『五時の稲妻』ウィリアム・L・デアンドリア ハヤカワ文庫HM

2015-05-16

☆☆☆

八回裏のヤンキーズの攻撃に、満員の観客は湧きかえった。あのミッキー・マントルが代打で登場し、特大のホームランをかっとばしたのだ。ついに無敵のヤンキーズは逆転した―歓声がとどろくなか、客席の一角では、赤狩りの急先鋒をつとめる下院議員が暗殺されていた。犯人は逃亡し、ある有料道路のレスト・エリアで忽然と姿を消した。死体の第一発見者たる元野球選手ギャレットは事件の謎を追うが……やがて明らかになる、赤狩りにからむ復讐とミッキー・マントル殺害計画!1950年代、大リーグの神話時代を舞台に展開するサスペンス巨編。 内容紹介より



タイトルの『FIVE O`CLOCK LIGHTING』とは、“試合後半にヤンキーズが劇的な本塁打で逆転する様”(p75)を表す運動部記者の用語なのだそうです。
何度もリーグ優勝を成し遂げ、さらにはワールド・チャンピオンに幾度も輝いたニューヨーク・ヤンキーズ全盛期、その影を成すかのような猛威をふるうマッカーシズム。この二つを時代設定に持ってきて、ヤンキー・スタジアムでの議員暗殺事件でそれらを結びつけています。暗殺犯の正体と動機は物語の当初から読者に明かされ、かつてマイナー・リーグに所属し、朝鮮戦争で負傷して両脚に障がいを持つ主人公が警察に協力して犯人を追うという流れです。しかし、ストーリーは復讐譚と追跡劇には進まず、暗殺された議員のスポンサーだった人物の右腕の男が主人公とミッキー・マントルの命を狙って行動を起こし始めるという展開に変わります。個人的に首を捻ったのは、特に強い政治信条など持ってなさそうなこの男がふたりを殺すことに、何故これ程こだわるのだろうか、ということです。この辺の理由が読みとれなくて釈然としませんでした。同一章内における三人称多視点の移動がスムーズで巧みであり、それによる人物それぞれの心理描写がシンプルかつ上手く効いていると感じました。

ユーザータグ:ウィリアム・L・デアンドリア




テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『死の天使アザレル』W・L・デアンドリア ハヤカワ文庫

2010-03-25

☆☆☆

手始めは、少年だった。しばらくその頭を清流の中に押さえつけておくだけですんだ。次は、車の修理工。車の下敷きにするだけだった。眠っている赤ん坊はもっと簡単だ。タオルで顔を押さえて窒息させれば事足りた……ニューヨーク州のある田舎町で、一見何の脈絡もなく人が死んでいった。いずれも事故や突然死とみなされたが、共通しているのは死者の髪がなぜかみなべったりと濡れていることだった。誰が何を目的として動いているのか?事件の背後にソ連の謀略〈クロノス〉の存在を読みとった工作員トロッターと見えざる敵との息づまる対決! 内容紹介より



本書は、『クロノス計画』『スナーク狩り』に続く三部作の最後に当たる作品で、できれば前二作を読んでおいたほうがいいみたいです。ソ連が遠大な謀略計画の一端を実行に移すために、アザレルというコードネームを持つ殺し屋を雇い、巨大メディアグループの長に圧力を掛ける。それを察知した大統領直属の〈機関〉が工作員のトロッターを差し向ける、というもの。23年前の作品ですから工作員の造形が古めかしいし、〈機関〉という情報機関の設定からして一時代前のニュアンスがあります。それから、メディアグループの総師を無理矢理従わせて情報操作や世論誘導をしようとする目的がまどろっこしいような、生温いような。むしろ軍事技術とか科学技術を盗み出すみたいなダイレクトな計画のほうが緊迫感が高まったような気がします。
鈴木啓子さんの訳者あとがきにあるように、「本書などあえてスパイ絡みにせずとも、連続殺人の設定といい、犯人のキャラクターといい、単なる謎解き小説」(p405)に仕上げてみたらどうだったのかなあと思いました。




死の天使アザレル (ハヤカワ・ミステリ文庫)死の天使アザレル (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1989/10)
ウィリアム・L. デアンドリア

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ウルフ連続殺人」ウィリアム・L・デアンドリア 福武書店

2008-08-04

☆☆

激動のうちに20世紀も暮れようとするなか、フランスの大富豪ピエール・ぺナック男爵は私財を投じて国際科学オリンピックを開催した。アルプス山中のリゾートタウンは一躍、全世界のすぐれた頭脳を集めた科学の祭典の場となる。しかし、ある朝聖火台の炎に焼かれている科学者の死体が発見されるにおよんで、この世紀の大イベントは恐怖と迷信と死の交錯するおどろおどろしい悪夢に変貌するのだった。つぎつぎに起こる殺人事件。その残虐な手口と満月の夜に限られた犯行から、狼男への恐怖がつのっていく。そんななかで、アメリカから天才的素人探偵が事件解決に赴く。『ホッグ連続殺人』いらい、ひさびさのベイネデイッティ教授の登場である。  内容紹介より



胸元まで届くほど生い茂った草むらのなか、木の幹の側に立ってこちらを凝視する毛むくじゃらの生き物。狼男というよりビッグフットみたいな。内容に著しい危惧を抱かせるようなものすごくB級ぽいカバーイラストが痛々しく、作者がデアンドリアじゃなければ、新刊では買わんでしょ。内容も『ホッグ連続殺人』と比べなくても生温く緩く、早々に犯人の見当が付いてしまいます。瑣末なところに感心するくらいのパッとしないミステリでした。



ウルフ連続殺人 (ミステリペイパーバックス)ウルフ連続殺人 (ミステリペイパーバックス)
(1994/06)
ウィリアム・L. デアンドリア

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ジャンル : 本・雑誌

「殺人ウェディング・ベル」ウィリアム・L・デアンドリア ハヤカワ・ミステリ文庫

2005-12-28



ケーブル・テレビの契約をめぐるトラブルの調査に学生時代を過ごした町を訪れていたマットは、旧友の女性の結婚式にも参列する予定だった。
しかし、結婚式を間近に控えた夜、その女友達が殺害されたうえに親友ダンが逮捕されてしまう。親友の嫌疑を晴らすためにマットは調査を始めるが、彼の身にも危険が及ぶことに。

マット・コブ・シリーズ3作目。
かなりすごい邦題ですが、原題は『Killed With A Passion』。どちらにしてもよく分からない題名です。ウェディング・ベルは登場しません。

デアンドリアといえば『視聴率の殺人』、『ホッグ連続殺人』など名作を書いた人だし、事件に関係する人物が少なく、犯行状況も単純なのでよほど奇抜なトリックが用意されているのかと、結構期待して読んだのですが……

登場人物の印象が薄いし人物設定もありふれている。唯一、存在感があるのはサモイェード犬(サモエード犬)スポットくらいでした。

軽ハードボイルド風だけれど、テレビのサスペンス・ドラマにもなりそうなミステリです。

テーマ : 推理小説・ミステリー
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