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『ローズマリーの赤ちゃん』アイラ・レヴィン ハヤカワ文庫NV

2017-01-22

Tag : ホラー

☆☆☆☆

おぞましい悪夢にうなされた夜、ローズマリーは身ごもった。そのときから、彼女の平穏な日々は奇怪な様相を呈し始める。しきりに襲う腹部の異常な激痛と生肉への執着、そして医師や隣人や夫の不審な言動。そのうえ、彼女に何かを知らせようとした友人は怪死を遂げた。だがそれさえも彼女に迫り来る恐怖のほんの序章にすぎなかったのだ!サスペンスの鬼才が大都会に住む現代人の狂気と孤独を描いたモダンホラーの金字塔 内容紹介より



『ステップフォードの妻たち』でも感じたことですけれど、この作家は時節の経過や時間の流れをさりげなくスムーズに流れるように描くのが非常に巧いです。草木がどうした、天気がどうだ、とかいう余計な描写を極力省いているように思いますし、それが読みやすさに繋がっているようにも感じます。
悪魔主義者たちの醜悪な企みなのか、それとも妊娠による身体の変化が原因で精神も変調をきたした単なる思い込みなのか、過去に数々のスキャンダラスな事件や事故が起きているアパートに越してきたヒロインの身に降り掛かる出来事。彼女が正しいのか、あるいは周囲の人たちが正しいのか、こういう構図は『ステップフォードの妻たち』においても見られましたが、本書ではもう少しヒロインのパラノイア傾向を強調して、読者を惑わせても良かったのではないかとも感じました。一方、悪魔主義者たちの真の意図が衝撃的であるとともに、また、母親になったヒロインの変化に捻りが設けてあって、それがこの作品をただのホラー小説に止まらない味付けをしている印象を受けました。かつ、とりようによっては、これからの行く末にほのかな希望をもたらしているような気もします。日本人に対するステレオタイプな一面が描かれているところには苦笑いしかでません。

『ステップフォードの妻たち』

ユーザータグ:ホラー




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『恐怖の愉しみ 下』デ・ラ・メア 他 創元推理文庫

2017-01-19

Tag : 短編集 ホラー

☆☆☆

怪談は語り口がすべてである。そしてその醍醐味は短編にあるといっても過言ではない。本書は、幽霊怪談の嚆矢ともいうべきデフォーの『ミセス・ヴィールの幽霊』を頭に,レ・ファニュ、E・F・ベンスン、デ・ラ・メア、A・E・コッパード、ヒュー・ウォウポール、そしてW・W・ジェイコブズら総勢二十四人の手練による〈百物語〉の真打ちである。英米の会談を訳しては名匠とうたわれた平井呈一が、みずから選び抜き、腕に縒りをかけて訳出した名品の数々。まさに恐怖の愉しみを味わうには絶好の書! 下巻内容紹介より



「失踪」ウォルター・デ・ラ・メア、「色絵の皿」マージョリ・ボーエン、「壁画のなかの顔」アーノルド・スミス、「一対の手—ある老嬢の怪談—」アーサー・キラ=クーチ、「徴税所」W・W・ジェイコブズ、「角店」シンシア・アスキス、「誰が呼んだ?」ジェイムズ・レイヴァー、「二人提督」ジョン・メトカーフ、「シャーロットの鏡」ロバート・H・ベンスン、「ジャーミン街奇譚」A・J・アラン、「幽霊駅馬車」アメリア・B・エドワーズ、「南西の部屋」メアリ・E・ウィルキンズ=フリーマン。
下巻には以上の十二編が収録されています。


「失踪」幽霊も悪魔も骸骨も出て来ない話、結局人間の所業がそんなものよりも恐ろしいということなのでしょうか。デブで大柄な幽霊という見た目が可笑しいし、実は性別も……なのですが、趣味の品物に執着して孤独を紛らわせる姿に哀れさを感じる「色絵の皿」。悪魔、魔物封印系の話壁画のなかの顔」。幼くして亡くなったこどもの幽霊、生前暮らした屋敷から離れられず、移り住んでくる住人を選べない、いたいけな幽霊の「一対の手—ある老嬢の怪談—」。死を呼ぶ幽霊屋敷に肝試しで一夜を過ごそうとする四人の男たちに起きた恐怖体験談「徴税所」。偶然見かけた骨董品店で、安く買い求めた品が非常に高価なものだと知った客の男は、オークションで手に入った売上金の半分を返金しようと再度店を訪れるが……、「角店」。ショートショートホラーの「誰が呼んだ?」。不思議な味わいの「二人提督」。十三人の神父が語る奇譚三編が収められている「シャーロットの鏡」。差出人の名前のない、芝居の切符を受け取った男が体験したへんてこな話「ジャーミン街奇譚」。道に迷った男が乗り合わせた乗り合い馬車は「幽霊駅馬車」。下宿人をおいている屋敷を切り盛りする姉妹、亡くなった叔母の使っていた部屋で起きる気味の悪い現象を描いた「南西の部屋」。
収録作品はバラエティの富んでいるため、読んでいて飽きません。『淑やかな悪夢 英米女流怪談集』『怪奇礼讃』にも作品が収められている作家が目につきました。

