『愛の棘』クリス・ロジャース 講談社文庫

2017-10-19

Tag :

☆☆☆

保釈中に逃亡した容疑者を捕らえ当局に差し出すのが報奨金ハンターだ。凄腕の女性ハンター・ディキシーは逃亡犯ダンを連れ、猛吹雪の中をテキサスに向かっていた。少女轢き逃げの罪に問われた男の話を聞くうち、事件に不審を感じた彼女は、独自の調査を始めるが……。胸のすくようなロード・ノベル登場! 内容紹介より



1997年に発表された本書は、ジャネット・イヴァノヴィッチのステファニー・プラム・シリーズと同様にバウンティハンターをヒロインに設定しています。ただし、後者の第一作目が発表されたのは1994年です。作品の雰囲気は、毎回奇人変人が登場して騒ぎを起こすドタバタ劇のステファニー・プラム・シリーズにくらべるとおとなし目であり、どちらかといえばローラ・リップマンのテス・モナハン・シリーズに似ているかもしれません。ストーリーは、轢き逃げ事件を起こしたとされる保釈中の容疑者をヒロインが逃亡先で捕まえ、吹雪の中を約二千キロ離れたテキサス州ヒューストンまで護送する話が前半230ページほど、後半は、容疑者の話を聞くうちに事件の経緯に不審を抱いた彼女が彼を自宅に猛犬とともに軟禁して調査を始めると、轢き逃げ被害者の妹が事件後にキャンプ場の湖で溺死していたことを知るという展開です。前半部分だけが、あくまで薄いロード・ノベル風であって、そこら辺りを期待すると残念な気持ちになります。それからヒロインの子ども時代の背景からくるものでしょうけれど、元地方検事補の彼女が事件を児童虐待という視点にのみに偏った決めつけ方をすることに不自然さを感じました。そして、見方にもよりますが、やっぱりヒロインと容疑者のラブロマンスという設定は物語をぬるくする上に、さらに容疑者の男が人柄が良い好人物さらに仕事も優秀と来た日には……。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『呪われた少女』ディーン・R・クーンツ 扶桑社ミステリー

2017-10-15

Tag : ホラー

☆☆☆

精神科医キャロル・トレーシーが車でひとりの美しい少女をはねたのは、期待していた養子縁組が延期された直後のことだった。ショックで記憶喪失となった少女はキャロルに引きとられて、記憶を呼び戻すための催眠療法を受けることになった。ある日突然、少女はだれかの名前を呼んだ。同時に激しい苦痛に襲われながら、さらに別の二人の名前を呼び続けた。炎にまかれ、首を切断され、脇腹に斧を打ちこまれる。たて続けに起こる無惨な出来事。少女はいったい何者なのか?さらに家をゆるがすポルターガイスト。少女の周辺で起こるすべての出来事は、不吉で邪悪なものの存在を予感させた。全篇を恐怖の衝撃が走る! 内容紹介より



以下、ネタバレしています。ご注意下さい!

リインカネーションをテーマにしている物語です。ただし、その要素に憎悪も加味するやや珍しいアプローチをとっています。思春期の娘の母親への複雑な感情が、ある出来事によって憎しみへと変化し、娘が死んで生まれ変わった後も生前の憎悪を持ち続けてしまい、その感情を“悪”なるものがあおり立てて利用しようとするという話です。雷を落としたり、ポルターガイストを起こしたり、飼い猫をあやつったり、悪夢で悩ませたりというオーソドックスながら舞台効果はサスペンスを盛り上げてはいるのですけれど、裏で糸を引く肝心の“悪”を登場させないのは迫力に欠ける印象でした。
それからヒロイン夫婦と彼女の養母が見る悪夢が、当然といえば当然なのですが皆一緒で同じ話が繰り返されるところに芸が無い感じがしました。クライマックスも迫力や感動が乏しくてもうちょっと書き込んであれば良かったように思いました。全体的に、本来のクーンツが持つ良さがマイナスに働いてしまっている作品のような気がします。

ユーザータグ:ホラー




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『ジンジャー・ノースの影』ジョン・ダニング ハヤカワ文庫HM

2017-10-09

Tag :

