『友と別れた冬』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫HM

2016-01-09

☆☆☆☆

家出した妻の居所を探りだしてくれ。十五年ぶりに現れた旧友のビリーが、ニックに調査の依頼を持ちこんだ。彼はビリーの妻に複数の浮気相手がいた事実を突きとめ、その一人と会った。が、彼女が立ち寄った形跡はなく、しかも男から二十万ドルを持ち逃げしていたことも判明した。ニックは彼女の行方を追うが、その直前、友人の記者が何者かに殺されるという事件が……二人の友のため、探偵ニックが捨て身の闘いを挑む! 内容紹介より



『硝煙に消える』に続く〈探偵ニック・ステファノス〉シリーズの第二作目。
第一作目では二十代への憧憬と愛惜の念が強く描かれていましたが、今回は十代後半の友情と郷愁がテーマになり、三人の友が主人公の元を去ります。特に当時旧友ビリーと行った車での旅の様子はロードノベル風にかなり長く語られる(原題はNick`s Trip)とともに、そのシーンが今回失踪した友人の妻を捜す旅にオーバーラップしています。また、輝かしい十代の時を過ごしたワシントンDCという街の悪い意味での変化に言及し、それを自分自身の友情の変化にも重ねあわせてみせています。そして、友人だった殺された記者の事件を調べていく過程においても、街の変容ぶりがさらに強調されているのです。こういうテーマの分かりやすさはペレケーノスの特徴だと思います。
それから主人公は閑古鳥が鳴く探偵業のかたわらバーテンダーもやっているのですけれど、その店の従業員や常連たちの人物像や彼らとのやり取りがとても味があり、ストーリーの良いアクセントになっています。一方、ミステリ部分は結構普通の印象でした。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『硝煙に消える』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2011-05-31

☆☆☆☆

あの日から、すべてが崩壊に向かった。ある老人に行方不明の孫を捜してくれと頼まれた日から ― 家電販売会社で働くニックは、二週間前に突然失踪したアルバイトの少年ジミーを探しはじめた。まもなく彼は、少年が過激なパンクグループの男と謎の美女とともに消えたことを突きとめる。が、失踪事件はやがて麻薬絡みの殺人事件へと発展し……ハードボイルドの次代を担う新鋭が放つ、ノワールの香りが漂う話題の新シリーズ! 内容紹介より



ペレケーノスのデビュー作であり、ワシントン・サーガの第一作目です。
佐藤耕士氏が、訳者あとがきのp392~p393にかけて述べられていることと同じ感想を持ちました。ハードボイルドではお約束の行方不明人捜しという設定に青春物語(ただし、主人公は三十代ですが)、この陰と陽を絶妙に絡ませた物語です。本文中にもあるように、主人公は「向こう見ずな二十代が過ぎ去ったことをうらめしく思い」ながら、昔の職場に戻ると、仕事中に同僚とビールやマリファナをやったり、友人と馬鹿騒ぎをしたり、調査に赴いた先で列車に飛び乗るという悪ふざけをしたりして、もう一度向こう見ずな二十代に戻っていきます。これらの場面が、祭りの後とか、つかの間の輝きを放った後に来る暗闇を予感させて非常に印象に残りました。そして、少年の失踪事件が彼にもたらしたものは、友人の死と二十代との完全なる決別でした。ハードボイルドの部分は、少年との会話ややり取りが省かれいることなど、やや深みに欠けているようにも感じましたが、意外なひねりも用意されおり、作者のそつのなさが表れているように思います。

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硝煙に消える (ハヤカワ・ミステリ文庫)硝煙に消える (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1997/01)
ジョージ・P・ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『変わらぬ哀しみは』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2011-02-22

☆☆☆☆

1968年、黒人警官デレク・ストレンジは己の職務をまっとうしていた。白人からは罵られ、黒人から同胞を取り締まる裏切り者と蔑まれても。時代は大きくうねり、黒人はキング牧師の下、権利の拡張のため社会運動を起こしていた。その最中、黒人青年が車に轢かれて不可解な死を遂げた。警察の捜査は進まず、やがて黒人による暴動の兆しが見え始める。その時デレクは……ハードボイルドの詩人ペレケーノスが綴る時代の慟哭。 内容紹介より



