『ボルチモア・ブルース』ローラ・リップマン ハヤカワ文庫HM

2016-10-17

☆☆☆

失業中の元新聞記者テスに、友人のロックから仕事の依頼が舞いこんだ。最近、不審な言動が続く婚約者の身辺調査をしてほしいという。テスはその女性と愛人らしき男性の密会現場を突きとめた。しかし、その直後、相手の男が殺され、ロックに殺人の容疑がかけられた。親友の無実を晴らすため、テスは奔走するが……アメリカ探偵作家クラブ賞,アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作『チャーム・シティ』に続く、注目の第二弾 内容紹介より



〈テス・モナハン〉シリーズの第一作目。
ボート仲間である男友達への心配りのある深い心情にくらべると、別れた後も肉体関係は続いている元恋人の身に起きた事件について、主人公が表面的には動揺した様子も悲嘆した姿も見せずにいるところに違和感を感じた他には、これまで鼻についていた一面が見受けられず意外でした。それくらい以前読んだ作品のなかでの主人公の他者に対する意地悪な見方や辛辣な独白が気になって、わたしのなかでの主人公のイメージを損ねていました。しかし、これがシリーズ一作目にあたるわけで、ということは主人公は回を追うごとに次第に攻撃的な性格に変化していくということなのか。主人公が都合良く情報を得られるような各職場に知り合いがいるというお手軽な設定は初回からでした。
ということは別にして、作品自体は伏線の配置,プロットの構築、人物造形の巧みさがデビュー作とは思えないような完成度の高さを見せている印象を受けました。

ユーザータグ:ローラ・リップマン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『チャーム・シティ』ローラ・リップマン ハヤカワ文庫

2011-04-22

☆☆☆

いくら元新聞記者で好奇心を抑えられないとはいえ、テスだって厄介事に関わる気はなかった。が、入院中の伯父に代わりグレイハウンドを預かったとたん、謎の男たちにつきまとわれるようになったのだ。さらに没になったはずの実業家の過去を暴いた記事が、何者かの操作で掲載されるという事件が起き、新聞社から調査の依頼が……アメリカ探偵作家クラブ賞、アメリカ私立探偵作家クラブ賞に輝いた魅力たっぷりの新シリーズ 内容紹介より



いまさらですけれど、本書は〈テス・モナハン・シリーズ〉の第二作目、第一作目は『ボルチモア・ブルース』で、日本では刊行順が逆なのですね。今回も、面と向かって言う訳じゃなく、胸に秘める形で表されるヒロインの若干攻撃的とも思える減らず口が、やっぱり個人的に気になってしまいました。たとえば、「動物に話しかけたり、甘やかしたりする人」を理解できないと言い放ってみたり、犬の救護グループにいる「ジーンズに犬の毛をたくさん着けた女性」を想像して、気持ち悪いと思ってみたりして、こういうところが軽く気に障るのです。これも実際に口に出すわけじゃないけど、他人の髪の色を「希釈した尿」に例えるものか?普通。これに限らず、深みを感じさせないヒロインの造形が苦手です。暴露記事の誤掲載事件と怪しい男たちに付きまとわれる事件のふたつがリンクしていなかったこともやや不満に感じました。探偵ものとコージーミステリをミックスしたような展開は結構好きなんですけど。

『スタンド・アローン』ローラ・リップマン ハヤカワ文庫
『ストレンジ・シティ』ローラ・リップマン ハヤカワ文庫




チャーム・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)チャーム・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1999/03)
ローラ・リップマン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ストレンジ・シティ」ローラ・リップマン ハヤカワ文庫

2008-07-17

☆☆

私立探偵テスは、怪しい古物商の男ケネディから偽の骨董を売りつけてきた相手を捜してほしいと依頼された。その相手は、毎年エドガー・アラン・ポーの誕生日にポーの墓参りにくる謎の男らしい。しかし生誕日の夜、遠くから様子をうかがうテスの目前で、謎の男が何者かに射殺されてしまった!依頼人が殺人に関わっているのか悩むテスの前に、ミステリの父ポーに絡まる謎が浮かび上がる。文学的興趣に満ちたシリーズ第六弾 内容紹介より



このテス・モナハンもナンシー・ピカードのジェニー・ケインもどうも好きなキャラクターじゃありません。具体的にどこが気に食わないのかを考えてみてもよく分かりませんが、強いて言えば他人に対する考え方かもしれないです。アイロニカルな感じがいけ好かない、冷たいとまでは言わないけれど、なにかひねくれた見方、意地の悪い見方をしているように感じます。やはり主人公というものは、どこかになにかプラスに感じさせる面を持っていて欲しい。しかし、あたりまえですが、こういう人物造形が現実的であって、すべてのヒロインが素直な思いやりのある良い人であるのは非現実的で、現代社会における女性主人公の考えや立場をなるべくリアルに描いているのかもしれません。向上心あるいは上昇志向を持った身近にいそうな女性像として。

それに、こんなことを言っていますけれど、実際には、わたしが男性であるためにヒロイン像にバイアスがかかっているのではないか、単にそれに外れるテス・モナハンやジェニー・ケインを煙たがっているだけじゃないか、という可能性もおおいにあるわけで。同じことを男性の主人公が言ったり行ったりしても少しも気にならなかったりする場合もあるから、ミステリを評価するうえで注意しなければ、なんて。
で、結局何が言いたかったのでしょうか、わたしは。

ところで、去年の今頃「ポー・トースター」は作り話だったっていうニュースがありましたね。



ストレンジ・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)ストレンジ・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2003/09)
ローラ リップマン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「スタンド・アローン」ローラ・リップマン ハヤカワ文庫

2006-03-21

☆☆☆☆

念願かなって私立探偵となったテスに、元受刑者だという老人が依頼を持ちこんできた。
調査の内容は、かつて彼が危害をくわえた少年たちを探しだすことだった。償いのため、彼らに経済的援助をしたいという。奇妙な依頼にとまどいつつ、テスは調査の末、少年たちを探しだす。が、彼らが次々に殺され、彼女の胸に老人と事件の関連への疑惑が……
                            裏表紙あらすじより



テス・シリーズ三作目。わたしは初めて読みました。
短いセンテンスと、意図的に「テス」を主語に用い「彼女」という言葉の使用を少なくして、軽快なハードボイルドっぽい感じを出しています。また、比喩を多用したり、言葉をこねるようなモノローグは、主人公の性格や考えを読者に理解させるのに効果的だと思います。少し頼りないところなど、テスが可愛らしく感じましたが、女性の読者はどんな印象を持つのでしょうか。
テスの周囲の環境は、祖母、両親は健在だし、「彼女にはすぐに利用できる友人や親戚が街の重要な機関にいる」とかなり恵まれています。そこらあたりは探偵ものにしてはいささかぬるいかも。

以下、少しネタバレしています。








最初の依頼人の心の変化が上手く書かれているけれど、犯人の心情や犯行に至る心理が通り一遍の説明だけで済まされているのは残念です。まあ、主人公に視点が固定されているので仕方ないかもしれません。
エピローグでの大団円は甘くてちょっと恥ずかしい。

ストーリーとは全く関係ありませんが、本文中にトヨタの“レクサス”が登場したので、アメリカのミステリに出て来る日本車の表記の流れをメモしてみました、
ただ一括して「日本車」>メーカー名「トヨタ」、「ホンダ」など>車種名「シビック」、「セントラ」など>高級車「レクサス」「インフィニティ」
なんだか感慨深いです。次はプリウスに乗った環境保護派探偵か…

テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

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