☆☆☆

わたしが小さな町の競馬場にやってきたのは、自分の過去を取り戻すためだった。孤児だったわたしは、両親も生まれた場所もまったく知らない。唯一の手がかりはその競馬場にいたジンジャー・ノースという女性だったが、彼女は30年前に謎の自殺を遂げていた。厩務員として働くかたわら、わたしはジンジャーの死の真相と自分の出自を探るが、それを妨害する敵の魔手が!スリリングで謎に満ちた展開で贈る注目のサスペンス 内容紹介より



本書は、作者が注目されるきっかけとなった『死の蔵書』より十年以上前に発表された作品です。
警察官や新聞記者などの職歴を経て、ベトナム戦争に従軍したのを契機に自らを見つめなおすため、母親のことを調査した結果、田舎町の競馬場にたどり着いた主人公は厩務員として働きつつ自殺したという母親のことを探ります。しかし周りの人たちの口は堅く彼を煙たがります。彼のこれまでの調査の過程で、母親にかかわった男たちが殺されたり、不審な死を遂げていたことが判明していたのですが、さらに厩舎で殺人事件が起こり、主人公も何者かに襲われて大怪我を負います。
悪い男ばかりに引っかかるジンジャー・ノースの造形とか、何のために登場させたのかわからない主人公の妹の存在意味とか、襲われて深手を負いながら、そのことを警察に通報しない主人公の考えとか、全体的にプロットが粗い印象が残りました。また、読みどころのひとつであろう厩務員としての日常があまり描かれず、後半に主人公に腐りかけた脚で逃避行させる、作者の意図も無理矢理で理解し難く感じました。各登場人物の人物像の掘り下げが充分とはいえず、読んでいると錯綜してしまってかなり混乱しました。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『誰かが泣いている』デイヴィッド・マーティン 扶桑社ミステリー

2017-09-19

Tag :

☆☆☆

ピューリッツアー賞を受賞し視聴者の信頼も厚いニュースキャスターのジョン・ライアン。ある日、彼は幼児虐待のニュースを読みながら涙を抑えることができず、結局番組を降番。その直後ライアンは、自宅前で黒人女性から奇怪なネッセージを手渡される。だが女性は彼の目前でタクシーに飛び込み自殺。衝撃をうけるライアンは、真相を掴もうと田舎町ハメルンへ向かう。そして、そこには18人もの赤ちゃんの殺害を噂される謎の小児科医キンデルがいた…。『嘘、そして沈黙』のマーティンが描く異色サイコ・スリラーの最新作。 内容紹介より



かつて小児科医の下で看護婦として働いていた黒人女性が、テレビ番組中に涙を流す主人公の姿を見て、小児科医が犯した犯罪を暴いて欲しいというメッセージを主人公に渡したのち自殺します。番組を降番した彼は静養を兼ねて小児科医の住む田舎町にある山荘へ赴くが、到着直後から奇怪な人物や出来事に遭遇します。排他的な町の雰囲気、不気味な噂を持つ小児科医と彼に仕える女性秘書、彼の息がかかった保安官とその助手、山中に獰猛な犬と暮らす小男、ブードゥー教を信じる女。登場人物たちも型にはまったキャラクターであり、悪人が当初から名指しされていることで善と悪が判りやすく設定され、ミステリとしては、医者がなぜ赤ん坊殺しの噂を立てられているのか、もし本当なら動機は一体何か、というシンプルさです。普段沈着冷静な主人公が、女体を前にして思わずとってしまった衝動的な行為を描いて、これまでとは違うギャップを感じさせるユーモラスなシーンもあります。現実からのちょっとした乖離具合、パルプマガジン的な読みやすさと安っぽさ、ケッチャムの暴力性とクーンツの荒唐無稽さを拡大して混ぜ合わせてさらにディスカウントしたみたいな作風に思えました。暴力場面がグロいので、苦手な方は注意が必要です。

『嘘、そして沈黙』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『誘拐された犬』スペンサー・クイン 創元推理文庫

2017-09-12

Tag :

☆☆☆

きわめて優秀だが、猫がらみの理由で警察犬訓練所を卒業しそこなった大型犬チェットと探偵バーニー。ふたりが今回受けた依頼は、伯爵夫人の愛犬でドッグショーチャンピオン犬警護だったが、つい、おやつの横取りという怪挙に出て、即クビ。その後、夫人が愛犬とともに誘拐されてしまう!事件を取材していたバーニーの恋人で新聞記者のスージーも失踪。なにが起きているのか?貧乏探偵と犬力全開のチェットの黄金コンビが再び実力を発揮する、犬好き用リトマス試験紙ともいうべき、犬ミステリの大傑作『チェット、大丈夫か?』改題文庫化! 内容紹介より



