『病院が嫌いな猫』 リタ・メイ・ブラウン スニーキー・バイ・ブラウン ハヤカワ文庫HM

2012-05-13

☆☆☆

事件が起きたのは、クロゼット病院の古いボイラー室。病院の設備管理主任のハンクが首を切り裂かれた死体で発見されたのだ。現場の状況から考えて、行きずりの凶行ではないと思われるが、ではその動機は?保安官たちの捜査をよそに、好奇心を抑え切れなくなったハリーは、いつものように独自の捜査に乗り出してしまう。そんな彼女を心配して、トラ猫ミス・マーフィが率いる動物探偵団も、事件捜査へと立ち上がった! 内容紹介より



〈トラ猫ミセス・マーフィ〉シリーズ九作目。
一応、コージー・ミステリなのに三人も人が殺されるのは殺伐過ぎやしないかと、なかには動機について説明不足でストーリー上必然性を感じない殺人もあったような気がするし、また、ヒロインののんびりした農場暮らしの様子を描いている部分が好みなのですが、今回はのどかな雰囲気があまり感じられなくて残念でした。たかがコージー、されどコージー、ミステリ作品なわけですから、そもそも犯人が犯罪に手を染めるようになった過程を伏線として描かず、結果のみをポンと提示されても面白くなりようがないと思うのですけど、こういった手抜きの傾向は他のコージーにもしばしば見られるところで、さりとて登場人物の魅力に頼ろうにも九作目にもなると人物のキャラクターもマンネリ気味な造形に終始しているし、ここら辺りがシリーズの転換期ではないでしょうか。ただ、未訳の作品があと十作ほどあるそうです。それから、伝統というものにたいしてコンプレックスを持ってそうなアメリカ人読者向けに、キツネ狩り(ただし、殺すのではなく追跡するだけ)というイベントの様子を挿入していますが、このキツネとヒロインのペットたちが絡む場面は用意されていなくて、なにかもったいない感じでした。

『町でいちばん賢い猫』
『散歩をこよなく愛する猫』
『アルバムをひらく猫』




病院が嫌いな猫〔トラ猫ミセス・マーフィ〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)病院が嫌いな猫〔トラ猫ミセス・マーフィ〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2011/04/08)
リタ・メイ・ブラウン、スニーキー・パイ・ブラウン 他

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『アルバムをひらく猫』リタ・メイ・ブラウン スニーキー・パイ・ブラウン ハヤカワ文庫

2010-07-10

☆☆☆

高校卒業から20年。記念の同期会が近づき、ハリーたちは準備に奔走中。そんなある日、同期生たちに謎めいた手紙が届く。そこには「あなたは決して老いない」というメッセージのみが。単なるいたずらと一笑に付すハリーだったが、賢いトラ猫ミセス・マーフィは不吉な予感を覚える。はたせるかな、在学中に人気者だった男が射殺される事件が起き、同期会には暗雲が……人間たちにはまかせられない!動物探偵団始動! 内容紹介より



〈トラ猫ミセス・マーフィ〉シリーズの八作目。
実は実を言わなくてもいいけど実を言うと数あるコージーのなかでも、わたしはこのシリーズが気に入っていて、なぜだろうと考えてみたら主人公のライフスタイルに理由があるのではないかと思い至りました。田舎町の郵便局長であり、自然のなかにある農場を営みながらペットたちとつましい生活を送り、過去の経験からなかなか異性に心を許さず独立心が強いところ。そして、ミステリ作品に登場するペットの多くが室内飼いなのに比べて、彼女のペットたちは、リードを着けることもなく自然の中で活動したり、町なかに現れたりして住民から広く存在を認知されているところ。郵便局の仕事内容や農場での作業も興味深く、主人公もペットたちも閉塞感がなく活き活きしている様子が魅力だと思います。
さて今回は、卒業20周年同期会を控えて準備中の主人公はなにか機嫌が悪く。そんななか、高校時代から女癖の悪かったプレイボーイが射殺体で発見され、連続殺人事件に発展します。降って湧いたみたいな真犯人やその動機についての詳しい背景説明が不足気味でミステリとしては物足りなさを感じました。

『町でいちばん賢い猫』リタ・メイ・ブラウン スニーキー・パイ・ブラウン ハヤカワ文庫
『散歩をこよなく愛する猫』リタ・メイ・ブラウン スニーキー・パイ・ブラウン ハヤカワ文庫




