『ヴェネツィア殺人事件』ダナ・レオン 講談社文庫

2009-02-24

Tag : ダナ・レオン

☆☆☆☆

「お宅のアパートは未承認で違法です」 のどかな週末、警視ブルネッティを突然、生真面目そうな役人が訪ねてきた。だが男は数カ月後、謎の転落死を遂げる。一方、署では上司の息子の不祥事に巻き込まれ・・・。ヴェネツィア警察の、家庭を愛する中年伊達刑事登場。サントリーミステリー大賞作家レオンのCWA賞受賞作。 内容紹介より



『ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する』の前の作品。CWA賞を獲っているから言うわけではないけれど、二作目より本作のほうが出来がいいですね。警察組織の中に漂うマンネリ感を感じていながら、そういうことに怒らなくなり丸くなってしまった主人公が、自宅を訪れた役人の生真面目さや誠実そうな物腰に、後々好感を覚える。その感情を主人公が事件に積極的に関わる心理的要因に設定し、なぜ事故ではなく殺人事件と思ったのかという現実的な要件には、被害者のテラスでの行動を設定して物語の導入部分に無理がなく上手く組み立てられていると思いました。

『ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する』でも書きましたが、やはりヴェネツィアのような古い都というところは上辺は水に覆われ美しいけれど、その下には時代とともに澱が何層にも溜まってやがて腐敗し始めるのかもしれません。本書は、アウトサイダー*としての作者からヴェネツィア社会とそこの住人気質への警鐘としても読めるような気がします。その「闇」に対して主人公夫婦の「明」が、微妙にバランスをとっていて、過剰に暗くならない配慮がしてあるのと、作者の「澱」の掘り下げ方が良い意味でも悪い意味でも絶妙な気がします。つまりマフィア系のアンタッチャブルな存在をどの程度描くのかという問題を、今のところはスルーしている印象を受けました。まだ主人公をそれらに係わらせたくないのだろうなって。

*作者はヴェネツィア在住のアメリカ人。



ヴェネツィア殺人事件 (講談社文庫)ヴェネツィア殺人事件 (講談社文庫)
(2003/03)
ダナ レオン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する』ダナ・レオン 講談社文庫

2008-10-24

☆☆

イタリア刑事はひと味違う。昼は妻のパスタを楽しむ中年警視ブルネッティ。コネ社会ヴェネツィアで、美人秘書と組み独自の手法で犯罪を追う。「祖父の過去の汚名を晴らしたい」と相談にきた女子大生が殺された。遺された口座への不審な巨額入金、略奪美術品の謎とは。CWA賞作家が贈る街の魅力満載の快作。 内容紹介より



『ヴェネツィア殺人事件』に続く二作目です。もちろん、わたしは前作は未読です。すみません。作者はヴェネツィア在住のアメリカ人だそうです。わたしの数少ないイタリアン・ミステリ読書歴(ここで言うイタリアン・ミステリとはイタリアを舞台にし、イタリア人が主人公のミステリの意味です。)イギリス人作家マイクル・デュブディンの「ゼン・シリーズ」とイタリア人作家アンドレア・カミッレーリの「モンタルバーノ警部シリーズ」に照らし合わせてみますと、主人公が美食家で自宅で昼食をとるところはモンタルバーノ警部に似ていますし、コネ社会に現されるイタリアに古くから溜まっている澱を描いているところはデュブディンの『血と影』を思わせます。後者の部分では、イタリアの戦争責任について触れているところが興味深いです。

ただ、ゼンに比べてもダナ・レオンが描く主人公はイタリア人らしくなく、世間(官僚組織や闇社会からの圧力とか)のしがらみのなかで苦悩するとかはなくて、どちらかといえば第三者的立場で物事を見ているみたいな印象があり、この影のなさや妻との会話などはなんだかアメリカ人のような気がしました。事件もそういう方向には向かいませんでしたし。

それにしても、事件に係わりのある過去の出来事や人物のことは何でも知っている伯爵である義父に、美術品のことに関しては友人の画家に、その他の事柄については副署長の秘書がインターネットでと、この主人公は情報収集を手近でお手軽にすませて調子が良すぎるんじゃないですかねえ。



ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する (講談社文庫)ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する (講談社文庫)
(2005/04)
ダナ レオン

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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