『デッド・アイズ』 スチュアート・ウッズ 角川文庫

2012-04-27

☆☆

ハリウッドのスターダムに手が届かんとする演技派女優クリス。プライバシーが保たれているはずの彼女の自宅へ、ある日“賞賛者”と名乗る者から手紙が届く。彼女の行動を知り尽くしている様子の“賞賛者”への恐怖を募らせていた矢先、クリスは事故に遭い、一時的に視力を失ってしまう。それを契機に“賞賛者”は、暗闇に閉ざされたクリスに忍び寄り、歪んだ求愛をはじめた……。剛腕作家スチュアート・ウッズが、エスカレートを続けるストーカー犯罪を描く、現代犯罪小説の真骨頂。 内容紹介より



なんでしょう、このハーレ○インもどきのストーリーは?!女優と刑事(育ちもいい教養もあるどっちも金持ってる美男美女)がストーカー事件で出会い、やがて恋に落ちる。なんだこの百万回は読んだり観たりしたこのあるありきたりで甘くてゆるい設定は!ウッズのこれまでの作品から感じた、人に対する温かな視線が何か違う方向に作用したみたいに俗っぽくなったみたいな。読む前は、視力を失った独りぼっちのヒロインがストーカーにじわりじわりと苦しめられ、追い詰められた後、ついに暗闇のなか犯人と対決して……、みたいな展開なのかなあと思っていたら、思いっきり悪い意味で期待を裏切られました(裏切られるって本来悪い意味だから、これは間違った表現ですけど、それほど強調したかったんです)。そのうえ、ストーカー犯罪専門の刑事があまりにも間抜けでヘマ過ぎるし。それから、これは角川文庫側に問題があるのでしょうが、真犯人についてせっかくレッドへリングを登場させているにもかかわらず、カバー折り返しの主な登場人物欄に登場回数三回くらい、出演総ページ数六ページくらい、行数にして四、五行程度の人物を載せているので、この人が犯人だとしばらく読んだら馬鹿でも解ってしまうから、もしこれから本書を読んでみようという奇特な方は登場人物欄には目を通さないようにお勧めします。そもそも登場回数がものすごく少ない人物をこれが犯人だ、どうだびっくりしただろうとラストにいきなり出してくるのもストーリー上どうかとは思いますよね。
素晴らしい作品を書いている作家だからこそ、期待が大きいからこそ、くどくどと文句も言いたくなるのです、とフォローも忘れずにしておこう。

タグ:スチュアート・ウッズ




デッド・アイズ (角川文庫)デッド・アイズ (角川文庫)
(1999/12)
スチュアート ウッズ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『サンタフェの裏切り』 スチュアート・ウッズ 文春文庫

2011-10-21

☆☆

ウォルフは独立映画プロデューサー、友人の監督といい感じのコンビを組み、ブロンドの妻は元女優。ある朝、ニューメキシコの朝日がアドービ煉瓦を染める頃、ウォルフは知った、自宅の客用寝室で、妻と監督とそして彼自身が、散弾銃で惨殺されたことを。生きている自分は今グランド・キャニオン。そして前夜の記憶がまるでない… 内容紹介より



ある朝、妻と友人さらに自分自身の死亡報道を新聞記事で読むというショッキングな出だしはインパクトがたっぷりです。そして、ミステリ作品を読みつけている身としては、犠牲者の顔が判別できないほどの状態になっていれば偽装殺人を疑ってかかるのが自然であり、主人公夫妻のかかり付けである精神科医と主人公の妻の共謀疑惑の推理も持ちつつ、または愛人と強盗殺人事件を起こして服役中の妻の妹も、容姿がそっくりであることから、なんらかのすり替わりをしたのじゃないかと怪しく思ってしまうのです。あるいは、主人公が事件当夜の記憶をいっさい喪失しているので、念のためアクロバティックで禁じ手すれすれの主人公犯人説も一応考慮に入れておかなくてはならないのです。
さて、実際にストーリーが進むにつれ、作者による読者(わたしのこと)が目星をつけた容疑者つぶしも進んでいき、ある者は殺され、ある者はなんとなく灰色から白っぽくなってしまうのです。その結果、
正体を現した真犯人は……、トリックは……。とにかく作者の設定不備、詰めの甘さが目立ちました。指紋採取と照合は、ミステリ作品の基本中の基本ではないのか!ぷんぷん。この作家の作品のなかでも凡作に入ります。

