『五人のカルテ』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫NF

2015-05-21

☆☆☆

原因不明の高熱、骨折、火傷、心臓停止、激しい胸の痛み。マサチューセッツ総合病院の救急治療室には、さまざまな患者が昼夜を問わず運ばれてくる。ここに医学生として勤務した体験をもとに、超ベストセラー作家が刻々と変化していく医療現場の実態をリアルに再現し、その裏側に隠された問題点を鋭くえぐる!全米で驚異的人気を誇るTVドラマ・シリーズ「ER(緊急救命室)」の原点となった話題の医学ノンフィクション 内容紹介より 



1970年に発表された作品です。
ドラマ「ER」のようなドキュメンタリー・タッチの人間ドラマを予想して読むと拍子抜けします。ドラマの雰囲気が感じられるのは、第一章「ラルフ・オーランド」の25ページから41ページの間だけでした。要するに本書で述べられているのは、医療や病院の歴史、技術,検査の発展、医療にかかる予算、患者の負担金、医者、彼らを補助するコンピューターシステムなどなど。章ごとにひとりの患者を登場させ、彼らの傷病について行われた診察、検査、投薬、処置や手術を記して、その後に関連した上記のテーマを語るという形をとっています。そのなかで興味をひかれたのは、第四章「シルヴィア・トムスン」のなかで、胸の痛みを覚えた彼女が空港の医務室で、オンラインによる遠隔診察を受ける場面でした。
「著者のノート 一九九四年」において、「私が『五人のカルテ』をかいてから二十五年が経つ。最近この本を読み返してみて、医学がいかに変わったか―また、それと同時に、いかに変わらなかったかという点で、大いに驚かされた」(p11)。本書で取り上げられていない重要なものは再生医学(医療)くらいでしょうか。コンピューターによる医療支援システムの開発、導入など、個人的にはあまり変わっていない気がしました。

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『北人伝説』 マイクル・クライトン ハヤカワ文庫NV

2013-07-17

☆☆☆

バグダッドの使節イブン・ファドランは、旅の途上で屈強の一団と遭遇した。彼らこそ勇猛で知られる北人 ― バイキングであった。彼らの客となったイブン・ファドランは、北方のロスガール王国の救援に馳せ参じる北人の勇士十二人に同行することになる。王国は邪悪な死者常食族ウェンドルによって危機に瀕していた。かくして北人とウェンドルの激烈な闘いが幕を開ける!十世紀の北欧に展開する血湧き肉躍る伝奇ロマン。 内容紹介より



十世紀に歴史上の実在の人物が書き残した手記を基に組み立てられたフィクション。どこまでが史実で、どこまでが創作なのか、読者の判断を迷わせるのは作者の手腕の賜物。アラブ人による異国見聞録の形式を採っており、主に北人(バイキング)の信仰から生活習慣、体格、行動様式などの違いが描かれています。何かもの足りない気がするのは、クライマックス部分では踏み出しますが、物語の語り手のアラブ人が観察、記録者の域をなかなか出ないこと。それ故に主人公としては存在感が希薄だったこと。これはバイキングのリーダーにも言えることで、終始、観察対象者のイメージが強く、主人公としてのキャラクターがこちらに迫ってくる感じがしませんでした。ページ数が少ないのも原因なのかもしれません。個人的にバイキングにもこの時代のアラブ人にもあまり興味がなく、クライトンの得意とする虚実とりまぜて語る手法に今回はどうもハマりませんでした。

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北人伝説 (ハヤカワ文庫NV)北人伝説 (ハヤカワ文庫NV)
(1993/04)
マイクル・クライトン

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『大列車強盗』 マイクル・クライトン ハヤカワ文庫NV

2013-06-21

☆☆☆☆

時は1850年代、折りしも勃発したクリミア戦争が、謎の英国紳士ピアースに世紀の大強盗計画を思いつかせた。前線で戦う英軍兵士の俸給用の金塊一万二千ポンドを、輸送列車からかすめ取ろうというのだ!そのためにピアースが集めたのはロンドン名うての悪党ども。警察や銀行、鉄道会社の警備陣を相手に、彼らが繰り広げる大胆不敵な強奪作戦の成否は?ヴィクトリア朝の風俗を盛りこみながらスリリングに描く大強奪小説 内容紹介より



