『殺人小説家』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2016-04-07

☆☆☆

差出人不明の封筒が、小説家ホーギーのもとに届く。なかに入っていたのは、小説の第1章と礼儀正しい添え状だった。書き手の才能に驚いたホーギーは、翌朝、さらに驚くべき事実を知ることになる。小説に書かれていたとおりの殺人事件が起きたのだ。警察が捜査に躍起になるなか、二番目の犠牲者が発見される。 内容紹介より



〈ホーギー&ルル〉シリーズの第八作目。この作品以降、続編は出ていないとのこと。今回はこれまでの有名人からのゴーストライターとしてのオファーではなく、連続殺人犯から自ら犯した殺人を小説形式にして主人公の元へ郵送し、共著者の依頼をしてくるという新機軸を打ち出しています。その新しい趣向が効果的かどうかと言う前に、主人公のスノッブぶり、相変わらずの饒舌、利いた風な口に、料理した魚のなかに潜む小骨みたいにうんざりさせられました。ストーリーは、主人公が犯人ではないかと疑う、彼の学生時代のヒーローであり親友だった元フットボール選手、多彩な才能を持ち、誰をも魅了した男の栄光と挫折と転落の人生を簡潔に描き出して進展していきます。こういう面はハンドラーはすごく巧いと思います。一方、ミステリは平凡、犯人の見当が付けやすいし、そもそも犯人の小説が主人公が思うほど良く出来ているとは感じませんでした。
ということで、このシリーズでは『真夜中のミュージシャン』が個人的に一番の作品ではないかと。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『自分を消した男』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2015-12-05

☆☆☆

《アンクル・チャビー・ショー》は、全米最大の人気番組だ。「俺はテレビで一番笑える男なんだぜ」主演のライルは、カリスマ的な人気を誇るコメディアン。だが、スタッフの誰もが憎む暴君だった。自叙伝執筆を引き受けた“”ホーギーはTV業界の陰謀渦巻く制作現場に乗り込む。そこでは不穏な空気が立ちこめてた……。 内容紹介より



シリーズ六作目。
「作者ハンドラーは事件とその解明というよりは、事件を引き起こしてしまう人間の業とそれに立ち会わざるを得ない人々(主人公のホーギーを含めて)を描いて、独自の世界を築き上げている」(p633)、と北沢あかね氏が訳者あとがきに書いているように、このシリーズにおいて作者が構築するもうひとりの主役である自叙伝の依頼者たちの人物像というのは非常に真に迫っているし、それを創り上げる緻密な作業には毎回感心させられます。ただ、今回のTV業界、コメディ番組、TVスターの取り合わせから想像する状況設定が予想の範囲を超えていないため、どこかで観たり読んだりしたことがあるような、かなりステレオタイプに見えてしまいました。一世を風靡するシチュエーションコメディ番組の主役である下品で横暴なスターと彼に公私に振り回される役者や製作スタッフたち、スキャンダルによってスターとしての地位も番組の存続も危うくなるコメディアン、それぞれの思惑や目論みが人間関係と共に入り混じった状況でトラブルが続発し、ついに殺人事件が起きる、という展開で犯人の見当は早めに付いてしまいます。

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ゴールデン・パラシュート』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2015-04-20

☆☆☆

コネチカット州ののどかな村で、ごみ拾いのピートが惨殺された。彼の意外な正体が発覚し、謎はさらに深まる。恋人の女性警官デズとともに、映画評論家ミッチが真相解明に乗り出した。そして、ミッチの手元には、少女売春をリアルに描いた小説が持ち込まれ……。MWA賞作家による人気シリーズ第5弾。 内容紹介より



“ミッチ&デズ”シリーズです。第四作目の『ダーク・サンライズ』は未読。
以前に気になっていた「ったく」という訳出が、本書では一回しか出てこなくて良かった。旧家名家、大金持ち、彼らの奇矯な振る舞い、高級ブランド(今回はメルセデス・ガルウィング)などのフレーズによってアメリカ人のセレブ嗜好を、それから平穏な村の裏にあるセックススキャンダルへのゴシップ趣味、この二つの要素でもって読者を刺激するという相変わらずのこの作家の得意な手法が取り入れられています。そしてそれらと対比をなす主人公(ミッチ)のこれまた相変わらずのイノセントぶりが少々鼻につきました。精神的成長とは無縁に見える彼、表面的で深みのないその他の登場人物たちの造形、この辺りには何か変化がほしいところです。そうしないと悪い意味でコージーミステリ色が強くなっていきそうな気がします。