タグ:スチュアート・ウッズ




サンタフェの裏切り (文春文庫)サンタフェの裏切り (文春文庫)
(1995/01)
スチュアート・ウッズ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『湖底の家』 スチュアート・ウッズ 文春文庫

2011-08-14

☆☆☆☆

新聞社を辞め、作家修業中のハウエルは湖畔の町にやってきた。彼はそこで、ダム建設の際最後まで立ち退き要求に応じず、消息を絶った家族がいたことを知る。彼らはどこへ消えたのか?そして、湖底にたゆたう影の謎は?非協力的な住民たちをまえにハウエルの疑念は深まっていく。現実と幻影が錯綜するゴシック・サスペンス。 内容紹介より



読んでみて不思議に思ったことは、なぜ主人公がもうひとりの人物ではいけなかったのか?ということです。主人公自身は舞台となっている土地とはまったく関わりがなかったわけで、過去の地縁や複雑な人間関係を考慮に入れると「待ちかねられていた人物」は(ネタバレ→)「スコッティ」が自然だし、回りくどく第三者あるいは保護者みたいな人物で話をまわすより、ストレートな設定にしたほうがサスペンス性とか衝撃性がたかまったんじゃないかと思いました。 
また、どうして悪役となる人物を判りやすい悪人らしく造らなかったのか、なぜまだ別の犯罪に手を染めているのか、という点も気になりました。作者は単純な悪役のパターンを避けたかったからなのでしょうか。犯人が受けた谷間の村における因習による呪縛や抑うつされた気持ち、また若い頃に味わった失意が彼を犯罪に走らせたように読み取らせたかったのかもしれないけれど、そういった背景部分の書き込みは不足しているように感じました。この作者はストーリー展開にやや甘さが見られる傾向があるように思うのですが、作品よってはそれがプラスに働く場合もあるけれど、本書ではマイナス気味になっているかもしれません。

タグ:スチュアート・ウッズ




湖底の家 (文春文庫)湖底の家 (文春文庫)
(1993/11)
スチュアート・ウッズ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『不完全な他人』スチュアート・ウッズ 角川文庫

2010-01-12

☆☆☆

二人の男は、ロンドン発NY行きの機上で出会った。サンディ・キンソルヴィングは、義父の酒販事業で成功していたが、冷えきった妻との関係が原因で、全てを失おうとしていた。臨席の男、サンフランシスコで画廊を営むピーター・マーティンデイルも、妻とのトラブルで窮地に立たされていた。酒を交わし、語り合い、ヒッチコックの「見知らぬ乗客」を観た二人に、或る解決策が浮かぶ。それは、互いの妻の交換殺人。だが計画は思惑通りには進まなかった ― 。巨匠が放つ、初のサイコスリラー問題作! 内容紹介より



こちらがイメージするサイコスリラーと較べて、やわな感じがいかにもウッズ独特の「サイコスリラー」らしいなあと感じました。性善説とか人道主義に基づいているのか、この人は優しいんですね。いい意味でのアメリカ人らしい素朴さ、悪く言うと脳天気さが作品に表れていると思います。これがウィリアム・カッツだったら性悪説に基づくガチガチのいかにもなサイコスリラーの作品にしているでしょう。ウッズの持つぬるさが本書の雰囲気を塩と砂糖を混ぜたようななんともいえないものにしています。
プロットも強烈な印象を残す本家『見知らぬ乗客』を巧みなテクニックで換骨奪胎をしています。果たして主人公は計画殺人を実行してしまうのだろうか、という興味を中盤まで保たせているし、意外性のある展開を仕掛けていると思います。ただ、スケールが小さくまとまり過ぎたのと飲み物や食べ物についての感想が、まるでグルメ漫画のセリフそっくりで失笑してしまいました。





