「バック・イン・ザ・ワールド」トバイアス・ウルフ 中央公論社

2008-03-03

☆☆☆☆

現代アメリカ文学随一の実力派作家が描く「ヴェトナム以後」。「アメリカの夢」が崩れ、道を見失いかけた時代。ひたむきで、不器用にしか生きられない心優しい人びとの、孤独と不安、ひそかな願いを、深い共感をこめて描く10篇。 内容紹介より



「お待ちかねのアトラクション」、「失踪者」、「「イエス」と言ってよ」、「貧乏人はいつもすぐそばにいる」、「シスター」、「兵士の喜び」、「砂漠で立ち往生ー一九六八年」、「ぼくらの話が始まる」、「怪獣リヴァイアサン」、「兄さんはお金持ち」を収録。

「お待ちかねのアトラクション」
十五歳の少女ジーンは深夜まで映画館で働いている。仕事が終わって迎えの車を待つ間、彼女は離婚した父親に電話をするが、電話に出たのは継母だった。その後、母親にかけると幼い弟が出て母親は男友達と外出したと言う。そしてジーンはまったく知らない人にいたずら電話をする。この作品のテーマは少女の孤独で、彼女の寂寞感を現していると思います。彼女は誰かと話したいのではなくて、彼女と話をしたい人を求めているのでしょう。しかし、一番長く話しをした人物がいたずら電話の相手というのがかなり皮肉です。
ジーンはただ一人彼女を必要とする弟のために、プールに沈んだ自転車を引き上げようと
冷たい水の中に潜っていきます。

「「イエス」と言ってよ」
「白人は黒人と結婚すべきだろうか」という話に入り込んだ夫婦の話。レイモンド・カーヴァーっぽい物語。夫が妻の疑問に答えてから、長年連れ添った妻が見知らぬ他人になってしまう。それでも夫は事を穏便に済ませようと妻の機嫌を取ろうとする。
ジュンパ・ラヒリの「停電の夜に」に描かれた夫婦間の齟齬を思い起こしました。
(『SUDDEN FICTION 超短編小説70』(文春文庫)では、「問いかけ」というタイトルで収録。)

「シスター」
O・ヘンリー賞、受賞作品。いかにもミニマリズムな作品。「顔を上げて!」のフリスビーの出来事に続く、「巨大な白い車」に轢かれそうになる二つのアクシデントの連続は過剰な印象を受けます。

作品全体を一言で言うならば、判りやすいレイモンド・カーヴァーか。そこらあたりが読者に取って評価の分かれ目かもしれません。

飛田茂雄氏が、訳者あとがきで各作品について詳細な解説をされていて参考になります。



バック・イン・ザ・ワールド バック・イン・ザ・ワールド
飛田 茂雄、Tobias Wolff 他 (1991/04)
中央公論社

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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

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