『海賊岬の死体』ジェフ・アボット ハヤカワ文庫

2009-11-04

☆☆☆☆

Tシャツ、チノパン、サンダル姿のお気楽判事モーズリー。恋人もできて順風満帆だったが、その矢先、彼女のおじが殺されてしまった。そのおじが所有する土地に、海賊の秘宝が埋まっているという魅惑的な噂があったのだが……。頭のきれるトレジャー・ハンター、狂信的な海賊フリーク、考えのない絶倫男。ひとくせもふたくせもある人間たちが、熾烈なお宝争奪戦を繰り広げる。海賊たちも仰天の奇想天外な騙し合いの行方は? 内容紹介より



モーズリー判事・シリーズ三作品のなかで一番面白かったです。
主人公たちが殺人事件の調査を行っている場面に、警官とその友人が乗ったヨットが何者かにシージャックされる場面が挟み込まれていて、だれることなく非常にさくさく読めました。ミステリ小説のなかで関係者に聞き込みをしてまわる部分が長々と続くとかなり退屈してしまうものですが、そこに現在進行形の事件を挿入することで読者の興味を結果的に高める効果がでてます。ストーリーのなかの静と動といいますか、強弱のアクセントが付いています。しかし、後半、グーチが事件に係わりだしてから人物と出来事が錯綜し始めてリズムが乱れました。
それから、この主人公のお気楽ぶりというかモラトリアム人間さはもっと強調して描いても良いのではないでしょうか。作者が徐々に成長させていくつもりなのかもしれないけれど、若くて善い人だからどうしても印象がぼんやりしてる感じにとれるんですよね。
海賊にまつわる宝物の話は平凡過ぎて興味を惹かれませんでした。

『さよならの接吻』ジェフ・アボット ハヤカワ文庫
『逃げる悪女』ジェフ・アボット ハヤカワ文庫




海賊岬の死体 -モーズリー判事シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)海賊岬の死体 -モーズリー判事シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2004/07/08)
ジェフ・アボット

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『逃げる悪女』ジェフ・アボット ハヤカワ文庫

2009-09-18

☆☆☆

お気楽判事モーズリーは燃えていた。何年も前に自分を捨てた母を見つけたい!あの手この手で行方を追い、ついに見つけたのはいいけれど、母はギャングになっていた!しかも麻薬取引の金を組織から盗んで逃走中。さらに金を狙い、シェイクスピア・マニア、自己啓発マニア、オタクなストリッパーなど変な奴らが跡を追う。逃げる母親、追う判事。銃弾飛び交う街中を母を求めてモーズリーがゆく。ハイテンション逃亡小説 内容紹介より



ややネタバレしています!ご注意下さい。

シリーズ三作目。
コカインの取引で勢力を盛り返したいギャングの若きボス、コカインを餌に大金を狙うフロリダの麻薬組織、そして、もうひとつの勢力。これらが三つ巴になって騙し合い、殺し合う渦中に巻き込まれた母親を捜す主人公モーズリー判事。今回は主人公の管轄外の街で起きた抗争にかかわり合いになってしまった話なので、ミステリよりクライム・ノベル風な雰囲気で話が展開していきます。拉致され監禁されるエピソードが二回も挿入されるところとか、やや後半にかけての流れが長くてくどいような気がしました。それから、もうひとつの勢力のカードゲームにおけるジョーカーみたいな存在*がちょっと都合が良すぎて、ギャングと麻薬組織の二大勢力のガチバトルを想像していたら横からかっさらって行って(殺し回って)肩透かしを食らったみたいな。彼らの殺しを決行する場所とタイミングがどうも説明不足に感じました。
全体的にもっと短くしたほうが疾走感というか硝煙のなかを駆け抜ける感じが出て来て良かったのではないかと思いました。

*彼らは、モーズリーも含めて家族愛というテーマに括られているのかもしれませんが、ほとんどそれについての言及はなくて復讐というテーマがより目立っています。

『さよならの接吻』ジェフ・アボット ハヤカワ文庫




逃げる悪女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)逃げる悪女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/01)
ジェフ アボット

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「殺しのグレイテスト・ヒッツ」ロバート・J・ランディージ 編 ハヤカワ文庫

2008-08-11

☆☆☆

【ころしや 殺し屋】主に金銭の報酬と引き換えに、他人の生命を奪うことを職業としている人—ミステリの世界では欠かすことの出来ない存在である殺し屋だが、彼ら彼女らが主役となることは滅多にない。いつの世にも殺し屋たちは脇役であり、敵役だった。だが本書では、殺し屋たちはその立場に甘んじてはいない。ここでは殺し屋が堂々の主役なのだ! アンソロジーの名手がオールスターキャストで送る、殺しの旋律15篇! 内容紹介より



ヘミングウェイでさえ「殺し屋」という作品を書いているくらいだから、ミステリに登場する機会は多いけれど、殺し屋が主役になっている作品はたしかに少ないですね。本書にも収録されているローレンス・ブロックの〈ケラー・シリーズ〉、フォーサイス『ジャッカルの日』、ノエル『長く孤独な狙撃』、ヒギンズ『死にゆく者への祈り』、イーヴリン・スミスの〈ミス・メルヴィル・シリーズ〉、ざっと思い付くのはこれくらい。本書の収録作品には頭抜けたものはないけれど、さすがにどれもレベルが高いと思います。タイトル『GREATEST HITS』の”Hits"を命中とかhit manに掛けたのはややオヤジギャグぽいです。

