『台北の夜』 フランシー・リン ハヤカワ文庫HM

2012-09-07

Tag :



急死した母の遺灰を抱いて、エマーソン・チャンは生まれて初めて台北の街に降り立った。母の遺言に従い、家出した後ここに来たまま音信不通だった弟のリトルPを探すためだ。アメリカ生まれの彼にとって、言葉もわからず、地理にも不案内な台北は、完全な異郷だった。しかも、ようやく探し当てた弟の背後には無気味な闇が……異様なムードと迫力で迫る力作サスペンス。アメリカ探偵作家クラブ賞を射止めた注目のデビュー作 内容紹介より



MWA新人賞って文学寄りの人物描写をミステリそのものより評価しがちだと個人的に感じているのですが、本書もマザコン気味で優柔不断な、特に秀でたものを持たない平凡な人物を描き出し、台湾という異国情緒をエッセンスに加えて仕上げた作品で、ミステリ部分は何ら見るべきものがありません。遺言という形の母親の命令によって、まったく異郷の地にほっぽり出され、何やらいかがわしい商売に関わっている不出来な弟や台湾人の親戚たちにおろおろあたふたするばかりの主人公。彼に恋し、手助けする進歩的な考えを持ったアメリカ帰りの女性記者、彼が恋したアメリカ人を恋人に持つ現地の女性、台湾の政治を憂う老活動家。こういう主人公に対する人物配置自体がアメリカ人にとっての異郷物ではワンパターン化していますけれど、逆に本書の主人公が未開な異国人を導き従えるヒーロー化せず、駄目な男でいる点はやや新しく読者の目に映るかもしれません。
ただ、そういう構図は別として、物語そのものは同じような事の繰り返し、文章はイメージの羅列と比喩の過剰仕様に終始して、悪夢どころかつまらない夢の世界を主人公がいつまでも彷徨しているみたいに思えました。全体から見たら四十歳の男の成長小説の形をとっているのでしょうし、あえて青年あるいは少年を主人公に据えなかった意図はMWA的には成功しているのだとしても、わたしとしてはかなり不満を感じるものでした。




台北の夜(ハヤカワ・ミステリ文庫)台北の夜(ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2010/01/30)
フランシー・リン

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ゴーストタウン』 メルセデス・ランバート ハヤカワ文庫HM

2011-12-08

Tag :



これは絶対のチャンスかも!国選弁護人の仕事でたまたま担当したレッド・ウルフという男からの深夜の電話。駆けつけると、そこには女性のバラバラ死体。凄惨な殺人事件とあればマスコミは殺到し、弁護士として自分の名前も売りだせる。貧乏生活とはおさらばだ。奮い立つホイットニーだが、助手のループは懐疑的……空回り気味ながらも果敢にLAの闇に挑むホイットニーを待つ結末とは?鮮烈の三部作、ついにフィナーレ 内容紹介より



女性弁護士ホイットニー・シリーズの第三作目。第二作目の『ソウルタウン』は未読です。
本書もリーガルじゃなくハードボイルド調です。
主人公がむごたらしい事件現場にショックを受けつつも、この事件の弁護を引き受ければ有名になり大金を稼げると皮算用する箇所など所々に第一作目には見られなかったコミカルさがありました。しかし、それ以外の部分は酷く低調です。一作目に街娼で登場していたループが秘書として主人公の事務所に勤めていて外面的には二人の関係性が進展していますが、内面的にはあまり緊密になっているようには描かれていません。著者としてはこのシリーズをさらに書き続けていく意図があって、徐々に二人の関係を発展させていくつもりだったのかもしれませんけれど、本書が遺作になってしまったので……。
とにかくそれは置いといて、被害者、容疑者たち共に「インティアン」(注)であるために魔術、超自然現象、固有の風習といった類型的な要素が相変わらず持ちこまれていること。本シリーズでは特に目に付くハードボイルド小説につきものの行き当たりばったりさと偶然性の多さ。こういうところにげんなりしてしまいました。そして致命的なのは何がなんだかさっぱり訳が分からないラストの展開(p328~330)で、まさかとは思いながら、不覚にもあっけにとられてしまいました。