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『M・R・ジェイムズ傑作集』M・R・ジェイムズ 創元推理文庫

2017-01-16

Tag : 短編集 ホラー

☆☆☆

M・R・ジェイムズの怪奇小説は古典的であり、その恐怖と戦慄の盛り上がりは、まさに「怪談」の名をほしいままにしているといえよう。彼の生み出す妖魔たちは、読者にもその気味の悪い手をふれてきそうなほどなまなましい。古い銅版画の中で妖怪が動きまわるという奇怪な作品「銅版画」、あるはずのない十三号室が実は存在するという「十三号室」などをはじめ、迷路をテーマに悪夢のような世界を描きだした特異な作品「ハンフリーズ氏とその遺産」を含む17編を収録。 内容紹介より



「消えた心臓」「銅版画」「秦皮(とねりこ)の木」「十三号室」「マグナス伯爵」「笛吹かば現われん」「縛り首の丘」「人を呪わば」「ハンフリーズ氏とその遺産」「ウィットミンスター寺院の僧坊」「寺院史夜話」「呪われた人形の家」「猟奇への戒め」「一夕の団欒」「ある男がお墓のそばに住んでいました」「鼠」「公園夜景」

収録作品は、黒魔術、秘儀、魔法といったものにはまった人物が起こした事件、または彼らが遺した品物が起こす出来事を元にした話を伝聞形式で表したものが多いように思います。読む前にはおどろおどろしい様式美を帯びたゴシックホラーをイメージしていたのですけれど、意外にも実際には軽口をまじえるところがあって、予想していたより重々しく感じなかった印象でした。作品は良い意味でベーシックな怪談であり、行間から血液体液や肉片が飛び散るみたいなスプラッターやモダンホラーとは正反対に位置しています。
有名な「銅版画」は、画のなかの気味の悪い何者かが動き回って、ある事件を再現する話。「呪われた人形の家」も同様に、ある一家に起きた凄惨な事件がドールハウスで再現されるという話。過去を映しだす望遠鏡の「縛り首の丘」。「秦皮(とねりこ)の木」は、魔女裁判にかかわった地元の名士が魔女に呪いをかけられ、一家の跡継ぎが奇妙な死に方をするのですが、とねりこの木に巣食う生き物が非常に無気味です。存在するはずのない部屋が出現する「十三号室」に宿泊するものは……。

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『怪奇礼讃』E・F・ベンスン/A・ブラックウッド 他 創元推理文庫

2016-12-28

☆☆☆

本書は怪奇小説のアンソロジーである。19世紀末から20世紀前半にかけての、英国の古風な、それでいて少しひねくれた、変わった味の作品を中心にまとめたものである。不思議な話、変な話、謎めいた話、そしてなおかつ怖い話を……。ベンスン、ダンセイニ,ブラックウッドをはじめ、怪談通を唸らせるウェイクフィールド、ボウエン、バレイジ、奇妙な味わいのマクダーミッドやトマス、怪奇にユーモアをしのばせたベアリング=グールドやアラン、そして極めつきの恐怖譚、ベリスフォード「のど斬り農場」……巨匠の名品から知られざる作家の幻の逸品まで、本邦初訳作を中心に22編を厳選。古雅にして多彩な怪奇小説をご賞味あれ。 内容紹介より



収録作品、
「塔」マーガニタ・ラスキ、「失われた子供たちの谷」ウィリアム・ホープ・ホジスン、「よそ者」ヒュー・マクダーミッド、「跫音(あしおと)」E・F・ベンスン、「ばあやの話」H・R・ウェイクフィールド、「祖父さんの家で」ダイラン・トマス、「メアリー・アンセル」マーティン・アームストロング、「「悪魔の館」奇譚」ローザ・マルホランド、「谷間の幽霊」ロード・ダンセイニ、「囁く者」アルジャナン・ブラックウッド、「地獄への旅」ジェイムズ・ホック、「二時半ちょうどに」マージョリー・ボウエン、「今日と明日のはざまで」A・M・バレイジ、「髪」A・J・アラン、「溺れた婦人」エイドリアン・アリントン、「「ジョン・グラドウィンが言うには」」オリヴァー・オニオンズ、「死は素敵な別れ」S・ベアリング=グールド、「昔馴染みの島」メアリ・エリザベス・ブラッドン、「オリヴァー・カーマイクル氏」エイミアス・ノースコート、「死は共に在り」メアリ・コルモングダリー、「ある幽霊の回顧録」G・W・ストーニア、「のど斬り農場」J・D・ベリスフォード。