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ゴールデン・パラシュート (講談社文庫)ゴールデン・パラシュート (講談社文庫)
(2012/02/15)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『傷心』 デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2013-01-24

☆☆☆

53歳離れた義父ソアと駆け落ちしたクレスラは有名人の母から夫を奪った娘として自叙伝を依頼される。ゴーストライターを頼まれたホーギーはクレスラを取材するうち、彼女の心の闇に気づく。スキャンダルや中傷が飛びかうなか、ソアが惨殺された。ホーギーの推理が始まる。MWA賞受賞の人気推理シリーズ。 内容紹介より



主人公ホーギーの妻が出産したため、喧騒を逃れて田舎町の農場に引っ込んで生活していた彼らのもとへ、義理の娘と駆け落ちした、主人公の師であり友人でもある著名な作家ソアが転がり込む。さらにホーギーへ義理の娘のゴーストライターとなり、彼女の身の上話を書くよう頼み込む。
ということで、相変わらず小説の執筆が上手くいかないホーギーは、気が進まないなかゴーストライター稼業に戻ることになります。映画監督やミュージシャンなど、このシリーズに登場したこれまでの仕事相手と違って対象者が何ら実績を持たない小娘であるため、シリーズの要であるところの対象者の魅力には欠けているという内容的な弱点があります。それでは作家ソアが代わりに存在感を発揮しているかというと、彼からはヘミングウェイのフェイクみたいな印象しか受けませんでした。
ただし、これは対象者の人物像やその背景に労力を費やして読ませるというシリーズの定型を意図的にやや崩し、ホーギー自身が抱える問題、つまり生まれてきた子供との関係性や若い頃から引きずっている父親との確執にページを割いた結果だと思います。
とにかく肝心の娘の造形が普通のティーンエイジャーにしか感じないところが……。モラトリアム人間みたいな男を描くのは達者な作家ですが、もしかして女性を描くのは不得手なのかなと感じた作品でした。

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傷心 (講談社文庫)傷心 (講談社文庫)
(2001/06)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『芸術家の奇館』 デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2011-11-04

☆☆☆

NY近郊に住む映画批評家のミッチ・バーガー。彼はピンク色の奇抜な家に住む高名な現代芸術家と知り合い、交遊を深めていた。ある朝、静かなこの村で爆殺事件が発生。ミッチは女性警官ミトリーと捜査に乗り出すが、村の開発を巡り疑わしい住人が次々と現れて……。MWA賞作歌による人気シリーズ第2弾。 内容紹介より



シリーズ一作目『ブルー・ブラッド』で非常に気になった「ったく」という訳文が今回も多用されていてやや興ざめしてしまいました。ハンドラーの作品のほとんどを訳されている北沢あかねさんですけど、この訳出だけは個人的に違和感を覚えてしまうのです。
さて、設定はコージーミステリに飽きるほどよく見られる、自然と伝統を誇る町に土地開発の手が伸びて、住民同士や開発業者間に問題が持ち上がるというもの。本書では歴史ある学校の建物を改修するか新築するかで新旧の住民が対立している状況です。そしてその状況が老齢の有名芸術家の家庭内にも起きているという二重の設定なっています。そんななか、芸術家の娘が殺されてしまい、狙われたのはもう1人の娘のほうだったのではないかという疑いも生まれて……。
デイヴィッド・ハンドラーは、凝ったトリックやアクロバティックな技法で読者を唸らせるタイプの作家ではなく、人物の裏の姿を描き出して見せるひとだと思うのですが、それでも今回の設定は陳腐すぎているのじゃないかと感じました。科学捜査が進んでいる現代では、実は死体は別の人物だったみたいな流れは無理にしても、開発業者が相変わらずいつも憎まれ役なのは変えてもいいかも。

『ブルー・ブラッド』 デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫
『シルバー・スター』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

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芸術家の奇館 (講談社文庫)芸術家の奇館 (講談社文庫)
(2007/11/15)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『女優志願』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2011-06-17

☆☆☆☆

離婚スキャンダルで苦境に立つ若き天才監督マシュー・ワックスの伝記執筆のため愛犬ルルを伴ってハリウッドに乗り込んだホーギー。マシューを囲む人々には、それぞれ明かされたくない過去があった。そして、ついに殺人が……。愛と憎しみが交錯する映画界を舞台に謎に迫るホーギー。人気シリーズ最新作! 内容紹介より



ネタバレしています!ご注意ください。


いわゆる“悪女もの”と呼ばれるジャンルのひとつでしょうか。薄々、この人が真犯人じゃないだろうかと見当がついて、そのとおりだったのであっけなかったし、動機にも意外性が見られずありきたりで期待はずれに終わりました。主人公ホーギーのスノッブさと甘ったるい雰囲気は相変わらずです。作品に登場する少年時代に観た映画の世界に棲んでいるような若手天才監督と同様に、この主人公も精神的な成長が滞っているみたいに思えて、あんたも他人のことをどうこう言える立場じゃないぞみたいな。以前、この作者の別シリーズの主人公をチャーリー・ブラウンが大人になったようだという感想を書きましたけれど、このスチュアート・ホーグもルルというスヌーピーを従えたチャーリー・ブラウンみたいです。しかも彼の場合は、人気作家の地位からの転落と結婚生活の破綻という人生の挫折を経験しているので、言動がよりいっそうひねくれたり斜に構えたりしたしているようにとれて嫌です。あんたも一回自分自身と向き合ってみて、女性ゴーストライターのカッサンドラに自伝を書いて貰えって言いたい気分になりました。

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女優志願 (講談社文庫)女優志願 (講談社文庫)
(1995/09)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『猫と針金』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2010-09-14

☆☆☆

灼熱の恋が、ヴァージニア州の崩れゆく大農場を舞台に燃えた ― 。南北戦争を舞台のこの大歴史ドラマは、瞬く間にブロードウェイを、ハリウッドを舐め尽くし、世界を圧倒した。だが続編の執筆は作者の事故死後50年間、なぜか禁じられていた。今、執筆を依頼されたホーギーの前にまたまた屍の山が築かれる! 内容紹介より



シリーズ四作目。
相変わらず主人公ホーギーが愛犬ルルあるいは時に元嫁メリリーと交わすソフィスティケイテッド・コメディの台詞みたいな会話もハマればそれなりにそれとなく機転が利いている場合もなきにしもあらずなのですが、ほとんどの場合はパウダーシュガー過多のドーナッツみたいに甘過ぎで知覚過敏をおこしそうな傾向にあります。ホーギーとメリリーのやり取りは、ピーターパンとティンカー・ベルの間の児戯みたいであり、今回はルルにかける飼い主の言葉がいつも以上にベタベタと気持ち悪かったです。
アメリカ人男性作家が好むといわれるイノセンスの影響を作者も受けているのかどうだか、主人公のモラトリアム人間ふうな造形は別シリーズの主人公にも見て取れることで、ひょうひょうとした言動がかなり(設定された)実年齢と乖離し過ぎて不思議さと不自然さを覚えたりします。それがこのシリーズの特徴のひとつなのは分かっていますけれど、作り物感が際立ってわざとらしい印象を受けます。

以下、ネタばれ気味です!ご注意下さい。


さて肝心の事の真相部分はなにげに前作『笑いながら死んだ男』のそれの焼き直し感が否めないわけで、この点は芸がないのじゃないかと思いました。ただ、多少首をひねらざるを得ないようなひねりを加えてはあります。

『真夜中のミュージシャン』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫
『フィッツジェラルドをめざした男』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫
『笑いながら死んだ男』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

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猫と針金 (講談社文庫)猫と針金 (講談社文庫)
(1993/10)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『笑いながら死んだ男』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2010-07-30

☆☆☆

ご存じホーギー・ミステリ本邦第三弾。元超売れっ子のコメディアン、ソニー・デイの自伝執筆のためにロスを訪れたホーグ。だが招かれた豪邸のベッドには、ソニーの写真を肉切り包丁で刺しつらぬいた枕が置いてあった。続いて届いた死の脅迫状。奇矯な娘と別れた二人の妻、迷犬ルルまでが織りなす傑作推理! 内容紹介より



本書がシリーズの一作目なのだそうです。日本ではMWA賞受賞作品である三作目から刊行したみたいで、どうりで読み始めに変な感じがしたのでした。
とにかく、小説が書けなくなってしまった主人公の職業をゴーストライターに設定したというのはすごいなあと個人的に感心して、ただでさえ小説の登場人物の造形という作業は大変気を使うものだろうに、主人公以外の人物に伝記が書けるほどの肉付けを過去にさかのぼって丁寧に、魅力的に、エピソードをも含めてやらなければならないのでしょうから。しかも、本書では喜劇業界ですが、人物が就いた職業にも精通していなくてはいけないだろうし。そんな著者の技術と根気は立派だなと思ったので、セキュリティの厳重な屋敷のごく少人数の住人を容疑者に設けてしまった(事件後、被害者と親しい外部の人物が屋敷内に居たことが明らかになりましたが)ミステリ(犯人捜し)としての失敗は大目に見ようかなと。でもやっぱり、事件の元となった過去の出来事は、非常に嫌なことだったので後味の悪さが残りました。

『真夜中のミュージシャン』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫
『フィッツジェラルドをめざした男』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

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笑いながら死んだ男 (講談社文庫)笑いながら死んだ男 (講談社文庫)
(1992/10)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『真夜中のミュージシャン』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2010-01-14

☆☆☆

MWA賞受賞作『フィッツジェラルドをめざした男』の前作。元売れっ子作家ホーギーと超売れっ子の女優で離婚した妻のメリリー、それに二人の愛のかたみバセットハウンド犬のルルが大活躍のお洒落な都会派ミステリー。スター・ミュージシャンの伝記を依頼されたホーギーの前に死体が……。 内容紹介より



河野万里子さんの訳のせいなのか、わたしにはホーギーの口調が甘すぎて駄目です。別シリーズのミッチ・バーガーあたりはちょうど良いのですけれどね。「ほんとにやさしいのね」、「本当に、本当にやさしいのね」、と元妻に言われるほどの主人公の造型が、某村上さんの作品の主人公に似ているように思えました。『シルバー・スター』を読んだ時に、主人公に感じたイノセンスな傾向が本書の主人公にもあります。しかし、この場合はイノセンスを通り越して子供じみたと言ったほうが近いかもしれません。
構成はミュージシャンとその関係者へのインタビューと主人公と元妻の恋愛話で、インタビューばかりになると単調になるため恋愛話をはさみ込んだのでしょう。でもよく考えると、これが舞台をパリからロンドンへ移し、大量の砂糖(毎回砂糖を引き合いに出して、砂糖には申し訳ないが)をぶっかけてグツグツ煮込み過ぎた、出来損ないのフィッツジェラルドの短編のような雰囲気で、一体この話はこのミステリに必要だったのかなと思いました。ちょっと極端に表現してしまいましたけど。

『フィッツジェラルドをめざした男』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫




真夜中のミュージシャン (講談社文庫)真夜中のミュージシャン (講談社文庫)
(1990/03)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『シルバー・スター』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2009-12-04

☆☆☆

コネティカット州の閑静な村ドーセット。映画批評家ミッチ・バーガーが住むこの地は、若きハリウッド・スター夫婦と二人を追うマスコミのせいで最近騒がしい。そして突然起きた、衝撃的な転落死事件。ミッチと女性駐在デズが死の真相を探る中、人々の意外な素顔や関係が明らかに……。人気シリーズ第3作。内容紹介より



普段接していても分からない、身近な人物が持つ影の一面がある事件をきっかけにあからさまになる、こういう使い込まれたテーマを、しかもストレートに描いている作品を読んでうんざりしないのは、下世話にいう覗き見趣味とチャーリー・ブラウンが大人になったような主人公のキャラクターのおかげかもしれません。闇の中にあって影が見えないのと同様に、醜悪さや卑しさや奇矯な部分は、日常、表に見せている上っ面がより立派だったり上品だったりしてこそ際立つわけですが、それとともに本書では、イノセンスな傾向にある主人公と彼の恋人の存在と交わされる愛情の深さが光源となって、彼らの身近な人物たちの影をページ上に映し出しているのでしょう。本文中に出てくるキャストシャドウのように。

シリーズ一作目
『ブルー・ブラッド』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫




シルバー・スター (講談社文庫)シルバー・スター (講談社文庫)
(2009/01/15)
デイヴィッド・ハンドラー

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「ブルー・ブラッド」デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2008-07-03

☆☆

ミッチ・バーガーは、NYで最も権威のある新聞のコラムを担当する映画批評家。コネティカット州のビッグシスター島で生活をはじめた彼は、家の前に埋められていた死体を発見してしまう。女性警部補とともに犯人を追いはじめるが、死体の数が次々と増えていく……。MWA賞受賞作家、待望の新シリーズ! 内容紹介より



海外文学を好む者にとって翻訳家はとてもありがたい存在なのでとても悪口、批判など口にできないのですが、個人的に少しだけ気になった部分を言わせてもらいます。
主人公のひとりである警部補が傍白で使う「ったく」という言葉。これはたぶん「まったく」の短縮形だと理解しているのですが、わたしはこの表現がすごく苦手で、一回や二回なら許せますが、これが七、八回も出てくると「ったく」うんざりしてしまいます。
それからもうひとつ、差別化するためなのか、ホーギー・シリーズの主人公は「僕」で、このシリーズのミッチ・バーガーは「俺」になっています。主人公の年齢、高学歴、批評家、映画オタクなどを考えると「僕」と表記したほうが違和感がないような気がしました。

さて、肝心の内容ですが、どうも作者とは相性が悪いみたいで読んでいて退屈でした。何故なのかはよく分かりません。ミッチとデズの視点で交互に書かれる形式に展開が遅く感じさせられるためかも。
犯罪犠牲者である死体の写真を見ながらその絵を描くことが趣味の警部補と悲惨な出来事のせいでPTSDを負っている女性の過去が白日の下に晒されるというのに事件の顛末を新聞記事にしようとする映画批評家、人間性に疑問符がつきそうなふたりの主人公たちはいったいどうなんでしょう。ただ、猫がたくさん登場するのは○。



ブルー・ブラッド (講談社文庫)ブルー・ブラッド (講談社文庫)
(2006/04/14)
デイヴィッド・ハンドラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「フィッツジェラルドをめざした男」デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2006-11-07

☆☆

花々が咲きそろった明るい春のニューヨーク。
バセット・ハウンドの愛犬ルルを連れたもとベストセラー作家の僕は、彗星の如く現われた若き天才作家ノイエスの伝記を依頼された。
が、作業に取りかかった僕の行手には次々と死体が―。
MWAオリジナルペーパーバック大賞受賞のお洒落なアメリカンミステリ。
 内容紹介より 



このホーギー・シリーズは、邦訳としては2作目になるそうです。講談社文庫より計8冊が出ているほどで、ネット上での評価も高いです。が、わたしは読み方のアプローチを間違えたみたいで、『レス・ザン・ゼロ』や『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』風テイストで、現代アメリカ文学を書く上において苦悩する若い作家と彼に降り懸る殺人事件というシリアスでミステリアスな作品だろうなと思って読み始めました。ところが、何のことはない軽めのハードボイルドみたいな、あるいはテレビの二時間サスペンスドラマみたいな作品でした。文学的で深刻なストーリーを想像していたのに…。そこで、わたしは声を大にして言いたい、軽々しくフィッツジェラルドの名前を出すな!と。
前半部分の緩慢な展開にイライラし、ドラマ作家らしい類型的な人物設定ならびにプロットには新しさを感じませんでした。題名に惑わされず、コージー系風(?)のミステリとして読んだ方が良いみたいです。

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