〈デレク・ストレンジ・シリーズ〉
物語は第一部の一九五六年春と第二部一九六八年春の二部構成になっています。第一部は少年時代の主人公デレク・ストレンジと彼の家族、親友、父親の勤め先の店主、母親が家政婦として働く家族、兄がつるむ不良たち、街のチンピラたちがプロローグとして描かれ、第二部では生まれ育った街で警察官になった主人公と前述の人物たちのその後が語られています。これまでのペレケーノスの作品とやや趣を異にして、事件らしい事件が起きるのが200ページを過ぎてからなのと、いままで以上に当時の流行りのポピュラー音楽や歌い手の数々を時代風景として取り入れているせいで、どうもタメが長い印象を読み始めに持ちました。
今回、著者のテーマは、貧困と犯罪から人種差別、人種間対立がメインになっているみたいで、ベトナム戦争中の北爆停止、公民権運動の高まり、キング牧師の暗殺といった時代の大きなうねりと、その流れのなかにおいて一介の警官である主人公を含めた登場人物たち個々の生き方とそれぞれが交差しあう様が描かれています。このシリーズは庶民に目を据えたもうひとつの大河ドラマになっていくのかもしれません。

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変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫)変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2008/03)
ジョージ・P・ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ドラマ・シティ』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2010-07-16

☆☆☆☆

別れの時は近づいていた ― 罪を犯し、服役していたロレンゾは、出所後、動物虐待監視官の職に就く。そこで安楽死直前の犬、ジャスミンに出会った。人間のような愛らしい表情をみせるこの犬に触れ、ロレンゾも人間らしさを取り戻していく。が、彼を親身に世話してくれた仮釈放監察官がギャングに撃たれ、事態は急変する。怒りに駆られたロレンゾは復讐を誓う ― 男は犬を救い、犬は男を救った。しかし待っていたのは…… 内容紹介より



何度もいいますが、ペレケーノスという作家は、オーソドックスな作法でありながらも男同士の友情や絆を描くのが非常に巧いです。今回も主人公のロレンゾとナイジェル、メルヴィンとリコの繋がりが過度過ぎず、しかし充分に描き出されていると思います。ここに物足りなさを感じる読者もいるかも知れませんけど、従来よりいい具合にくどさが抜けている感じがしました。この二つの繋がりのなかで特に注意を引く人物がリコという若いギャングで、彼を殺しを好むただの冷血漢にしていないところに作者の心配りを感じました。異常な性格の原因として子供時代の環境を背景描写し、さらにメルヴィルを父親のように慕う感情を描き、異常な悪人ながら切り捨てることはしていません。ここにペレケーノスの作品に一貫して流れる、いわゆる誰も悪人として生まれてくる人間はいない、犯罪の芽は子供時代の家庭、社会環境にあるという主張が見られます。本書においても“父親の不在”が目に付きました。センチメンタルあるいは単純な理想主義的言説と捉えられるにしても、無骨に言い続ける姿勢には共感できるものがあります。
男の描き方に比べて女性についてはいまひとつの感があったペレケーノスですが、仮釈放監察官レイチェルについては人物像の表裏が興味深く設定されていました。彼女が通う中毒者自主治療会の活動内容や動物虐待監視官という主人公の職業自体も物珍しく印象に残りました。

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ドラマ・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)ドラマ・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2006/08)
ジョージ・P・ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『生への帰還』ジョージ・P ・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2009-11-02

☆☆☆☆

強盗殺人犯の逃亡車が息子の命を一瞬で奪ったとき、ディミトリの人生は終わった。三年後、哀しみの底にいるディミトリは、同じ事件の犠牲者の遺族たちと会うことで唯一の慰めを見出していた。やがてディミトリは、息子を殺した強盗犯が街に戻ってきたとの情報をつかんだ。それと同時に、彼の胸には命を賭けた復讐の念が……ハードボイルドの次代を担う著者が、命とは、人間の罪とは何かを問う。ワシントン・サーガ完結編 内容紹介より



