『消失点』リン・S・ハイタワー 講談社文庫

2010-04-30

☆☆☆

牧場で少女が馬とともに消えた。シンシナティ警察のシングル・マザー刑事ソノラ・ブレアは、相棒サムと捜査にのりだす。牧場経営者の女性は馬のことばかり心配する異常さ。父親の態度も不審だ。そして少女の日記に書かれた意外な言葉。虐待か家出か、馬がらみの犯罪か?待望の女性刑事シリーズ第三弾! 内容紹介より



以下、ネタばれしています!ご注意下さい。

これが実際に起きた事件ならかなりセンセーションな真相を含んで衝撃的だと思います。しかし、フィクションの題材として取り上げている本書においては作者の切り口が甘い気がしました。少女及び馬失踪事件と馬牧場のオーナーに対する傷害事件の二つが合わせ技で一本のミステリに仕立てられています。プロットは、いわゆる馬牧場ビジネスを主題にしているように装いながら、ミッシングチルドレン問題をその影に隠しているわけです。ただし、ミッシングチルドレン問題を正攻法で取り上げなかったために、作品自体のインパクトが弱められている印象を受けました。やはり、真犯人が一連の犯行に及んだ説明が不足していますから、彼の行状や心情を過去にさかのぼって丁寧に描くなりしていればずっと良い作品になったと思いますが、メインの事件に別の事件を被せてしまう小細工が作品をスケールダウンさせる結果になってしまっています。

さて、今回のヒロインはシングル・マザーながらも、家事、子育てをバックアップしてくれる人物はいませんでした。
女性捜査官が主人公のミステリを三作続けて読んでみて、当たり前ですがそれぞれ違いがあって面白かったです。

『引火点』リン・S・ハイタワー 講談社文庫
『切断点』リン・S・ハイタワー 講談社文庫




消失点 (講談社文庫)消失点 (講談社文庫)
(2001/03)
リン・S・ハイタワー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『切断点』リン・S・ハイタワー 講談社文庫

2009-10-09

☆☆☆

セミナー参加中の人妻が失踪した。夫には「しばらく家へ帰らない」と電話が一度あったきり。宿泊先のホテルの部屋に残された新聞の切り抜きには、法曹界の大立て者である男の写真が……。二人の子供を持つ彼女に何が起こったのか?事件の背後に、邪悪な陰謀を嗅ぎとった女性刑事ソノラの執念の捜査が始まった! 内容紹介より



〈女性捜査官ソノラ・ブレア〉シリーズの二作目。前作の薄気味悪いエンディングを引きずっているのかと思っていたら、まったく影響は見られませんでした。ただ、主人公に前作ほどの個性が見られず普通になったような気がします。今回は、物語の当初から犯人が指名されているため、一種の倒叙物の警察ミステリと言えるのかもしれません。読んでいて意外だったのは、犯人が人気の高い切れ者の検事という設定でありながら、犯人から刑事たちに対する目立った捜査妨害や罠や嫌がらせなどのアクションがほとんどなかったことです。ある種の圧力はかかりましたが決定的になるようなものではありません。通常だと、法律の知識や権力を悪用して、ヒロインを社会的、身体的な窮地に陥れるプロットになりそうなものですが、あえてしなかったのか、どうなのでしょうね。読む人にとってはそこら辺りがもの足りなさを感じるかもしれません。しかし、捜査活動に重点を置き、それが淡々と進められ、犯人に少しずつ近づいて行く様子をストレートに描くという点では上手い選択だったかもしれないです。趣向を凝らしてギトギトした作品を読み付けていると、さっぱりあっさりしたストーリー展開もたまには良いと思います。

『引火点』リン・S・ハイタワー 講談社文庫




切断点 (講談社文庫)切断点 (講談社文庫)
(2000/01)
リン・S・ハイタワー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『引火点』リン・S・ハイタワー 講談社文庫

2009-07-10

☆☆☆

殺人鬼につけられたニックネームは、フラッシュ。実際、目を覆う殺人だった。二十二歳の青年がハンドルに手錠で繋がれて、ガソリンを浴びた体に火を点けられたのだ。捜査官ソアラが死ぬ間際の犠牲者から得た情報は、「犯人は若くて小柄な白人女性。ブロンドで目は茶色」。ゆきずりの犯行か、計画的殺人か?全米話題作! 内容紹介より



講談社文庫の内容紹介の文章では捜査官の名をソアラと記していますが、正しくはソノラです。〈女性捜査官ソノラ・ブレア〉シリーズの一作目。
犯人がサイコパスの女性というのはたまにありますが、シリアルキラーという設定はかなり珍しいのではないのかと思います。女性刑事が主役で恋愛話もある結構オーソドックスなストーリー展開ですが、作品全体は硬質な警察ミステリに仕上がっている印象を受けました。たぶん、サバサバして女を売りにしていないし、終始睡眠不足で、身なりに構う暇がなく、胃潰瘍持ちでというヒロインからあまり女性らしさを感じないせいでしょう。ただ、被害者を焼き殺すという残忍な犯人の肉付けが足りないのか、犯行の原点となる彼女の隠れた心情があまり伝わって来なかったりして細部のイメージに乏しい気がします。得体の知れない薄気味悪さはありますが。



引火点 (講談社文庫)引火点 (講談社文庫)
(1996/12)
リン・S. ハイタワー

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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