『ベルの死』ジョルジュ・シムノン ハヤカワ・ミステリ

2016-11-22

☆☆☆

美しいベルを殺したのはだれか?すくなくともスペンサーではなかった。昨夜,ベルが映画から帰ってきて挨拶しに顔を見せたとき、彼は趣味の轆轤まわしに夢中になっていた。ベルの顔は思いなしか悲し気に蒼ざめていたような気もするが、元来彼女はこの家の家族ではなかったので、大して気にもとめず、再び仕事に没頭していったのだ。スペンサーではなかった……。が,警察も医師も妻さえもが彼を疑っていた。証拠も彼にとって不利だった。ベルをごく普通の若い娘だと思っていたスペンサーは知らなかったが、ベルには何人もの男友達がおり、しかも殺された晩にはしたたかに酒を飲んでいたという。スペンサーにはびっくりすることばかりだった。そして、とんできたベルの母親の言葉。「穢したいという欲望さ……」次第にスペンサーの内に、ある考えが頭をもたげてきた。現代人の心の底に隠された自分にさえ見定められない秘密。ベルという一少女の死をきっかけに、一人の中年男の心の謎がときあかされていくさまを鮮やかに描く。 内容紹介より



知人から預かっていた娘が自宅で殺害された事件を契機に、平凡な教師が辿る心の揺れを克明に描いたサスペンスで、普通の謎解き小説ではありませんでした。主人公の思考は犯人は誰なのか、ということより彼自身の胸中へと向かっていきます。それは努めて目をそらしていた心の奥底の己自身を否応なく見据えること、彼が若い頃に、酒で身を持ち崩して自殺した父親の記憶とその同じ道を辿るのではないかという恐れ、それと相反する酒場に惹かれる気持ち。妻を母親の姿と重ねているのではないかという思いと、妻と違った女性への憧憬。彼が考えていた至って普通の娘と思っていたのとはまったく違っていたベルの知られざる姿がそういう想いに拍車をかける。そして主人公へ疑惑の目を向ける捜査関係者や知人たち。モノローグを主体にした心理描写が多いのと派手な展開に至らない地味なストーリーですけれど、刻々と迫ってくるような緊迫感と落としどころの見えない不安感があります。

ユーザータグ:ジョルジュ・シムノン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『モンマルトルのメグレ』ジョルジュ・シムノン 河出文庫

2014-01-27

☆☆☆☆

酔っぱらって警察に現われた踊り子アルレットがしゃべったことは出たらめではなかった―彼女は自宅で絞殺死体となって発見され、彼女が殺されると予告した伯爵夫人も、同じ手口で……。彼女が口にしたオスカルとは何ものか。アルレット-オスカル-伯爵夫人を結ぶ線は?モンマルトルを舞台に、司法警察の捜査網は謎の男オスカルをしだいに追い詰めていく……。 内容紹介より



働いている店で偶然、客同士が話している犯罪計画を耳にしたと、ひとりの踊り子が警察署に訪ねてくる。オスカルという男がある伯爵夫人の宝石を狙っているのだという。供述はとったものの、酔いが覚めると彼女はあやふやな態度に変わってしまう。しかし、その後、彼女は自宅で殺され、さらに供述通りの殺人事件が起きたことが分かる。ストーリー展開が少々異質なのは、オスカルなる犯罪者を捜す話とは別に、端役だと思っていた踊り子に焦点が当てられている点で、偽の身分証と偽名を使い、男に求められれば身体を許しながら、心は開かず秘密を持ち、若いのにもかかわらず人生を諦観している雰囲気を醸しだしている。彼女の本来の姿が徐々に明らかになっていく話が本書の核になっていると思います。しかし、すべてを明らかにするのではなく、彼女と殺人者の関係など謎のままに終わるところは、これくらいのページ数であるメグレ警視・シリーズらしい巧い絶ち方だなと感じました。バーで待機するメグレのもとへ、犯人を捜す刑事たちから次々と電話連絡がある場面は相変わらず臨場感に満ちています。
読み終わった後、記録を見たら、約七年前に本書をすでに読んでいたことが判明しました。それなのにまったく気付かず、初読だとばっかり思っていたことが軽くショックです。

『メグレと老婦人』ハヤカワ文庫
『メグレ、ニューヨークへ行く』河出文庫
『メグレ警視 (世界名探偵 コレクション10)』集英社文庫




モンマルトルのメグレ (河出文庫)モンマルトルのメグレ (河出文庫)
(2000/05)
ジョルジュ・シムノン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『メグレ警視 (世界名探偵 コレクション10)』 ジョルジュ・シムノン 集英社文庫

2012-03-04

☆☆☆

ブーローニュの森の番人が散歩道で死体を発見した。被害者は高名な医者で、夜会服を着たまま至近距離から拳銃で撃たれていた。パリ警視庁のメグレ警視が捜査にのりだす(「街中の男」)。メグレは犯罪よりも犯人に興味を持つ。彼は医者のように、弁護士のように、懺悔聴聞僧のように、犯人の心理に近づく。 内容紹介より



「月曜日の男」「街中の男」「首吊り船」「鑞のしずく」「メグレと溺死人の宿」「ホテル《北極星》」「メグレとグラン・カフェの常連」収録。

「月曜日の男」
ある医師の家で働いていたメイドが急死し、彼女の両親の訴えにより検死解剖が行われた。その結果、彼女が妊娠していたことと、死因はライ麦の芒(のぎ)によって腸に開いた小穴によるものだったことが判明する。何者かが食べ物に芒を混ぜ、被害者に食べさせていたのだ。そして、毎週月曜日に食事の施しを受けに医師の家にやってくる老浮浪者《月曜日の男》が、医者の子供たちのためにエクレアを持参していたことが明らかになり……。使用人を含めた医者一家内の醜聞沙汰と読み手に想像させた後、部外者の浮浪者に目を向けさせ、そして真犯人を暴くといった三段階の変化が上手いです。

「街中の男」
高名な医師の射殺事件に関し、ある男を追って、何昼夜も続く尾行。男は自宅に戻ろうとせず、厳冬のパリの街中をさまよう。やがて男の持ち金も尽きて……。尾行されていると判っている男の悲壮感や疲労、彼を追うメグレの一徹な執念、この二人の様子が鬼気迫る感じの異色作でした。
『街中の男ーフランス・ミステリ傑作選(1)』にも収録されています。

「首吊り船」
セーヌ河にある水門の堰に乗り上げそうな平底船で発見された男女二人の首吊り死体。男は平底船の老船長、女は彼のかなり年下の後妻だった。大金を隠し持っていると噂の老船長はケチなために妻とは不仲だった。その妻には若い愛人がおり、事件後に姿を消していた。自殺なのか殺人なのか、大金の隠し場所はどこなのか、それとも噂だけだったのか。三面記事にでも載ってそうな話。

「鑞のしずく」
パリから百キロほど離れた田舎の村で起きた二人暮らしの老姉妹の殺傷事件。金を溜め込んでいる老姉妹の家へよく無心に来ていた、殺された妹の息子が逮捕されるが、彼は容疑を否認する。しかし、状況証拠はすべて彼に不利な物ばかり。メグレは現場に残った小さな痕跡から事件の謎を解いていきます。メグレが見得を切るみたいな場面が「首吊り船」と同様。

「メグレと溺死人の宿」
出張先で起きた車の転落事故を調べる羽目になったメグレ。夜、川沿いの道の急カーブで、トラックが停車していた乗用車に衝突し、車は川に転落してしまう。その際、助けを求める声をトラックの運転手と近くにいた船頭が聞いていた。引き上げられた車内には人影はなかったが、トランクから女性の死体が発見された。車の所有者は、《溺死人の宿》とあだ名を付けられた、道路沿いに建つ宿屋に宿泊していた男女のカップルのひとりだった。なかなか凝った出来の良い作品。

「ホテル《北極星》」
二日後に警視庁を定年退職する予定のメグレが残務処理をしていた時、人気のない刑事部屋にかかってきた電話に、つい出てしまったせいで捜査を受け持つことになったホテルでの刺殺事件の話。メグレは事件現場に残っていた遺留品の持ち主と見られる若い女性宿泊客を連行し、取り調べを始めるのだが……。主に、取り調べを行うメグレの部屋を舞台にした尋問劇みたいなものでしょうか。

「メグレとグラン・カフェの常連」
メグレが退官後に隠居した別荘のある町で起きた殺人事件。被害者は町のカフェで行っている、メグレのカードゲーム仲間のひとりだった。動機は金目当てのものか、それとも、カフェのメイドを巡ってのトラブルによるものなのか。周囲からの好奇心や期待に反してメグレは事件早々、自宅に閉じこもったり、釣に出かけたりして、かかわり合いになるのを避けるのだった。事件についてメグレのもとへ、いろいろな人物が、調査の依頼に来たり、告白に来たり、相談に来たりする様子と、それに対してまったく素気無い態度を取るメグレが可笑しかったです。

ところで、作品とはあまり関係ないけれど、メグレ警視シリーズ作品中の天候というのは暗かったり、寒かったり、雨が降ってたりしているイメージが強いのですが、本書でも季節はすべて寒い秋か冬、三篇で雨が降り、一篇では氷塵が舞っています。

『メグレと老婦人』ジョルジュ・シムノン ハヤカワ文庫
『メグレ、ニューヨークへ行く』ジョルジュ・シムノン 河出文庫
『街中の男ーフランス・ミステリ傑作選(1)』ジョルジュ・シムノン 他 ハヤカワ文庫HM




メグレ警視 (世界の名探偵コレクション10) (集英社文庫)メグレ警視 (世界の名探偵コレクション10) (集英社文庫)
(1997/07/18)
ジョルジュ・シムノン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『街中の男ーフランス・ミステリ傑作選(1)』 ジョルジュ・シムノン 他 ハヤカワ文庫HM

2011-10-09

☆☆☆

凍てつく冬のパリ、寒風吹きすさぶ街中で、一人の男を追って、後に語り草にもなるメグレの大尾行が始まる。尾行に気づいた男は、身元を明らかにする全ての物をセーヌ河に投げ捨て、名のない男となって街をさまよいつづける。男はなぜさまようのか?メグレはなぜ彼を追うのか?執念の追跡行を描く上記シムノンの表題作をはじめ、ポアロー/ナルスジャック、グリゾリアらフランスの代表的ミステリ作家のの作品に加え、サガンら異色の顔ぶれによるミステリを収録。洒落たフランス・ミステリのエッセンスを独自にパックした傑作アンソロジー! 内容紹介より 



「街中の男」ジョルジュ・シムノン、「犬」ポアロー/ナルスジャック、「とんがり山の穴奇譚」カミ、
「見えない眼」スタニスラス・A・ステーマン、「七十万個の赤蕪」ピエール・ヴェリ、「羊頭狗肉」フランシス・ディドロ、「悪い遺伝」フレデリック・ダール、「壁の中の声」ミシェル・グリゾリア「つき」ルイ・C・トーマ、、「殺人あ・ら・かると」フランソワーズ・サガン、「自殺ホテル」アンドレ・モロワ 以上、収録。

「街中の男」は内容紹介にかかれているので、以下はその他の作品について。

「犬」
夫のおじさんが旅行中、留守番と飼い犬の世話をするために屋敷にやってきた夫妻。犬はすぐに妻になつくが、古い馬車がしまってある車庫のなかのある場所では突然牙をむいて唸り、吠えたりして脅えだしてしまう。やがて離れでおじさんの死体が発見され、残された遺書から病気を苦にした自殺と判断された。まもなく全財産を相続する親戚の男が屋敷に現れるのだが……。短編ながら手抜きがなく、注意深く伏線が貼ってある良作。

