『ノンストップ!』サイモン・カーニック 文春文庫

2011-05-06

☆☆☆☆

電話の向こうで親友が殺された。死に際に僕の住所を殺人者に告げて。その瞬間から僕は謎の集団に追われはじめた。逃げろ!だが妻はオフィスに血痕を残して消え、警察は無実の殺人で僕を追う。走れ、逃げろ、妻子を救え!平凡な営業マンの決死の疾走24時間。イギリスで売上40万部、サスペンス史上最速の体感速度を体験せよ。 内容紹介より



一般的に、ミステリの内容紹介文は大げさに書いてあるものですが、本書の「サスペンス史上最速の体感速度」の文に偽りはなくて、読書スピードが半端なく速い速い。びっくりしたので☆4つです。ただし、量産型のスポーツカーが、スピードのために、いろいろな物を省き軽量化するとともに、大量生産のためには単純で汎用性のある部品を用いなければいけないように、本書は心理描写、情景描写、背景描写などのもろもろの面倒くさいものを極力省き、文章と主人公の性格を非常に薄く軽くし、彼の妻の秘密や殺し屋の造形、警部補の過去を類型化して取り入れることによって、チープな分かりやすさと体感速度を得ることに成功しています。また、空力特性を向上させるため、前二作品に見られた灰汁みたいなクセを取り払って、広く大衆受けする形にしていると思いました。個人的にはあまり感心しませんけれど、本国で40万部も売れたのなら、とりあえずカーニックはエンタメを突き詰めたこの路線を進むのでしょう。
ちなみに、『覗く銃口』で登場したギャラン刑事の消息が出てくるので、『覗く銃口』をお持ちの方は先に読んでおかれたほうが良いかもしれません。

『殺す警官』サイモン・カーニック 新潮文庫
『覗く銃口』サイモン・カーニック 新潮文庫




ノンストップ! (文春文庫)ノンストップ! (文春文庫)
(2010/06/10)
サイモン・カーニック

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『覗く銃口』サイモン・カーニック 新潮文庫

2010-02-27

☆☆☆☆

元傭兵のボディガード、マックスは天を呪った。現場に響く突然の銃声、転がる死体。わけもわからぬまま、彼は追われる身となった。一方、冴えない刑事ギャランは、ロンドン中にもつれた凶悪事件の糸を追っていた ― 。窮地の果てに反撃を試みるマックスと、ギャランの軌跡が交わったとき、現れた絶望の銃口とは?緻密かつ超ハイスピードで展開する裏切りの連鎖、絶品のクライム小説! 内容紹介より



ちょっと大袈裟に言えば、ストーリーも登場人物も、チェーンソーを使って丸太に彫刻を削り出したみたいな荒さを感じますけど、クライムノベルみたいなものはこれくらい荒削りなほうが雰囲気が出ててよろしいかもしれません。前作の『殺す警官』みたいに主人公が警察官でありながら殺し屋でもあるというギャップを背負って、心の葛藤なんたらがないぶん、今回の主人公の金と女と復讐という動機は単純で大変分かりやすいし、面白かったです。
それでも、「裏切りの連鎖」なんて書かれていると、誰と誰が裏切るのだろうと想像してしまい、だいたい見当を付けた人物がそのとおりで、ああ、やっぱりってなってしまうから内容紹介にはそういうことを書くのはやめて欲しいとかも思いますね。こういうこと書くと、なんだかすれっからしの読者になったみたいですけれど。

『殺す警官』サイモン・カーニック 新潮文庫




覗く銃口 (新潮文庫)覗く銃口 (新潮文庫)
(2005/09)
サイモン・カーニック

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺す警官』サイモン・カーニック 新潮文庫

2009-08-04

☆☆☆

副業で殺しを請け負う敏腕刑事デニス。とはいっても、標的は悪人だけだ。今回の依頼では3人の麻薬ディーラーを射殺した。ところが、翌朝の報道で被害者が罪もない一般人だったと知る。やがて自分に酷似した犯人のモンタージュ写真が新聞に載り、そもそも依頼が罠だったのではと疑うが……。極悪にして正義漢というアンチヒーロー登場! 緻密に構成された、殺人級のデビュー作。 内容紹介より



ピカレスク系のハードボイルドが好きなひとは気にいるかもしれませんが、英国ミステリに上品なユーモアと正統的本格さを求めるわたしのようなものにはあまりタイプじゃないです。アメリカ産のハードボイルドで読めるものを別にイギリスの作家で読まなくてもいいやみたいな。ポケットから銃を取り出そうとして布に引っかかってしまったり、引き金の不具合で撃てなかったり、照準が狂っていたりと、この主人公、殺し屋にしてはかなり鈍臭いのは現実的な描き方をしていると言っていいでしょうし、少女たちに示す感情も人間らしいものがあります。しかし、この物語の主題である、進んで人を殺すという彼の人格を描写するうえで何か足りてない感じがします。人物像が定まらないというか、核となるものがないような印象を受けるんですよね。たとえ犯罪者といえども金を貰って彼らを殺すという行為へ至る心情的な説明付けが、彼らが法の目をくぐって司法の手から逃れているからなどと月並みなことでは読む者に迫ってきません。それは狂気から来るものでもいいし、ほのめかす程度でもいいから強く印象を与える理由があればと思いました。



殺す警官 (新潮文庫)殺す警官 (新潮文庫)
(2003/08)
サイモン カーニック

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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