「ハートブレイク・カフェ」ビリー・レッツ 文春文庫

2006-01-06

☆☆☆☆☆
マンディーノよりレッツで泣け。

「ホンク&ホラー近日開店」という名のドライブインのオーナー、ケイニーは青年時代に数々のロデオ大会で優勝した経歴を持っていた。しかし、ベトナム戦争で負傷し、車椅子生活を余儀なくされてから、開店以来12年間一度も店の外に出たことがなかった。その店にはケイニーの母親代わりで、夫と死別した上に娘にも家出されたモリーがウェイトレスとして働いていた。そこに最愛の姉を亡くし各地を放浪してきたヴィーナ、妻を母国に残したままのベトナム人のブーイが流れ着く。そして、ケイニーの止まっていた人生の歯車が動き始める。

アン・タイラーの『ここがホームシック・レストラン』くらいちょい恥ずかしめの大衆的な題名ですね。原題の『THE HONK AND HOLLER OPENING SOON』を使ったほうが読者の興味を惹いたのではと思います。

オクラホマの田舎町のドライブインを舞台に、そこに集う人たちの物語。
アン・タイラーが出たついでに比較させてみると、タイラーの作品はいかに家族と言えども分かり合えたりしないという皮肉なテーマを持っていますが、レッツは、たとえ異質なものでさえお互いが理解し合うことができると言いたいのではないでしょうか。それは訳者あとがきで松本剛史氏が書くように「ひたむきな誠実さ」のようなものを持ってすれば。

内容は確かに甘いです。ラストも大甘。前作のほうが主人公たちに厳しかったと思う。
しかし、お疲れ人生にはこういう話が必要な時もあるもので、なぜかジワジワと涙腺が緩んでくる物語です。
それは喪失感から溢れ出るような大粒の涙ではなくて、ブーイやガリリーに表されるような“真摯さ”を前にした時に自然に滲み出るような涙です。

最後に、オグ・マンディーノに恨みがあるわけではないけれど、彼は少々あざとすぎな…(略)

テーマ : 紹介したい本
ジャンル : 本・雑誌

「ビート・オブ・ハート」ビリー・レッツ 文春文庫

2005-11-29

☆☆☆☆☆

甘ちゃんと呼べば呼べ!わたしはこれで泣きました。

「17歳の少女ノヴァリーは、赤ん坊を身ごもって七か月目に、オクラホマの小さな町でボーイフレンドに置き去りにされてしまう。故郷を捨て、西海岸での新生活を夢見ての旅だったのに。」                       裏表紙あらすじより

文春文庫編集部の海外小説担当部(そんな部署があるかどうかは知りませんが)は、たまにとても良い仕事をしますね。たとえば、M・グライムズのジュリー警視シリーズ、R・マキャモンの「少年時代」、A・タイラーの諸作品など。
そして、この作品もかなり良質な小説です。

作者は、数多くの短篇を書いている経験があり、さらに大学で創作を教えているだけに、短い章を重ねてストーリー展開をスピーディーにしたり、ノヴァリーの恋人だったウィリーの場面を挿んで読者を飽きさせないようにするなど、構成に長けていると思います。また、主人公の不幸な境遇や彼女を囲む善人ばかりの登場人物など、下手すると歯の浮くような甘ったるい物語になりかねないのだけれど、作者は抑制した筆致で、少女の成長物語を語っています。(後半部分に“偉大なるメロドラマ”風なところもあるけど)
登場人物の配置が少しパターン的なところや特定の人物の背景描写が物足りないところ
などはありますが、そんなことは気にならないほど良い作品です。

けなげな主人公に、アメリカ文学の中にあるイノセンスを見たように思いました。

テーマ : オススメの本
ジャンル : 本・雑誌

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