(注)インディアン、ネイティブ・アメリカンといった呼称問題についてはウィキペディアを参照してください。

『ドッグタウン』 メルセデス・ランバート ハヤカワ文庫HM




ゴーストタウン(女性弁護士ホイットニー・シリーズ)ゴーストタウン(女性弁護士ホイットニー・シリーズ)
(2009/02/25)
メルセデス・ランバート

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ワンダーランドで人が死ぬ』ケント・ブレイスウェイト 扶桑社ミステリー

2010-09-02

Tag :



ジェシー・アセンシオはメキシコ系米国人。かつてはFBIに入局後、下院議員に転身という経歴があるが、今では故郷の町で詩作に励みながら私立探偵を開業している。独立記念日の七月四日、妻の実家ワンダー家が経営するテーマパーク〈ワンダーランド〉で殺人事件が発生した。被害者は日系人の娼婦。彼女の顧客リストにはワンダー家の男たちの名前がずらりと並んでいた。翌日、〈ワンダーランド〉でまた殺人が!今度は日系人娼婦が属していた組織のボスだ。アセンシオは捜査を開始するが……。 内容紹介より



作品に核になるものがなくうだうだとだらだらと非常に退屈。まず、元FBI捜査官、元下院議員、現在は詩人で私立探偵という設定が盛り過ぎでしょ。主人公が叩く軽口と同じくらいの自己満足な詩編と死体の数が多過ぎ。特に(作者が)機智、諧謔だと思い込んでいる主人公の交わす会話が目障り、持って回った直喩が文章のリズムを滞らせ、勢いを削いでいると思います。何か気の利いたことを言わせたい、喩えさせたいというアメリカ人のハードボイルド作家に多く見られる傾向がここではさらに進行しています。マントを着けて空を飛ばなかったのが不思議なほどの、妻を愛する主人公の弱点のない聖人君子ぶりも物語をつまらなくしている原因だし、彼の幼なじみである警部補とのやりとりもいかにもありふれたお馴染みのパターンで捻りの欠片もありません。
この作者はアメリカンコミックの原作者に転向するか、ロス・マクドナルドのリュウ・アーチャー シリーズを十回くらい読みなおすべき。




ワンダーランドで人が死ぬ (扶桑社ミステリー)ワンダーランドで人が死ぬ (扶桑社ミステリー)
(2002/07)
ケント ブレイスウェイト

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『眠れない夜』サラ・ケンプ ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2009-04-06

Tag :



女検死官ティーナが静養に訪れた田舎町には、初めから無気味な影がさしていた。彼女の借りたコテージの壁に描かれた奇怪な悪魔、以前開かれていたという魔女集会の噂 ― だが、こともあろうに見知らぬ男の生首が届けられようとは! しかもなぜ彼女のもとに?ティーナは単身悪夢じみた事件の謎を追うが……。英国ゴシック・ロマンの香り漂う戦慄のスリラー 内容紹介より



「ティーナは勇気を奮いおこして戸棚を開けた。予想どおりー高い教養を身につけた理性的かつ知的なティーナが予測したとおりーそこには首など見あたらなかった」(p77)、
「理性と高い知性を備えたドクター・ティーナ・メイのような女性が物事を考えると」(p174)、なんだこの三文小説みたいな表現。

気味の悪い壁画、生首、魔女集会、悪魔、毒蛇とか道具立ては揃っていますが、どれもコケ脅しでした。スリラーもサスペンスもこれからというところでピークを迎えてしまい、後は盛り下がるだけでした。悪魔が迎えた最期なんて笑止としか言えません。もっとオカルトっぽいストーリーを期待していたのに、かなりの駄作でした。ノイローゼ気味で不眠症の主人公を現実と幻覚の狭間に置いてしまい、どれが悪夢でどれが本当の事なのかと読者を混乱させる、手っ取り早くて効果的な手法を採ればまだ狙いどおりのサスペンス・スリラーになったでしょうに、主人公を追い込まなさ過ぎです。

それから、主人公視点による三人称が、ラスト近くで急に刑事の視点に移ったり、犯人の供述書がそのまま挿入されたりと、なぜ主人公の視点から外すのでしょう。緊張感が損なわれるのに。



眠れない夜 (ミステリアス・プレス文庫)眠れない夜 (ミステリアス・プレス文庫)
(1989/08)
サラ ケンプ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ミラノ殺人事件』P・フェラーリ&S・ジャチーニ 扶桑社ミステリー