ミステリーソーンやトワイライトゾーン系の話が好きな方にはお勧めしたい、ホラーに偏らない一風変わった作品が収録された短篇集です。以下、主な作品の感想です。

出征した婚約者が戦死し、宿泊所を兼ねたパブの主人と結婚した女性。日常生活を淡々と過ごす彼女の唯一の心の癒しは、海に面する丘に登って最愛の婚約者の幽霊と過ごすこと。彼女の痛切なある願いが、宿泊客の一言で叶えられる。とても哀切漂う作品「メアリー・アンセル」。
アレクサンドリアで商売をする英国人の主人公は、金のこととなると非常に冷酷になる人物。借金のかたに店兼住居を取り上げ、貧しい一家を立ち退かせるが、その家族のなかの老婆が彼にむかって呪文を唱えると、その夜から歩く彼の後から足音が聴こえるようになり、彼を悩ませる。オチが日本の怪談話のような「跫音」。
物乞いに呪いをかけられた雑貨店の店主。店の窓の外で繰り広げられるミステリーゾーンみたいな時の錯綜劇「今日と明日のはざまで」。
未来で起きた事故あるいは事件によって幽霊になった考えられる女性の亡霊が現代に現れる話。かなり奇抜な着想が面白いし、女性の身に何が起きたのかを考えると恐い「溺れた婦人」。
「塔」は、廃墟と化した村に残された「犧の塔(四百七十階段)」と呼ばれる建築物。そこを訪れた新妻の無気味な体験。こういう怪談話の場合は、地下墓地に降りていく話が多いと思うのですが、この作品は登って降りてくる話です。でも、降りても降りても……。
「死は素敵な別れ」は、面白みのない、謹厳なプロテスタントの妻にうんざりしていた夫が、その妻が亡くなったため若い女性と結婚しようとする。それを快く思わない妻の幽霊が夫の邪魔をするというホラーコメディ。婚約者との結婚を諦めようと彼が訳を話すと、実は婚約者にも幽霊が取り憑いているというのだった。メイ・シンクレアの「証拠の性質」も似たような設定でした。同じくホラーとコメディが融合した「のど斬り農場」。
シオドア・スタージョンの「それ」のように、太古から地球に存在する得体の知れないもの。それと接触し、無情を感じさせる「谷間の幽霊」、知識、知恵、芸術、宗教、思想が書物を通してそれに浸透し、来る者に囁きかける「囁く者」、それが実体化して人間界に潜み、接触した一部の人間に悪を感じさせる「よそ者」、善悪に別れた二つのそれ(魂)が巡り会って、善が悪によって攻撃される「オリヴァー・カーマイクル氏」。
事故死したばかりの老人の過去がよみがえる「「ジョン・グラドウィンが言うには」」、 バスに轢かれた男が数年間の幽霊としての日常と意見を語る「ある幽霊の回顧録」、生者と生前彼と親しかった死者たちがある孤島で巡り会う、せつない「昔馴染みの島」。

今年最後の更新になります。当最果ての孤島ブログを訪れて頂いた皆様、誠にありがとうございます。どうぞ良いお年をお迎え下さい。

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『たたり』シャーリイ・ジャクスン 創元推理文庫

2016-12-19

Tag : ホラー

☆☆☆☆

八十年の歳月を、闇を抱いてひっそりと建ち続ける〈丘の屋敷〉。心霊学研究者のモンタギュー博士は調査のため、そこに協力者を呼び集めた。ポルターガイスト現象の経験者エレーナ、透視能力を持つセオドラ、そして〈屋敷〉の持ち主の甥ルーク。迷宮のように入り組んだ〈屋敷〉は、まるで意志を持つかのように四人の眼前に怪異を繰り広げる。そして、図書館に隠された一冊の手稿が〈屋敷〉の秘められた過去を語りはじめるとき、果して何が起きるのか?〈魔女〉と称された幻想文学の才媛が描く、美しく静かな恐怖、スティーヴン・キングが「過去百年の怪奇小説の中で最もすばらしい」と絶賛した古典的名作、待望の新訳決定版。 内容紹介より



