「恋するA・I探偵」ドナ・アンドリューズ ハヤカワ文庫

2007-04-26

☆☆☆☆

健気でチャーミング、でもちょっと傷つきやすいチューリングは女の子型人工知能。ネットワーク上のあらゆるデータにアクセス可能な彼女は、顧客の検索を手助けするリサーチャーとして大人気だ。だがある日、彼女を作ったプログラマーのザックが突然失踪する。彼に密かな恋心を抱くチューリングは名作ミステリを読み読み探偵術を覚え、彼の行方を追いはじめるが……人気作家の新シリーズ第1弾。アガサ賞最優秀長篇賞作品。
内容紹介より



SF作家が書いたSFミステリは、この場合のミステリとは推理小説、探偵小説という狭義の意味ですが、極端にいうとアメ車がロケットに、拳銃がレーザーガンに、そして殺人の被害者が人間から異星人へ置き換えられただけの基本的には従来のミステリを踏襲した作品が多かったように思います。しかし、この作品はミステリとSFを上手く融合させ新しい境地を開いた、ある意味エポック・メーキングな作品ではないかと(少し大袈裟ですが)。しかも、ミステリ作家側から書かれたというのが何か意味深いものを感じます。

確かにA・Iのモノローグは冗長な気もします。また、真犯人の見当は早めにつきますし、後半部分に強引な展開も見受けられますが、それでもこの画期的な形式の近未来SFミステリの評価を損ねるものではないでしょう。

チューリングがほかのPCへ自分自身をダウンロードしようと考えた時の恐れとためらいの気持ちは、自分とは何かという人工知能の自我の目覚めを描いているように読めました。この辺り、ドナ・アンドリューズは侮れません。


恋するA・I探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)恋するA・I探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/08/09)
ドナ・アンドリューズ

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

「野鳥の会、死体の怪」ドナ・アンドリューズ ハヤカワ文庫

2006-09-28

☆☆

静けさを求めてわたしが訪れたのは野鳥の島。なのに嵐で島は大荒れ、トラブルメーカーの両親までついてきて静けさは遥か彼方。おまけに見つけた死体が母の昔の男だったせいで、父に殺人容疑が!父の容疑を晴らしたいけど、島を牛耳るバードウォッチャーは人殺しより、時を同じくして起きた鳥殺しに夢中で、調査も荒れ模様。素人探偵メグと変人軍団に安息はない。大好評のユーモア・ミステリ『庭に孔雀、裏には死体』続編
              裏表紙あらすじより



凡作だと思うんですけど…。展開がだらだらしていて、盛り上がりに欠けたまま終わってしまった感じです。謎もかなり地味ですね。登場人物が多く、話を広げたわりには、掘り下げかたが甘く浅薄な印象を受けました。嵐が迫り交通が途絶した島というシチュエーションは魅力的なだけにもう少し捻るなり、さらに事件を起こすなりして欲しかったと思います。
ユニークな身内が絡んでくるのは面白いのですが、鳥つながりということでは、『庭に孔雀、…』に登場していた甥のエリックとペットのアヒルを出した方が犬のスパイクよりも良かったかも。おかしなバードウォッチャー集団もカリカチュアとしては従来通りの描き方でありふれていて、あまり笑えませんでした。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「庭に孔雀、裏には死体」ドナ・アンドリューズ ハヤカワ文庫

2006-05-28

☆☆☆☆

わたしは母と親友と弟、三つの結婚式の花嫁付添人を頼まれ、式の準備に追われていた。衣裳選び、式に彩りを添える孔雀の調達などと、やることは山ほどあるのに、家の裏から死体が見つかったせいで、ミステリ好きの父にひっぱられて犯人捜しをするはめに……スーパーウーマン、メグと変人揃いの親戚一同の活躍、謎解き、ユーモア、ロマンスが融合したアガサ賞、アンソニー賞、マリス・ドメスティック・コンテスト受賞作。
                    裏表紙あらすじより



『このミス』では、コージー系バカミスに選ばれていたと思いますが、ミステリが苦手なひとにはお勧めの作品ではないでしょうか。読みやすくテンポも良く、話が込み入っていないしミステリぽくないし。三組の結婚式の準備をしなければいけない主人公メグが、わがままな注文ばかりする花嫁たちに、たいしてキレもせず、愚痴をこぼしながらも粛々とスケジュールを進めていく姿はちょっと出来過ぎな気もしますけれど、主人公に好印象を持ちやすくなる設定ですね。登場人物のなかでは、主人公の父親のドクター・ラングスローと甥のエリックがキャラクターとしては特にユニークでした。

ただし、長いわりに薄味な感じがするのでミステリ好きには物足りないかもしれません。ソフィ大おばさんの遺骨の扱いや、主人公の父親が細工された車で死にそうになる場面、さらに草刈機に追いかけられて死人がでる場面など、いわゆる「死」というものには対してはスラップスティックなノリなので、より一層軽い感じがします。とにかく、良くも悪くも余韻を残さないエンターテイメント・ミステリでした。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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