『少女探偵の肖像』スーザン・カンデル 創元推理文庫

2010-08-02

☆☆

ミステリ作家の伝記専門ライターにしてヴィンテージファッション・マニアのシシーは、現在、少女探偵ナンシー・ドルーの作者、キャロリン・キーン(=ストラテマイヤー工房)伝を執筆中だ。そんな彼女にナンシー・ドルーの初版本コレクションとともに、表紙画モデルの秘密めいた肖像画を見せてくれた美術品蒐集家が死体となって発見された!謎に肖像画に秘められた物語とは? 内容紹介より



アメリカにおいて女性作家が描く女探偵、特にコージー系の素人探偵のプロトタイプのひとつは〈少女探偵ナンシー・ドルー〉にあるのではないかと思いはじめていたところですが、本書のヒロインもそのひとりなのではないでしょうか。屋根裏部屋に入らずんば真犯人を得ずみたいに、往々にしてこれらの亜量の探偵たちは熟慮より行動を貴ぶ傾向にあって、これはナンシー・ドルーの探偵術の間違った拡大解釈に基づいているのです、きっと。四十歳代前後の女性が十八歳の小娘と同じ行動を取っても、それは無分別というものです。そして、軽ハードボイルドものの主人公たちにたいしても何度も言ってきましたけれど、機知に富むという名の饒舌は、作者が面白がり自己満足に浸るほど読み手をイライラさせ、この作品ではヒロインの軽佻浮薄なイメージをさらに強めただけでした。
興味深かったところは“キャロリン・キーン”についての裏話のみ。

『E・S・ガードナーへの手紙』

『古時計の秘密』キャロリン・キーン 創元推理文庫
『幽霊屋敷の謎』キャロリン・キーン 創元推理文庫
『ライラック・ホテルの怪事件』キャロリン・キーン 創元推理文庫




少女探偵の肖像 (創元推理文庫)少女探偵の肖像 (創元推理文庫)
(2009/07/30)
スーザン・カンデル

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ライラック・ホテルの怪事件』キャロリン・キーン 創元推理文庫

2010-03-17

☆☆☆

友人がオープンする〈ライラック・ホテル〉に招待された、ナンシーとヘレン。ところがホテルでは不気味な出来事が頻発。幽霊はでるし、ナンシーたちの泊まっているコテージは放火される。一方、ナンシーの留守宅に泥棒がはいり、さらにはナンシーの偽物が出没、勝手に買い物までしているらしい。いったいなにが起きているのか。犯人の目的は?大好評、少女探偵シリーズ第四弾。 内容紹介より



今回、カーチェイス(みたいなもの)、ダイビング、爆発、ある大道具など、なんだか冒険活劇みたいに派手な展開が続き、今までの探偵ごっこから007シリーズもどきな作風に変わってしまっていました。これがTVドラマのシリーズものだったら予算が増えたのかと想像してしまうところです。それから一人前にレッドヘリングも用意されており、このシリーズにしては複雑なプロットになっています。しかし、犯人の動機があまりに単純すぎて、ポッカーンみたいな。そして、相変わらず十八歳の少女にかける大人たちの期待感が半端ではなく・・・。良いのかそれで、と突っ込みたくなりました。
主人公が他人から無礼なもの言いをされたり、不躾な態度をとられたりして憤慨しても、育ちの良い娘らしく決して表情に出さない様子を何度も描いているのは、読者の大多数であろう女の子たちへの一種の啓蒙なのでしょうね。

『古時計の秘密』キャロリン・キーン 創元推理文庫
『幽霊屋敷の謎』キャロリン・キーン 創元推理文庫




ライラック・ホテルの怪事件―ナンシー・ドルーミステリ〈4〉 (創元推理文庫)ライラック・ホテルの怪事件―ナンシー・ドルーミステリ〈4〉 (創元推理文庫)
(2008/11)
キャロリン キーン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『幽霊屋敷の謎』キャロリン・キーン 創元推理文庫

2009-09-12

☆☆☆

友人の依頼で、幽霊屋敷の調査に乗り出すことになったナンシー。屋敷では二週間ほど前から奇妙な現象が続けて起きている上、盗難まであったという。さっそく現地で調査を始めるが、“幽霊”の正体はいっこうにつかめない。一方、鉄橋建設のために鉄道会社側の弁護士を務める父の身に、魔の手が迫る……。正義感が強く行動力抜群の少女探偵ナンシーが活躍する、シリーズ第二弾。 内容紹介より



このシリーズは小学生高学年くらいの女の子の海外ミステリ入門書として最適でしょう。主人公の年齢は18歳ですが、約八十年前から書き始められているシリーズですから、現代の18歳と聞いて浮かんでくるイメージよりずっと幼い感じがします。だから、きっと小学生が読んでも感情移入しやすいと思います。これは第一作目を読んだ時にも書いたことなんですけど、それでは普段、ミステリ作品の世界のなかで屍肉を貪り鮮血を啜っている大人の読者にはどうかというと、そういうミステリ作品に胸焼けをおこした時の清涼剤の効果があります。あるいは箸休めとかの。死体も暴力も出てこないし、下品な言葉を吐く人もいないし、警察官は紳士で協力的だし、なんと昔のアメリカは平和だったのでしょうか。そして現在のその変わり様ときたら、など感慨にふけってみるのもまた一興かなと。それはともかく、このシリーズを読んだ子供たちが海外ミステリファンになってくれたらと思いますね。

シリーズ第一作目
『古時計の秘密』




幽霊屋敷の謎―ナンシー・ドルーミステリ〈2〉 (創元推理文庫)幽霊屋敷の謎―ナンシー・ドルーミステリ〈2〉 (創元推理文庫)
(2007/12)
キャロリン・キーン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『古時計の秘密』キャロリン・キーン 創元推理文庫

2009-05-05

☆☆☆

ナンシー・ドルー18歳、金持ちの老人の遺産を、強欲な親戚一家がむりやり独り占めし、これまで老人から援助の手を差し伸べてもらっていた人々が困っているらしい。みんなに遺産がいきわたるようにすべく、ナンシーは遺言書捜しに奔走する。正義感が強く好奇心旺盛なナンシーが、大人顔負けの活躍で事件を解決する、長年にわたり人々に愛されてきたシリーズの、記念すべき第一作! 内容紹介より



シリアルキラー、変質者、テロリスト、ギャングと戦い、毒薬を嗅ぎ付け、銃弾を避け、ナイフの切っ先をかわし、出くわした死体の数も半端じゃない、麻薬中毒者を更生させ、負傷者を病院へ運ぶ、検事や弁護士との法廷闘争、そんな緊張した日々を送るあなたが悪との戦いに疲れてちょっと息抜きをしたい時に読ませたい本。あなたの明晰な灰色の脳細胞を働かせる必要はありません。もちろんジェットコースターみたいなスリル、サスペンスはありませんが、ティーカップやメリーゴーラウンドの安心感と心地よさは感じられます。たまにはこういう作品も良いでしょう。ただ、現代の18歳の女性のイメージと1930年代の18歳のそれとのギャップに違和感があるのとミギー氏のカバーイラストが男のわたしにはちょっと恥ずかしいです。



古時計の秘密 (創元推理文庫)古時計の秘密 (創元推理文庫)
(2007/11)
キャロリン キーン

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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