『授業の開始に爆弾予告』レスリー・メイヤー 創元推理文庫
2014-07-29
新学期が始まり時間のできたルーシーは、新聞社で働くことに。そこへ入ったのが娘がかよう小学校に爆弾がしかけられたとの通信。幸い爆発は小規模で、新任の副校長キャロルの活躍により、取り残された子供も救出された。町中が彼女を英雄あつかいしていた折も折、当の本人が殺害された。子供たちに関わる問題とあれば放っておけず、ルーシーは調査を始める。好調シリーズ第四弾。 内容紹介より
以前、感想を書いた『バレンタインは雪あそび』の一つ前の作品にあたります。
臨時の新聞記者の身分を得て、主婦より格段に行動範囲が広くなったため、事件に対して自然にかつ積極的に関わることができるヒロインの活躍が目立ちます。容疑者は上手く取り揃えられ、真犯人はかなり意外な人物(登場回数が少ないのが欠点ですが)を用意し、被害者の人物像はやや類型的ながらなかなか巧みに肉付けされているように感じました。また、そのミステリの部分のみならず、事件から離れた時の主人公の主婦としての日常、家族とのやりとりが細かく描かれるとともに、ひとりの女としての心の揺れ、悩みが描き出され、それによってミステリ以外のところで物語に幅と奥行がでて多面性のあるとても良いコージー作品に仕上がっている印象を受けました。それから、教義を重んじるキリスト教の宗派が学校教育をリベラル過ぎると批判し、改革しようと主張する話など、いかにもアメリカらしくて面白かったです。
タグ:レスリー・メイヤー
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『バレンタインは雪あそび』レスリー・メイヤー 創元推理文庫
2014-03-13
母親業に週刊新聞の臨時記者、加えて図書館の理事まで引き受けてしまったルーシー。初の理事会に張り切って図書館にいったはいいが、発見したのは司書の射殺死体。馴染みの警部補に容疑者扱いされたうえ、事件に関わらないよう釘を刺される。悔しさと記者根性があいまって、慌ただしいバレンタインを目前に、ルーシーは真犯人をさぐろうとするが……。好調、主婦探偵シリーズ第五弾。 内容紹介より
今回、主人公を臨時記者だけに留めず、図書館理事の仕事も与えているところが作者のちょっとした巧い思いつきのような気がします。記者の身分だけでも事件を嗅ぎまわれはしますが、やはり外部の人間にそうそうたやすく情報が集まるわけでもないし、それだと不自然さが目立ってしまうし。その点、新米とはいえ理事会のメンバーですから垣根は低くなろうというものです。つまり、コージーミステリにおける探偵役が行う“聞き込み”にあたる場面が違和感なくスムーズに描かれている気がしました。例えば、理事のひとりは主人公の友人であり、彼女へのプレゼントを探しに入ったアンティークショップのオーナーも理事のひとり、また、主人公が手に入れた骨董品についてアドバイスを受けに別の理事の家を訪問したり、と一連の流れが自然であり、且つ、その場面場面で容疑者である理事たちの人物像をひと通り説明し、彼らが持つであろう動機も披露されています。それから、主人公が新聞の記事のテーマにしているギャンブル問題も伏線となっていて、この作者はなかなかテクニックに長けた人だなあと感じました。
レスリー・メイヤー
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『史上最悪のクリスマスクッキー交換会』 レスリー・メイヤー 創元推理文庫
2012-12-21
- Category : ☆☆☆
Tag : レスリー・メイヤー クリスマス・ストーリー
毎年楽しみにしているクリスマスクッキー交換会。今年はルーシーが自宅を会場提供したのはいいが、苦労は並大抵ではなかった。飲酒運転撲滅のビラを持ちこむ者あり、離婚のことばかり話題にする者あり、さらに息子の大学進学問題で参加者同士が一触即発の状況に。ぼろぼろのルーシーに追い打ちをかけるように、参加していた若い女性が翌日死体で発見される。好評主婦探偵第六弾。 内容紹介より
シリーズ第一作目の『メールオーダーはできません』と同じくクリスマス・シーズンが舞台になっている話。このシリーズは他のコージーミステリと比べてもストーリーの進め方が手馴れていて読みやすいと思います。ただ、相変わらずコージーにはつきものの伏線不足が顕著で、どうしても真犯人登場部分のいきなり感が否めません。ロブスターの漁獲規制、学校でのドラッグ汚染、未成年の飲酒などの主人公が暮らす町で起きる問題が、主人公の家族や友人知人に影を落としている様子が描かれて、それなりにおおまかな伏線作りの土台は用意しているのに、それらが序々に犯人という一点に集約していくプロセスに至らないのがいきなり感の原因だと思います。
クリスマスの用意で大忙しななか、家族や友人に降りかかる問題に当惑したり、憤慨したりする主人公の心理が上手く描写されているだけに、あと少しミステリ部分の出来が良ければと欲が出てくるわけです。それでもクリスマスクッキー交換会における参加者たちの表の顔や裏の顔、陰口、嫉妬や虚栄心などの姿が現され、交換会が史上最悪の事態を迎えてしまう序盤の部分はとても楽しめました。
ユーザータグ:レスリー・メイヤー
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『ハロウィーンに完璧なカボチャ』レスリー・メイヤー 創元推理文庫
2010-03-23