2008-11-24

Tag :



世界のファッション・トレンドをリードする街、ミラノ。そんな華々しい情報の最前線で活躍していた女性ジャーナリストが、とある出版記念パーティーの席上、衆人環視の中で毒殺された。続けて翌日、今度は出版プレゼンテーションの混乱にまぎれて、やはり出版界の男が刺殺される。そして翌朝、真犯人でしか知る由もない殺害の状況を詳細にしたためた匿名の手紙が届いた。売れない作家サンマルツァーノは、この一連の連続殺人事件を同時進行の小説に仕立てようと、事件の真相に迫ってゆく。しかしその間も、一人また一人と連続殺人の犠牲者は増え続け、やがてサンマルツァーノにもその魔手が…。喧噪と欲望渦巻くミラノを舞台にした、本格ミステリー。 内容紹介より



イタリアという国はもともと共和国など小さな国の集合体らしいので、そこに住む人々をひっくるめてイタリア人と定義することは誤解を招くかもしれませんが、ここでは広義の意味で使わせていただきます。彼らイタリア人はミステリの書き方の英米的定型を踏襲したくないのか、それとも出来ないのか、たぶん前者だと思いますが、かなりイタリア的でユニークといえばユニークな作品。ラストにおけるミステリとして帳尻を合わせるやり方から判断すると、作者は意図的に型を外しているのか、あるいは、外さざるをえない国民的気質のせいなのか、そこに至るまでの展開はとても「本格ミステリー」と呼べないくらい風変わりなものです。

とにかく、慣れないイタリア人の名前が大量に出てくること、それらの登場人物たちのほとんどが出版関係に携わっていること、視点が一人称と三人称多視点の混雑であること、それが短い章で頻繁に交代すること、物語が大部分が大人数で雑多な「お喋り」で構成されること、探偵役の作家の行動が犯人を捕まえようとするわけではないこと、これらのために非常に、ものすごく、すこぶる読み辛い作品でした。余談ですが、観光ガイドブックとしての役にも立ちません。



ミラノ殺人事件 (扶桑社ミステリー)ミラノ殺人事件 (扶桑社ミステリー)
(1990/11)
P. フェラーリS. ジャチーニ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「スコッツヴィルの殺人」ゲーリー・F・ヴァルコア 扶桑社ミステリー

2008-05-24

Tag :



暑さにうだる田舎町スコッツヴィルで、両腕を切断された身元不明の死体が発見された。その日はちょうど、20年前に起きた殺人事件の犯人が刑務所から出てきたばかり。そんなこんなで小さな町は、上を下への大騒ぎ。一方、フィラデルフィアの弁護士ダン・カーヴァーのもとに茶色の瞳を持つ美しい女が訪れた。行方不明の父親を捜してほしいという。さっそく調査を始めたダンがたどりついたところが、なんとスコッツヴィル。殺人と行方不明、2つの事件を追って、町中を駆けずったダンの前に姿を現わしたのは、欲に駆られた人間たちの20年にも及ぶ愛憎劇の序幕であった。内容紹介より



これは抄訳ではないのかと思うほど、すべてが中途半端で中身がカスカスな印象を持ちました。ぼんやりしたイメージしかわかない主人公と毒にも薬にもならないヒロイン、彼等の子供じみた恋愛ごっこ、相変わらず太った田舎の警察署長とオリジナリティがありません。行方不明になった男の偽の娘、出所してきた男、ストーカーじみた警官助手、市長の娘などは端役なみの扱いで、これら人物たちのその後のフォローはいったいどうしたんだと言いたいくらい書きっぱなしで放りっぱなしです。

はたして被害者の両手を切断する意味があったのかも疑問だし、科学的捜査方法をわざと省いている気がします。いっそ時代設定を古めにしたほうがつじつまが合うだろうに。
二十年前の殺人事件にしても、なぜ殺されなければならなかったのか?説明が抜けていると思うのですが。とにかく作者は構想力が不足していて、細かい部分に対する目配りが行き届いていません。


スコッツヴィルの殺人 (扶桑社ミステリー)スコッツヴィルの殺人 (扶桑社ミステリー)
(1990/02)
ゲーリー・F. ヴァルコア

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「夢なき街の狩人」W・L・リプリー 創元推理文庫

2008-05-14

Tag :