英国で起きた大列車強盗というと、1963年に起きたロナルド・ビッグズの事件を思い出しますが、本作は1855年のヴィクトリア朝に舞台を置いた犯罪譚です。
著者が本書の前書きにおいて、強盗犯たちの「膨大な裁判記録は、当時の雑誌、新聞記事とともに保存されている。これらの資料をもとにして、次の物語は組み立てられたものである。」と記しているように、実際に起きた事件を物語に仕立てた体であり、本文中にもそれらの資料がたびたび出典付きで引用されています。が、実はそういう体裁を装ったまったくのフィクションなのかもしれません。とにかく非常に真実味のあるものに出来上がっていると思います。
一介の農業国だった英国が、植民地の拡大と産業革命によって世界の覇権を握る大国にのし上がり、ぶいぶい言わせていた頃で、新しい輸送手段として鉄道が急速に発展していた時代に、それに目を付けて犯罪を計画する悪党たちの物語です。ただし、首謀者の男は魅力的な風采で、企画力はもちろんのこと、資金力もある人物に描かれています。彼が金庫破りと組み、各所に厳重に保管されている金庫の複数の鍵を手に入れるために、関係者へ近づいたり、買収したり、屋敷や事務所に忍び込んだりする部分がストーリーの主軸となって展開していきます。これにしばしば挿まれる歴史や時代背景が詳しく語られたり、説明されたりするのもこの作者らしいところです。

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大列車強盗 (ハヤカワ文庫 NV 256)大列車強盗 (ハヤカワ文庫 NV 256)
(1981/07)
マイクル・クライトン、乾 信一郎 他

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『サンディエゴの十二時間』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫

2011-06-05

☆☆

サンディエゴ、八月。共和党の全国大会が開かれるその地で、大統領の来訪に合わせて、狂信的極右主義者の大富豪が、恐るべき計画を実行しようとしていた。決行の時が刻々と迫る中、米国務省の情報調査部員グレーブズは、想像を絶する計画の全貌を知るが……。二重三重に仕組まれた大規模な殺戮計画を、彼は阻止できるのか?悪魔的な狡猾さを備えた男とグレーブズの白熱の頭脳戦を描く、戦慄のタイムリミット・スリラー。 内容紹介より



ネタバレしています!ご注意ください。

1972年、ジョン・ラング名義で発表された作品。
たった255ぺージしかないタイムリミット・スリラー。さぞかしクライトンらしく趣向を凝らしてあるのだろうと期待して読んでみましたが、捜査する側も犯人側もなんという緊張感の欠如。そもそも犯罪計画の首謀者を逮捕すると決定し、いつでも逮捕できる状況にあるのにもかかわらず逮捕しなかった主人公はいったい何をしたかったんだろう、という疑問を読者に抱かせる設定がそもそも駄目でしょう。上層部からストップがかかっているというのなら納得しますけど。犯罪計画の全貌が分かっていないにしても、目の前で怪しい格好で怪しい機械をセッティングしているのだから、そこで止めればいいじゃんとか、監視されていることを気にも留めずに堂々と作業する犯人の心理もどうなんだろうとか、読者に思わせるプロットは失敗でしょう。犯人を取り逃がし、あっけなく死なせてしまう場面も間抜けで安易。たまげるほどのネタが裏に用意されているのだろうという期待も裏切られ、クライマックスももたついている印象が強いし、梗概に少々肉付けしたみたいに作品全体が雑な感じでした。

タグ:マイクル・クライトン




サンディエゴの十二時間 (ハヤカワ文庫NV)サンディエゴの十二時間 (ハヤカワ文庫NV)
(1993/03)
マイクル クライトン、Michael Crichton 他

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『緊急の場合は』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫

2011-05-16

☆☆☆☆

中絶手術で患者を死に追いやった容疑で産科医が逮捕された。彼が違法な中絶を手がけていたのは事実だが、この件に限っては身に覚えがないという。無実を信じる同僚の医師ペリーはひとり真相を探り始めた。しかし、関係者は固く口を閉ざし協力しようとしない。いったい彼らは何を恐れているのか?執拗な調査を続けるペリーに、やがて黒い圧力が!アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した迫真の医学サスペンス 内容紹介より



最先端科学技術と恐竜、あるいは中世社会、または精神、これらのつなぎ方をセンセーショナルに、かつ、節度を保ちながら派手に行うのがクライトンの小説作法だと思いますが、医学と妊娠中絶問題を扱った本書では、執筆当時は医学部の学生だった作者の最初期の作品であるためなのか、病院や医師を主に描き、ミステリタッチなこともあって、全体的に地味な感じに仕上がっている印象を持ちました。この人は、作品を書く上で調査、収集した膨大な情報を過剰すぎず、それとなく読者に指し示す技術に長けている人ですけれど、そういう傾向はこの初期の作品にも表れていて、医学の知見を飲み込みやすく、また興味深く盛り込んでいます。その意味では、作者の作品作りの基礎が出来上がっているということでしょう。
この作品の内容は、誰が被害者の中絶手術を行ったのかという謎を追うシンプルなもので、調査する過程で、彼女の家族や関係者の秘密が明らかになっていきます。ただ、病院が舞台だとお決まりの権力闘争とかパワハラとか男女関係のもつれとかいったものが、それほど深く描かれているわけではないので意外でしたし、それでよりいっそう淡々とした雰囲気を感じたのかもしれません。
それから、例外を除いて中絶手術が非合法化されていた当時のアメリカ社会と日本では、作品の捉え方が少々違っているでしょう。

タグ:マイクル・クライトン




緊急の場合は (ハヤカワ文庫NV)緊急の場合は (ハヤカワ文庫NV)
(1993/03/30)
マイクル・クライトン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『恐竜クライシス』ハリー・アダム・ナイト 創元推理文庫

2009-10-11

☆☆☆☆

うちのニワトリ小屋を荒らしているやつがいる!ショットガンを手に飛びこんだ農夫の前に、そいつが立ちはだかった。巨大な爬虫類のような頭部、鋭い鈎爪のついた前肢、太く長い尻尾。デイノニクス、はるか太古に滅びたはずの恐竜。やがて、次々に現われた恐竜たちはイギリスの片田舎の町を襲いはじめた……彼らは、いったいどこから?正真正銘、恐竜パニック小説の決定版! 内容紹介より



マイクル・クライトンの『ジュラシック・パーク』のパ○リみたいですが、実は、あれより六年も早く刊行された作品らしいから、クライトンがパ○ったのか、どうなのか?『ジュラシック・パーク』と比較しても作品の出来は遜色ないと思います。とにかく、遺伝子解析とクローン技術を恐竜再生の道具立てに採用したアイデアはもっと評価されてもいいのにと思います。どうして話題にならなかったのでしょうね。いわゆるネームバリューと呼ばれるものがクライトンのほうが高かったのと、イギリスとアメリカにおけるエンターテインメントのすそ野の大きさの違い*なのでしょうか。内容を比べると、本書は性格に難があって、あまり感情移入できない人物を主人公に配し、『ジュラシック・パーク』は子供をメインにストーリーをまわしていること。絶海の孤島と多くの住民がいる町中とでは、恐竜が暴れまわる舞台としては、やはり後者が映えるわけですが、パニックノベルの設定として考えるとあまりにオーソドックス過ぎているのかもしれません。つまり、『ジュラシック・パーク』は、人が動物園の檻の中へ入っていった話であり、『恐竜クライシス』は、動物園から動物が逃げ出した話に分けられると思います。クライトンが本書を読んでいないわけはないでしょうから、このような相違点を意図的に造り出したのではないのでしょうか。