ルーシーの夫が以前に修復した屋敷が全焼。焼け跡から友人でもある、屋敷の女主人の焼死体が発見された。このところ町では古い建物の火事が妙に多く、自分も古い農家に住むルーシーは不安を募らせる。折しもハロウィーンをひかえて、町をあげてのお祭り気分。大騒ぎのなか赤ん坊をかかえたルーシーは、増えすぎた体重を気にしつつ独自調査を始める。好評主婦探偵シリーズ第三弾。 内容紹介より
前作でお腹のなかにいた赤ちゃんが生まれ、四人に増えた子供たちの世話やハロウィーンの催しの準備で相変わらずお母さん探偵は忙しいのです。
前二作ともなかなか高い水準だったのに今回は不出来。ミステリ部分で言えば、ローラ・チャイルズの〈お茶と探偵〉シリーズと同じくらいに推理(とも呼べないお粗末なものですけど)が短絡的過ぎます。焼死した友人の夫を容疑者として疑ってかかるところは本来、誰か別のワトスン役にやらせるべきでしょう。探偵役の推理能力の低さが描かれていると、読み手のテンションが下がります。各章の頭にあった短い引用文もなく、今回は何か手を抜いた印象。
コージーミステリにおいて主人公の職業を主婦に設定することは、他の仕事を持つ主人公たちに比べてハンディキャップがあるわけで、例えばローラ・チャイルズは主人公をティーショップのオーナーにしていて、ミステリ部分が冴えなくともお茶に間する知識やティーショップ経営の部分で読者の興味を惹かせています。本書の作者も主人公に共働きをさせたり、妊娠させたり、育児をさせたりと目先を変えてはいますが、主婦業の大変さだけでは保たないでしょう。
ただ、このシリーズは海外ミステリの入門書として薦めるには良いかもしれません。
『メールオーダーはできません』レスリー・メイヤー 創元推理文庫
『トウシューズはピンクだけ』レスリー・メイヤー 創元推理文庫
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『トウシューズはピンクだけ』レスリー・メイヤー 創元推理文庫
2010-02-07
町の一大イヴェントであるバレエの発表会をひかえ、元バレエダンサーの老女が失踪。娘たちが発表会に出るルーシーは、心配でしかたがない。そんなある日、友人にビデオカメラを貸したことから、ルーシーはまたもや死体を発見するはめに。しかもその友人が容疑者として連行された。無実を信じるルーシーは、妊娠六カ月の身で事件を調べはじめる。好評、主婦探偵シリーズ第二弾。 内容紹介より
主婦の大変さを知るうえで貴重なシリーズ第二弾。
前作で勤めていた通信販売会社のオペレーターの仕事を妊娠したために辞め、専業主婦に戻った主人公。前ほどの忙しさは感じないけれど、それでも娘たちのバレエの発表会の準備など三人の子供の世話にと主婦業はお腹の子供と太っていく身体を抱えて大変そうです。
このシリーズが他のコージーと違っているところは、ラスト近くで犯人から主人公が受けた仕打ち以外にも、夫が夕食の献立に不満を唱えたり、ビデオカメラを他人に貸したことで主人公を責めたりする場面が挟まれることです。家庭生活を送る際に持ち上がるちょっとした不和を描いて、妙にリアルな雰囲気を作品に与えている気がします。
ミステリは老婦人の謎の失踪に金物店店主の殺害事件と二本立てで用意してあり、それを繋ぐテーマが(ネタばれ→)「家庭内の虐待」です。それから、昔から根強く存在する女性への偏見とその社会的地位の低さをさりげなく問うこともシリーズの根底にあるテーマなのかなと思いました。
二つのミステリを設定し、巧みにストーリーを回していくところなど、この作者は意外に技巧派なのかもしれません。
『メールオーダーはできません』レスリー・メイヤー 創元推理文庫
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
「メールオーダーはできません」レスリー・メイヤー 創元推理文庫
2008-09-10
クリスマス目前のある夜、通信販売会社の経営者が自殺した。金持ちで美人の妻がいて、人生順風満帆のはずがなぜ? 第一発見者の主婦ルーシーは釈然としない。クリスマスの仕度で大忙しのはずなのに、地元の巡査を巻き込んで事件をつつき始めるルーシー。だが肝心の巡査が事故で重体に……。メイン州の田舎町を舞台に、季節の行事をいきいきと描く、生活感あふれるミステリ開幕。 内容紹介より
ジル・チャーチル〈主婦探偵ジェーン・シリーズ〉にとても似ていますが、実は「主婦残酷物語」とでもいうような過酷な主婦業の実態(少し大袈裟)を描いた話なのではないのかと。たあい無いミステリ部分よりも主婦が担う家事のほうに感心しましたね。クリスマス間際ということもあってプレゼントや食事の買い出し、夫、三人の子供の世話、訪ねてくる実母、義理の両親、当然家事もこなさないといけないし、さらに主人公は共働きで通信販売会社*の深夜シフトのオペレーターまでやっているのですから、やることがいっぱいあってこれは大変ですよ。その上、殺人事件の調査まで…。リアルな生活感*が漂うこの物語を読んで既婚の専業探偵*(および警察官)たちにお気楽さを感じましたね。
ミステリ好きだけど気が利かない旦那を持つ主婦は、ぜひ本書を読ませるべきだと思いました。余計なお世話ですけど。
商品番号13
殺人
季節を問わず、あなたの嫌いな方、いなくなって欲しい方への贈り物に最適です。刺したり、絞めたり、撃ったり、殴ったり、盛ったりと様々なバリエーションを取り揃えています。ご希望の商品の番号と贈り先のお名前、ご住所をご記入下さい。時価。
*本書のなかでも名前が出てきますがL.L.Beanをモデルにしたような会社。
*p238からp239で描かれる主人公のキレかた!
*例えば、パーネル・ホールのスタンリー・ヘイスティングとか。
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