秋の午後、狩猟の最中にわたしが足を踏み込れたのは、広大な大麻畑だった。猛犬とライフルで襲撃してくる不審な男を弓矢で撃退し、町の保安官に知らせたが、畑は消え、保安官は殺された。その容疑が友人にかけられ、わたしの胸に火がついた。真相を求め、町の顔役に接近したわたしに、謎めいた美女が囁く……。自然を愛するタフガイの胸のすく活躍を描く正統派ハードボイルド! 内容紹介より



当意即妙、軽妙洒脱(難しい言葉を使う訳者、岩田佳代子さんの真似)のつもりの主人公とその相棒の減らず口にニ十回くらい、本を放り出したくなりました。それから赤鉛筆で文章を削除したくなりました。でも、我慢しました。その上、お喋り野郎二人ともベトナム戦争での出来事で“例の”トラウマを抱えているなんて、あなたたちネオハードボイルドの亡霊か?ストーリーは、スティーヴン・セガール主演系のハリウッド映画ぽくて、主人公が物質主義とか拝金主義とかの現代社会批判をするわりには人物にも言ってることにも深みがなく上滑り気味。まったく何ひとつ新しいアイデアなり要素が認められませんでした。とにかく全てが浅い!

元NFLの有名選手だったという設定の主人公が吐く台詞が、これまたどうしちゃったのって感じ。「アメリカ製造業への追い撃ちを虎視眈々と狙っている、BMWのごとき外国企業のお偉方とのつきあいなどまっぴらだ」(p65)。アメリカを代表するスポーツの元選手にこう言わせてるところが意味深か。きっと作者はUSAを憂う愛国主義者なのかもしれない。

どういう事情で1993年に書かれたものを2005年に日本で出版することになったのだろうか?と疑問に思うほど一時代前のハードボイルド小説でした。創元推理文庫編集部にいったい何があったのでしょう。

軽口をたたく二人に巡査部長が気色ばんだので、部下サムが「彼らは、人を笑わせるのが好きなだけなんです」と取りなしたら、巡査部長「わたしは、ちっともおかしいと思わんがね」(激しく同意)。さらに減らず口を言う二人に、「いい加減に黙らんか!サム、この男がまた口を開いたら、すぐに撃て」(ものすごく同意)(p450~451)。この二人には、わたしもこの言葉を贈りたい。


夢なき街の狩人 (創元推理文庫)夢なき街の狩人 (創元推理文庫)
(2005/12/17)
W・L・リプリー

商品詳細を見る

テーマ : ハードボイルド
ジャンル : 本・雑誌

「トレイシーのミステリ・ノート 花嫁誘拐記念日」クリス・ネリ ハヤカワ文庫

2006-04-16

Tag :



わたしトレイシーは売れっ子ミステリ作家。小説内では難事件も華麗に解決できるから現実の事件も楽勝、と思いきや結婚を目前にした義妹が誘拐されたから、さあ大変。婚約者はどうも頼りないし、義妹の家族は何か隠してる。すべて怪しく見えるのだ。そんな時、義妹が営む料理店を売れば解放するとの奇妙な脅迫電話が!天使の顔に悪魔の毒舌、素人探偵トレイシー颯爽と登場。小説を愛す素敵な貴女に贈る凛としたミステリ
                   裏表紙あらすじより



と、最後のくだりはそれ程のものかとも思いますが、「貴女」を対象にした典型的な4Fミステリです。
スピーディーでシニカルで、一人称の軽い乗りで読ませてしまう語り口はリップマンのテス・シリーズに似ています。しかしながら、ミステリ部分が弱い。口調は軽くても良いけど、ミステリまで軽すぎ。この動機ならば、もう少し感情を描写してもよかったのでは。結末も納得がいきませんでした。

このハリウッドスターの両親を持ち、弁護士と結婚した売れっ子作家の主人公にはコンプレックスがない。お嬢様の独り善がりな探偵ごっこ話のように感じるのはそのせいかもしれません。キャラクターに何らかの欠点や負の部分を加えなければ魅力は増してこないと思います。シリーズ物ですので、主人公はその後成長しているのかもしれませんけれど…。これ以降の作品は翻訳されていません。この作品も品切れみたいです。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「殺人ウェディング・ベル」ウィリアム・L・デアンドリア ハヤカワ・ミステリ文庫

