『これ誘拐だよね?』カール・ハイアセン 文春文庫

2016-11-01

☆☆☆

アイドル歌手チェリーはドラッグ漬け。それをマスコミから隠すためチェリーの影武者になった女優の卵,アンが誘拐されてしまった。マネジャーは奪回作戦を起ち上げるが。セレブとパパラッチと誘拐犯、片腕に秘密兵器を仕込む悪党と正義に怪老人が入り乱れる大混戦。最後に笑うのは?世界一のユーモア・ミステリ作家の新作。 内容紹介より



ハイアセンの作品の中でも、奇妙キテレツな人物がそろい踏みといった感じがする本書です。なかでも特にアイドル歌手をつけ狙う、汗臭いデブのパパラッチは存在感がひとしおです。でもハイアセンの作品の常連である元フロリダ州知事スキンクとアイドル歌手の、左手に草刈り機を仕込むボディガードになったケモは、がたいや風体に似ているところや影武者役のアンにたいする感情がやや被っている印象も残りました。スキンクは相変わらず、土地開発業者から見れば環境テロリストのスタイルを維持する安定感を保ったまま、あちらこちらで騒動を巻き起こしています。そして一方、セレブ、そして彼らを取り巻く、あるいは彼らに群がる、家族やプロデューサーを始めとするスタッフたちの金と名声にまつわるもくろみ 、これらが引き起こす痴態醜態、スキャンダルへの一般大衆の異常で貪欲なまでの興味関心を皮肉りつつ、当のセレブたちの真偽ないまぜにした不行状を実名を挙げて俎上に上げるのは、肴にされた彼らにとってはたまったものではないでしょうけど読者には愉快で面白く感じるのでした。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『フラッシュ』 カール・ハイアセン 理論社

2012-01-28

☆☆☆

ここはフロリダ・キーズ諸島。子どもたちは海水浴を楽しみ、ウミガメが産卵に訪れる浜辺がある。伝説では、沖合で“グリーンフラッシュ”と呼ばれる緑の閃光が見られるという。そんな小さな町の夏休みの物語。 カジノ船を沈めて父さんが捕まった。船は、ビーチ近くで汚水を垂れ流しているのだ。父さんの汚名をはらすため、ぼくは作戦を決意した…。おかしくて、ちょっとあったかい。人気ミステリー作家がティーンエイジャーに贈る一冊。 「BOOK」データベースより



直情径行で熟慮に欠け、後先考えない行動をとる“父さん”が江戸っ子気質みたいで、あまり身近では接したくないタイプで、こういう親を持つと子供が苦労するということを如実に示すヤングアダルト向けの物語。この作者が持つ独特のクセが抑えられていて、いつものエキセントリックな人物像が“父さん”と後半に登場する“じいちゃん”に集約された感じがしました。留置場に入れられた父親の代わりに、兄妹ふたりがカジノ船による海洋汚染の証拠をつかもうとするストーリーなのですが、『HOOT』同様に娯楽性の高い子供向けの作品で、分かりやすい形で環境破壊を絡めて読ませることは、自然保護の啓蒙活動としても非常に有意義なことだと思いますし、ハイアセンの姿勢はあらためて立派だと思います。
そして、もう一つのテーマが家族愛なのでしょうけれど、“母さん”のキャラに意外性がなく活躍するシーンも少なくて印象に残らなかったのが物足りないところです。

タグ:
カール・ハイアセン




フラッシュフラッシュ
(2006/04)
カール ハイアセン

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テーマ : YA(ヤング・アダルト)
ジャンル : 本・雑誌

『迷惑なんだけど?』 カール・ハイアセン 文春文庫

2011-10-03

☆☆☆

ふざけんな!息子との夕食を台無しにした迷惑電話にハニーは激怒した。彼女は問題のセールスマン、ボイドを孤島におびき寄せ、根性を叩き直してやることにした。何も知らずボイドは愛人連れで旅立つが、島にはハニーを狙う狂気のストーカーも……。大好評の痛快作『復讐はお好き?』に続く最新作、今回も楽しい読書を保証! 内容紹介より



子供を出産した際に起きた出来事のトラウマから、他人の不行状にたいして異常に敏感になってしまったヒロイン。それが原因で離婚し、息子とふたり暮らし。その大事な息子と夕食をとっている最中にセールス電話がかかってきただけでも迷惑なのに、セールスマンが暴言を吐いたものだから彼女にスイッチが入ってしまった。当のセールスマンを騙して孤島に呼び寄せて説教しようと計画を練るが、その島にはいろんな事情で人が集まって来ていた。
“息子のすこやかな成長と幸せ、ひいては人類の未来のために、このセールスマンのようなろくでなしをひとりずつ改心させていかなければならない”といういささか偏執じみた信念によって、ヒロインは突き動かされているのですが、なにか動機が壮大すぎて逆に弱い印象を与えて説得力に乏しいような、ドタバタ具合もあまりエスカレートしなくて不満が残るし、ストーカー爺さんの前振りのないストーキングぶりはいきなり感があるし、主人公のキャラが単純だしで、すべてに不完全燃焼でした。こういうのをテーマにするならば映画『シリアル・ママ』のような極地くらいまでぶっ飛んだものを読みたいです。ハイアセンの言いたいことが伝わりにくかったような。幽霊あるいは幻影が出てきて愚痴をこぼす場面は面白かったです。

『大魚の一撃』カール・ハイアセン 扶桑社ミステリー
『復讐はお好き?』カール・ハイアセン 文春文庫




迷惑なんだけど? (文春文庫)迷惑なんだけど? (文春文庫)
(2009/07/10)
カール・ハイアセン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺し屋の厄日』クリストファー・ブルックマイア ヴィレッジブックス