アルバムをひらく猫〔トラ猫ミセス・マーフィ〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)アルバムをひらく猫〔トラ猫ミセス・マーフィ〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2009/01/30)
リタ・メイ・ブラウンスニーキー・パイ・ブラウン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「散歩をこよなく愛する猫」リタ・メイ・ブラウン スニーキー・パイ・ブラウン ハヤカワ文庫

2008-08-19

☆☆

クロゼットの町は大騒ぎになっていた。町をあげて南北戦争の戦闘を再現する歴史イヴェントの開催が近づき、誰もがその準備に奔走しているのだ。騒然とした雰囲気のせいか、それまでは目立たなかった微妙な人間関係までが話題にのぼる。そして迎えたイヴェント当日、再現劇では発射されないはずの実弾が人間に射ちこまれた!右往左往する人間たちを尻目にトラ猫ミセス・マーフィー率いる動物探偵団が事件解決に乗り出した!   内容紹介より



作者としては事件の解決より犬猫のボリショイサーカスもどきの活躍を書きたかったみたいな。南北戦争の再現劇中に銃撃事件が起きる設定は、ジル・チャーチルの『エンドウと平和』に先例がありますから少し二番煎じな印象を受けます。しかも再現劇の話題で引っ張るわけでもないし、町の貯水池計画やタッカーが見つけた骸骨、ハリーの曾祖父にまつわる話とか色々あり過ぎてまとまりが悪い気がします。それから、作者が犬猫たちに言わせる人間についての意見や考えがネタなのか真面目なのか、ユーモアの描きどころで笑えない会話になるんですよね。作者は人間という生き物に生まれたことをはかなんでいるのですか。

以前の作品では飼い主のハリーが曲がりなりにも事件を解決するか、その手助けくらいはしていた記憶があるのですが、今回は主従が逆転してしまって、犬猫らの「知性は高度なのに、人間の尺度では測れなかったということは大いにあり得ることなのだ」(p401)と感心しきりで「無数にある生命形態に対して謙虚な気持ちに」(同)なって変な方向にいってしまい、これまでの彼女の魅力的なところがでていませんでした。たぶん続編が出ると思いますので、それに期待しましょう。




散歩をこよなく愛する猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 15-7 トラ猫ミセス・マーフィ)散歩をこよなく愛する猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 15-7 トラ猫ミセス・マーフィ)
(2007/02)
リタ・メイ・ブラウンスニーキー・パイ・ブラウン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

町でいちばん賢い猫 リタ・メイ・ブラウン スニーキー・パイ・ブラウン ハヤカワ文庫

2005-07-29

☆☆

トラ猫ミセス・マーフィシリーズの一作目ですね。
飼い主のハリーと飼猫のミセス・マーフィ、飼い犬のティー・タッカーが連続猟奇殺人事件を解決するという物語です。

三作目を最初に読んでいたので猫、犬が会話しても大丈夫でした。
そう猫と犬が話し合うんですね!

しかし、これ感想が書きにくい。すらすら読めるしそれなりに面白いけど、なんだかソーメンを食べたみたいで。食べてる間はまあ美味しいけど食べ終わると物足りない。余韻といいますか後に何も残らない。どうしてそうなのか考えるのも面倒くさいくらい。人間の主人公の離婚問題や母娘間の葛藤とかあるんですけどね。まっ、それも添え物のサクランボみたいなもんで。

とにかく殺人の原因となる犯罪と動機がこれではどうなんでしょうね。「かくれんぼが好きな猫」のほうが良く出来てました。

作者は自分の意見を登場人物に饒舌に語らせる傾向があるけど、気になったのは猫、犬の会話の中で飼い犬タッカーが言ったこと。「心の病気に体の病気。もし、わたしに弱い子が生まれたら、わたしはその子を始末するわよ。そうすることが、ほかの子に対するわたしの義務だから。でも、人間は間引こうとはしないのよね」どういう意図があるのだろう?作者は今どき優生思想の持ち主じゃないよね。

ところで、ミステリファンにとってはアーモンドの香りといえば、、、青酸カリが常識ですね、でも青酸カリはカメの臭いにも似てるみたいですよ。猫と犬が言ってます。
猫好きな方にはお勧めです。

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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