〈名犬チェットと探偵バーニー〉シリーズの第二弾。
愛犬に対する脅迫状めいたものを受け取った伯爵夫人からボディガードの依頼を受けた主人公のひとりと一匹は、不始末をしでかして即刻解雇されますが、元依頼人が誘拐され事件の調査に乗り出します。容疑者はドッグショーでのライバル犬の飼い主、ヒッピーの二人組と闘犬にかかわっているらしい男、そして被害者の夫である伯爵、それから怪しげな地元の保安官とその助手。
誘拐、拉致、逃走、荒野での偶然の出会い、チョークチェーン、こういったパターンが前作『助手席のチェット』同様に繰り返されてややプロットが代り映えしません。今回は恋人が行方不明になっているのに解決まで時間がかかり過ぎのような気がします。やはり24時間以内には解決しないと、本来時間が経過するにつれてわき上がってくるであろう主人公(飼い主の方)の切迫感とか焦燥という心理が伝わって来なくて不自然に映りました。その辺りは語り手が犬だからなのかもしれませんけれど……。こういう設定はプラスとマイナスの二面性を抱えるみたいです。それから犬の優れた嗅覚が事件解決の大きな役割を担ってくれるのかと思っていたのですけれど、前回今回ともそういうところは見受けられずでちょっと残念でした。

『助手席のチェット』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『美食家たちが消えていく』アレクサンダー・キャンピオン コージーブックス

2017-09-08

Tag :

☆☆☆

「なかなかいける」毒舌で知られるレストラン評論家が、ロブスターのラビオリの感想を口にした直後に命を落とした。その後も、パリの最先端レストランで次々と評論家が殺され、連続殺人の様相を帯び始めた。女性警視カプシーヌは、有名評論家の夫も標的になるのではと不安な日々を過ごし、捜査がいっこうに進まないことに焦りを募らせる。そして犯人が動きを止めてから約1ヶ月、エッフェル塔にあるレストランのリニューアルセレモニーという華々しい席で、カプシーヌは夫と危険な賭けに出ることに!白装束のピクニック集団に暗闇レストラン—奇々怪々なパリの最先端グルメ業界で起る、連続殺人事件の真相とは!? 内容紹介より



〈パリのグルメ捜査官〉シリ—ズ第三弾。
レストラン評論家を店内やイベントの最中に殺し、しかも死体に毒をモチーフにした細工を施すという大胆不敵な犯行を続ける連続殺人犯、複数の事件現場に居合わせた容疑者たち、奇抜な趣向のレストラン。捜査を仕切ろうとして口出ししてくる予審判事、評論家である夫の身を心配するヒロイン。コージーの形態を取った警察小説なのか、それともその逆なのか、雰囲気のゆるさと謎解きのレベルはコージーっぽいのですけれど、この二つの取り合わせはあまり良くないような気がします。特に今回は、『りんご酒と嘆きの休暇』よりも作品全体に散漫な印象を受けました。フランスの諜報機関から食事を届けてもらっている精神分析医(?)のホームレスに、ヒロインがプロファイルのために面会するシーンなどは、人物的には面白いにしてもさほど重要とは思えませんし、作品に狙ったインパクトを与えていない感じがします。また、ヒロインの夫やいとこに比べて薄い、彼女の部下たちの人物像はエピソードを付加して、もっと掘り下げたら面白くなるのではないかという気がしました。

『りんご酒と嘆きの休暇』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『助手席のチェット』スペンサー・クイン 創元推理文庫

2017-08-20

Tag :

☆☆☆

リトル探偵事務所にある母親から持ち込まれた事件は高校生の娘の失踪だった。元刑事でバツイチの探偵バーニー・リトルは誘拐事件と判断、相棒の大型犬チェットと調査を開始したが、身の代金の要求はない。父親は単なる家出としてバーニーを懐古してしまう!警察犬訓練所を優秀な成績で卒業、はできなかったが、それでも優秀な相棒チェットは、おのれの臭覚を信じ、危険もかええりみず、バーニーをサポートする。チェットが犬の視点、犬の心ですべてを語り全世界の犬好きの心を鷲摑みにした史上最強の犬ミステリ『ぼくの名はチェット』改題文庫化。 内容紹介より