ペレケーノスの作品にはハズレがないですねえ。どうしてこうも佳い作品ばかり書けるのでしょうね。ずっと言ってますが、彼の作品というのは、妙に捻ったりせずにストレートでシンプルなんだと思います。作中の主人公たちは、犯罪やドラッグ、市政の腐敗がはびこる街に住みながらも声高に主義主張を述べることはなく、斜に構えたりしない、諦観も達観もしていない、正義感ぶったりもしない、目線や立ち位置が非常に市井の人びとに近い存在です。そのため他人に降りかかった悲劇や不幸になるだけ親身になり理解しようとするし、相手にとってできるだけのことをしようとします。デレク・ストレンジは少年たちを犯罪の誘惑から守るためフットボールのコーチをしているし、本書のディミトリは元犯罪者の皿洗いの男に自分の店が持てるよう助言と口利きをしてあげています。いわゆるハードボイルドでいうとことの“穢れた街”の闇の中で、彼らの行動は一筋の光明であり、作品中の救いになっているのだと思います。
そのような内容とけれんのない硬質で乾いた文章がとてもよく合っています。

〈ワシントン・サーガ〉
『明日への契り』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

〈デレク・ストレンジ・シリーズ〉
『曇りなき正義』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫
『終わりなき孤独』ジョージ・P・ペレケーノス  ハヤカワ文庫
『魂よ眠れ』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫




生への帰還 (ハヤカワ・ミステリ文庫)生への帰還 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2000/09)
ジョージ・P・ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『魂よ眠れ』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2009-09-16

☆☆☆☆

黒人探偵デレク・ストレンジは、死刑が濃厚な元暗黒街のボス、オリヴァーを救おうとしていた。デレクはかつてオリヴァーの父の死に関係し、罪の意識に苛まれていたからだ。オリヴァーを助けることができる重要証人の女の存在を知ったデレクだが、ストリート・ギャングもその女を尾け回していた。やがてデレクは、ギャングたちの血で血をあらう抗争に巻き込まれてゆく……街を支配する強大な暴力にデレクは独り立ち向かう。 内容紹介より



複数の殺人や麻薬の売買に関わったギャングのボスを死刑判決から免れさせようと主人公ストレンジが努めるているのは、彼がボスの父親の死に関係したことが直接の理由ですが、永らく行われていなかった死刑を是が非でも執行することで犯罪者への見せしめにしたいという司法機関の強い意図を感じているからです。物語の舞台であるワシントンDCの多くの市民が死刑に反対し、死刑制度が犯罪抑止力になりえないとストレンジは主張し、続けて、「おれが言いたいのは犯人の素姓なんかじゃない。生まれたときから、機会も与えられなければ、指導してくれる人もいないってことを問題にしたいんだ」(p267)。つまり、「誰でも最初は無垢な子供なのだ。金があり、愛する両親がいて、なにひとつ不自由のない生活を送っている子供たちと、貧しい子供たちとでは、社会へ巣立つ入口がちがう。それだけのことだ。貧しい子供たちは、言ってみれば、レースに出る前に手足の自由を奪われているようなものだ」(p185)と子供たちの家庭環境*や社会、生活環境に関心を向けて改善しないことには犯罪者予備軍はいっこうに減らないと言っています。彼はその一端として貧しい黒人地区の子供たちを集めて作られたアメリカン・フットボールのチームを支援しています。これがデレク・ストレンジ・シリーズに一貫して流れる非常に分かりやすく共感できるテーマになっています。

*本書の中で誰かの父親として登場してくるのは、継父のストレンジただひとり。後は皆母子家庭なのがこの物語を象徴しているような気がします。

ジョージ・P・ペレケーノスの他の作品
〈デレク・ストレンジ・シリーズ〉
『曇りなき正義』
『終わりなき孤独』

〈ワシントン・サーガ〉
『明日への契り』




魂よ眠れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)魂よ眠れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2006/06)
ジョージ・P. ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『友はもういない』ユージン・イジー ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2008-11-14

☆☆☆☆

シカゴの金庫破りフェイブと麻薬課の捜査官ジミイ ― 子供時代からの無二の親友でありながら、二人はまったく別の道を選んだ。しかし二人は、お互い相手の仕事には干渉しないはずだった。フェイブが相棒と押し入った部屋で、無惨な女の死体と大量のコカインを目にするまでは……クライム・ノヴェルの次代を担うと絶賛される大型新人が放つ鮮烈なデビュー作  内容紹介より



「話の展開は前半がややスローだが、そのぶん後半が急ピッチで愉しめる」(安倍昭至氏の訳者あとがきより)。
いきなり料理番組に例えますと、材料の紹介(産地は何処だとか、どうやって育てられたかとか、どんな色形をしているだとか)が長くてくどくて煩わしい。人物の背景描写、情景描写、人物の容姿や服装の描写が無駄に詳細に書かれています。通行中のショッピング・バッグ・レディの描写に四行、プール・バーの様子に三十五行そのうち不必要なのが二十五行など、これは作家の新人時代の作品によく見られる傾向ですが、良く言えば丁寧な書き込み、悪く言えば過剰な記述が多すぎです。130ページ以降になると材料説明も一段落して、包丁さばきも巧みに、味付け、火入れとスピードアップして料理完成。前半のイライラが解消されました。

男同士の友情をクライム風にハードボイルド・タッチで描いているところは、ジョージ・P・ペレケーノスの作品と類似点があるかもしれません。偶然かもしれませんが、著者は、ひとつの出来事を三人称多視点から重複して描いていて、これは『『明日への契り』』でペレケーノスが採った手法と同じです。ちょっと分かりにくいかもしれませんので、『明日への契り』の訳者あとがきで佐藤耕士氏が書かれている部分を引用します。「この作品の特徴としてまず挙げておかなければいけないのは、クエンティン・タランティーノ映画の影響だ。タランティーノの《パルプ・フィクション》や《ジャッキー・ブラウン》という映画を見た方ならおわかりだろうが、ひとつのシークエンスを別々の視点から何度も繰り返すのである」(『明日への契り』p518~p519)。ただし、本作品は1987年に発表されているので、タランティーノやペレケーノスの作品よりイジーのほうが早いことになります。



友はもういない (ミステリアス・プレス文庫)友はもういない (ミステリアス・プレス文庫)
(1991/04)
ユージン イジー

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「曇りなき正義」ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2008-08-27

☆☆☆

模範的な黒人警官が豹変し、白人に銃口を突きつける。彼は止めに入った同僚に銃を向け、逆に射殺された—事件を調査するワシントンの私立探偵デレクは、家族思いの男の素顔を知るが、その妹は兄の葬儀の直後に失踪し、麻薬に溺れていた。やがてデレクは、男を凶行に走らせた兄妹の過酷な運命に直面する……欲望が渦巻き、銃弾が飛び交う街で正義を貫く男を描いた現代の挽歌。ハードボイルド界を担う著者の新シリーズ。     内容紹介より



ジョージ・P・ペレケーノスの〈デレク・ストレンジ・シリーズ〉第一作目。
まるでオセロゲーム(例えが不適切でしたらすみません)を見ているように黒人と白人の関係を強く意識させられる物語です。

目新しいのは、主な調査対象となる加害者の白人(元)警官が調査に加わっているところです。主人公は彼を伴って事件現場、相棒だったパトロール警官を訪れたり、私生活でも交流を持ちます。問題は彼の潜在意識の中に黒人への差別感情があるのではないか、もし相手が白人だったら発砲しなかったのではないか、という点です。そして、この元警官がキレやすい性格なのではという疑いも相まってストーリーに緊迫感を与えています。

女性にたいして、「男ってのは、ダイヤモンドを探して世界中を旅するが、自分の家の裏庭を探そうとはしない」(p303)の古いたとえ話同様の生活を送ってきた主人公のデレクがジャニーンというダイヤモンドを“裏庭”で見つけたものの、家庭を背負うことの漠然とした不安からまだ他を探そうとする往生際の悪さ、フラフラ具合が巧みに描かれていると思います。

シリーズ二作目
『終わりなき孤独』



曇りなき正義 (ハヤカワ・ミステリ文庫)曇りなき正義 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2001/11)
ジョージ・P. ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「明日への契り」ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2008-08-21

☆☆☆☆

妻と息子と別れ、失意の日々を送るマーカス。彼は貧しさから母親と離れて暮らす少年アンソニーと出会い、驚くべき事実を聞かされた。炎上する車から若者が金を盗み出す現場を偶然目撃したというのだ。その金が麻薬密売の元締のものだったことから、組織は情報を握るアンソニーの行方を追う。やがて少年の身に危険が及ぶにいたってマーカスは組織との対決を決意する! 男たちの生きざま、哀しみを叙情的に謳い上げた傑作。 内容紹介より



とにかくジョージ・P・ペレケーノスの作品はとても分かりやすい。ヤクザ映画じゃないけれどなんだかそんな雰囲気を感じます。高倉健!みたいな。渋いっ!みたいな。

ジョー・R・ランズデールの作品とは友情とバイオレンスという共通点がありますが、
ランズデールの『凍てついた七月』や『人にはススメられない仕事』で暴力が目的化し、暴力と死に魅了されつつある危うさが描かれているのに対し、ペレケーノスの作品の暴力はまだ手段であり、コントロールできているところに作者の昔気質というか古風さが現れていると思います。しかし、ここには古来の「卑しい街を行く騎士」など存在せず*、主人公は汚職警官のひとりであり、そもそも「卑しい街」どころか市長からして麻薬常習者で、十一歳の子供がコカインを売り、尊敬を集めるのは麻薬密売の総元締という汚濁にまみれた街になってしまっています。この街の変遷を描いているところに、当シリーズが〈ワシントン・サーガ〉と呼ばれる由縁を強く感じます。

甘々な結末はやはり古典的な印象です。それよりも『ローリング・ストーン』を読んでいるかのごとく、音楽のタイトルとアーティストの名前がうじゃうじゃ出てくるのには少し辟易しました。

*マーカス・クレイはその絶滅寸前の生き残りかもしれませんが、家庭や店という守るべきものを持ちディフェンス専門になっている。




明日への契り (ハヤカワ・ミステリ文庫)明日への契り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1999/10)
ジョージ・P. ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「終わりなき孤独」ジョージ・P・ペレケーノス  ハヤカワ文庫

2007-11-01

☆☆☆☆

家族のいないワシントンの探偵デレク・ストレンジにとって、少年フットボール・チームのコーチをすることは生きがいだった。少年たちを指導し、犯罪に手を染めないようにさせる。しかし、そんな彼の情熱をこの街は無情に嘲笑った。練習後、デレクが目をはなした隙に、チームの少年が何者かに射殺されてしまったのだ。己への怒りと深い哀しみを背負い、デレクは犯人を追い始めるが……。無垢な魂に捧げる卑小な探偵の哀歌。
内容紹介より



従来の私立探偵ものは、読者が探偵の行動(つまり依頼人に人探しを依頼され、街を彷徨し酒場で飲み過ぎ、きれいなお姉ちゃんと出会い、頭をぶん殴られ、たまに気が付くと横に死体が寝てたりする…など)、いわゆる都合の良いルーチンワークにいちいち付き合わされ、あまりのパターン化にも苦行僧のごとく耐えて読み進めることが多かったのですが、本書はハードボイルド小説には珍しいモジュラー型、および多視点による描写でとても読みやすかったです。また、テーマの単純な図式化もあります。加害者や被害者になる若者や少年たちは、いずれも父親がいなかったり母親が薬物中毒だったりする家庭問題を抱えています。少年たちを犯罪から守ろうとしている主人公ストレンジもかなり様式化されているように感じました。人によっては、このあたりは作品の評価が違ってくるかもしれませんが…。

ただ、作者はストレンジの個人的な悩みと苦悩をそこに付け加えることで物語に深みを与えているのではないでしょうか。ボランティアでフットボールのコーチをする場面はストーリーにかなり良いアクセントを与えています。
また、この作者は、確かに男の友情を描くのがうまいのかもしれないです。


終わりなき孤独 (ハヤカワ・ミステリ文庫)終わりなき孤独 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2004/08/25)
ジョージ・P・ペレケーノス

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テーマ : ハードボイルド
ジャンル : 本・雑誌

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