「とんがり山の穴奇譚」
ピレネーにある断崖絶壁に立つホテルの一室で、深夜、突然グロテスクなうめき声が聞こえ始めた。声は宿泊客が発したものではなく、室内のどこかから聴こえてきたものだった。ホテルの支配人は偶然泊まりあわせていた素人探偵ルフォック・オルメスに怪奇現象の調査を依頼する。怪談と艶話をミックスしたようなフランスらしい話。

「見えない眼」
目の不自由な人たちを収容している施設が五回も放火されながら警察は真犯人を捕まえられない。思い余った所長は、探偵シラ・ロールに調査を依頼する。犯人捜しというか立証のやり方が今なら人権侵害としかいいようのない方法で、やられた人たちがトラウマにならないか心配。

「七十万個の赤蕪」
大手出版社の社長秘書のもとへ、七十万個の赤蕪についての覚えのない取引に関した手紙が届いた。社長以下社員一同一笑に付すがその後も赤蕪の契約についての手紙が届けられ、ある朝、自宅で薬品を嗅がされて意識不明になった社長秘書が赤蕪の青葉とともに発見される。そしてまた同様の手紙が副秘書のもとに届き、やがて彼は何者かによって拉致されてしまう。出版社はおかかえの推理作家三名に事件の謎を解かせようとするのだが……。捻りの利いた趣向が愉しい作品。

「羊頭狗肉」
肉屋の妻が車を運転中に事故を起こして死亡した。何の変哲もない自動車事故だと思われたが、ささいなことでかかわり合いになった警視が調べはじめると、彼女の死は毒薬によるものであり、また彼女は店の使用人と浮気をしていたことが判明する。当然嫌疑は夫に向けられる。よくあるオチですけれど、結構面白かったです。

「悪い遺伝」
若者は、近々結婚すること、その妻は産褥で死ぬこと、産まれた子供は殺人者になることをジプシーの女占師に予言された。そのとおりの運命をたどった若者が子供にとった行動とその結末。

「壁の中の声」
男が入浴していると女の声が聴こえてきて……。エッセンスの分からない幻想小説。グリゾリアはよく理解できません。

「つき」
アパートの住人から頼まれて宝くじを買ってきた管理人は自分用にも一枚買い求めていた。ラジオで当選番号が発表され、住人に渡した一枚が当たりくじだったことを知った彼のとった行動とは……。予想がつく結末ですけど、とても皮肉が利いたスタンダードな話。

「殺人あ・ら・かると」
ヴェニスにあるホテルのテラスで食事をする二組の夫婦。妻の一人は女友達であるもう一組の妻の夫と不倫していたが別れを告げられ、浮気を知った夫には離婚を持ち出されていた。そして不倫相手を愛している彼女のハンドバッグのなかには一挺の銃が用意されていた。別れ話を告げられた人妻の心の移ろう様を短時間に描いた心理サスペンス。

「自殺ホテル」
株の大暴落で破産してしまった男。愛妻に去られ、万策も気力も尽きた彼宛にあるホテルから一通の手紙が届いた。そのホテルでは命を絶ちたいと願う人にたいして、眠っているうちに安らかな死のサービスを提供する用意があるという内容だった。宿泊した彼はそこである魅力的な女性に出会う。どこかで読んだことがあるような、これまた非常にシニカルな一品でした。

『心やさしい女 ーフランス・ミステリ傑作選(2)」カトリーヌ・アルレー他 ハヤカワ・ミステリ文庫




街中の男 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 102‐1))街中の男 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 102‐1))
(1985/04)
ジョルジュ・シムノン、長島 良三 他

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「メグレ、ニューヨークへ行く」ジョルジュ・シムノン 河出文庫

2007-09-11

☆☆☆

定年退職して悠々自適の生活をしているメグレのところに、アメリカの大富豪の息子が訪ねてくる。最近父親の身に異変が起こったらしい、自分といっしょにニューヨークへ行ってほしい、というのだ。ところが、ニューヨークに着いたとたんに青年は姿を消し、父親の方はメグレを避けようとする。青年の口車に乗ってアメリカに来たことを悔みながらメグレの捜査は始まる。内容紹介より



所変われば品変わるというか、このメグレ・シリーズもニューヨークに来るとハードボイルド・タッチになっていて可笑しかったです。ニューヨーク到着と同時に行方不明になった怪しい依頼人の青年、不自然なほど無愛想な彼の父親、いかがわしい雰囲気のその秘書、そして、ギャング。これに、謎の美女とブラックジャックによる後頭部へ一撃が加わればまさしくハードボイルドになっていたでしょう。テーマはロス・マク風な感じもあるようなないような。

全てがアウェイのメグレ。アメリカにも彼の評判は届いているけれど、退職した身なので当然権力はなく、協力してくれるのは個人的な知り合いの警部だけ。さらに、強権的なフランスの警察と比較して「自由」という言葉に表される人権を重視せざるを得ないアメリカの警察の違いにも困惑したりする。

ところで、二十年間ピエロをしていたロナルド・デクスターというメグレが雇った私立探偵はかなり秀逸なキャラクターで、酒が入ると泣き上戸で自己嫌悪に陥り、悲観論者で救い難いほど陰気で気が弱いくせに大食漢な彼とメグレとのやり取りにはかなり笑わされました。シムノンはこういう滑稽だけれどもちょっと哀れな(まさしくピエロみたいな)登場人物を創り出すのが上手ですね。


メグレ、ニューヨークへ行く (河出文庫)メグレ、ニューヨークへ行く (河出文庫)
(2001/03)
ジョルジュ シムノン

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

「メグレと老婦人」ジョルジュ・シムノン ハヤカワ文庫

2007-09-08

☆☆☆☆

小雨降る九月の朝、列車を待つメグレ警視は昨夜の事を回想していた。可愛い老婦人が彼を訪れ、自分の毒殺を企んだ犯人を調べてくれと訴えたのだ。彼女は睡眠薬の常習者で、ある夜、偶然に薬を飲んだメイドが死んでしまった。犯人が狙ったのは自分だと彼女は主張した。が、彼女を訪ねたメグレを待ち受けていたのは、憎しみあう老婦人の家庭の複雑な人間関係だった。フランス文壇の驍将が独自の心理的手法で描破する本格篇。内容紹介より



物語早々の、メグレが海辺の町へ行くために小駅で乗り換えの汽車を待っている時、子供たちが持っている小えび採りの網を見て、ふいにわき上がってきた海の匂いや波の響きを感じて過去に想いがさかのぼる場面はまるで“紅茶とマドレーヌ”から始まる小説を彷佛とさせたりして。このリリカルな短い場面は印象的でした。

メグレが子供の頃に望んでいたような「絵本の中のような世界」、つまり「そこには幸せな徳の高い人々だけが住んでいて、その人々にとっては平和と喜びだけしかない」ような世界と思いたい避暑地の町で起きた「汚らわしい事件」に彼ががっかりするところ。裏舞台をのぞいて人生をすごしたメグレなのにまだそういう気持ちが残っているところ。他の作家ならアイロニカルで、斜に構えた台詞でも言わせそうなのに、メグレの素直な感情の表現が印象的でした。メグレの中に残っている子供じみた世界観と現実とのギャップの他に、母親の誕生日に集まった家族たちのうわべと奥に潜む真意、さらに、持てる者とそうでない者との対比が上手く描かれていると思いました。




メグレと老婦人 メグレと老婦人
ジョルジュ・シムノン (1976/11)
早川書房

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テーマ : 推理小説・ミステリー
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