名犬チェットと探偵バーニー・シリーズ。
警察犬訓練所での卒業試験の最中に起きた猫にまつわる騒動が原因で警察犬になれなかった犬のチェットと離婚して息子の養育権も失った元警察官で私立探偵のバーニーのコンビの物語です。彼らが乗っているのは中古のポルシェのカブリオレ。物語の語り手はチェットなので犬らしく食べ物のこととか、臭いのこと、パートナーの人柄のこと、などなど考えがあれこれ移ろい、また、眠くなったら寝てしまうし、記憶力もさほど長続きする訳ではありません。こういう犬視点のいい加減というかゆるい感じが作品に良い雰囲気を与えています。そのゆるさに対して事件の部分に締まりがあればなお良かったのでしょうが、めりはりが乏しくちょっとぐだっている感じがしました。それから犬視点なので人物造形や心理描写の点でそれほど気をつかわなくてもすむのは良いのか悪いのか、個人的には物足りなさを覚えました。とりあえず犬が語り手という設定が肝であり、それ以上でもそれ以下でもない作品に思えます。あくまで猫派のわたしの意見でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ガラス瓶のなかの依頼人』シャロン・フィファー コージーブックス

2017-08-16

Tag :

☆☆☆

アンティーク雑貨の拾い屋ジェーンはついにお宝を引き当てた! とある老婦人の邸宅でひらかれたハウス・セールで、グラスやシェーカーなど、年代物の貴重な酒場グッズを手に入れたのだ。居酒屋の娘として育ったジェーンにとっては,どれも子どもの頃の思い出がよみがえる懐かしい品々。ところが、持ち帰った戦利品をほくほく顔できれいに洗っていると、そばにいた夫と息子の顔が凍りついた。その視線の先をたどると、なんと持ち帰ったガラス瓶のなかに、男性の親指が! わたしったら、またお宝でなく事件を掘り起こしちゃったの!? ジェーンは拾い屋のタブーを破って、売り主に事情を訊きにいくことに、すると出迎えてくれたのは、とても風変わりな老婦人で……!? 蒐集家の鋭い観察眼がきらりと光るシリーズ第2弾! 内容紹介より



シリーズタイトルは〈アンティーク雑貨探偵〉です。第一作目の『掘り出し物には理由がある』は未読。
とにかくアンティークというよりジャンクな品物についての話題が多くて、ミステリの部分がそれに埋まりそうになりかけているみたいな印象が残りました。しかもヒロインの興味はボタンとかベークライト、それに古い個人写真、私信といったものなので、アンティーク業界を舞台にしたミステリに付きものの家具や調度品についての、興味深いいわれやうんちくがほとんど語られないため魅力を感じませんでした。そもそも品物自体に百年以上の歴史がある「アンティーク」じゃなく、「ビンテージ」か「レトロ」という用語を使うべきではないのかと。ミステリ部分もなんだかよく判らないような,全体的に整理が付いていないような判然としない感じがします。大量のジャンク品がまき散らされなかで、ただ一点光るのがヒロインの誘拐された母親の活躍シーンで、こういうコミカルな部分を強調していく方向性のほうが良いのではないでしょうか。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『騙す骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2017-08-02

☆☆☆

妻ジュリーの親族に招かれメキシコの田舎を訪れたギデオン夫婦。だが平和なはずのその村で、不審な死体が二体も見つかっていた。銃創があるのに弾の出口も弾自体も見当たらないミイラ化死体と、小さな村なのに身元が全く不明の少女の白骨死体だ。村の警察署長の依頼で鑑定を試みたギデオンは次々と思わぬ事実を明らかにするが、それを喜ばぬ何者かが彼の命を狙い……一片の骨から迷宮入り寸前の謎を解くスケルトン探偵! 内容紹介より



