「名探偵登場」ウォルター・サタスウェイト 創元推理文庫

2006-12-28

☆☆☆☆

奇術師フーディーニは、ある貴族の屋敷を訪れた。知友のコナン・ドイル卿も招かれ、降霊会が催されるからだ。実は敵から身を隠すためでもある。護衛はピンカートン社の探偵だ。と、たちまち幽霊騒ぎが、謎の狙撃が、ついには密室での怪死が……相次ぐ事件にロンドンより敏腕警部が到着。これで役者はそろった。真相を巡り、推理合戦の火蓋が切って落とされる。だが、フーディーニを狙う人物はすぐそこに。かくも愉しき《探偵小説》。     内容紹介より



以前に読んだ『仮面舞踏会』 よりも推理小説らしい作品です。軽くて楽しく面白い。幽霊が出るという貴族屋敷、老伯爵の怪死、降霊会、そして歴史的著名人など古典ミステリ好きには垂涎ものの状況設定ですね。フーディーニはわがままで目立ちたがりだけれど、少年のように純粋で妻思いの愛すべき人物に描かれ、腹筋自慢の彼が不意をつかれて腹部にパンチを受けたり、真面目で良識のあるコナン・ドイルは、この作品ではすでに(息子を亡くしたため)心霊学に傾倒しています。こういう有名な史実を織りまぜながら話が進むのですが、一方、好青年ボーモントの影はやや薄いです。
また、「財産を数えあげるのは貧しいものにかぎられます」「『ロミオとジュリエット』より」などと、やたらシェークスピアを引用して出典まで口にするロンドン警視庁の警部が登場して笑えました。きっとこれはイギリスの推理作家たちが描く警官を含む探偵に対するパロディなのでしょうね。
わたしも、本書から気に入った言葉を引用してみます。「自分が思うほど利口な人なんて、まずいない」(P308)。

名探偵登場 名探偵登場
ウォルター サタスウェイト (1999/07)
東京創元社

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「仮面舞踏会」ウォルター・サタスウェイト 創元推理文庫

2006-10-13

☆☆☆☆

1923年、パリ。ピンカートン探偵社のフィルはまたも怪事件の渦中に。新米探偵ジェーンも、家庭教師に扮して初仕事。パリの探偵ルドックとともに調査するうち二人が出会うのは、イギリスから来た女流ミステリ作家、パイプをくわえた敏腕警視、ヘミングウェイ、スタイン、サティにピカソ……怪しいやつが多すぎる! おまけにドイツ新政党も暗躍か? 華の都に名探偵たちが再登場。「名探偵登場」に続く、痛快ユーモア時代ミステリ !              内容紹介より



ミステリというよりも冒険色の強い探偵小説といったほうがしっくりくるような話。
暴力とドラッグとゴミで汚れた現代の街に棲む、様々なトラウマを抱えた探偵たちの話にはいささかうんざりしていたので、この探偵フィル・ボーモントの軽めの好青年ぶりと、かれが爽やかに駆け抜けて行く昼夜のパリの街並の描写がとても良かったです。また、あの覆面調査員パンプルムース氏 を思わせるルドックの食に対するこだわりやレストランとメニューの凄い知識、遠い先祖がフランス系のボーモントのフランス人指数をルドックがいちいち指摘する場面などユーモラスな箇所が多いです。ただ、後半は若き日のヘミングウェイの粗忽さぶりが笑えるくらいだったのが残念ですが。実際にこんな人だったのでしょうか。

ミステリとしては、前半、話を大きくした割に尻すぼみな感が否めません。でも、こういう「ユーモア時代ミステリ」な作品をもっと読みたいものです。

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