『修道院の第二の殺人』アランナ・ナイト 創元推理文庫
2014-10-24
煙ただよう古都、ヴィクトリア朝エジンバラ。パトリック・ハイムズは修道院で働く妻と、そこの学校の教師だった女性を殺した罪で絞首刑に処された。しかし、彼は妻の殺害は認めたが、第二の殺人は頑として否認したまま死んだのだった。彼の最後の訴えを聞いたファロ警部補は、新米医師である義理の息子のヴィンスと再捜査を始める。歴史ミステリの大家が贈る、軽快な犯人捜し! 内容紹介より
ジェレミー・ファロ警部補シリーズの第一作目です。
時代設定は異なりますが、同じ歴史ミステリということでポール・ドハティの〈アセルスタン修道士〉シリーズと比べてみると、本書の舞台であるヴィクトリア朝エジンバラが醸し出す雰囲気や庶民の風俗、習慣といったものが非常に希薄に感じました。〈アセルスタン修道士〉シリーズとさほどページ数は変わらないのに、歴史ミステリの歴史部分のこのダウンサイジング感はいかがなものでしょうか。時代の情緒に浸れなかったのは残念です。一方、主人公のキャラクターはなかなかユニークで、部下の人気に嫉妬したり、女優に一目惚れしたり、義理の息子への情愛を示したりする場面など、犯罪者に対する時の強面の警察官とは違った、弱さや心細さを見せる人間味のある造形になっているところは魅力的だと思います。ただ、当時の平均寿命を加味したものなのかどうなのか、まだ三十代後半なのにやたら年齢を気にする点が気になりました。ミステリとしては、恋愛要素を盛り込んでいるために中盤にかけて少々もたもたしているように感じました。ある人物のレッドヘリングとしての使い方はもっと上手く工夫すれば、さらに効果的だったのではないかとちょっともったいなく思いました。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