本書は2008年に改題して、現在は『丘の屋敷』という邦題になっています。
ホラー小説の歴史には疎いのでわかりませんが、この作品はポルターガイストを扱った、屋敷を舞台にしたホラー作品のタイプ標本みたいな位置づけなのでしょうか。幽霊や化け物は登場せず、屋敷そのものがモンスターみたいに描かれているので……。
十一年間にもわたって母親の介護をしてきた三十代後半の独身女性エレーナの視点から物語が語られていく構成になっていて、これは彼女ひとりの精神状態、心理の変化に読者の目を向けさせる意図があるとしても、ときどきは他の登場人物のそれを挟んでも良かったような気もします。これはどういう事情があって館が化け物屋敷化したのかという説明がすっぽり省かれている点にも言えることで、ある程度の経緯なりがあればと、物足りなさを少々感じました。一方、エレーナが世間知らずの夢想家だという状況説明が屋敷に向かう道中でなされるのですが、いろいろはトピックを織り交ぜていて非常に巧妙です。屋敷によって、そんな彼女のいわば純粋な心の隙を突かれ、つけ込まれ、徐々に精神の変調をきたす過程が微細に紡がれていきます。

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『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン 学習研究社




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『黒い玉』トーマス・オーウェン 東京創元社

2016-12-16

Tag : ホラー 短編集

☆☆☆

夕暮れどきの宿で、彼がつけた明かりに驚いたかのように椅子の下へ跳び込んだそれは、かぼそい息づかいと黄楊の匂いを感じさせる奇妙な“黒い玉”。その正体を探ろうと、そこを覗き込んだ彼を待ち受けるのは、底知れぬ恐怖とおぞましい運命だった―。ベルギーの幻想派作家トーマス・オーウェンが描く、ありふれた日常に潜む深い闇。怖い話、気味の悪い話など十四の物語を収録。 文庫版内容紹介より



収録作品
「雨の中の娘」「公園」「亡霊への憐れみ」「父と娘」「売り別荘」「鉄格子の門」「バビロン博士の来訪」「黒い玉」「蝋人形」「旅の男」「謎の情報提供者」「染み」「変容」「鼠のカヴァール」

幻想奇譚系の短篇集です。単行本に付いている帯の惹句には「傑作「黒い玉」を読まずに怖いと言うなかれ……あえておすすめします。夜、ひとりでお読みになることを。」、とあったので、恐がりなわたしは、あえて昼間にひとりで読みました。「黒い玉」は「変容」と同様に“変身”系のお話で大人の男性が異様な姿形に変わってしまう、かなりシュールな作品です。また、「父と娘」も変身ものですが、侮蔑語で使うビッチと雌犬をあまりにもストレートに結びつけた話。一方、ロールシャッハ・カードのような模様を作り出す遊びのなかで、奇態な生き物を出現させてしまった「染み」。旅行中に偶然見つけたカタコンベ。その棺のひとつを開けて中を覗いた男の婚姻話「亡霊へ憐れみ」。死んだ女性と気づかずに交流してしまう、あるいは愛してしまう「雨の中の娘」と「鉄格子の門」、そしてその別バージョンである「旅の男」。「バビロン博士の来訪」は、自宅で起きる怪異な音に怯えた男が夜中に家の前の路上で出会った人物の話。物への執着を描いた「蝋人形」と「鼠のカヴァール」。妻の知らない姿を知らされた夫に芽生えた疑惑が妄執へ発展する、心の闇を描いた「謎の情報提供者」。目先を変えた、ホラーとユーモアが混ざった佳作「売り別荘」。恐怖が行動を凶行にエスカレートさせる「公園」。

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『黒衣の女 ある亡霊の物語[新装版]』スーザン・ヒル ハヤカワ文庫NV

2016-12-13

Tag : ホラー

☆☆☆☆

広大な沼地と河口に面し、わずかに水上に出た土手道で村とつながるだけ。その館は冷たく光りながら堂々とそそり立っていた。弁護士のキップスは、亡くなった老婦人の遺産整理のため、館にひとり泊まりこむことになる。だが立ちこめる霧があたりを覆うと、想像もできなかった怪奇が襲いかかった……孤立した館にしのび寄る恐怖をじっくりと描きあげ、伝統ある英国ゴースト・ストーリーの歴史に新たなページをひらいた傑作 内容紹介より



じわりと怖い。でも、夜ひとりきりで家にいて眠れなくなりそうなほどではない。だって外国だし、三階建ての古い洋館に住んでないし、家のまわりが水没して孤立する場所でもないし……。だがしかし、もし、これを日本に舞台を置き換え、子持ちの身だったりしたらかなり恐ろしいかもしれない、身近な題材を採ったジャパニーズ・テイストのシチュエーションともいえるので、こういう亡霊が日本にいてもなんら不自然ではないです。なぜならキリスト教的な情感を感じず、悪魔だとか原罪だとか、そんな風味で怖がらせようとはしていないから。いたって普遍的などこの土地にもある母親による子どもへの愛情が物語の基本になっているため、そういうところが日本人に受け入れやすいかたわら、和物の怪談でもよく取り上げられているために、あまり怖くないと感じる読者もいるかもしれません。愛情が強くて深いほど憎悪も激しさを増す、そんなことを感じた物語でした。