*特に映画化されたこと。




恐竜クライシス (創元推理文庫)恐竜クライシス (創元推理文庫)
(1994/11)
ハリー・アダム ナイト

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テーマ : ファンタジー・ホラー
ジャンル : 本・雑誌

『失われた黄金都市』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫

2009-09-25

☆☆☆

コンピューターの能力を飛躍的に向上させる鉱石ブルー・ダイアモンド。その鉱脈を求めてコンゴの奥地に分けいった調査隊が何者かに全滅させられた。隊から最後に送られてきた映像には、ゴリラに似た動物の姿と奇妙な建築物の影が。実はこの地には、繁栄を誇った古代文明の伝説があった。真相を究明すべく、女性科学者ロスは第二次調査隊を組織、手話のできるゴリラをともない現地に飛ぶ!ハイテク時代に放つ秘境冒険小説 内容紹介より



個人的に本書をマイクル・クライトンの他作品と較べるとやや評価が落ちます。秘境冒険小説と謳いながら、意図してなのかどうなのかスリリングな場面で妙なはずし方をしてるように感じるんですけど。例えば、ライバルの企業隊の破壊されたキャンプ地を見つけた場面はじわじわと緊張感とか無気味さをたかめながら描いたほうが良かっただろうし、食人種に包囲されて逃げ出す場面は、その脱出するアイデアが秀逸なだけにそれに至るまでの試行錯誤を詳細に描写してあればもっと引き立ったのではないでしょうか。他の冒険小説と違い、両場面ともあっさり書き流している印象を受けました。こういう秘境を冒険する物語を読む時のハラハラドキドキする感じがなぜか湧いてこないのは、ジャングルへと分け入る調査隊が携える、クライトンお得意のテクノロジーや科学理論がまるで光ケーブルで現代社会と彼らを過度に密接に繋いでいるようで、孤立感とか途絶した感じをあまり受けなかったからかもしれません。
単純にサッカーとか野球とかのゲームを楽しもうとしているのに、ゲームの技術理論や使用する道具の説明を並行して進めようとするこの作者の手法が今回は上手くはまらなかったというところでしょうか。

『タイムライン』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫
『アンドロメダ病原体』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫SF
『ターミナル・マン』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫




失われた黄金都市 (ハヤカワ文庫NV)失われた黄金都市 (ハヤカワ文庫NV)
(1990/07)
マイクル・クライトン

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『タイムライン』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫

2009-06-08

☆☆☆

フランスにある14世紀の遺跡で大学の歴史調査チームが発掘したのは、なんと現代製の眼鏡のレンズと助けを求めるメモだった。その直後、調査チームはスポンサーでもある巨大ハイテク企業ITCによって緊急に呼び出された。遺跡発掘の責任者であるジョンストン教授の救出に協力してほしいというのだ。リーダーのマレクをはじめ、チームのメンバーたちは耳を疑った。その行き先というのが、14世紀のフランスだったからだ! 内容紹介より



マイクル・クライトンは、人間と恐竜の遭遇という古くからあるコンテンツに最先端科学技術の遺伝子工学を組み合わせて、あの傑作『ジュラシック・パーク』を書きましたが、本書でも、タイムトラベルとパラレルワールドといういわばSFの世界では手あかのついたアイデアに量子力学(量子コンピューター)をかけ合わせて作品を作り上げています。しかし、単純に比較しても恐竜の跋扈するジュラ紀と甲冑に身を固めた騎士たちが馬を駆けさせる中世フランスでは、後者は前者程にはインパクトがないのは当然なわけで、中世という舞台に立ってからの展開がやはり弱いなという印象を受けました。クライトンのことですからマーケットリサーチなんかをして時代を中世に選んだのでしょうが、捻ることもなく月並みなストーリーパターンでした。また、主人公たちが牢屋から脱出したと思ったら、すぐに牢屋に入れられてしまう箇所はらしからぬ芸の無さを感じました。ただ、権謀をめぐらすレディ・クレアの造形は中世の女性像とは違う描き方で目立っていましたから、もっと主人公たちに絡ませて欲しかったです。