『殺し屋』に収録されている「ケラーのカルマ」
ケラーが犬を飼い始め、仕事で出張するためにペットシッターを雇ったころの話。あまり描かれない殺し屋の普通な日常とスリリングな仕事との対比が異様な雰囲気をかもし出す。

「隠れた条件」ジェイムズ・W・ホール
格安の値段のお得な殺し屋。でも殺すべき理由に納得がいかないと仕事はしないよ。殺し屋の職域を超えてます。孫ガキがギャーギャー騒ぎまわる住居環境と部屋の壁についた血や骨片。生活感ありすぎ。

「クォリーの運」マックス・アラン・コリンズ
リタイヤした殺し屋の回想。結局、懐古するところはそこなのかと突っ込みたい。

「怒りの帰郷」エド・ゴーマン
別れた息子の葬式に帰ってきた殺し屋の話。ウェット&クール。

「ミスディレクション」バーバラ・セラネラ
なかなか見られない女殺し屋の話。このトリックはありえない。

「スノウ、スノウ、スノウ」ジョン・ハーヴェイ
長編の冒頭を切り取ったみたいな作品。続きが読みたいものです。しかし、どうして強盗の犯行に見せかけないのでしょうね。

「おれの魂に」ロバート・J・ランディージ
雇い主から姿を消した元殺し屋と元警官の友情がなかなか良いです。腕の良い職人はどこも手放したくない。

「カルマはドグマを撃つ」ジェフ・アボット
ジョニーはドッグを轢く、マシーニはエームズを雇う、殺し屋は標的の意外な正体を知る。

「最高に秀逸な計略」リー・チャイルド
こんな小賢しいことをしていたら仕事の依頼が来なくなりそうですけど。

「ドクター・サリヴァンの図書室」クリスティーン・マシューズ
クレージーユーモア系でユニークな作品。このような作風は貴重だし、好みです。

「回顧展」ケヴィン・ウィグノール
一転してしみじみ系。ちょっと簡単に納得し過ぎる気もしますが。

「仕事に適った道具」マーカス・ペレグリマス
バイオレンス系。山口さんや住吉さんそれから稲川さん、適材適所という言葉を組長さんに教えるときはこれをテキストに使いましょう。

「売出中」ジェニー・サイラー
男女の違いと言いますか、考え思い込み過ぎる男と合理的現実的な女。要するにやるかやられるかというのをいまいち男というのは分かっていない。頭では分かっているけど。

「契約完了」ポール・ギーヨ
アイデアが変わっていてプロットも良くできている。

「章と節」ジェフリー・ディーヴァー
いかにもディーヴァ—らしい。このひと、こんなことばかり考えて頭疲れないんだろうか。長編むきな作家ですよね。




殺しのグレイテスト・ヒッツ―アメリカ探偵作家クラブ賞受賞 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 332-1))殺しのグレイテスト・ヒッツ―アメリカ探偵作家クラブ賞受賞 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 332-1))
(2007/01)
エド・ゴーマンロバート・J.ランディージ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「さよならの接吻」ジェフ・アボット ハヤカワ文庫

2008-07-05

Tag : ジェフ・アボット

☆☆

犯罪のない町ポートレオでは、判事の仕事も気楽なもの。だから最近までアルバイトを転々としていた青年モーズリーが判事になっても、なんの問題もなかった。でも男の惨殺死体が発見され、状況は一変。しかも男が上院議員の息子でアダルト・ビデオ男優だったとわかり、大スキャンダルに発展する。満を持してモーズリーが難事件を解決に導く……か? 型破りなほどフレンドリーな判事が活躍する、話題の新シリーズ第一作。 内容紹介より



図書館長シリーズはそうでもなかったのに、これは無駄に長くて、途中でどうでもよくなりました。最後まで読めば、明らかになる真相はなかなか上手くできていることがわかるのですが、そこに至るまでの進行がダレダレでめげます。自殺か他殺かひっぱりすぎ、読者にはご丁寧に内容紹介で「惨殺死体」と知らされていて、他殺なのは分かってしまっているのですから登場人物にも早く分からせろよと言いたい。カットバック手法にシリアルキラーの視点を挿入する工夫はしていますが…。元アルバイト青年の判事の設定は物珍しさがありますし、大岡裁きみたいな判決は面白いと思います。しかし、その他大勢に魅力がないような、余計な存在のようなのが多い気がします。魅力的なのはグーチくらいですが、この謎の助っ人の存在も取って付けたような都合の良さを感じます。
こういうコージー系ミステリにはとくに脇役の描き方が重要ですよね。

amazonで本書に付いている“モースリー博士の事件メモ”というサブタイトルはいったいどこからきたのだろう?モーズリー判事の事件メモならわかるけど。



さよならの接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 モースリー博士の事件メモ)さよならの接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 モースリー博士の事件メモ)
(2004/03/24)
ジェフ・アボット

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テーマ : 推理小説・ミステリー
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