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『闇の教室』ジョン・ソール 扶桑社ミステリー

2016-08-27

Tag : ホラー

☆☆☆

頭が良すぎるばっかりにいつも孤独感を抱える10歳の天才少年ジョシュ。二度目の飛び級で彼は、またしても初日から年上のクラスメイトとトラブルを起こしてしまう。しかし弾みで自殺を図ったジョシュが運ばれた病院で、彼は特別な才能を持つ子ばかりを集めた学校バリントンを勧められた。そこならいじめられることもないだろうし、友達もできるかもしれない。そう考えて転校したジョシュに友達はすぐにできた。だが彼はまだ知らなかった。子供たちの間に伝わる学園の恐ろしい秘密を…。ソールが贈る青春ホラーの傑作! 内容紹介より



以下、ネタバレ気味です。ご注意ください!

ホラーといっても、幽霊やお化け関係の話は、学校となっている屋敷の前所有者にまつわる怪談話が少しあるだけで、それ以外の話は出てきません。ようするに、特にIQの高い生徒たちから脳を摘出して、スーパーコンピュータと接続する、というマッドサイエンティストからみのサイエンス・ホラーといったところです。また、内容紹介にある「青春」という言葉は十歳程度の子供を表すのには無理があるような気がします。物語は、自殺した双子の兄弟のひとりと、主人公の親友で行方不明になった女の子が実は……、で、彼らに関わった学校長と寮母の企みを主人公が探る形で進んでいきます。しかし、主人公にはもっと天才的な頭脳を発揮する活躍の場を用意して欲しかったような感じがしました。あと、良い人そうな英語教師のその後の扱いが雑。それにしても、物語全体が本編へと繋げるプロローグみたいで、いよいよこれから佳境に入る、というところで終わってしまった印象を受けました。しかも、パソコンを投げ捨てるという安易な解決法でもって。

『マンハッタン狩猟クラブ』ジョン・ソール 文春文庫




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『ファントム』ディーン・R・クーンツ ハヤカワ文庫NV

2016-07-15

Tag : ホラー

☆☆☆☆

美しい田舎町に異変が起きた。一夜にして全住民五百人が死んだのだ!たまたま町を出ていて助かった二人の姉妹は、生者を捜してゴースト・タウンをさまよった。この惨事の原因は、いったい何か―悪疫、放射能、それとも細菌兵器か?次々と発見される死体は、胸のむかつく異様なものばかり、首や手を切断されてオーブンに入れられた男もいた。そして死体には黒い痣が浮かび、顔には恐怖の叫びが凍りついていた……。 上巻内容紹介より



古代から現代に至るまでに起きた数々の集団失踪事件の謎と正体不明の生き物を結びつけたアイデアによる作品です。集団失踪事件を研究するある学者によって、“太古からの敵”と名づけられたその生き物は、巨大なアメーバ状の形状をしており、食べた獲物の経験や知識を取り込み、自由に形態を変化させることができます。そして、取り込んだ人間の中にある負の感情によって、その生き物は“悪”となり、それを見た人間は“悪魔”と呼ぶようになった、という設定です。つまるところ、人間の心に潜む負の面の怖ろしさを作者は言いたかったのではないかと思いました。妻と息子を殺した男の話もそのテーマに沿ったものなのでしょうけれど、暴走族のリーダーの存在とともにちょっとこなれていない感じを受けました。大団円後の事件は、スケールの大きな設定を矮小化してしまったかのような気もするけれど、めでたしめでたしで終わる流れより、締りがあるし“善”の存在をそれとなく予感させるエピソードとして良かったのではないかと思いました。非常に読みやすい作品でした。

ディーン・クーンツ




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『闇へ降りゆく』ディーン・クーンツ 扶桑社ミステリー

2016-03-14

Tag : 短編集 ホラー SF

☆☆☆

ベトナム戦争から生還し、アメリカで再起を果たしたジェスが手に入れた念願のマイホームには、地下室へ降りる階段があった。深く暗い闇へと続く、彼にしか見えない階段が……モダン心理ホラー「闇へ降りゆく」。遺伝子工学の誤算がもたらした、恐るべき鼠との対決を描くSFサスペンス「罠」。スリのビリーが遭った災難をグロテスクに描いた「ひったくり」。サスペンスからホラー、初期のSFまで、ジャンルの枠を超えたベストセラー作家クーンツの傑作集〈ストレンジ・ハイウェイズ〉からなな編をおさめた第2弾!〈解説・三橋暁〉 内容紹介より



〈ストレンジ・ハイウェイズ2〉。
〈ストレンジ・ハイウェイズ〉の日本での刊行順は、『奇妙な道』、本書、『嵐の夜』です。

「フン族のアッチラ女王」
田舎町に現れた異星人による地球侵略SFで、人間にとり付いて精神を操るこの異星人のタイプはちょっとだけハインラインの『人形つかい』に似ている気がします。しかし、異星人に対抗する手段は、愛の力です。清々しいまでにストレートなテーマなうえに、さらに幸運な結末が良いです。

「闇へ降りゆく」
ベトナム戦争中、捕虜収容所で拷問虐待された経験がある主人公。良き夫であり父親である彼は一生懸命働きようやく家を購入したけれど、キッチンの壁にあるはずのないドアを見つける。それを開けると漆黒の闇、地下へ降りる階段があった。誰の心にも潜む邪悪なもの、醜悪なもの、それに誘惑されてしまいそうになる危うさを描いた、不安な余韻が残る心理サスペンスホラー

「オリーの手」
手で触れることで他人の心を覗き、操ることのできる超能力者と自殺未遂の若い女性の話。彼はその能力を使って彼女を救い、共に生活を始めるが……。超能力を持つが故の孤独、超能力者の影の部分を描いた作品。

「ひったくり」
『ナイト・ソウルズ』に収録されているキングの短篇「ポプシー」は、人間ではない子供を拐った男の話でしたが、この作品は、老婆が持っていた大きなハンドバッグをひったくった男の話です。その中からはもちろんあれが。

「罠」
遺伝子工学によって高い知能を得た鼠が研究所から抜けだして、雪に閉ざされた農場の母子を襲う話。設定が古くなっている感じがしました。

「ブルーノ」
スピルバーグが反重力ブーツを発明し、ディズニーは武器製造業者であるパラレルワールドから、凶悪なエイリアンを追ってやって来た熊の刑事、それに協力する私立探偵の話。〈ホーカ・シリーズ〉とか、『さらば、愛しき鉤爪』などが頭に浮かんでくるSFハードボイルド。

「ぼくたち三人」
新しく出現した種族が現人類を滅ぼし、さらに別の種族を生み出す話。

ディーン・クーンツ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『20世紀の幽霊たち』ジョー・ヒル 小学館文庫

2015-08-04

Tag : 短編集 ホラー

☆☆☆☆

奇妙な噂がささやかれる映画館があった。隣りに座ったのは、体をのけぞらせ、ぎょろりと目を剥いて血まみれになった“あの女”だった。四年前『オズの魔法使い』上映中に十九歳の少女を襲った出来事とは!?(『二十世紀の幽霊たち』) そのほか、ある朝突然昆虫に変身する男を描く『蝗の歌をきくがよい』、段ボールでつくられた精密な要塞に迷い込まされる怪異を描く『自発的入院』など……。デビュー作ながら驚異の才能を見せつけて評論家の激賞を浴び、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞、国際ホラー作家協会賞の三冠を受賞した怪奇幻想短篇小説集―。 内容紹介より



「シェヘラザードのタイプライター」「年間ホラー傑作選」「二十世紀の幽霊たち」「ポップ・アート」「蝗の歌をきくがよい」「アブラハムの息子たち」「うちよりここのほうが」「黒電話」「挟殺」「マント」「末期の吐息」「死樹」「寡婦の朝食」「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」「おとうさんの仮面」「自発的入院」「救われしもの」「黒電話[削除部分]」。以上が収録作品で、クリストファー・ゴールデンの序文と著者による「収録作品についてのノート」も収められています。
内容的には、ホラー、ファンタジー、幻想小説、奇妙な話系です。印象に残ったのは、若くして死んだ女性の映画と映画館への執着を描いた、センチメンタル・ホラー「二十世紀の幽霊たち」、人間の夫婦のあいだに生まれた空気人形アーサー・ロスと語り手の「おれ」との友情を描き、ばかばかしくも哀切が漂う「ポップ・アート」、映画『ゴジラ』みたいに軍隊との死闘を予感させて終わる「蝗の歌をきくがよい」、自閉症気味の弟が造るダンボール製のトンネル状の建物が異世界に通じてしまう「自発的入院」、主人公に、性に目覚める前の“ホールデン・コールフィールド”みたいなイメージが湧いた「うちよりここのほうが」。一方、ありそうな話なのが、「ボタンボーイ」というタイトルの小説の作者を捜す「年間ホラー傑作選」、吸血鬼の存在を信じる厳格な父親とその幼い兄弟を描いた「アブラハムの息子たち」は、雰囲気は高まるが結末にもう一捻り欲しい。末期の吐息を蒐集した博物館を訪れた一家とガイドの話「末期の吐息」は、ラストの予想通りで驚きがない。わけがさっぱり解らなかったのは、『不思議の国のアリス』の中のエピソードみたいな「おとうさんの仮面」。
作者が心がけているであろうミニマムさは大変良いと思うのですけれど、作品のなかには長篇の一章を切り取ったみたいなものもあるのどうでしょうか。(「寡婦の朝食」と「救われしもの」は実際にそうらしい)



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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『ウィンター・ムーン』ディーン・R・クーンツ 文春文庫

2015-01-09

Tag : ホラー

☆☆☆

LA市警の警官ジャックは、ガソリンスタンドへ滑りこむレクサスの美しいボディを見るともなく眺めた。いい車だな。が、死神はそのレクサスに乗っていたのだ。白昼の乱射事件。阿鼻叫喚。ジャックは犯人とおぼしき男を夢中で撃った。市民の味方。“天使の街”の英雄。が、彼の入院中、妻と幼い息子の身には思いがけないことが……。 上巻内容紹介より



物語は、まずジャックが遭遇したLAにおける、ドラッグを摂取した人物による銃乱射事件とその後の経緯を描くともに、大都市を蝕んでいる反社会的行為に言及します。そして一方、そういう問題とは無縁なモンタナの牧場の老管理人の前に現れた不可解な現象を取り上げます。LAとモンタナの二つの舞台が交互に転換して物語が進み、ジャックの家族が生まれ育ったLAを捨てモンタナへ移住することで二つの流れが一つになるという展開です。わたしが感じたのは、これまで読んだクーンツの作品に比べて、かなりメッセージ性が高いのではないかということでした。大都市において住人たちが抱える問題とモンタナに現れたエイリアンを表すものは、ともに“悪意”です。ジャック一家は理由なき“暴力”や“憎悪”から逃れたつもりが、より強いそれと対峙するはめになってしまいます。著者は、人間たちの間にはびこる不気味で理解不能な“悪意”というものをエイリアンを持ちだしてより鮮烈に描き出したかったのではないかというふうに感じました。

遅くなりましたが、皆さんにとって面白い本がたくさん読める一年でありますように。




ウィンター・ムーン〈上〉 (文春文庫)ウィンター・ムーン〈上〉 (文春文庫)
(1995/12)
ディーン・R. クーンツ

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ウィンター・ムーン〈下〉 (文春文庫)ウィンター・ムーン〈下〉 (文春文庫)
(1995/12)
ディーン・R. クーンツ

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『マドンナ』クライヴ・バーカー 集英社文庫

2014-11-26

Tag : 短編集 ホラー

☆☆☆

《脈々と流れる伝統の血》
バーカーは、よく「読むスプラッタ・ムーヴィー」などと言われるように、伝統的な恐怖小説の系譜とは無縁な作家と思われがちだ。彼が起用する不気味な登場人物たちは、映画のスクリーンやヴィデオのモニターの方が似合いそうな顔ぶればかりである。だが、あにはからんやこの一見現代的なバーカーの方にこそ、十八世紀ゴシック・ロマン以来引継がれてきた恐怖小説の伝統の血が脈脈と流れているのだ。 解説・山下康彦 



[血の本Ⅴ]

「禁じられた場所」
社会学の見地から「落書き」についての論文を書こうとして、荒れ果てた公営団地に調査にやってきた女性。彼女はある無人の部屋の壁に描かれた不気味な絵に惹かれるとともに、団地の住人たちから聞いた残忍な殺人事件に関心を持った。しかし、彼女の同僚はその事件の内容から噂話という形を借りて、スリルを求めた住人のついた嘘ではないかと疑う。真相を知るために彼女はさらに住人たちに訪ねて回るが彼らは一転して事件が起きたことを否定し始めるのだった。
チョーキングドーベルマンみたいないわゆるアメリカ的都市伝説を絡ませたホラーで、他人に起きた悲惨な事故や事件について心の奥底ではそれを面白がったり、スリルを楽しんだりする歪んだ心理を描くとともに、そんな人間の心の中に棲んでいる殺人者が、都市伝説を疑う者の前に実体化して現れ出てくるという話。

「マドンナ」
閉鎖されたスイミングセンター。そこを棲家とし、子どもを産み落とす生命体とその子どもの世話をする美女たち。そしてスイミングセンターを《歓楽ドーム》という施設に作り変えようと計画する男と投資家の男。彼らが彼女たちと遭遇した結果……。単為生殖を行っているから“マドンナ”であり、彼女に仕えるのはメスばかりだから男たちがああいう風になってしまったのでしょうね。

「バベルの子供たち」
あてのない旅をしていた女性がイタリアの島で入り込んだ修道院。そこで彼女は修道女の格好をした男たちに銃をつきつけられ、監禁されてしまう。密かに彼女の部屋を訪れた老人から、彼女以外にも修道院に幽閉されている老人たちがいることを知らされる。
荒唐無稽な設定のブラックユーモアなのでしょうが、面白くなくて苦笑しかでてこない。

