『暗闇の薔薇』クリスチアナ・ブランド 創元推理文庫

2009-06-02

☆☆☆☆

『スペイン階段』のリヴァイヴァル上映を観た帰り道、サリーは一台の車があとをつけてくるのに気がついた。いったんは無事やりすごせたかに思えたが、折りからの嵐に巨木が倒れ、行く手をふさいでしまう。あせった彼女は、倒木のむこう側でおなじ憂き目にあっていた未知の男性と車を交換、それぞれの目的地をめざすが……。英国の重鎮が華麗に描く、巧緻にして型破りの本格傑作。 内容紹介より



晩年の作品ということで、ミステリへの信念と情熱は保ちながら筆致は良い具合に力が抜けている感じがしました。嵐の中、見知らぬ人物と車の交換、そして死体の発見と冒頭から惹き込まれます。アクロバティックな展開が多い他の作品に較べて、読み始めはなにか作風が変化したような、主人公を含む〈八人の親友〉が協力し合って事件の謎を解いていく(ただし、このなかに犯人がいると作者が巻頭に記しています)のかと思わせますが、徐々に登場人物たちのエキセントリックさが目立ち始め、心理サスペンスの様相を呈してきます。特にヒロインのイメージの変化、嫌な面を少しずつ見せていくタッチ、彼女のせいで仲良しグループが少しづつ崩壊してゆく様子、彼女の恋人になる医師の微妙な俗物感の表出など作者の描写力の上手さが光ります。ブランドのミステリの技法はカードゲームの神経衰弱のようで面白いけれど、ややもすると捻り過ぎて読後疲れを感じる傾向がありますが、本書はその点では若干もの足りなさを覚えるものの読み易い作品と言えると思います。

クリスチアナ・ブランドの他作品
『疑惑の霧』
『ハイヒールの死』




暗闇の薔薇 (創元推理文庫)暗闇の薔薇 (創元推理文庫)
(1994/07)
クリスチアナ ブランド

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「疑惑の霧」クリスチアナ・ブランド ハヤカワ文庫

2007-07-08

☆☆☆

霧のロンドンに疑惑の渦を巻き起こしたフランス人の色男ラウールの撲殺事件。犯人はラウールの元恋人マチルダか、彼女の夫で妹ロウジーが誘惑されたと恨むエヴァンス医師か、ロウジーを愛するテッドワード医師か。事件を追うチャールズワース警部はエヴァンスに狙いを定めるが、ロウジーに助けを求められたコックリル警部の疑う相手は別にいた……推理対決を制するのはどちらの名探偵か?驚愕のラストに疾走する本格傑作。
内容紹介より



原始の栄養スープのようなブランド海を泳ぎきるのはとても疲れる。

ブランド先生の本を読むと脳みそが疲れます。くるくる変わるあいまいな視点と微妙な長さのセンテンス(訳の問題もあるかも)、それと誰もが犯人の可能性がありながら誰も犯人ではないかのようなプロットのせいかもしれません。

作品の前半部分で、望まない妊娠をしたロウジーが、祖母、義姉、兄の友人、男友達、兄の秘書に助力を求めて一人ずつ相談していく場面あります。これがそれぞれの人物像や人間関係を読者に分かりやすく説明していてうまいなと思いました。登場人物の紹介はだらだらと単調になりがちな場合が多いので。そして、この場面が人物紹介だけにとどまらず、後に重要な意味を持たせているところも見事だと思います。ラストの終わり方はブランド先生の作品にしては異色のような気がしました。ただ、中盤と後半に少々ダレる部分があって残念です。

『ハイヒールの死』


疑惑の霧 (ハヤカワ・ミステリ文庫)疑惑の霧 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2004/05/25)
クリスチアナ・ブランド

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

「ハイヒールの死」クリスチアナ・ブランド ハヤカワ文庫

2006-03-28

☆☆☆

新しい支店を誰が任されるか老舗ブティックは噂で持ちきりだ。筆頭候補は仕入部主任で才色兼備のミス・ドゥーンだが、実際に選ばれたのはオーナーの美人秘書。店員間では冗談まじりに秘書毒殺計画が囁かれたが、その直後、ミス・ドゥーンが毒殺された。
この事件の担当になったのは美女に滅法弱いハンサムなチャールズワース警部。
冷酷な毒殺犯は美女揃いのブティック内にいる?!女流本格の第一人者の記念すべきビュー作                    裏表紙あらすじより



真犯人と目される人物がニ転三転するところなど、デビュー作ながら後のブランド女史のスタイルというかストーリー・パターンがすでに見られる作品です。
店内に容疑者が十人もいて、その内八人が女性で、雑用係を除いて皆同じような年齢層、職種なので非常に紛らわしい。キャラクターの書き分けがあまり成功していないので登場人物を区別するのに時間がかかりました。
海外ミステリが苦手な人は登場人物の名前で混乱することが多いみたいなので、この作品はくれぐれも手に取らないように致しましょう。

惚れっぽくお坊っちゃんのチャールズワース警部がユーモラスなのは良いのだけれど、頼りないぶん作品全体に締まりがない印象を受けました。
それから、何故、題名が『DEATH IN HIGH HEELS』なのかが分かりません。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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