『ブラック・ドッグ』ジョン・クリード 新潮文庫

2010-06-24

☆☆☆

女性記者が漏らした不可思議な言葉“ブラック・キャット”。そしてアイルランド沖に不時着したパイロットの最期の一言 ― ブラック・ドッグ。英国の元秘密情報部員ジャック・ヴァレンタインは、五十年前の水兵の認識票を調べていた。簡単なはずの捜査は、いつしか謎の言葉へと結びつき……。彼の前に浮かび上がった意外な謀略とは。英国推理作家協会賞受賞作家が放つ王道の冒険小説! 内容紹介より



主人公のジャック・ヴァレンタインって人、こんなに料理好きな人でしたっけ?なにか雰囲気がロバート・B・パーカーのスペンサーに似てきましたね。スパイ活動についてのうんちくを語るわりに拳銃とか持ってくるのを忘れたり、あまり有能な人物に思えないところは相変わらずです。彼は他の情報機関が嫌がるほどの汚れ仕事を経験してきたのに、チョムスキーの本を読んで世界の腐敗について憤るとか、それってブッシュがチョムスキーを読んで、アメリカ政府ってこんな酷いことをやってたんだ!と感想を漏らすみたいに間抜けなことなのではないだろうか、と小一時間。そして、死んでるわけじゃないけど過去からの亡霊みたいに出るわ出るわ前作、前々作の登場人物たち。プロットも面倒くさいのに登場人物も面倒くさい。その上、事件の経緯をいちいちその全員に喋って回る、黙るということを知らない主人公、今時ありえない市街地での大規模な銃撃戦とか、このシリーズがややバカミスの方向に向かっているような気がしました。
英米間のスパイ戦みたいなものを先進自由主義国を舞台に描くのはどうしても今さら感が否めないし、こんな素っ頓狂なストーリー展開になるのなら、中国とかインドとかを舞台にテロリストとか麻薬組織を持ち出した方が無難なように思いますね。

『シリウス・ファイル』ジョン・クリード 新潮文庫
『シャドウ・ゲーム』ジョン・クリード 新潮文庫




ブラック・ドッグ (新潮文庫)ブラック・ドッグ (新潮文庫)
(2007/04)
ジョン・クリード

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『シャドウ・ゲーム』ジョン・クリード 新潮文庫

2009-02-05

☆☆☆

英国の秘密情報部を引退したジャックを友人が訪ねて来た。ニューヨークで麻薬組織のボスに薬漬けにされている娘を救出してほしいというのだ。しかも、そのボスを殺してほしいと。殺害はできないが娘は救出すると約束して単身渡米したジャックは、麻薬の密売人ジーザスに協力を求める。遂行された作戦は完璧だと思われたのだが ―。ジャック・ヴァレンタイン復活の痛快冒険小説! 内容紹介より



ストーリーとしては、ドラゴンにさらわれたお姫様を仲間とともに救いに行く騎士という
西洋の昔話にあるパターンを踏襲したものです。戦に倒れた主人公の前には、お約束の魔法使い(本書では呪術師ですが)も登場します。テーマが単純ですから、主人公たちの行動も分かりやすいです。

さらに、前作『シリウス・ファイル』が人物背景描写をやり過ぎてのそのそと読みにくい印象だったのに比べ、本書ではその点が改善されるとともにアクションシーンが頻繁に挿入され非常に読みやすかったです。70ページまでに、爆発、襲撃、狙撃の個別の事件が次々に主人公の身の回りに起きるのですから。それ以降もこの調子なので、ややもするとハリウッドのアクション映画みたいな流れになってしまいそうですが、終盤において捻りを利かせて少し変わった展開にもっていっています。個人的にはもっとさっぱりしたラストで処理しても良かったかなと思いますが…。英国冒険小説の偉大な作家たちの衣鉢を継いでいるにしては、こじんまりとした作品で、相変わらず主人公のリリシズムがちょっと鼻に付きました。



シャドウ・ゲーム (新潮文庫)シャドウ・ゲーム (新潮文庫)
(2006/01)
ジョン クリード

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「シリウス・ファイル」ジョン・クリード 新潮文庫

2008-07-09

☆☆☆

英国の秘密情報部MRUに属するジャックに、奇妙な任務が下された。1970年初頭、北アイルランドにパラシュート降下した工作員の死体を探し出し、その所持品を持ち帰れというのだ。ただし、目的はまったく明かされない。疑念を抱きながら、自前のトロール船でアイルランドへの航海に出たジャックを、何者かが銃撃してくる! 冒険小説復権の鍵を握る、英国推理作家協会賞受賞作。 内容紹介より



英国冒険小説のヒーローたちも、一人称の「わたし」で語り出すとどうやら米国ハードボイルドの主人公たちの悪癖〈気の利いたセリフ〉から〈饒舌〉にいたる病に罹るらしいです。このキャラクターならやっぱり寡黙じゃないとねえ。「テレビや映画では、弾丸というものは脚本上の便法になっている。両手を挙げても、ストーリー上で必要なら殺される。怪我をしたとしても、必要とあれば果敢に戦う。だが現実の銃撃はそれとは異なり、そこにはほんものの恐怖が存在する」(p252) のように、フィクションと現実の違いを述べる箇所が随所に見られるのもしらける。そりゃそうだけれど小説のなかで言われてもですねえ。

それから、どうみてもあんまり優秀そうでない主人公が旧知の人間に出会うたびに、その人物と知り合った経緯や事件など過去の出来事に遡ってしまうのが、ストーリーを滞らせている気がします。登場人物の背景描写なのですが、一歩前進二歩後退みたいでいちいちこれをやられると少しうんざりします。それから最後に、冒険小説を復権させるのに、捻りのない恋愛話は百害あって一利なしと言いたい! と思います。



シリウス・ファイル (新潮文庫)シリウス・ファイル (新潮文庫)
(2004/07)
ジョン クリード

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

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