2005-12-28



ケーブル・テレビの契約をめぐるトラブルの調査に学生時代を過ごした町を訪れていたマットは、旧友の女性の結婚式にも参列する予定だった。
しかし、結婚式を間近に控えた夜、その女友達が殺害されたうえに親友ダンが逮捕されてしまう。親友の嫌疑を晴らすためにマットは調査を始めるが、彼の身にも危険が及ぶことに。

マット・コブ・シリーズ3作目。
かなりすごい邦題ですが、原題は『Killed With A Passion』。どちらにしてもよく分からない題名です。ウェディング・ベルは登場しません。

デアンドリアといえば『視聴率の殺人』、『ホッグ連続殺人』など名作を書いた人だし、事件に関係する人物が少なく、犯行状況も単純なのでよほど奇抜なトリックが用意されているのかと、結構期待して読んだのですが……

登場人物の印象が薄いし人物設定もありふれている。唯一、存在感があるのはサモイェード犬(サモエード犬)スポットくらいでした。

軽ハードボイルド風だけれど、テレビのサスペンス・ドラマにもなりそうなミステリです。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「森の木陰で」メアリ・アン・ケリー ハヤカワ文庫

2005-09-18

Tag :



つまらなかったぞ。
言わせてもらうぞ、メアリ。

まず、裏表紙のあらすじの一部、
「事件解決に奔走する三姉妹の姿をユーモアたっぷりに描く爽快なデビュー作」
とあるが、もし、わたしの持っている本に落丁がないかぎり三姉妹が奔走する場面は全く出てきません。これ書いた人、どこでどう読み違えたらこんなコメントが書けるのだろうか?
「ユーモアたっぷり」と訳者の猪俣美江子さんもあとがきに書かれているが、猪俣さんと
わたしの“ユーモア”の定義と“たっぷり”の基準には大幅に隔たりがあるみたいです。

これはミステリ小説というより出来の悪い恋愛小説でしょう。女性ミステリ作家はミステリに恋愛を書き込むのが上手ですが、この作品はミステリとしては失敗作で恋愛小説にサイコが刺身のつまのように添えられているだけです。その恋愛物語も目新しい話ではない。
ポルシェを乗り回すポーランドの外交官とオンボロのアメ車に乗る上品とは言えない刑事
の対比は型通りの設定。主人公と刑事が喧嘩しながらも惹かれ合うなんて…なんて…

刑事ジョニーの子供時代の恩人であるレッドは重要な存在であるはずがチョイ役で一度出てくるだけ。巡査で妹のジニーはいったいなんのために描かれているのかと思うほど存在感がない。
この終わり方では犯人の動機や背景があまりにも説明不足でしょう。なんでもサイコにしてしまえば良いというものではないよ。しかも気の抜けたサスペンスのないサイコだし。
以上で悪口おわり。

余談ですがこの題名のせいで“森の木陰でどんじゃらほい♪シャンシャン手拍子足拍子♪”の歌が頭から離れません。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「味こごと歳時記」 高橋治 角川書店

2005-07-05

Tag :



以下、かなりわたしの感情的な批評が書いてあります。著者の意見の一部はわたしが共感できるものもありますが…

食材についてのエッセイです。題名通り味について「こごと」を言ってます。ようするに昔は食材の味が良かった、それに比べて現代は…嘆かわしい、といったような主張。

養殖魚、醤油、オキアミと鯛など。

この人もかなりスノッブな傾向が強いと思っていたが、朝日文庫の「旬の菜滋記」「くさぐさの花」はそれがうまいこと押さえられており、きれいな写真と相まって良い感じだった。ところがこの本は老害というか年寄りの偏屈さが全面に出過ぎて正直うんざり。昔は良かっただの現代は駄目だのと書くばっかり。

じゃあ、あなたはその変化の過程で何を世の中に訴えてきたのでしょうか?ただの物書きではなく、映画監督で直木賞作家ですし自分の経歴にはかなり自負してらっしゃる。そうとうの影響力を持ってたはずですね。その力をどう行使してきたのでしょう?
他人を批判する前に(実際、実名?入りで糾弾してます)あなた自身の反省から始めるのが筋なのではないでしょうか?何をして何ができなかったか。

