『赤い罠』ウォルター・モズリイ ハヤカワ文庫

2009-03-12

☆☆☆☆

国税庁からの通知が、イージーの平穏な日々に終止符を打った。彼の隠し財産を至急申告しないと逮捕するというのだ。窮地に立たされた彼は、FBIにおとり捜査の協力を約束する。彼は著名な活動家の行動を探るが、やがて恐るべき陰謀の渦中に……赤狩り旋風が吹き荒れるロスの街で、黒人探偵イージーが労働運動絡みの殺人事件の真相を追う。アメリカ私立探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞受賞作に続くシリーズ第二弾  内容紹介より



前作『ブルー・ドレスの女』同様、アメリカ社会における人種差別を強く意識させるとともに、さらに今回は、マッカーシズムの圧力を加えて主人公を取り巻く閉塞感を一層たかめています。それに国税庁までも登場させる念の入れよう。主人公は、尋問に暴力を持ってあたる警察官、マーカーシズムの権化みたいなFBI捜査官、徴税に使命を懸ける国税庁調査官を相手にしなくてはならないし、彼のもとに転がり込んで来た旧友の妻と子どもの面倒も見なくてはならない。その旧友の行動も心配しなくてはならない。作者は、このような重層的な構成を作る能力に長けていると思います。これは「純文学出身」(p376、穂井田直美さんのあとがきより)の良いところが出たのでしょう。ただ、ユダヤ人の活動家の扱いが弱いような気がしました。出来るなら、前述の国家権力の走狗たちと反対側にいる彼の姿をもっと丁寧に描いていれば、もっと物語に厚さが増したのではないかと思いました。ちょっと処理があっけなくって残念です。



赤い罠 (ハヤカワ・ミステリ文庫)赤い罠 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1996/11)
ウォルター モズリイ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ブルー・ドレスの女」ウォルター・モズリイ ハヤカワ文庫

2007-10-23

☆☆☆☆

1948年、ロサンゼルス。失業中の黒人労働者イージーは、家のローンを返済するため、美貌の白人女性ダフネを捜しだす仕事を引き受けた。調査を始めたイージーは、ダフネが出入りしていたもぐり酒場を訪れ、彼女の知人の黒人女性を見つけ出した。が、数日後、その女性が殺され、事件は思わぬ方向へ―アメリカ私立探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞新人賞を受賞し、ミステリ界に旋風を巻き起こした衝撃のデビュー作!内容紹介より



殺人事件の容疑者として不当逮捕され過酷な取り調べを受けた後、ようやく解放された主人公イージーは、酒場へ向かう途中、自分にこう言い聞かせる、「ほんとうは走りたかった。(中略)急ぐんじゃないぞ、と絶えず自分に言い聞かせねばならなかった。夜遅く黒人がむやみに駆けていて、パトロールカーに出くわそうものなら、たちまち逮捕されるのがわかっていたからだ」。白人から黒人への明文化されない暗黙の規制や決めごとを差別される側は絶えず気にしていなければならないなんて…。なんというか、デモクラシーの内にある全体主義みたいなものを感じて息苦しくなりました。

上記のような関係のほかにも、明と暗の対比が描かれています。戦場で戦った経験があり、からんできた白人のグループを殺せるほどの体力と技術を持ちながら、それを使わない暴力嫌いの面があるイージー。彼は身体はタフだが性格は小市民的で堅実、精神面に未熟さを感じさせるところもある。一方、彼の旧友のマウスは、金のためなら平気で人を殺せる。イージーがアマチュアならマウスはプロフェッショナルです。主人公の職業を私立探偵ではなくて機械工にしたのも作者のそういう意図があったからかもしれません。

以下、少しネタばれ気味なので続きに書きます。

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

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