古代の人骨やミイラ化した遺体に違和感のないメキシコという土地柄。しかし、のどかな田舎の村で不審な謎の死体が見つかるとなると話は別。骨に残った痕跡や特徴から死因や身元を判明させる手掛かりをいつものごとくギデオンが解き明かす展開へ。今回は、石臼でついた穀物を食べていた古代人とメタンフェタミン中毒者それぞれの歯の状態の話は大変面白かったです。主人公が命を狙われるけれども、サスペンス性はさほど効果的には盛り上がらなかったし、容疑者にあげられる人物も少なく、真相もたまに見かけるネタで予想がつきやすく意外性が感じられませんでした。歯の本数やある習い事はちょっと都合良くもって行き過ぎの気もしました。観光地としては地味で華やかさに欠けるし、メキシコを舞台にするならオカルトチックな話や出来事、影の部分を取り入れてミスリードしてみても良かったのでは。ギデオン夫婦の相変わらずの熱々ぶりに若干引き気味になりました。

ユーザータグ:アーロン・エルキンズ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『年寄り工場の秘密』コリン・ホルト・ソーヤー 創元推理文庫

2017-07-29

☆☆☆

高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉にちょっとした変化が起きた。長年暮らしていたトッツィが,近くにできた老人ホーム〈黄金の日々〉に引っ越したのだ。そして三週間がたち〈カムデン〉に勇名を轟かすアンジェラとキャレドニアのもとを、そのトッツィが相談に訪れる。どうやら〈黄金の日々〉に幽霊が出るらしく、正体を見極めてほしいと言うのだ。かつて同じ屋根の下にいたよしみで……というよりは退屈しのぎが目的で、名物コンビふたりは体験入居を装い“潜入捜査”を開始するが、思わぬ大事件が待っていた!老人探偵団シリーズ第七弾。 内容紹介より



〈老人たちの生活と推理〉シリーズ第七作目。別にどうでもよいのですけれど、本書では珍しく老人ホームの支配人であるトゥーガスンの登場機会が多く、毎回彼の存在意義が気になっていたわたしにとってはちょっと満足でした。そして作品全体もこれまでよりミステリの体裁を整えてきたのではないかと感じた次第です。序盤の別の老人ホームにおける幽霊騒ぎは、まさにお騒がせ程度の効果しかあげていませんが、効率重視で規則に縛られた〈黄金の日々〉と比較して、優雅な建物にはガタがきているにしても昔ながらのアットホームで居心地が良く食事も美味い〈カムデン〉を七作目にして改めて読者に認識させる一工夫になっているように思いました。また、試験的にペット(猫)可になったことも話に新味を加えていますし、ミステリの伏線にも仕上げています。小さなおばあちゃんがゴミ箱をあさって宅配フードの容器を集めてまわる場面がコミカルですし、主人公の凸凹コンビ以外はその他大勢扱いだった登場人物たちのキャラもこなれてきたし、このシリーズとしてはこれも珍しい犯人との対決シーンも盛り込んであって、コージーミステリの本道に近づいている印象を受けました。

ユーザータグ:コリン・ホルト・ソーヤー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クッキング・ママの依頼人』ダイアン・デヴィッドソン 集英社文庫

2017-07-03

Tag :

☆☆☆

再婚した夫はやさしいし、息子との仲もうまくいっている。言うことなしの日々にまたもや産婦人科医の前夫の暗い影。なんと彼に殺人容疑がかかって大騒ぎ。実の父の身を心配した息子はゴルディに真犯人を捜して、濡れ衣をはらしてほしいと頼む。さんざん前夫の暴力に脅えてきたママとしては、なかなか腰があがらないのだが……。大好評の料理ミステリー、円熟の第7作目。 内容紹介より



民間の健康保険組合みたいな組織の女性副社長が撲殺されているのを、ヒロインが発見。被害者は人事権を握っていることで、普段からスタッフや専属の医師へのパワハラなどが目立ち、また会社は医療ミスで訴訟も起こされていた。さらに交際していたのがヒロインの元DV夫であり、前夜に被害者と痴話げんかをしたと話したことから容疑者として逮捕されてしまう,という具合に話が進みます。元夫を始めとして容疑者も多く、息子に懇願されたヒロインが内情を探るのですけれど、関係者も検察官もどなたも良く喋る,普通こんなことは赤の他人に明かさないだろうことも打ち明けるという都合の良い展開に。ひとしきり容疑者も動機もそろったところで、そこからの推理がはたらき容疑者が絞られ……、てことがないのが本作品の傾向でして、材料を取り揃え、調味料も施しながら、しかし調理の過程を飛ばしていきなり料理が出てくるケータラーらしからぬ仕業でした。クライマックスもヒロインが襲われて真犯人が判明するという、いつものコージー・ミステリの定番をとります。

