『すったもんだのステファニー』 エヴァン・マーシャル ヴィレッジブックス
2011-09-09
- Category : ☆☆
Tag : エヴァン・マーシャル
ジェーンは、わがままな作家と狡猾な編集者の相手に、毎日へとへと。でももうすぐ久しぶりの休暇!とうきうきしていたところへ突然、亡夫のいとこステファニーから家に泊めて欲しいと連絡がきた。ステファニーは、東洋のグレース・ケリーとも言われた元アナンダ王国王妃フェイスが経営する出版社を手伝いに来たという。勝手気ままで、辛辣なステファニーに振り回されっぱなしのジェーン一家。やがて愛猫ウィンキーにも何やら重大な変化が ― 。ウィンキー&ジェーンのおかしな事件簿、好評第3弾! 内容紹介より
王族や王室といった存在に対してハリウッド・スキャンダル並みの興味を抱くアメリカ人を揶揄したのか、それとも単なるその興味目当てなのか、中国と国境を接する(架空の国)アナンダ王国の元王妃であるフェイスというアメリカ人の女性が登場します。それは良いとして、引っかかるのが彼女の夫でアナンダ王国の国王ラヴィがパレード中に銃撃され暗殺されるシーンが、ケネディ大統領暗殺事件の有名な車中のシーンにそっくりなところです。「フェイスは衝撃のあまりパニックを起こして、座席によじのぼると、その血まみれのものを手でつかんだ……ラヴィの脳みそを」(p348)。「このとき撮られたのが、だれもが見た有名な写真、その後世界じゅうに配信されたあの写真よ」、とステファニーが回想して語るのですが、この意図のよくわからないパクリじみた、趣味がよいとはいえない箇所がちょっと不快でした。その他、ヒロインの潜入調査のいきなり感、作品中でのホームレスの扱いの雑さ、真犯人の犯した殺人の多さと場当たりさ、全体を覆う大雑把加減が気になりました。
『迷子のマーリーン』エヴァン・マーシャル ヴィレッジブックス
『春を待つハンナ』エヴァン・マーシャル ヴィレッジブックス
![]() | すったもんだのステファニー―三毛猫ウィンキー&ジェーン〈3〉 (ヴィレッジブックス) (2006/09) エヴァン・マーシャル 商品詳細を見る |
テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『春を待つハンナ』エヴァン・マーシャル ヴィレッジブックス
2009-08-31
- Category : ☆☆
Tag : エヴァン・マーシャル
前回、愛猫ウィンキーとあざやかに事件を解決し、一躍“ノース・ジャージーのミス・マープル”として有名になった著作権エージェントのジェーン。でも依然として事務所の経営は火の車で頭を抱えていたところ、超人気歌手ゴッデスの代理人をやらないかという耳よりな話が持ちこまれた。いそいそとゴッデスとの初対面に臨んだ場で、なんと仲立ちしてくれた編集者が無惨な姿で発見される。何日か前に開いたひとり息子ニックの誕生日パーティーでは首吊り死体を発見してしまうし、どうしてジェーンの行く先々に死体が?今度もウィンキーの手を借りて、みごと事件解決となるのか?好評シリーズ第二弾。 内容紹介より
前作『迷子のマーリーン』で好ましく感じた主人公の性格、嫌いな人物にたいしても思いやる気持ちみたいなところが今回は見られず、ただのシニカルな心を持つ人間になってしまっていて残念でした。こういう性格の主人公はかなりたくさんの作品で見られますから、何かもっと情緒豊かにしたり感情のひだを描くなり個性の部分で他と差別化したほうがよろしいのではないのかと思います。物語は三毛猫ウィンキーが異常な行動をとったり、真犯人の意外性とかが、一時期のリリアン・J・ブラウンの〈シャム猫ココ・シリーズ〉を彷佛とさせますが、プロットは本書のほうが入り組んでいます。ただ、それが妙に力業みたいに無理矢理っぽくて、論理的でない推理の流れ、説得力のない犯人の行動が目につきました。猫の異常行動が科学的に説明されている点は、ブラウン女史のそれとはまた違った面白さがありました。
![]() | 春を待つハンナ―三毛猫ウィンキー&ジェーン〈2〉 (ヴィレッジブックス) (2005/01) エヴァン マーシャル 商品詳細を見る |
テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『迷子のマーリーン』エヴァン・マーシャル ヴィレッジブックス
2009-08-27
- Category : ☆☆☆
Tag : エヴァン・マーシャル
ニューヨーク郊外で著作権代理事務所を営むジェーンは38歳。2年前に最愛の夫を亡くし、今は9歳になる生意気盛りの息子ニックと、メスの三毛猫ウィンキーと暮らしている。作家たちのわがままと請求書の山だけで毎日てんてこまいなのに、息子のベビーシッター、マーリーンが忽然と姿を消してしまったから、さあ大変。親友の娘であるマーリーンをそのまま放っておけず、ジェーンは彼女の行方を追うが、美しい外見とはかけ離れたマーリーンの意外な素顔と不可解な行動が明かになるにつれ、事態はだんだんあぶない方向に―。かわいいウィンキーとそそっかしいジェーンが大活躍のコージー・ミステリー、第1弾! 内容紹介より
三毛猫ウィンキー&ジェーン・シリーズ一作目。
高橋恭美子さんの訳者あとがきによりますと、この作者は編集者、著作権代理事務所のエージェントの職歴を持ち、小説作法の指南書まで書いているらしく、さすがに読ませる技術を持っていると思います。どこがどうとかはっきり指摘できないのですが(自然描写が少なく、会話が多いところくらいか)、手慣れてスラスラと読めるんですね。失踪したベビーシッターについて、主人公の感情面でのバランスがよく描かれていていると思います。つまり、主人公は元々好意を持ていないでいたその娘が勝手に出て入ったことに、当然最初は憤慨するのですが、感じのよくない娘だからと無関心のまま彼女のことを深く知ろうとしなかった自分も悪かったのだと後悔してしまうのです。近頃のコージー系の女性探偵の多くが負けん気が強く、皮肉屋だったり他人に厳しく自分に甘い傾向があったので、本書の主人公のこういうところは新鮮に感じました。
物語はマーリーン自身を捜すとともに、ほとんどなにも知らなかったマーリーンとは一体どんな娘だったのかを探すものであり、その娘に係わったひとたちの姿を明らかにする話にもなっています。少し強引なラストのどんでん返しはどうでしょうか。これを活かすにはもっと伏線を張っておく必要があったのではないかと、単発の打ち上げ花火みたいないきなり感と突飛さを感じてしまいました。
本好きな者にとって主人公の職業はかなり興味深くかつ魅力的な設定です。
![]() | 迷子のマーリーン―三毛猫ウィンキー&ジェーン〈1〉 (ヴィレッジブックス) (2004/04) エヴァン マーシャル 商品詳細を見る |
テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