン&シャーロット・エルキンズ 集英社文庫

2013-11-19

☆☆

出場できる試合もなく、貯金も底をつきかけた女子プロゴルファー、リー・オフステッド。そんな彼女に会社役員の研修旅行でゴルフ・レッスンのアシスタントをする話が舞い込んだ。個性派ぞろいの役員メンバーや奇妙なゴルフ上達グッズを利用するインストラクターを相手に奮闘するリー。ところが会社CEOの妻が襲われ、その翌日には殺人事件も発生する。なぜ、遺体の喉には古い釘が?好調シリーズ第3弾。 内容紹介より



プロゴルファーリーの事件スコア3。
物語は昔、宝探しの船で発生した海難事故のプロローグから始まり、次にゴルフ場でのゴルフレッスンの最中にスラップ・スティックコメディみたいな誘拐未遂事件、その翌日にはその被害者の夫である会社経営者が喉に釘を打ち込まれた死体となって発見される猟奇的な殺人事件が起きるという、なにやら感覚的に高低差のある設定になっています。二十年前の海難事故が伏線になり、役員たちが殺人事件の容疑者となりうる動機に結び付けているところは地味に上手いかもしれません。しかし、いざ種明かしされると、なぜ真犯人はいとも簡単に殺人という極端な手段を選んだのか、その理由が腑に落ちないし、描かれているキャラクターからはそのような行動をとるのは不自然なように感じました。確かに意外性はありますけれど、ああ、そういえばあの時に……みたいな納得のできる前振りに欠けているように思います。ゴルフミステリは希少だろうから、ゴルフ好きな方には面白いかもしれないけれど、ヒロインのラブロマンスも目障りだし、ユニークな脇役も少ないから個人的にはもう読まなくて良いかもです。

『怪しいスライス』

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邪悪なグリーン プロゴルファー リーの事件スコア 3 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫)邪悪なグリーン プロゴルファー リーの事件スコア 3 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫)
(2012/05/18)
アーロン&シャーロット・エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『遺骨』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2013-10-10

☆☆☆

司法人類学界の長老がバス事故で悲劇の死を遂げて十年、その遺骨が自然史博物館に展示されることになった。それを記念して開催される学会に出席するため、ギデオンはオレゴンへ飛んだ。ところが遺骨が何者かに盗まれるという不可解な事件が起こり、続いて博物館の近くから謎の白骨死体が―シリーズ屈指のトリックで謎解きの醍醐味を満喫させる本格雄篇。 内容紹介より



スケルトン探偵シリーズの六作目。
犯罪事件が起きる場所へ夫婦で出かけ、風景を愛でつつイチャイチャしながら事件を解決するといういつものパターン。災害や大事故が起き、その状況を利用して生存者、あるいは偶然居合わせた者が犠牲者と身元をすり替わるというトリックは昔からありますが、本書もその変型というのは結構最初から見当が付きます。ただ、事故を予見するのは不可能なわけですから、それをどういう具合に処理してみせるのかが読みどころだと考えていました。しかし、新たに起きた殺人事件に関してもう一つの仕掛けが用意してあり、読者の目を最初の事件に向けさせておいて、続いて本格推理小説にでてくるようなトリックで意表を突くというサービスが仕込んでありました。この辺りが従来の作品と比べてちょっと違っているように感じました。
このシリーズは、当然、毎回人類学的な知見が披露されるわけですけれど、今回は「土壌圧縮地」なる用語が出てきて、これは「死体を埋めて地面を元どおり平らにした場合に、つまり中に何か埋まっているのがわからないように土を盛り上げなかった場合に起こる現象」であり、「九十九パーセント、殺人を意味する」のだそうです。詳しくは本書で。

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遺骨 (ミステリアス・プレス文庫―ハヤカワ文庫 (74))遺骨 (ミステリアス・プレス文庫―ハヤカワ文庫 (74))
(1994/04)
アーロン・エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『怪しいスライス』 アーロン&シャーロット・エルキンズ 集英社文庫

2013-07-11

☆☆

プロ1年目の女子ゴルファー、リー・オフステッド。あらゆる経費を切り詰める、金欠なプロ生活を送る彼女は、出場した試合でスター選手ケイトの撲殺死体に遭遇する。捜査を担当するグレアム・シェルダン警部補が、ゴルフを全く知らないとあって、リーも黙って見てはいられない。試合で知り合ったアマチュアゴルファーのペグと真相究明に乗り出すけれど……。ゴルフの世界の裏舞台も覗き見できる、軽快ミステリーの登場! 内容紹介より



シリーズタイトルは〈プロゴルファー リーの事件スコア1〉。
たまに見かけるスポーツ・ミステリのひとつですけれど、プロゴルファーしかも女性、そのうえシリーズものというのは希少かもしれません。発表されたのは1989年、どういう経緯でエルキンズ夫妻がこんなニッチな分野に目をつけたのでしょうか。270ページほどの軽目のサスペンスロマンで、プロゴルファー、とくに駆け出しのトーナメントプロの大変さが描かれています。しかし、わたしのようなゴルフの素人にも読みやすくしてあるため、ゴルフが趣味でその関係の色々な情報や内容の深さを求めている人は物足りなさを感じてしまうでしょう。さらに、やがてヒロインと事件担当の警部補のロマンスが始まってしまうため、このふたりの関係性がそれ以上に派生のしようがなくなって、ありきたりな流れに終始してしまい詰まらないのです。また、ヒロインが果たしてトーナメントで賞金を獲得することができるかどうか、というシーンも、往年のスポ根もののドラマやアニメを見付けている日本人の目にはぬるすぎる気がします。

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怪しいスライス プロゴルファー リーの事件スコア 1 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫)怪しいスライス プロゴルファー リーの事件スコア 1 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫)
(2011/09/16)
アーロン&シャーロット・エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『断崖の骨』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2013-06-18

☆☆☆

楽しいはずの新婚旅行がだいなしだった。新妻のジェリーとイギリスの片田舎を訪れたギデオン・オリヴァー教授は、またもや事件にまきこまれてしまったのだ。見学先の博物館からは貴重な古代人の骨が盗まれ、つづいて旧友が発掘中の遺跡で殺人が……アメリカの名高きスケルトン探偵ギデオンが「正統的英国の殺人」の謎に挑戦する推理と冒険のシリーズ第四弾 内容紹介より



海外ミステリの初級者用テキストに最適なスケルトン探偵シリーズ。今回は特に伏線が目に付きやすく、先読みしやすかったのでした。もうちょっと歯ごたえがあっても良かった気がします。でも、たまには肩の凝らない、眉間にしわを寄せないで読める作品も必要なのです。
新婚旅行で英国ドーセットを訪れたギデオン夫妻、いちゃいちゃしていて微笑ましい限りです。ドーセットと言えば、化石ハンターとして有名なメアリー・アニングの生誕地なので、本書でも名前が出てくるのですが、たったの一回だけというのは残念。まあ、彼女が見つけたのは古代人の骨ではないのでしかたありませんけれど、著者は取材旅行をしているみたいなので、土産話で彼女の生家の様子でも書いて欲しかったところです。それから、考古学者は一般に人骨についての形質的な知識に長けているわけではない、というのは意外に感じました。

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断崖の骨 (ミステリアス・プレス文庫)断崖の骨 (ミステリアス・プレス文庫)
(1992/03)
アーロン・エルキンズ

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断崖の骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)断崖の骨 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2006/09)
アーロン・エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『氷の眠り』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2013-01-13

☆☆☆

アラスカの氷河で発見された一片の人骨から、意外な事実が判明した。三十年前に遭難したとされていた調査隊員は、実は殺されていたのだ。骨の鑑定にあたったギデオン・オリヴァー教授は、FBI捜査官ジョン・ロウとともに事件の再調査を開始した。だが、その直後に新たな殺人が……厳寒の地で深まっていく謎にスケルトン探偵が挑む。人気シリーズ第五弾。 内容紹介より



雪崩により遭難した調査隊のなかで唯一の生存者である、当時の調査隊長が回想録を書くために、かつての関係者や遭難者の遺族を現場近くのロッジに招待した。遭難現場に赴いた彼らはそこで偶然、人骨を発見するのだが、ギデオンはその骨に凶器によって付いたと見られる痕跡を認める。このシリーズの中でも、古典的な推理小説のパターンが目立つ作品のような気がしました。例えば、アラスカの国立公園内というひときわ人里離れた場所柄で、外部からの侵入を否定できる、容疑者が限定された条件という意味では擬似クローズドサークルとも言えるわけで、また、新たに起きた殺人事件は、ある人物が暴露本や回顧録を執筆すると触れ回った途端、屋敷内で殺人が発生するという設定を用いていると思います。この基本型に形質人類学のもろもろの知識を肉付けして一丁あがりみたいな作品で、伏線やミスリードを無難に仕込み、悪い意味でこなれた感じを受けました。(個人的に言っているだけですが)トラベルミステリとしての面では、野生動物にまつわるエピソードを加えるなどして話の広がりが欲しかったところです。

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氷の眠り (ミステリアス・プレス文庫)氷の眠り (ミステリアス・プレス文庫)
(1993/02)
アーロン・エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『骨の城』 アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2012-07-29

☆☆☆

環境会議の会場となった古城近くで発見された人骨。調査に乗り出した人類学教授ギデオンは、骨の特徴があぐらをかく職種の人間のもので何者かに殺害されたのだと推定する。やがて、数年前同じ場所で開かれた環境会議で参加者たちが諍いをしていた事実と、会期終了後参加者の一人が熊に喰われて死んでいたことが明らかに。さらに今回の参加者が城から転落死を遂げ……一片の骨から不吉な事件の解明に挑むスケルトン探偵。 内容紹介より



今回の舞台は、イギリスのコーンウォール州ペンザンスからフェリーに乗って行くシリー諸島のセント・メアリーズ島。地元の博物館に持ち込まれた小さな骨を鑑定した結果、それがのこぎりで切断されたものと判明し、島に二人しかいない警察官とともに事件の謎に挑むというもの。島に建つ古城の所有者が私的に催す会議に出席したある人物が被害者ではないかと思われたが……。
取ってつけたかのような転落事故を装った殺人事件が起きるにしても、全体的にこれまでにないくらいかなり淡白で、今ひとつ盛り上がりに欠けた印象でした。やはり容疑者となる会議参加者たちへの書き込み不足が原因でしょうか。作者の筆が地元警官のひとりに割かれているため、容疑者たちの人物像が説明書き程度の扱いしか受けていません。そのため出来事が現在進行形でなく、すっかり過去の話みたいになってしまっています。被害者だと思われていた人物を島にやって来させる(ルース・レンデルが得意とするように)みたいな工夫が欲しかったところです。

『暗い森』アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫
『死者の心臓』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫
『洞窟の骨』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫
『骨の島』 アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM




骨の城 (ハヤカワ・ミステリ文庫)骨の城 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2008/03)
アーロン エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『暗い森』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2012-06-24

☆☆☆☆

ワシントン州の国立公園の大森林で人骨の一部が発見された。ギデオン・オリヴァー教授の鑑定から骨は六年前に殺された男のものと判明する。が、なんと殺人の兇器は一万年前に絶滅したはずの種族が使っていた槍だった。伝説の猿人が本当に森の奥深く徘徊しているのか……? 一片の骨から縦横無尽の推理を繰り出すスケルトン探偵が真骨頂を示す初期代表作 内容紹介より



以下、ネタバレしています!ご注意下さい。

本書はスケルトン探偵シリーズのなかで、ギデオンが後に妻となるジュリーと出会う記念的な作品と言えるでしょう。また、それとは別に内容的にもいままで読んだこのシリーズの作品のなかで、ちょっと目先を変えた印象を受けるものでした。これまでの犯人探しや謎解きの趣向より、絶えていく少数民族やその文化または人間に限らず人知れず滅びゆくものの悲哀さを描き出しているような印象を受けました。ミステリとしてはビッグ・フットやビッグ・フット研究家をレッド・へリングとして据えていますが、これは読者が運良くつまずけばもっけの幸いくらいの軽い布石に過ぎず、それ以上に掘り下げようとする意図は見られません。現代文明の影で消えていくものをテーマにしながら、過度に感傷に落ちずさりげなく伏線を張っているところなど作者の腕前を感じました。エルキンズが目指す四時間くらいで読める作品のあり方からすると、今回はロマンスとミステリのバランスをとった、どちらの要素もそれほどくどくも深くもない物語として良い出来具合なのかも知れません。

『死者の心臓』アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫
『洞窟の骨』アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫
『骨の島』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM




暗い森 (ミステリアス・プレス文庫)暗い森 (ミステリアス・プレス文庫)
(1991/03)
アーロン・エルキンズ

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暗い森 (ハヤカワ・ミステリ文庫)暗い森 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2006/02)
アーロン・エルキンズ

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『骨の島』 アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2012-04-25

☆☆

イタリア貴族の当主ドメニコは姪に信じがたい言葉をかけた。「私の子を産んで欲しい」と。時は流れ、産まれた子は、実業家として財を増やそうとする。だがその矢先、一族の人間が誘拐され、さらに前当主のドメニコの白骨死体が地中から発見された。調査を始めた人類学教授ギデオンは、骨に隠された一族の数々の秘密を知ることになるが……円熟味を増したスケルトン探偵ギデオン・オリヴァーの推理が冴える本格ミステリ 内容紹介より



プロローグで早々に展開が読めてしまう上に、そのまま捻りもなく終わってしまった。ただ、犯人は意外な人物でしたが、それも取って付けたような無理矢理感があって、意外性を求めるあまりかえって作品の程度を下げてしまったような気がしました。それから、このシリーズの重要な要素である“骨”とそれから読み取れるさまざまな事実が、毎回、読者の興味を惹き付けているところだと思うのですが、今回はその部分にもインパクトの弱さを感じました。そこでの魅力に欠けてしまうと、このシリーズの持つ良い意味での軽快さが薄っぺらさに変わってしまうと思うのですね。そしてまたトラベル・ミステリという側面から見ても、舞台がいまさら珍しくもないイタリアだし、ツアー仲間たちが、自炊しテントに寝泊まりしながら、自転車やカヤックで湖巡りをするのにたいして、ギデオンはひとりだけホテル住まいで、食事はレストラン、車で移動して合流とか、彼個人に降り掛かるハプニングや面白エピソードがそもそも起きそうにない設定というところが面白さを損なっている一因ではないかと思いました。

『死者の心臓』アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫
『洞窟の骨』アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫




骨の島 (ハヤカワ・ミステリ文庫)骨の島 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/10)
アーロン・エルキンズ

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『洞窟の骨』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2012-02-25

☆☆☆

旧石器時代の遺跡の洞窟から人骨が発見された。調査に協力したギデオンの鑑定により、事態は急転した。人骨は旧石器時代のものではなく、死後数年しかたっていなかったのだ。ギデオンは、以前に先史文化研究所で捏造事件が起きた時、行方不明者が出た事実をつかむが……複雑に絡みあう人類学上の謎と殺人の真相にスケルトン探偵が挑む、人気シリーズ第九作 内容紹介より



ネアンデルタール人は人類の祖先か否か、という考古学上の問題を根底に据えたミステリです。三年前、ある考古学の研究所と発掘現場を舞台にして起きた捏造事件、墜落事故、失踪事件があり、犬が掘り出した人骨によって、一連の出来事の経緯が徐々に明らかになっていくというもの。ただ、飛行機事故のくだりやある人物の死体の処置の仕方のトリックには、間に合わせのアイデアみたいな印象を受けて、TVのサスペンス・ドラマ的なお手軽感があって残念でした。
さて、『死者の心臓』ではエジプトに、『呪い!』ではメキシコへと、主人公が愛妻を伴って出かけて行くこのシリーズですが、今回はクロマニヨン人の人骨が初めて発見されたフランス・レゼジー村を訪れています。人類学者の主人公にとっては、いわゆる聖地巡礼みたいなものでしょうか。本書に登場する「ホテル・クロマニヨン」は実際に存在するそうで、今回特に思ったのですが、作者が意図しているかどうか分からないけれど、なんだかんだいってもこのシリーズはトラベル・ミステリ色が強いと思うのですよね。

『死者の心臓』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫




洞窟の骨 (ミステリアス・プレス文庫)洞窟の骨 (ミステリアス・プレス文庫)
(2000/12)
アーロン・エルキンズ

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『死者の心臓』 アーロン・エルキンズ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2012-01-16

☆☆☆☆

しぶしぶ引き受けた仕事でギデオンはエジプトを訪れた。エジプト学研究所の宣伝用ビデオに、ナレーターとして出演することになったのだ。だが、撮影が始まって間もなく、ナイル川を進む船で、研究所の所長が不審な死を遂げた。さらに、研究所の裏で発見された人骨が不可解な謎を呼び起こし……悠久の歴史が眠る地でスケルトン探偵が活躍するシリーズ第七弾。 内容紹介より



このスケルトン探偵シリーズは、『古い骨』と『呪い!』の二冊しか読んだことがなくて、どちらかといえばクリス・ノーグレン シリーズのほうが好みだったりします。さて、本シリーズ作品の立ち位置は、E・S・ガードナーの弁護士ペリー・メイスン シリーズと同じようなものを感じます。本書では登場人物たちの多くが、学者であったり学術のパトロンだったりするので、キャラクターの幅が狭く、しかも人物像に丁寧な背景を付けるのでもないので、手慣れすぎるているような創作技術とも相まって、作品全体のイメージがより軽く薄く思えてしまうのです。ただ、他者よりも少しだけ人物背景を細かく描写している警察官のガブラが、とても人間臭く印象に残るキャラなので、当然描けないわけじゃなく、意図的に人物造形を掘り下げるのを避けているのでしょうね。また、視点のほとんどがギデオンからであるため、他視点部分の心理描写が徹底して省かれているのも構成のシンプルさを考えてのことなのでしょう。ほとんどの読者に受けそうな、クセを排した作風みたいな。
エルキンズは「“飛行機に四時間乗っている知的な人”を対象」(東理夫氏の解説より)に書きたいらしいのですけれど、良くも悪くも彼の作品から受ける軽さはこういう姿勢からくるのではないかと思いました。




死者の心臓 (ハヤカワ文庫―ミステリアス・プレス文庫)死者の心臓 (ハヤカワ文庫―ミステリアス・プレス文庫)
(1996/03)
アーロン・エルキンズ

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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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