ダイアン・デヴィッドソン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『パニック!』ジェフ・アボット ヴィレッジブックス

2017-06-28

☆☆☆

それはある朝、一本の電話から始まった—。新進気鋭の映像作家エヴァンは母からの電話で起こされた。帰ってきてほしいという母の切迫した口調に驚いた彼は実家へ急ぐが、そこには変わりはてた母の姿が……。だが、エヴァンを待っていたのはそればかりではなかった。銃を持った連中に襲われ、死を覚悟した瞬間,謎の男に間一髪で救出される。訳がわからぬまま、身の危険を感じてひたすら逃亡するエヴァン。誰が味方で誰が敵か?謎が謎を呼び、死が死を呼ぶ……。エヴァンはこの危地を乗り越え、真相にたどりつくことができるのか?人気ミステリー作家が初めて挑んだ、超ハイスピード・サスペンス! 内容紹介より



〈図書館長ジョーダン・ポティート〉シリーズと〈モーズリー判事〉シリーズで知られる作者ですけれど、ノン・シリーズの本書の主人公のイメージがその二つのシリーズの若者のそれに重なりました。モラトリアムな感じを受けるところは、デイヴィッド・ハンドラーの主人公たちにどことなく似ている気もします。さて精神的な未熟さを感じさせる主人公が母親の死を機に、CIA、フリーランスのスパイたちが暗躍する陰謀の渦中に放り込まれ、逃亡劇、母親の死の真相究明と行方不明の父親探しが、プロ対アマテュアという冒険小説の一つの定番の形で繰り広げらていきます。展開はややもたつくところがありますが、それなりにスピーディーといっても良いでしょうし、ぎりぎり高校生までにはウケるかもしれない娯楽小説には仕上がっています。しかしながら、悪役コンビの行動がドタバタし過ぎです。衆目に晒されている状況での派手な銃撃戦や追跡を二度も行うなんて、極力他人の注目を引かないように心がけるスパイの行動とはかけ離れて、プロがプロらしくないまるでギャグにしか思えませんでした。プロットも旧態依然な感があって,まるで幽霊のごとくソ連の話が出てくるし、いっそのこと時代設定を古めにしたらどうかとも思いましたが、それだと現代ミステリにおける魔法の小箱であるパソコンとネットが使えなくなりますね。

ユーザータグ:ジェフ・アボット




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『キーストン警官(コップ)』ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ文庫HM

2017-06-24

☆☆☆

イギリス人の新人俳優イーストンのあだ名はキーストン—彼は、喜劇映画で今をときめくキーストン撮影所に、その他大勢組のキーストン・コップとして雇われた。大根役者だが、かわいらしい新進女優ハニービーとも恋仲になった。ところが、ハニービーの母親が何者かに殺され、嫌疑が彼女にかかったことから、キーストンは、いやでも謎を秘めた殺人事件の渦中に巻きこまれてゆく—ローラーコースターの事故、消えたフィルム、誘拐事件、冒険につぐ冒険。1910年代の喧噪とロマンに満ちたハリウッドをコメディー・タッチで描く著者会心の力作! 内容紹介より



作品中の俳優を含めた映画関係者として、無声映画時代に実在した人物を登場させているそうです。作品中の事件はフィクションですが、ネットで調べてみると実際にスキャンダルに巻き込まれた俳優や女優もいるみたいです。本書の魅力は、なによりチャップリンやバスター・キートンの白黒で早送りのような作品を彷彿とさせるように、エネルギッシュな時代背景や無声喜劇映画を撮影する様子やがとても興味深く軽快に描いているところだと思います。ただ、スタントマンの人身事故、女優の母親の不審死、カメラマンの自殺、監禁や誘拐事件、といった事件や事故が次々に起るわりに、派手で華やかなハリウッドと撮影所を舞台にしているにしてはミステリ自体は地味です。わざわざ英国人を主役に当てているにしては、英米双方のお国柄や人柄の違いを面白可笑しく取り上げるといったこともなく、自国のマーケットへのアピール程度の必要性しか感じませんでした。『偽のデュー警部』に較べると小粒な印象でした。