不完全な他人 (角川文庫)不完全な他人 (角川文庫)
(2001/08)
スチュアート ウッズ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「潜行」スチュアート・ウッズ 早川書房

2007-04-07

☆☆☆☆

IRAの犯行と思われる、英国軍兵站部からアメリカ製サブマシン・ガン二千挺が盗まれた事件。二年前から、ソ連が、大学と言語訓練センターにおけるスウェーデン語の教育時間を大幅に増やしている。二つのソヴィエト海軍歩兵訓練キャンプでは、シャツの洗濯量が突然減少した。ストックホルム支局によると、ソヴィエトの潜水艦がスウェーデン領海を侵犯していると思われる“潜望鏡騒ぎ”と呼ばれる現象がさらに増えている。

KGBのスパイ、マジョロフの所在を追うCIA情報本部ソヴィエト分析課の女性課長ルールの元へ毎日送られてくる電報の山から彼女の興味を惹いた上記の情報。さらに、人工衛星が撮ったラトヴィアの海岸の写真に写っている軍の謎の施設、警備兵の銃、潜望鏡らしき物体。
そして、彼女が追っていた男は、なぜかKGB国外工作本部長から海軍特殊部隊スペツナズの責任者になっていた。一体、彼が計画していることとは?

二十年前の国際謀略小説とは思えないほど相当面白いです。コンピューターについて記述した部分以外、カビ臭くありません。‘81年に実際に起ったソ連潜水艦によるスウェーデン領海内での座礁事故を元にして書かれた物語だけにリアリティがありすぎ。無理解な上司、妨害工作にもくじけず陰謀を追う主人公が好印象です。彼女の恋人ウィル・リーはおまけで登場します。また、マジョロフの部下で秘密任務を遂行するヘルダーの人物造形を、よくある殺人マシンみたいなステレオタイプに描かなかったことがこの作品を秀作にしているのではないでしょうか。浅過ぎず深過ぎない人物描写と適度に都合の良い展開、また、こういう小説にお約束のカットバック多用も効果的でした。

潜行 潜行
スチュアート ウッズ (1992/03)
早川書房

この商品の詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「草の根」スチュアート・ウッズ 文芸春秋

2006-08-28

☆☆☆☆

弁護士で上院議員秘書ウィル・リーは、地元デラノで起こった黒人女性殺人事件の容疑者の弁護を依頼されるのだが、上院議員が倒れ重体の報せがはいる。急遽、上院議員選挙に出馬することとなったリーは選挙運動とともに弁護活動もこなさなくてはならなくなる。一方、アトランタではアダルト書店が人種差別主義者による襲撃を受け、店員が殺害され経営者が重傷を負う事件が起きていた。

『警察署長』に登場した初代署長ウィル・ヘンリー・リーの孫のウィル・リーが主人公です。リー・サーガの一冊ですね。この人がすごく好人物。実際いるのかこんな善い奴?と普通嫌みになってしまいそうなキャラクターなのにそう感じないのは、ヤンキー(北部人)ではなく南部人の設定だからなのでしょうか。わたしの嫌いな減らず口もたたかないし、読んでいて好感を持ちました。影があったり、問題を抱えていたりする現代のミステリの主人公たちに比べて個性がないともいえますが、瑕疵のなさが一つの個性になっているのかもしれません。

物語は、黒人女性を殺害した容疑者の若者の弁護、様々な問題や事件が起きる選挙活動、人種差別主義者の殺し屋とこれを追う元刑事、この三つを柱に進んでいきます。上院議員選挙の進め方など目新しくて面白く読めました。主人公の恋人がCIA職員であるため、女性との交際を公表できず、ある疑惑が持ち上がるエピソードはおかしかったです。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ニューヨーク・デッド」スチュアート・ウッズ 文春文庫

