『古き友からの伝言』イーサン・ブラック ヴィレッジブックス
2009-11-28
住居は豪邸、愛車はジャガー、ルックスはモデル並み ― ニューヨークの有名刑事フートの元へ、かけがえのない親友ミーチャムから9年ぶりに連絡が入った。ただならぬ様子に心配して駆けつけてみると、陸軍を辞めたというミーチャムは何者かに監視されて怯えており、フートにメモを渡し、そこに書かれた人物達を何も言わずに調べてくれと言い残して立ち去る。親友の身に危険が?!フートはさっそく捜査を始めるが、しだいに恐ろしい陰謀が姿を現してくる。リストにある美人女医が鍵だと直感したフートは、そこを突破口に黒幕を暴くことを胸のうちで友に誓うが ―。話題のスタイリッシュ・スリラー第2弾!内容紹介より
もしかしたら、このシリーズは良シリーズなのかもしれない。どこが良いかというと、主人公の人物造形が秀でてて、上手く描かれていると思います。「住居は豪邸、愛車はジャガー、ルックスはモデル並み」、この説明文から受ける、軟派で軽佻浮薄なイメージとはかけ離れて、真摯で内省的な人物像に仕立て上げられています。オランダ系アメリカ人の設定とは別に、イギリス風な感じがします。ただ、ユーモアのセンスをあまり持ち合わせていない(作品全体に少ない)ように見えるのが残念だけれど、完成した「大人」ではなくて、内面が成長途中の若さを感じられるのは好印象です。さらに、彼とは対照的に軽いキャラクターである相棒のミッキーの個性をもっと強く描けば、このシリーズに新しい魅力が加わるのではないでしょうか。
一方、主人公のラブロマンスはカミラだけに絞って、他の女性との恋愛はないほうがいいと思います。やや内容に較べてページ数も多いことだし。
プロットについては、謎がばれるのが早くストレートでしたが、後半に殺人犯と爆弾犯を二重に絡ませてストーリーを進めているところは新しさがありました。
『殺意に招かれた夜』イーサン・ブラック ヴィレッジブックス
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『殺意に招かれた夜』イーサン・ブラック ヴィレッジブックス
2009-11-14
凶悪犯罪に慣れきった街、ニューヨーク。そんな街の男達さえも震え上がらせる連続殺人が起こった。行為の最中にめった刺しにされ、一物まで切り取られるという凄惨な現場に残された手がかりはただ一つ ― 「わたしはあなたを知っている」というメッセージだけ。被害者たちは共通点がまったくない。いったい誰が、なんの目的で?次なる目標は?豪邸に住みジャガーを乗り回す、ニューヨークいちリッチな名物刑事コンラッド・フートは捜査に乗り出すが、事件の陰には男を惑わす、たまらなくセクシーな謎の女の姿があった。フートが女の正体を追ううち、驚愕の事実が……。衝撃のスタイリッシュ・スリラー。 内容紹介より
本書の特徴といったら、まずシリアルキラーが女性であることと、なぜ彼女が連続殺人を犯すに至ったかを詳細に書いていることだと思います。最近のミステリ作品では、シリアルキラーはほとんどの場合サイコキラーという設定が多くて、たいがい幼少時に虐待を受けていたとか、猫や小動物をいじめていたなんてエピソードでかたずけられてしまいがちですが、この作品では彼女がどうしてそのような精神状態に陥ったのかについて多くのページが割かれています。単なる殺人嗜好の血に飢えた殺人犯じゃなくて、読者が彼女に哀れみを覚える設定になっています。ただ一方では、前半に長く尺を取ったスプラッター気味の殺人シーンがあっただけに、少女時代に起きた事件、彼女の母親の態度、恋人の採った行動を挙げて理詰めで説明されたら、ああそうなんですかって白けてしまうのもあるし、それでもそこまでやるかって眉唾物みたいな感覚も持ってしまうのですね。
それから、この作品の○と×を書いときます。
○ なぜ彼女が人の知りえない色々な情報を手に入れられたのか、その理由。
× 筒井康隆の『富豪刑事』ばりのお金持ち刑事の設定なのに、まったく洒落にならない ほどコミカルな部分がないこと。単にアメリカ人の歴史コンプレックスを突いている だけのことなのでしょうかね。
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