ユーザータグ:ピーター・ラヴゼイ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『りんご酒と嘆きの休暇』アレクサンダー・キャンピオン コージーブックス

2017-06-17

Tag :

☆☆☆

休暇でノルマンディの田舎に暮らす伯父を訪れた、パリ警視庁の警視カプシーヌ。忙しい日常を離れ、伯父の大邸宅でふるまわれる旬のご馳走—名産のりんご酒にカマンベール、きのこ、そしてジビエ料理に舌鼓を打ち、楽しいひとときを過ごすはずだった。ところが、狩猟が解禁されたばかりの村では、狩りの最中に不審な事故が多発。のどかなはずのこの村で、いったい何が起きているの?警察官になることに大反対だった伯父から捜査を頼まれ、ようやく一族に認めてもらえた嬉しさを噛みしめるカプシーヌ。でも田舎町での捜査は都会と違い、昔からの知人にふりまわされてばかりで……!?フランスの田舎町の魅力がいっぱいのシリーズ第二弾! 内容紹介より



〈パリのグルメ捜査官〉シリーズ。第一作目の『予約の消えた三ツ星レストラン』は未読です。
前回読んだ北欧ミステリもそうですが、特にフランスミステリを読んで感じる、アメリカミステリにくらべて際立つお国柄が新鮮です。著者はパリに長年住んでいたNY生まれのブラジル人らしいのですけれど、フランスミステリでは作品の中においても食事に時間をかけ,その描写に紙幅を費やす傾向が見られます。そして、ヒロインの夫が著名なレストラン評論家という設定であるためにチェーン店、ファストフードにたいする毒舌ぶりも面白く、また、日本産ウィスキーの「余市」や「山崎」という名前がでてくるのもフランスミステリならではでしょう。それから同じくフランスの地方を舞台にした『緋色の十字章』(マーティン・ウォーカー作 創元推理文庫)でもありましたが、地方特有の食産物にかけるEUの規制が固有の食文化を衰退させていくのではないかという懸念が感じられました。このようなこだわりは、これまで読んだ英国ミステリでは目にしたことも感じたこともないのが興味深いところです。
コージーブックスからでているにもかかわらず内容は警察小説です。地方で起きた連続誤射事件とパリで頻発する“眠り姫”窃盗事件の捜査でヒロインがあちらこちら移動してせわしなく、ストーリーにやや落ち着きがなく、二つの事件が個別すぎてミステリ的にいまひとつでした。野鳥や鹿、うさぎへの狩猟場面が描かれているので、そういうのが苦手な方にはお勧めしません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『木曜日の子供』テリ—・ホワイト 文春文庫

2017-05-19

Tag :

☆☆☆

木曜日の子供は遠くまで行く—マザーグースはそう歌う。たまたまそんな星の下に生まれたために旅に出なければならない家出少年が、ひとりの殺し屋に出会う。が、この凄腕の殺し屋も、よくよく聞けば両親を航空機事故で失い、たった一人の弟を植物人間にされて敵討ちを心に誓っている。彼もまた“木曜日の子供”なのだろうか? 内容紹介より



殺し屋と刑事という対比した構図をとっていた『殺し屋マックスと向う見ず野郎』、本書では殺し屋と刑事あがりの私立探偵の形をとっています。これは恐らく作者が得意とする形式なのでしょう。そして、あくまで少年にとっては自分を必要としてくれる相手、殺し屋にとっては亡くなった弟の喪失感を埋める存在として互いの愛情を描いてあるのですけれど、深読みしてしまうと殺し屋と家出少年のふたりの関係から漂う危なげな雰囲気が、『真夜中の相棒』を彷彿とさせます。その関係に、家出した子供を捜し出すことを専門とする私立探偵が加わって話が進んでいきます。彼も警官としての挫折と自分の子供が家出して行方が判らない過去を背負っています。作品全体から受ける印象は、パターンにこだわってテーマが通り一遍になってしまっているみたいな感じで、登場人物の行動やその結末も予想したとおりで意外性に乏しく、女性作家に見られる男同士の友情についての美化がやはり目に付き、作者はこれを様式美として極めたいのではないのか、と思ったりもします。その反動によるものなのか女性の登場人物についての印象がペットの犬並みに弱いです。

『殺し屋マックスと向う見ず野郎』




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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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