一人だけ離れた立場に身を置いて一方的に批判することなど誰にでも出来ますよ。

「砂洲の死体」マーガレット・マロン ハヤカワ文庫

2005-07-03

Tag :



期待高かったです。海、アビ(鳥)、女性判事。
カバーの鳥瞰図も良さげ。

が、

これミステリではないよな、犯人に銃を向けられるまで他の人物を犯人と思ってたんだから。

サスペンスにしてはハラハラドキドキがないし、犯人が冷酷残忍なわけでもない。

ハードボイルド?なんかちょっとひねった口のきき方をするな。ソフトボイルド系か?
でも、殴り合ったりはしない。

もしかして、あれ?ハーレークインロマンス?
昔の男に誘惑されていい雰囲気になるし、最後の方になって別の男といちゃつき出すし。(あんたどっちに惚れてんだよ?)

主人公の人物造形はどうなんだ。性格がよくつかめません。主人公の心の中の「牧師」と「現実主義者」が会話するところもすべりぎみ、一人称は失敗。ついでに各章の始めにあるイェーツなどの詩の引用も邪魔臭い。(一章目の詩のエドワード・ホッパーってあの画家のホッパーなの?わたし彼の絵のファンです)、意味ありげに思わせて全然そうじゃない。

マロンさん、ミステリが書きたいのかHQが書きたいのか、なにが書きたいのかハッキリしなさい!!そんなに詩が好きなら一人で書いてなさい、隅っこで!

初記事なのに面白くない本を読んでしまった。4151001174.09.LZZZZZZZs.jpg


プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF クリスマス・ストーリー アンソロジー アーロン・エルキンズ ルース・レンデル スティーヴン・キング デイヴィッド・ハンドラー ローラ・チャイルズ キャロリン・G・ハート ジョージ・P・ペレケーノス ジョアン・フルーク ドン・ウィンズロウ マイクル・クライトン ジョー・R・ランズデール C・J・ボックス ポーラ・ゴズリング ジェームズ・パターソン ジェイムズ・パタースン エド・マクベイン ジル・チャーチル リチャード・マシスン ローレンス・ブロック ヘニング・マンケル D・M・ディヴァイン ジャネット・イヴァノヴィッチ ピーター・ラヴゼイ スチュアート・ウッズ リリアン・J・ブラウン レジナルド・ヒル レックス・スタウト S・J・ローザン ジョルジュ・シムノン パーネル・ホール アリス・キンバリー ジョー・ゴアズ カール・ハイアセン ウィリアム・カッツ クレオ・コイル マーガレット・ミラー レスリー・メイヤー ジャック・カーリイ カーター・ディクスン ジェフ・アボット マーシャ・マラー エド・ゴーマン コリン・ホルト・ソーヤー ヒラリー・ウォー ルイーズ・ペニー マイケル・ボンド ジェフリー・ディーヴァー アイザック・アシモフ ジョン・ディクスン・カー イーヴリン・スミス ジェームズ・ヤッフェ リタ・メイ・ブラウン キャロリン・キーン ウィリアム・L・デアンドリア ロブ・ライアン ローラ・リップマン ポール・ドハティー フレッド・ヴァルガス G・M・フォード エヴァン・マーシャル オーサ・ラーソン ジョアン・ハリス ドナ・アンドリューズ サイモン・カーニック リン・S・ハイタワー ファーン・マイケルズ アンソニー・ホロヴィッツ ジャン=クリストフ・グランジェ スタンリイ・エリン レイ・ハリスン ケイト・ロス アンドレア・カミッレーリ レニー・エアース ジョン・クリード コニス・リトル デイヴィッド・マレル クリスチアナ・ブランド ウイリアム・P・マッギヴァーン ウィリアム・ランデイ ジャック・フィニイ リック・ボイヤー サキ ジェーン・ラングトン ユージン・イジー ウォルター・モズリイ アン・クリーヴス ビリー・レッツ イーサン・ブラック ダナ・レオン エーリヒ・ケストナー ウォルター・サタスウェイト スタンリー・エリン ポール・ドハティ トバイアス・ウルフ 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント