『ガラス瓶のなかの依頼人』シャロン・フィファー コージーブックス

2017-08-16

Tag :

☆☆☆

アンティーク雑貨の拾い屋ジェーンはついにお宝を引き当てた! とある老婦人の邸宅でひらかれたハウス・セールで、グラスやシェーカーなど、年代物の貴重な酒場グッズを手に入れたのだ。居酒屋の娘として育ったジェーンにとっては,どれも子どもの頃の思い出がよみがえる懐かしい品々。ところが、持ち帰った戦利品をほくほく顔できれいに洗っていると、そばにいた夫と息子の顔が凍りついた。その視線の先をたどると、なんと持ち帰ったガラス瓶のなかに、男性の親指が! わたしったら、またお宝でなく事件を掘り起こしちゃったの!? ジェーンは拾い屋のタブーを破って、売り主に事情を訊きにいくことに、すると出迎えてくれたのは、とても風変わりな老婦人で……!? 蒐集家の鋭い観察眼がきらりと光るシリーズ第2弾! 内容紹介より



シリーズタイトルは〈アンティーク雑貨探偵〉です。第一作目の『掘り出し物には理由がある』は未読。
とにかくアンティークというよりジャンクな品物についての話題が多くて、ミステリの部分がそれに埋まりそうになりかけているみたいな印象が残りました。しかもヒロインの興味はボタンとかベークライト、それに古い個人写真、私信といったものなので、アンティーク業界を舞台にしたミステリに付きものの家具や調度品についての、興味深いいわれやうんちくがほとんど語られないため魅力を感じませんでした。そもそも品物自体に百年以上の歴史がある「アンティーク」じゃなく、「ビンテージ」か「レトロ」という用語を使うべきではないのかと。ミステリ部分もなんだかよく判らないような,全体的に整理が付いていないような判然としない感じがします。大量のジャンク品がまき散らされなかで、ただ一点光るのがヒロインの誘拐された母親の活躍シーンで、こういうコミカルな部分を強調していく方向性のほうが良いのではないでしょうか。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『騙す骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2017-08-02

☆☆☆

妻ジュリーの親族に招かれメキシコの田舎を訪れたギデオン夫婦。だが平和なはずのその村で、不審な死体が二体も見つかっていた。銃創があるのに弾の出口も弾自体も見当たらないミイラ化死体と、小さな村なのに身元が全く不明の少女の白骨死体だ。村の警察署長の依頼で鑑定を試みたギデオンは次々と思わぬ事実を明らかにするが、それを喜ばぬ何者かが彼の命を狙い……一片の骨から迷宮入り寸前の謎を解くスケルトン探偵! 内容紹介より



古代の人骨やミイラ化した遺体に違和感のないメキシコという土地柄。しかし、のどかな田舎の村で不審な謎の死体が見つかるとなると話は別。骨に残った痕跡や特徴から死因や身元を判明させる手掛かりをいつものごとくギデオンが解き明かす展開へ。今回は、石臼でついた穀物を食べていた古代人とメタンフェタミン中毒者それぞれの歯の状態の話は大変面白かったです。主人公が命を狙われるけれども、サスペンス性はさほど効果的には盛り上がらなかったし、容疑者にあげられる人物も少なく、真相もたまに見かけるネタで予想がつきやすく意外性が感じられませんでした。歯の本数やある習い事はちょっと都合良くもって行き過ぎの気もしました。観光地としては地味で華やかさに欠けるし、メキシコを舞台にするならオカルトチックな話や出来事、影の部分を取り入れてミスリードしてみても良かったのでは。ギデオン夫婦の相変わらずの熱々ぶりに若干引き気味になりました。

ユーザータグ:アーロン・エルキンズ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『年寄り工場の秘密』コリン・ホルト・ソーヤー 創元推理文庫

2017-07-29

☆☆☆

高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉にちょっとした変化が起きた。長年暮らしていたトッツィが,近くにできた老人ホーム〈黄金の日々〉に引っ越したのだ。そして三週間がたち〈カムデン〉に勇名を轟かすアンジェラとキャレドニアのもとを、そのトッツィが相談に訪れる。どうやら〈黄金の日々〉に幽霊が出るらしく、正体を見極めてほしいと言うのだ。かつて同じ屋根の下にいたよしみで……というよりは退屈しのぎが目的で、名物コンビふたりは体験入居を装い“潜入捜査”を開始するが、思わぬ大事件が待っていた!老人探偵団シリーズ第七弾。 内容紹介より



〈老人たちの生活と推理〉シリーズ第七作目。別にどうでもよいのですけれど、本書では珍しく老人ホームの支配人であるトゥーガスンの登場機会が多く、毎回彼の存在意義が気になっていたわたしにとってはちょっと満足でした。そして作品全体もこれまでよりミステリの体裁を整えてきたのではないかと感じた次第です。序盤の別の老人ホームにおける幽霊騒ぎは、まさにお騒がせ程度の効果しかあげていませんが、効率重視で規則に縛られた〈黄金の日々〉と比較して、優雅な建物にはガタがきているにしても昔ながらのアットホームで居心地が良く食事も美味い〈カムデン〉を七作目にして改めて読者に認識させる一工夫になっているように思いました。また、試験的にペット(猫)可になったことも話に新味を加えていますし、ミステリの伏線にも仕上げています。小さなおばあちゃんがゴミ箱をあさって宅配フードの容器を集めてまわる場面がコミカルですし、主人公の凸凹コンビ以外はその他大勢扱いだった登場人物たちのキャラもこなれてきたし、このシリーズとしてはこれも珍しい犯人との対決シーンも盛り込んであって、コージーミステリの本道に近づいている印象を受けました。

ユーザータグ:コリン・ホルト・ソーヤー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クッキング・ママの依頼人』ダイアン・デヴィッドソン 集英社文庫

2017-07-03

Tag :

☆☆☆

再婚した夫はやさしいし、息子との仲もうまくいっている。言うことなしの日々にまたもや産婦人科医の前夫の暗い影。なんと彼に殺人容疑がかかって大騒ぎ。実の父の身を心配した息子はゴルディに真犯人を捜して、濡れ衣をはらしてほしいと頼む。さんざん前夫の暴力に脅えてきたママとしては、なかなか腰があがらないのだが……。大好評の料理ミステリー、円熟の第7作目。 内容紹介より



民間の健康保険組合みたいな組織の女性副社長が撲殺されているのを、ヒロインが発見。被害者は人事権を握っていることで、普段からスタッフや専属の医師へのパワハラなどが目立ち、また会社は医療ミスで訴訟も起こされていた。さらに交際していたのがヒロインの元DV夫であり、前夜に被害者と痴話げんかをしたと話したことから容疑者として逮捕されてしまう,という具合に話が進みます。元夫を始めとして容疑者も多く、息子に懇願されたヒロインが内情を探るのですけれど、関係者も検察官もどなたも良く喋る,普通こんなことは赤の他人に明かさないだろうことも打ち明けるという都合の良い展開に。ひとしきり容疑者も動機もそろったところで、そこからの推理がはたらき容疑者が絞られ……、てことがないのが本作品の傾向でして、材料を取り揃え、調味料も施しながら、しかし調理の過程を飛ばしていきなり料理が出てくるケータラーらしからぬ仕業でした。クライマックスもヒロインが襲われて真犯人が判明するという、いつものコージー・ミステリの定番をとります。

ダイアン・デヴィッドソン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『パニック!』ジェフ・アボット ヴィレッジブックス

2017-06-28

☆☆☆

それはある朝、一本の電話から始まった—。新進気鋭の映像作家エヴァンは母からの電話で起こされた。帰ってきてほしいという母の切迫した口調に驚いた彼は実家へ急ぐが、そこには変わりはてた母の姿が……。だが、エヴァンを待っていたのはそればかりではなかった。銃を持った連中に襲われ、死を覚悟した瞬間,謎の男に間一髪で救出される。訳がわからぬまま、身の危険を感じてひたすら逃亡するエヴァン。誰が味方で誰が敵か?謎が謎を呼び、死が死を呼ぶ……。エヴァンはこの危地を乗り越え、真相にたどりつくことができるのか?人気ミステリー作家が初めて挑んだ、超ハイスピード・サスペンス! 内容紹介より



〈図書館長ジョーダン・ポティート〉シリーズと〈モーズリー判事〉シリーズで知られる作者ですけれど、ノン・シリーズの本書の主人公のイメージがその二つのシリーズの若者のそれに重なりました。モラトリアムな感じを受けるところは、デイヴィッド・ハンドラーの主人公たちにどことなく似ている気もします。さて精神的な未熟さを感じさせる主人公が母親の死を機に、CIA、フリーランスのスパイたちが暗躍する陰謀の渦中に放り込まれ、逃亡劇、母親の死の真相究明と行方不明の父親探しが、プロ対アマテュアという冒険小説の一つの定番の形で繰り広げらていきます。展開はややもたつくところがありますが、それなりにスピーディーといっても良いでしょうし、ぎりぎり高校生までにはウケるかもしれない娯楽小説には仕上がっています。しかしながら、悪役コンビの行動がドタバタし過ぎです。衆目に晒されている状況での派手な銃撃戦や追跡を二度も行うなんて、極力他人の注目を引かないように心がけるスパイの行動とはかけ離れて、プロがプロらしくないまるでギャグにしか思えませんでした。プロットも旧態依然な感があって,まるで幽霊のごとくソ連の話が出てくるし、いっそのこと時代設定を古めにしたらどうかとも思いましたが、それだと現代ミステリにおける魔法の小箱であるパソコンとネットが使えなくなりますね。

ユーザータグ:ジェフ・アボット




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ジャンル : 本・雑誌

『キーストン警官(コップ)』ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ文庫HM

2017-06-24

☆☆☆

イギリス人の新人俳優イーストンのあだ名はキーストン—彼は、喜劇映画で今をときめくキーストン撮影所に、その他大勢組のキーストン・コップとして雇われた。大根役者だが、かわいらしい新進女優ハニービーとも恋仲になった。ところが、ハニービーの母親が何者かに殺され、嫌疑が彼女にかかったことから、キーストンは、いやでも謎を秘めた殺人事件の渦中に巻きこまれてゆく—ローラーコースターの事故、消えたフィルム、誘拐事件、冒険につぐ冒険。1910年代の喧噪とロマンに満ちたハリウッドをコメディー・タッチで描く著者会心の力作! 内容紹介より



作品中の俳優を含めた映画関係者として、無声映画時代に実在した人物を登場させているそうです。作品中の事件はフィクションですが、ネットで調べてみると実際にスキャンダルに巻き込まれた俳優や女優もいるみたいです。本書の魅力は、なによりチャップリンやバスター・キートンの白黒で早送りのような作品を彷彿とさせるように、エネルギッシュな時代背景や無声喜劇映画を撮影する様子やがとても興味深く軽快に描いているところだと思います。ただ、スタントマンの人身事故、女優の母親の不審死、カメラマンの自殺、監禁や誘拐事件、といった事件や事故が次々に起るわりに、派手で華やかなハリウッドと撮影所を舞台にしているにしてはミステリ自体は地味です。わざわざ英国人を主役に当てているにしては、英米双方のお国柄や人柄の違いを面白可笑しく取り上げるといったこともなく、自国のマーケットへのアピール程度の必要性しか感じませんでした。『偽のデュー警部』に較べると小粒な印象でした。

ユーザータグ:ピーター・ラヴゼイ




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ジャンル : 本・雑誌

『りんご酒と嘆きの休暇』アレクサンダー・キャンピオン コージーブックス

2017-06-17

Tag :

☆☆☆

休暇でノルマンディの田舎に暮らす伯父を訪れた、パリ警視庁の警視カプシーヌ。忙しい日常を離れ、伯父の大邸宅でふるまわれる旬のご馳走—名産のりんご酒にカマンベール、きのこ、そしてジビエ料理に舌鼓を打ち、楽しいひとときを過ごすはずだった。ところが、狩猟が解禁されたばかりの村では、狩りの最中に不審な事故が多発。のどかなはずのこの村で、いったい何が起きているの?警察官になることに大反対だった伯父から捜査を頼まれ、ようやく一族に認めてもらえた嬉しさを噛みしめるカプシーヌ。でも田舎町での捜査は都会と違い、昔からの知人にふりまわされてばかりで……!?フランスの田舎町の魅力がいっぱいのシリーズ第二弾! 内容紹介より



〈パリのグルメ捜査官〉シリーズ。第一作目の『予約の消えた三ツ星レストラン』は未読です。
前回読んだ北欧ミステリもそうですが、特にフランスミステリを読んで感じる、アメリカミステリにくらべて際立つお国柄が新鮮です。著者はパリに長年住んでいたNY生まれのブラジル人らしいのですけれど、フランスミステリでは作品の中においても食事に時間をかけ,その描写に紙幅を費やす傾向が見られます。そして、ヒロインの夫が著名なレストラン評論家という設定であるためにチェーン店、ファストフードにたいする毒舌ぶりも面白く、また、日本産ウィスキーの「余市」や「山崎」という名前がでてくるのもフランスミステリならではでしょう。それから同じくフランスの地方を舞台にした『緋色の十字章』(マーティン・ウォーカー作 創元推理文庫)でもありましたが、地方特有の食産物にかけるEUの規制が固有の食文化を衰退させていくのではないかという懸念が感じられました。このようなこだわりは、これまで読んだ英国ミステリでは目にしたことも感じたこともないのが興味深いところです。
コージーブックスからでているにもかかわらず内容は警察小説です。地方で起きた連続誤射事件とパリで頻発する“眠り姫”窃盗事件の捜査でヒロインがあちらこちら移動してせわしなく、ストーリーにやや落ち着きがなく、二つの事件が個別すぎてミステリ的にいまひとつでした。野鳥や鹿、うさぎへの狩猟場面が描かれているので、そういうのが苦手な方にはお勧めしません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『木曜日の子供』テリ—・ホワイト 文春文庫

2017-05-19

Tag :

☆☆☆

木曜日の子供は遠くまで行く—マザーグースはそう歌う。たまたまそんな星の下に生まれたために旅に出なければならない家出少年が、ひとりの殺し屋に出会う。が、この凄腕の殺し屋も、よくよく聞けば両親を航空機事故で失い、たった一人の弟を植物人間にされて敵討ちを心に誓っている。彼もまた“木曜日の子供”なのだろうか? 内容紹介より



殺し屋と刑事という対比した構図をとっていた『殺し屋マックスと向う見ず野郎』、本書では殺し屋と刑事あがりの私立探偵の形をとっています。これは恐らく作者が得意とする形式なのでしょう。そして、あくまで少年にとっては自分を必要としてくれる相手、殺し屋にとっては亡くなった弟の喪失感を埋める存在として互いの愛情を描いてあるのですけれど、深読みしてしまうと殺し屋と家出少年のふたりの関係から漂う危なげな雰囲気が、『真夜中の相棒』を彷彿とさせます。その関係に、家出した子供を捜し出すことを専門とする私立探偵が加わって話が進んでいきます。彼も警官としての挫折と自分の子供が家出して行方が判らない過去を背負っています。作品全体から受ける印象は、パターンにこだわってテーマが通り一遍になってしまっているみたいな感じで、登場人物の行動やその結末も予想したとおりで意外性に乏しく、女性作家に見られる男同士の友情についての美化がやはり目に付き、作者はこれを様式美として極めたいのではないのか、と思ったりもします。その反動によるものなのか女性の登場人物についての印象がペットの犬並みに弱いです。

『殺し屋マックスと向う見ず野郎』




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ジャンル : 本・雑誌

『裏切りの代償』ブレット・バトルズ RHブックスプラス

2017-05-15

Tag :

☆☆☆

ジョナサン・クィンはフリーランスの“掃除屋”。今回始末を頼まれた死体は、コンテナに載せられロサンゼルスまで運ばれてきた。死体の主の名前を聞いてクィンは耳を疑った。スティーヴン・マルコフ—かつて命を救ってくれた元CIAのスパイだった。仕事を終えればすべて忘れる—それがクィンの信条だが、今度ばかりは別だ。クィンは行方不明のマルコフの恋人ジェニーの足跡を追ってシンガポールに飛ぶ!注目のハード・スパイ・アクション第2弾 内容紹介より



シリーズ第一作目の『懸賞首の男』を読んだときは、“掃除屋”という死体を含めたスパイ活動などの痕跡を消し去る職業が目新しくて新鮮に感じたのですが、本書では話のとっかかりでその仕事の有り様が描かれるだけで、その後は従来ある腕利きスパイの真似事みたいな活動に終始し特色をいかしきれていない印象が残りました。物語の展開が二転三転するところは工夫のあとが見られるにしても、オーソドックスなハリウッド映画風なスパイ・アクションです。“影の政府”とかいう強力な陰謀組織を登場させるありきたりな設定、007を思わせるハイテク機器を使うなど、もう少しで荒唐無稽な方向へ流れそうなところで踏み止まっているのと主人公をスーパーヒーロー化させていない点は、これからどうなるか判りませんが維持して欲しいところです。前作でも感じたように主人公の個性が相変わらず弱い、寡黙なのはおおいに結構ですが、プロとしてのこだわりなり流儀をもっと前面に出してもらいたいものです。この主人公だから続編を読みたくなるという具合になれば良いのですけれど。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『デクスター 夜の観察者』ジェフ・リンジー ヴィレッジブックス

2017-05-11

Tag :

☆☆☆

マイアミ大学の構内で首なし死体が見つかった。被害者の女子学生2人は全身を焼かれ、頭部のかわりに陶器の雄牛の頭が置かれていた。不気味ながら興をそそられる手口……のはずが、事件に関わってからというものデクスターは何者かに執拗にストーキングされ、頼みの“殺人鬼の勘”も今回は捜査に役立ってくれない。そんななか新たな首なし死体が発見され、デクスターの身近な人物にも魔の手が伸びはじめる。手がかりは現場に残された謎の文字。だがそれは想像を超える闇への招待状にすぎなかった!昼は好青年の鑑識官、夜は冷血無情な連続殺人鬼—強烈なダークヒーローの活躍を描く絶賛シリーズ第3弾。 内容紹介より



今回は、ややホラーテイストで主人公デクスターの精神に棲む〈闇の乗客〉と呼んでいる意識体に焦点があてられています。地球が誕生する以前から存在し、動物を宿主とする“それ”の成り立ちが序章として説明され、その傍流が主人公の内部に居る〈闇の乗客〉というわけです。“それ”は、スタージョンの短篇『それ』やクーンツの『ファントム』に登場した怪物を思わせますが、“それ”は物体としては存在せず意識が宿主に乗り移ってあやつるようです。それならどうして主人公を宿主にしなかったのか、疑問に思ったのですけれど、そのあたりの説明は不十分なようで詰めが甘い気がします。それとともに鑑識の仕事そっちのけで巡査部長である義理の妹のお供としてあっちこっち引っぱり回される様子もなんだか違和感がありました。裏の顔である殺人鬼という、これまでの狩る立場から狩られる立場に置かれると作品と主人公の魅力が半減してしまったみたいな印象を受けました。
それから毎回このシリーズの感想で言ってますが、三人称の主人公による会話の部分だけですむ諧謔や饒舌より、本書のような一人称のそれは会話はもとより傍白でもながながと続くためにたちが悪いということ。

『デクスター 幼き者への挽歌』
『デクスター 闇に笑う月』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悪女は自殺しない』ネレ・ノイハウス 創元推理文庫

2017-04-23

Tag :

☆☆☆

ドイツ、2005年8月。警察署に復帰した刑事ピアを待ち受けていたのは、上級検事の自殺だった。時を同じくして、飛び降り自殺に偽装された女性の遺体が発見される。実際は動物の安楽死に使用される薬物による毒殺で、夫の獣医や彼の働く馬専門動物病院の共同経営者たちが疑われる。だが刑事オリヴァーが指揮を執る捜査班が探るうち、被害者へのとてつもない憎悪が明らかになり、さらに背後に隠されたいくつもの事件が繋がりはじめる。謎また謎の果てに捜査班がたどりつく真相とは。〈ドイツミステリの女王〉の人気に火をつけたシリーズ第1弾。 内容紹介より



〈刑事オリヴァー&ピア〉シリーズの第一作目。以前読んだ『深い疵』は三作目にあたるようです。
娯楽作品のストーリー進行をジェットコースターに例えたりしますけれど、本書はそれほどの大きな起伏の繰り返しはなくて、凸凹した縦揺れの激しい道路を走る車みたいでした。それは被害者への恨みや妬み、愛憎を抱く容疑者が次から次に出てくることと、事件の捜査が進むにつれ、被害者と容疑者たちとの人間関係や利害関係が判明するにもかかわらず、物事が一定の方向へ収斂していくのではなく,いっこうに犯人への手掛かりが見えて来ない、いうなれば四方に放散してしまう状況に陥ってしまっているからです。このような刺激的でめまぐるしい展開が続くために,その刺激過多に慣れてしまい作品の雰囲気が雑然というかせわしない印象を与えているように感じました。また、これまでエリザベス・ジョージのリンリー警部など、貴族または元貴族の称号を持った捜査官は結構登場していますが、このオリヴァー警部には果してその称号を冠する必要性があったのかどうなのか、やや疑問です。女性に投げ飛ばされたり、バットで頭をぶん殴られたりする姿はコミカルではあるものの、本来ならこの設定の売りであるはずの階級から来る品格とか華麗さには欠けているような気がしました。そして肝心の被害者の単なる悪女でしかない造形の仕方も芸が無い印象を受けました。

『深い疵』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『もう年はとれない』ダニエル・フリードマン 創元推理文庫

2017-04-18

Tag :

☆☆☆

思いかえせば、戦友の臨終になど立ちあわなければよかったのだ。どうせ葬式でたっぷり会えるのだから。捕虜収容所でユダヤ人のわたしに親切とはいえなかったナチスの将校が生きているかもしれない—そう告白されたところで、あちこちガタがきている87歳の元殺人課刑事になにができるというのだ。だがその将校が金の延べ棒を山ほど持っていたことが知られて周囲が騒がしくなり、ついにわたしも、孫に助けられながら、宿敵と黄金を追うことに……。武器は357マグナムと痛烈な皮肉。最高に格好いいヒーローを生みだした、鮮烈なデビュー作! 内容紹介より



78歳の老齢探偵が活躍する『オールド・ディック』と同じアプローチの仕方で代り映えがしないし、ミステリについてはかなり粗さが目立った印象でした。第二次大戦中の捕虜収容所で虐待された相手であるナチスの将校との対面や金の延べ棒を手に入れる場面、この二つの山場ともいえる場面がかなりあっけない顛末になってしまって、一捻りを期待したぶん肩すかしを喰らいました。そして、殺人犯がどうして時間も手間もかかる猟奇的な殺し方をしなければならなかったのか、とか、孫の後半に入ってからの豹変した態度への違和感、こういうものがストーリーに果たして必要だったのかすごく疑問に感じました。当初は刺激的だった主人公が吐く暴言や悪態が、話が進むにつれて目障りだったり飽きたりしてしまいました。その一方で、最後半部分での墓地で死者に手向けられた言葉はしんみりさせられますが、物語をどうゆう方向に持っていきたいのか紛らわしい感じを受けました。元刑事の経験値が見られず、場当たり的でただ騒がしいだけの起伏に乏しいハードボイルドもどきな作品みたいな気がします。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ミスター・イエスタデイ』エリオット・チェイズ サンケイ文庫

2017-04-12

Tag :

☆☆☆

セント・ジェイムスの小学校時代の担任教師だったコール婆さんが死んだ。自宅の台所の床に電球を握ったまま。そばには脚立が転がっていた。殺人か?ほどなく、彼女の妹ナタリーも死亡。現場の部屋は血だらけ、明らかに他殺だ。一方、町は郊外にできる政府の核廃棄物処理場の話で騒然。まだ候補地の段階との政府発表だったが、老いぼれ記者“ミスター・イエスタデイ”が取材の結果、試掘が開始されていたことが判明したのだ。セント・ジェイムス・シリーズ第二弾! 内容紹介より



シリーズ第一作目の『さらばゴライアス』も読んでいるのですが、当然まったく記憶に残っていません。
主人公はアラバマ州の地方にありながら大手のネットワークに買収された新聞社の社会部長で、地元警察の警部とは懇意の仲であり、部下である若手の女性記者の恋人がいて、上層部に頭が上がらず部下には偉ぶる新聞社社長とはそりがあわず、社内のコンピュータ化と大衆におもねるような紙面のレイアウトが気に入らない、やや早めの中年の危機を感じさせる43歳の男性です。主人公の担任教師だった一人暮らしの老女が自宅で変死していた事件、彼女の妹が姉の家でペットのヤギと共に惨殺体で発見された事件、この二つが立て続けに起きます。一方、町は核廃棄物処理場の問題で騒然とし、姉妹は処理場候補地の周辺に土地を所有していて、そして変死した姉は黙示録を引用して処理場建設に反対していたことが明らかになる、という展開です。政府による陰謀か、あるいは妹の身に起きた凄惨な犯行現場からオカルト的な動機も考えられるなか、主人公に降り掛かる、というかくよくよ悩む心身の衰え、老化や恋愛問題を交えつつ、同じ世代の警部やかつて名声を馳せながら飲酒によって地方新聞に拾ってもらった“ミスター・イエスタデイ”と揶揄される老記者とのやり取りを、南部ほら話風な雰囲気も醸し出しながら進行していきます。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ミルク殺人と憂鬱な夏』フォルカー・クルプフル ミハイル・コブル ハヤカワ文庫HM

2017-03-23

Tag :

☆☆☆

殺人事件? 俺が住む、片田舎のこの町で? 警部は耳を疑った。殺されたのは、地元の乳製品工場に努める技術者。だが困ったことに、これといった動機も容疑者も浮かばない。事件のカギは被害者の過去にあるのか、あるいはその人間関係に? 警部と部下たちの捜査がようやくたどり着く事件の意外な真相とは……不器用にして恐妻家、要領は悪いが愛すべく中年警部の獅子奮迅の活躍を描きドイツで圧倒的人気の話題作  内容紹介より



質実剛健みたいな堅いイメージがあるドイツ産のミステリのわりには、ユーモア・ミステリのような弛めの雰囲気があって、お国柄と違うはそんなところがドイツ国内でうけているのでしょうか。この警部クルフティンガー・シリーズは8作刊行されているらしく、本書がデビュー作です。ただデビュー作からなのか、主人公の警部以外の主に部下の刑事たちのキャラクターがいまいち確立せずあやふやな感じがしました。また、フィクションを翻訳する経験値の問題なのか、コミカルな場面をはじめとして全体的に訳者の岡本朋子氏の訳出がこなれていないような印象を受けました。これはミステリの内容がそんなことを忘れさせるくらいに面白ければ問題ないのでしょうけれど、警察小説としての出来が際立って良いとは言えないために評価が低くなってしまいました。ただ、真面目でたまにかんしゃくを起こす、名探偵型でないきわめて人間的、家庭的な主人公の造形はかなり魅力を感じさせています。事件自体は入り組んで難度の高いものではなく、テレビドラマ向けのちょっと底の浅いものですから、北欧系の鬱々としたメンタルに来そうなミステリとは別の楽しみ方ができる作品だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
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『死者の館に』サラ・スチュアート・テイラー 創元推理文庫

2017-03-15

Tag :

☆☆☆

一人の若者が殺害された。体をおおうのは下着のみで、ネクタイで両腕をベッドの支柱に縛りつけられ、風変わりなブローチをつけていた。それが服喪用装身具だと気づいたクイン刑事は、ハーバード大で教鞭をとるスウィーニーに助力を求めた。ところが死亡した若者はスウィーニーのゼミの生徒で、ボストンの名門パトナム家の一員であることが判明。モーニングジュエリーの出所に興味を覚えたスウィーニーは、被害者の兄に心惹かれつつ調査をはじめる。名門の一族の秘められた過去とは?死と象徴に彩られた芸術史家スウィーニー・シリーズ第二弾。 内容紹介より



シリーズ第一作目の『狡猾なる死神よ』は未読です。
ハーバード大学芸術・建築史学科助教授の肩書きを持つヒロインには、もっとアカデミック寄りのエキセントリックな造形を期待していたのに、それらしい強烈な個性が見られなかったのは物足りませんでした。英国ビクトリア朝にさかのぼる、死を受け入れ死者を身近に感じるための装具についての歴史や風俗についての講釈は興味深かったのですけれど、それ以上の学術的面白みに繋がらなかったのも残念なところであり、ヒロインの人物としての面白みが希薄な点も目につきました。ヒロインの行動パターンは伝統のナンシー・ドルーを彷彿とさせ、ミステリの骨格は米国人が大好物の名門一家のスキャンダルやゴシップに基づいています。つまりは歴史的装具とか墓石の意匠などの被いを物語から取り去るなら、そこにあるのはあまり代り映えしない基本形なのです。しかもラブロマンスの味付けもしてあるという念の入れようですので、事件の真相が明らかになった時点で、その真相とそれまでに芸術史に関連して語られ、読者を誘導してきた事との差にやや飽きれ気味になってしまったのでした。とりあえずミステリ部分が脆弱で、また、刑事の妻の身に起きた出来事のストーリーに対する必要性が理解できません。




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ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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