マイクル・クライトンの他作品
『アンドロメダ病原体』
『ターミナル・マン』



タイムライン〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)タイムライン〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
(2003/12/10)
マイクル クライトン

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

『アンドロメダ病原体』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫SF

2009-04-19

☆☆☆☆

アリゾナ州ピードモントは、無人衛星の着地後、瞬時に死の町と化した。現地で極秘裡に衛星の回収作業を行なっていた回収班からの連絡も、やがてぷっつりと途絶えた。どうやら地球外病原体―それも恐るべき致死性を持つ病原体が侵入したらしい。ただちに最高の頭脳と最新鋭のコンピュータによる特別プロジェクトが発動されたが……。地球が直面した戦慄の五日間を徹底したドキュメンタリー・タッチで描く衝撃の話題作! 内容紹介より



医学用語を初めとして科学用語が満載のわりにはとても読みやすかったです。
『ターミナル・マン』の感想にも書きましたが、人間の役に立つはずの最先端科学技術が
一方ではその逆になる可能性を持っている、という著者のテーマがこの作品にも見られます。昔には存在しなかった大規模で致命的な科学的厄災の危険というやつですね。そもそもこの人工衛星は未知の細菌やウイルスを収集するためであり、それらを生物兵器に応用する目的があったのですね。また、無人衛星がアメリカ国内外に落下し、その地域が地球外生物によって汚染された場合には核兵器による〈焼灼〉を行うというシナリオなど実際に現実味があって恐ろしいです。

それから、ちょっと気になったことは、女性が主役として登場していないことです。ドキュメンタリー・タッチの構成で、さらに主要な登場人物が男性科学者のみなのでちょっと単調になっているきらいがあります。科学者チームに一人くらいいたらバリエーションが広がったのではないでしょうか。ラブロマンスがないことは良かったのですが。




アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))
(1976/10/19)
マイクル・クライトン浅倉 久志

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

『ターミナル・マン』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫

2008-11-22

☆☆☆

ロサンジェルスの大学病院に一人の男が収容された。彼の名はベンスン。精神性の発作で暴力をふるう危険な男だった。病院当局は彼の発作を制御するためコンピュータを埋めこむことを決定する。手術は成功したかに見えたが、ある夜、患者つき精神科医のロスが病室を訪れるとベンスンは姿を消していた。しかも不測の事態が発生し、彼は六時間後に制御不能の発作を起こすという。闇に消えた男を追って必死の捜索が始まった! 内容紹介より



11月4日、マイクル・クライトン氏がお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。

恐竜好きなわたしにとって『ジュラシック・パーク』の衝撃がすごかったせいか、この人の作品に精通している気でいましたが、訃報に接し、実はほとんど読んでいないことに今さらながら気が付いた次第です。
そこで故人を偲びつつ、本書から読んでみることにしました。

著者のテーマのひとつである、人間と科学技術との関係、進歩するテクノロジーと生命や心との問題や課題が取り上げられています。あの傑作『ジュラシック・パーク』でも恐竜を復活させる遺伝子工学と生命倫理の問題がありましたが、本書では人間の脳をコンピューターによって制御する精神制御が取り上げられています。この二つの作品はプロットも似通っていて、最先端科学技術の人・生物への応用実験、それに反対ないし批判的人物の存在、計画の成功、なんらかの理由による齟齬の発生、厄災という流れです。
本書は、いかにコンピューターを使って発作をコントロールするのかという部分が興味深く、ベンスンの手術から失踪までは読みごたえがあります。しかし、その後の事件と捜査の部分になると少し盛り上がりに欠ける気がします。

医学やコンピューターについての複雑で難しい事柄を分かりやすく、ストーリーのテンポを落とさず読ませる作者の才能には改めて感心させられました。文中において時代劣化を起こしやすいコンピューターの記述部分がそうなっていないこともすごいですね。



ターミナル・マン (ハヤカワ文庫NV)ターミナル・マン (ハヤカワ文庫NV)
(1993/04)
マイクル クライトン

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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