「夢の中」
刑務所で同房になった新入りの少年の面倒を見ることになった、マリファナの密売で収監された男。少年は彼の母親以外の家族を殺し、絞首刑になった祖父の埋葬された場所を探しているという。少年が来て以来、男は奇妙な夢を見るようになる。それは砂漠の中にある廃墟となった都市で、少年によるとそこは死者が住む街だと言う。男が無人の街の家々に入ってみると、どの部屋にも暴力の跡が刻みつけられた殺人現場なのだった。
殺人者の輪廻転生とでもいうものか。「凶行が終わった直後の状態」のままの殺人現場である様々な部屋が集まって成り立っている街というイメージが滅茶苦茶不気味なんですけど。

クライヴ・バーカー




マドンナ (集英社文庫―血の本)マドンナ (集英社文庫―血の本)
(1987/09)
クライヴ・バーカー

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『図書館警察-Four Past Midnight Ⅱ』 スティーヴン・キング 文春文庫

2014-08-17

☆☆☆

あの図書館には何かがいる。不気味な貼り紙、冷酷な司書、期日に本を返さないと現れる図書館警察。幼い頃の恐怖が甦り、サムの心を侵す。戦え、心の闇を消し去るのだ―恐怖に対決する勇気を謳い、感動を呼ぶ表題作。さらに異界を写すカメラがもたらす破滅を描く「サン・ドッグ」。翻訳者+装幀者による巻末の解説座談会も必読。 内容紹介より



「図書館警察」と「サン・ドッグ」、ともに約280ページ程の作品が収録され、作者自身による作品が生まれた経緯が書かれています。アメリカの子供たちにとって馴染みのある(らしい)架空の存在の“図書館警察”、そして、アイデア自体はそれほど目新しくもない“異界を写すカメラ”。まず、このそれぞれのお題で中篇を書いてみせる著者の筆力、テクニックに呆れながら感心しました。並みの作家なら短篇どまりでしょう。それとともに、中篇に膨らませる技巧が垣間見えるような気がしました。「図書館警察」ではゴミ収集人を登場させて、彼が体験した“司書”の過去と彼女が起こした事件を語らせていますし、「サン・ドッグ」においては、“がらくた屋”にいわくのあるカメラを売付けに馴染みの顧客を廻らせています。特に後者は、作者の創作上の意図が分かりやすく理解できる感じがしました。一方、作品そのものの出来不出来については、個人的に引き伸ばしすぎなのではないのかと思います。「サン・ドッグ」では冗長な印象を強く受けました。好みの問題ですが、こういう素材は短篇で処理したほうが良いような気がします。

タグ:スティーヴン・キング




図書館警察―Four Past Midnight〈2〉 (文春文庫)図書館警察―Four Past Midnight〈2〉 (文春文庫)
(1999/08)
スティーヴン・キング

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『闇が噛む』ブリジット・オベール ハヤカワ文庫HM

2014-08-02

Tag : ホラー

☆☆

交通事故で死亡した親子の死体がいつのまにか遺体安置所から消え失せた―誰かの悪戯だろうと報じる新聞記事を、不気味な予感とともにうけとめた人々がいた。二年前にジャクソンヴィルでの怪事件を経験し、辛うじて生き残った六人の男女だ。またあれが始まった、死者たちがこの世に帰ってくるのだ。彼らは吸い寄せられるように集結し、死者を甦らせる邪悪な存在との対決に臨むが……一読仰天の展開を見せる超絶ホラー! 内容紹介より



本書が未読の『ジャクソンヴィルの闇』の続編だというのを読み始めて知りました。ネタバレ気味なところもあるので、できれば本編を読んでから本書を読むのが無難なようです。『ジャクソンヴィルの闇』は正統派のホラーらしく、本書もだいたい260ページ辺りまでその流れで展開していきます。その後、まさしく「一読仰天」のトンデモ本、スラップスティックホラーとでもいうようなものに変化を遂げていきますが、それが個人的にはかなり首を捻らざるを得ない進展ぶりでした。そもそもゾンビ化した死人が人を襲うというアイデア自体は目新しくもないものなので、同じような話を続けるのも能が無いとでも考えた著者が趣向を変えたプロットなのかもしれません。フレンチテイストを感じた『死の仕立屋』と異なり、本書はまるでジョー・R・ランズデールの『モンスター・ドライヴイン』みたいなアメリカンな印象を受けました。超絶ホラーの惹句に釣られて読んでみたら、別の意味で超絶にあっけにとられること請け合いです。まあ、ホラー作品のパロディの一つなのでしょう。

『鉄の薔薇』
『死の仕立屋』




闇が噛む (ハヤカワ・ミステリ文庫)闇が噛む (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2000/03)
ブリジット・オベール

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テーマ : ホラー小説
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