2009-03-31

☆☆

「くそっ。なんだ、こりゃ?」― マグレガー警部は長い警官人生でも初めてくらいひどい殺人現場に遭遇してしまった。部屋の中はそりゃもうありえないほどグチャグチャ……。なぜこんな現場になったのか?それは腕利きの殺し屋がツイてなかったせだった。そこへ闖入してしまったのが、もっと運の悪い新聞記者パーラベイン。なんだか気になるこの事件、とことん調べてやろうと意気込んだまではよかったが、ツキのない連中の連鎖は果てしなく続き、信じられない陰謀にまで発展してゆく気配がしてきて ―。イギリスならではのユーモアと奇抜さがたっぷり詰まった、注目作家のミステリー! 内容紹介より



巻末において杉江松恋氏がカール・ハイアセンと絡めて解説されていますが、たしかにハイアセン・テイストが強いですね。殺人者に降りかかる様々な厄災がグロ面白いです。全編をこのスプラッタ・コメディで貫けば勢いがあって、逆に爽快感を得られたのでしょうが、作者の誤りは、まるでロマンス作家が書いたかのような陳腐な主人公の恋愛話を挿入したことです。この捻りも何もまったくない男女の惹かれ合う話がスプラッタの要素とはまるで水と油。また、悪役たちの壊れっぷりに比べて、ヒーローの何でも出来ますぶりとヒロインの真面目さぶりがつまりません。バランスをとる意図でもあったのでしょうか。ここはやはり主人公たちも壊れたキャラクターか奇人変人とかに設定しとかないと。こういう話を読む時は、読者も血や肉片やゲロを少々浴びるくらいの勢いを期待するものですが、暴走しようにも変なシールドやブレーキがかかってしまっている感じがして、今一つ乗り切れませんでした。主人公ふたりが交わす「医者の世界」についての長話も無駄な印象です。これだったらハイアセンを読んでおけばいいでしょう。


殺し屋の厄日 (ヴィレッジブックス F フ 3-2)殺し屋の厄日 (ヴィレッジブックス F フ 3-2)
(2007/04)
クリストファー・ブルックマイア

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『復讐はお好き?』カール・ハイアセン 文春文庫

2008-10-26

☆☆☆

あの男、許さない! ― 結婚記念旅行の途上、夜の海に突き落とされた女、ジョーイ。九死に一生を得た彼女は、元捜査官のミックと手を組み、自分を殺そうとした夫への復讐を決意した。自分は死んだと思わせて、徹底的に意地悪な仕返しをしてやる! 痛快軽快な傑作サスペンス。さくっと胸のすく物語をお探しなら是非どうぞ。 内容紹介より



ネタばれ気味です。ご注意下さい!


ハイアセンの作品にはストーリー、登場人物ともにかなりクセがあって、あまりわたしの好みではなかったりするのですが、ひさびさに読んでみるとそこが少し洗練されたかなと意外に感じました。クセが薄らいだら、それはそれでなんだかもの足りないような気もします。それでもこの夫婦どちらともに好きなキャラクターの描き方じゃありませんけどね。

ストーリーもプロットもものすごく単純で、こんなテーマでこれだけの長さの作品(p547)にしたことを誉めるべきなのか、それとも、このテーマでこれだけの長さではやはり無理があると貶すべきなのか。まあ、わたしとしては後者なのですけど。言われるほどの出来じゃない。長すぎて緊張感が持続しなくて飽きるし、付帯する恋愛話が月並みなのと復讐する側へ危険が及ばないなど捻りがありません。そもそも女房を殺そうとする動機があれだけというのは。総じて、彼の特徴とするところが、わたしには短所に見えるのでしょう。ただ、これまでの作品に一貫して開発などによる自然環境破壊をモチーフに据えているところをみると、著者のこのようなストレートな作風が理解できる気もしますね。


復讐はお好き? (文春文庫 ハ 24-2)復讐はお好き? (文春文庫 ハ 24-2)
(2007/06)
カール・ハイアセン

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テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

「大魚の一撃」カール・ハイアセン 扶桑社ミステリー

2005-08-20

☆☆☆☆

新聞社の元カメラマンで現在私立探偵のデッカーは、高額賞金付きバス釣りトーナメント
の不正を調査し証拠写真を撮るように依頼される。先に調査を行っていた男は殺されていた。地元にいる新聞社時代の友人ピクニーに協力してもらい調査を開始するうちにスキンクという奇人ガイドに出会う。やがてピクニーも殺害され、デッカーも銃撃される。

よくできたエンターテインメント。長いけどテンポが良いため全然だれない。
しかし、物語ものがたりしているのはどうなのか、と感じる人もいるかも。
ハイアセンの作品はこれを含めて2冊しか読んだことがない。
アメリカほら話の流れを汲んでいるのか、「HOOT」にも言えることだけど
独特の読後感が残る。

作者には悪質開発業者による自然環境破壊がテーマにあるみたい。かといってシリアスではない。結構軽いノリだったりする。「HOOT」の場合はアナホリフクロウの巣がある場所を守ろうとする風変わりな少年の物語だった。
この作品では開発から自然を守れなかった変わり者スキンクが登場している。このスキンクが主人公より存在感があって、森の中の小屋に隠遁し、道路で車に轢かれた動物を拾って食べてたりする。
他にもかなりいっちゃってる個性的な登場人物たちが入り乱れる。

テーマ : 読んだ本の紹介
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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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