『沈黙の叫び』マーシャ・マラー 講談社文庫

2016-07-21

☆☆☆

サンフランシスコの私立探偵シャロン・マコーンは、父の死をきっかけに自分が養子だったことを知ってしまう。ショックを受けた彼女だったが、自分のルーツを確かめようと母方の一族であるアメリカ先住民ショショニ族の保留地を訪ねる。しかし、彼女の生い立ちには現在の犯罪につながる事件が隠されていた!? 内容紹介より



本書はシャロン・マコーンシリーズの第二十一作目に当たるそうです。
内容紹介にあるように、ヒロインが実は養子だったことを知り、自分自身を探偵するというのが、今回の趣旨です。自らのルーツがアメリカ先住民であることから、セスナ機までも使って源をたどる調査活動をロードノベル調に仕上げていたらもっと趣きのある作品になったかもしれません。実の両親は誰なのか、どうして養子として手放したのか、というのが謎に当たるので通常のミステリに較べるとサスペンスに欠けていますし、結構地味です。中盤を過ぎたあたりまでそういう具合で、それから事件が起きますが、これもたいして物語を活性化させる効果を果たしていません。出生の秘密を養父母がなぜそこまで頑なに秘密にしていたのか、そのあたりが十分に納得の行く説明がなされていないように感じました。アメリカ先住民の伝統文化とか風習とかの書き込みがあればもうちょっとは興味深い作品になったように思います。

ユーザータグ:マーシャ・マラー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『カフェ・コメディの悲劇』マーシャ・マラー 徳間文庫

2015-09-25

☆☆☆☆

カフェ・コメディの人気女性コメディアン、トレイシーが二年前の雨の夜、突如姿を消した。事件は死体なき殺人と断定され、友人のボビーが逮捕される。女探偵シャロン・マコーンは、無実を訴える彼のため、再調査にのりだす。が、カフェ・コメディのオーナーやボーイフレンド、ルームメイトが語るトレイシー像は奇妙に食い違う。いったい彼女はどんな人間だったのか?人気シリーズ待望の第五話は怖さがいっぱい。 内容紹介より



シャロン・マコーンシリーズ。
死体が発見されないなか、自白と状況証拠のみで死刑判決を受けた黒人青年の上訴を行うため、弁護士の調査員として事件を再調査するヒロインの活躍を描く。果たして、被害者とされる女性は殺害されたのか、あるいは自らの意志で失踪したのか、そして、彼女の本当の姿とは、という二つの疑問を核に、人種差別、貧困社会、家庭内の意識のすれ違い、恋愛や確執を含む人間関係を絡ませて展開していきます。ある人物の隠れた一面や真の姿が徐々に明らかになっていく、という設定はよくあるパターンですが、本書は才能と野心を持った若い女性のみならず、彼女と関わりを持った周囲の人間たちの人物像と関係性もよく描き分けられている印象を受けました。ストーリーは二転三転し意外性があり、ヒロインのロマンスでさえ夫婦間の問題に結びつけ、全体的に非常にバランスの良い作品に仕上がっていると思います。これまで読んだこのシリーズ作品のなかで、一番完成度が高いのではないでしょうか。

『タロットは死の匂い』
『チェシャ猫は見ていた』
『安楽死病棟殺人事件』



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『安楽死病棟殺人事件』マーシャ・マラー 徳間文庫

2010-07-05

☆☆☆

新進気鋭の写真家スネリングのルームメイトジェーンが突然行方不明になった。彼から捜索依頼を受けた“わたし”はさっそく彼女の故郷に足を運ぶ。彼女は帰っていた。しかしその後の消息はプッツリ。調査を進めているさなか、海辺に彼女の刺殺体が……。そして第二の殺人。ホスピスに勤務していたジェーンの過去を探るうちに意外な事実が浮かび上がる。現代の医療問題、死生観をテーマに鋭く迫るシリーズ第三弾! 内容紹介より



〈シャロン・マコーン シリーズ〉です。
前二作品に比べて今回はよりアクションシーンが目立ちます。海岸での犯人との対決はテレビでよくあるサスペンスドラマのラストシーンみたいで、まあ、全体のストーリーからしてTVドラマの原作になりそうな出来です。それくらい分かりやすくて起承転結がはっきりしているということなのでしょう。相変わらず破たんのない筋の運び方を見せているし、意外性のある犯人の設定も手慣れています。でもやっぱり作品の印象は小粒。
何に不満を感じてしまうのだろうか、と考えてみると、ヒロインの出来あがってる感、もう一人前感、こなれているところなのでしょうか。引っ越しとか古い車とか“死生観”とか、悩みが同列化しているといいますか、底が浅くて人間的魅力に乏しいのではないだろうか、この主人公は。

『タロットは死の匂い』マーシャ・マラー 徳間文庫
『チェシャ猫は見ていた』マーシャ・マラー 徳間文庫




安楽死病棟殺人事件 (徳間文庫―シャロン・マコーンシリーズ)安楽死病棟殺人事件 (徳間文庫―シャロン・マコーンシリーズ)
(1991/12)
マーシャ・マラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『タロットは死の匂い』マーシャ・マラー 徳間文庫

2010-05-27

☆☆☆

“わたし”のアパートの隣人モリーが何者かに絞殺された。しかも、三階に住むタロット占い師のアニヤがそれを予言していたという。“わたし”は調査を開始したが、モリーの別居中の亭主や、占い師のお告げを狂信する食料品店の主人などうさん臭い人物がゾロゾロ ― 。チョコレート中毒で鳥恐怖症、八分の一インディアンの女探偵がLAを東奔西走して事件を解決する。微笑と涙が盛り沢山の、シリーズ第一弾! 内容紹介より



このシリーズの一作目は講談社から出版されているらしいので、本書は二作目、『チェシャ猫は見ていた』が三作目になるのですね。
この主人公の探偵業の現状は、所属事務所の給料は安いけれども上司に恵まれているようだし、あくせくして依頼の仕事を探さなくても良いみたいで、そこらは恵まれていますね。作品自体の印象は、木村仁良氏が解説で取り上げられている著者の小説作法に見られるように、かなり手堅く練られているように感じました。女性探偵ものの黎明期の作品にしてはまとまりがあり、特に指摘するような瑕疵が見当たらない。つまり、ミステリの系譜のなかでこの作品はいたって適当、順当なところにありながら、一方、女性探偵ミステリの元始のうちの一作品としてみた場合には今ひとつ癖とパンチに欠ける。いうなれば、主人公が特別に女性である必要性はないのではと思ってしまいました。女性作家が女性探偵を主人公にしてハードボイルド作品を書いた意義は別にして、“女性であることを武器”にしない、最大公約数を求めていったらだた男を女に代えただけの作品になってしまったみたいに、19年経って読んでみたらそんな感想を持ちました。

『チェシャ猫は見ていた』マーシャ・マラー 徳間文庫




タロットは死の匂い (徳間文庫―シャロン・マコーンシリーズ)タロットは死の匂い (徳間文庫―シャロン・マコーンシリーズ)
(1991/08)
マーシャ マラー

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

『チェシャ猫は見ていた』マーシャ・マラー 徳間文庫

2009-04-14

☆☆☆

サンフランシスコに数多く存在する古風なヴィクトリアン・ハウス。その一つの中で“わたし”の友人が何者かに殺された。死体には赤いペンキがベッタリ……。ハウスの保存運動をめぐる確執か、それとも? 唯一の手がかり〈チェシャ猫の眼〉を求めて“わたし”は事件の解決にのりだす。が、〈猫〉を手にした者たちは次々と謎の死をとげていく ―。「不思議の国のアリス」の木の上で笑う猫よ、犯人を教えて! 内容紹介より



シャロン・マコーン シリーズの二作目。この主人公のシャロン・マコーンは、「ハードボイルド型女性探偵*の第一号」(大村美根子さんの訳者あとがきより)だそうです。また、『女探偵で読むミステリ読本』(アスペクト刊 1999年)によると、「ロス・マクドナルドを敬愛するマーシャ・マラーが1977年に創造したシャロン・マコーンは、いわゆる“女性の武器”などを使わず、丹念に調査を重ねて真相を探るタイプ。初の女性私立探偵の誕生である。血の通った現代女性の人格を備えていた」(p9)ということですから、いわゆる女性探偵時代の黎明期において最初に現れたキャラクターなのですね。主人公がペットを飼っていること、警察官と付き合ったり、あるいは対等に渡り合ったりしていること、銃器を携帯し(現在では、銃を持たない探偵が主流になっているのも時代の流れを感じさせますが)、時にはそれを容疑者に突きつけたりすること、現在の女性探偵ものに盛り込まれているひな形を見ることが出来て興味深いです。今の時代からすると、主人公の調査活動はどちらかと言えば大人しめであって、決して突飛な行動をしていないにも係わらず、女性が探偵役をやることは、当時としてはかなり新鮮かつ違和感を持って受け取られたのでしょう。この後、サラ・パレツキー、スー・グラフトンなどの女性ハードボイルド作家が出現したわけですね。

*ミステリ史上初のプロの女性探偵は、P・D・ジェイムズのコーデリア・グレイ。



チェシャ猫は見ていた (徳間文庫―シャロン・マコーンシリーズ)チェシャ猫は見ていた (徳間文庫―シャロン・マコーンシリーズ)
(1991/10)
マーシャ・マラー

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

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