2005-10-10

☆☆☆

マンションから突き落とされた人気女性キャスターが病院へ運ばれる途中に行方不明になる。落下現場に居合わせた刑事が犯人と被害者の行方を追う。

ジャーナリストが被害者なので権力機関の謀略ものかと思ってましたが違ってました。
途中で主人公の刑事が辞職して弁護士になったりして…なんか間延びした展開。

訳者あとがきにもあるように、いかにも“ハリウッドのアクション映画”的物語。
ノベライズと言ったら言い過ぎかもしれないけど軽い読後感。
あるいはレンタルビデオを一本観終わったような気持ち。
どうなんだろう、グリシャム、デミル、ディーヴァーに通じるマクドナルド型エンターテイメント小説というようなものは。『警察署長』は傑作だと思うのですが。

たしかに原作は'91年だから当時読めばまた違った感想なんだろうけど、こういうエンターテイメントを読み馴れてしまった身には、もういいかなあ。ウッズに罪はないけど飽きてしまってるんですね。
もう少しベッドシーンを増やしてカーチェイスもあったほうが読者受けするし…などというエージェントのいらぬアドバイスがあったんじゃないかと勘ぐってしてしまう。

あと、主人公がWASPでニューヨーク市警では少数派だということと、十二階から落ちた被害者が生きている可能性について終端速度という言葉を何回も出すのが面白かったです。

タグ:スチュアート・ウッズ

テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF クリスマス・ストーリー アンソロジー ルース・レンデル アーロン・エルキンズ スティーヴン・キング デイヴィッド・ハンドラー キャロリン・G・ハート ジョージ・P・ペレケーノス ジョアン・フルーク ローラ・チャイルズ マイクル・クライトン ジョー・R・ランズデール ドン・ウィンズロウ ジェームズ・パターソン ジェイムズ・パタースン エド・マクベイン ジル・チャーチル C・J・ボックス ヘニング・マンケル ローレンス・ブロック ポーラ・ゴズリング リチャード・マシスン レジナルド・ヒル D・M・ディヴァイン ジャネット・イヴァノヴィッチ リリアン・J・ブラウン スチュアート・ウッズ ピーター・ラヴゼイ パーネル・ホール レックス・スタウト アリス・キンバリー S・J・ローザン ジョルジュ・シムノン ジョー・ゴアズ マーガレット・ミラー ウィリアム・カッツ クレオ・コイル カール・ハイアセン レスリー・メイヤー アイザック・アシモフ ヒラリー・ウォー エド・ゴーマン カーター・ディクスン マイケル・ボンド ルイーズ・ペニー マーシャ・マラー ジェフリー・ディーヴァー ジョン・ディクスン・カー リタ・メイ・ブラウン ジェームズ・ヤッフェ イーヴリン・スミス ジャック・カーリイ キャロリン・キーン ウィリアム・L・デアンドリア コリン・ホルト・ソーヤー ローラ・リップマン フレッド・ヴァルガス ポール・ドハティー ロブ・ライアン ジェフ・アボット G・M・フォード エヴァン・マーシャル オーサ・ラーソン ジョアン・ハリス サイモン・カーニック リン・S・ハイタワー ドナ・アンドリューズ ファーン・マイケルズ アンソニー・ホロヴィッツ ジャン=クリストフ・グランジェ スタンリイ・エリン レイ・ハリスン ケイト・ロス アンドレア・カミッレーリ レニー・エアース ジョン・クリード コニス・リトル デイヴィッド・マレル クリスチアナ・ブランド ウイリアム・P・マッギヴァーン ウィリアム・ランデイ ジャック・フィニイ リック・ボイヤー サキ ジェーン・ラングトン ユージン・イジー ウォルター・モズリイ アン・クリーヴス ビリー・レッツ イーサン・ブラック ダナ・レオン エーリヒ・ケストナー ウォルター・サタスウェイト スタンリー・エリン ポール・ドハティ トバイアス・ウルフ 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント