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模範的な黒人警官が豹変し、白人に銃口を突きつける。彼は止めに入った同僚に銃を向け、逆に射殺された—事件を調査するワシントンの私立探偵デレクは、家族思いの男の素顔を知るが、その妹は兄の葬儀の直後に失踪し、麻薬に溺れていた。やがてデレクは、男を凶行に走らせた兄妹の過酷な運命に直面する……欲望が渦巻き、銃弾が飛び交う街で正義を貫く男を描いた現代の挽歌。ハードボイルド界を担う著者の新シリーズ。     内容紹介より



ジョージ・P・ペレケーノスの〈デレク・ストレンジ・シリーズ〉第一作目。
まるでオセロゲーム(例えが不適切でしたらすみません)を見ているように黒人と白人の関係を強く意識させられる物語です。

目新しいのは、主な調査対象となる加害者の白人(元)警官が調査に加わっているところです。主人公は彼を伴って事件現場、相棒だったパトロール警官を訪れたり、私生活でも交流を持ちます。問題は彼の潜在意識の中に黒人への差別感情があるのではないか、もし相手が白人だったら発砲しなかったのではないか、という点です。そして、この元警官がキレやすい性格なのではという疑いも相まってストーリーに緊迫感を与えています。

女性にたいして、「男ってのは、ダイヤモンドを探して世界中を旅するが、自分の家の裏庭を探そうとはしない」(p303)の古いたとえ話同様の生活を送ってきた主人公のデレクがジャニーンというダイヤモンドを“裏庭”で見つけたものの、家庭を背負うことの漠然とした不安からまだ他を探そうとする往生際の悪さ、フラフラ具合が巧みに描かれていると思います。

シリーズ二作目
『終わりなき孤独』



曇りなき正義 (ハヤカワ・ミステリ文庫)曇りなき正義 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2001/11)
ジョージ・P. ペレケーノス

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08/27|☆☆☆コメント(1)トラックバック(0)TOP↑
☆☆☆

田舎町の若き警察署長ベンは、麻薬組織が牛耳るボストンの無法地帯に乗りこむ。検事殺しの容疑がかかる極悪ギャングを追っているのだ。殺人捜査など未経験のベンは、隠居中の敏腕刑事の助力を得る。しかし、癒着、裏切り、沈黙の掟、数々の障害に捜査は迷走、証人も次々と殺されていく。だがやがて、ベンの抱えていたある秘密が事件の突破口になるのだった— 発表前から世界中のミステリ界を揺るがした必読の新世代小説。     内容紹介より



ネタばれ気味です!ご注意ください。



どの部分をして「新世代小説」と呼ぶのかどうかは分かりませんが、コージー風から始まり、成長小説、警察ミステリ、ハードボイルド、ノワール風と様々に変化していくのが新しいと言えば新しいかも。ただ、そのすべてが75点平均の出来です。成長小説の部分は先生となる引退した刑事ケリーの役割と行動が中途半端、彼から学ぼうとしたのは警棒の回し方くらいか。しかもギトゥンズと役割がダブっています。警察ミステリおよびハードボイルド部分では悪役のスケールが小さすぎ。さらに長すぎて同じ所をグルグル回っているようで(ギトゥンズやブラクストンに対する評価が繰り返されるところ)、カバー写真みたいにボストンの街を駆け抜ける疾走感がまーたく感じられません。作品全体が冗長なためにラストのサプライズ効果が弱くなった感じがします。ページ数をこの半分におさえていたらもっとシャープな作品になっていたのでは。気に入った箇所は第一部冒頭の町の住人たちとのやり取りです(作者よ、ダイアン・ハーニドのその後を語れ)。
 
質量とも645ページに薄めたジム・トンプスンというのがわたしの印象です。



ボストン、沈黙の街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ボストン、沈黙の街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2003/09)
ウィリアム ランデイ

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☆☆☆

29歳のハンサムな青年クリシュナン・ヘムカー通称サニーは、LAの病院に医学実習生として勤務しているが、実は彼がアラブ系テロリストであることは誰も知らない。その彼のもとにある日、電話が入る。「ニューヨークにアパートが見つかったわ」長年待ちわびた任務遂行の日がついに来たことを悟ったサニーはすぐさまニューヨークに向かい、次の指示を仰ぐべく新聞広告で見つけた司令塔の女性の部屋を訪ねる。「7月1日に行われるカナダ自治記念日の祝典か、あるいは7月4日の独立記念日に自由の女神像の前で行われるセレモニーのどちらかで、彼を仕留めるのよ」そう言って渡された一枚の写真。そこに写っていたのは……。超高速テンポで読ませる暗殺スリラー! 内容紹介より



エド・マクベインがジョン・アボット名義で発表した作品だそうです。どおりで話の運びかたがこなれていて上手なはずです。さらさらと書いている印象ですけど、職人技だからそう感じるのでしょう。実は推敲を重ねているのに簡単に書いてるよう感じさせる名人のなせる業というやつですね、きっと。マクベインの後期の作品には、会話とト書きのような描写がまるで台本を読んでいるみたいなもの(作品名を忘れました)がありますが、この作品も無駄を省いた流れるような感じを受けます。ただし、ベッドシーンを除いてですが。こういうクセのない文章や余分な油を取り除いたみたいなストーリーは頭に入り易くても印象に残り辛かったりします。その点では主人公の暗殺者にも強烈な個性が欲しかった気がします。さらに暗殺のてん末もインパクトが小さくて盛り上がりに欠けます。
87分署シリーズからキャレラほかの刑事たちを取り去ったら、こんな感じの作品になるでしょう。

余談ですが、本書は日本で起きたある事件の時に話題に上ったようです。作中で暗殺に使用する材料を実際に宅急便で取り寄せみたと作者おぼえがきに書いてあってなにか警鐘ともとれますね。



みどりの刺青 (ミステリペイパーバックス)みどりの刺青 (ミステリペイパーバックス)
(1994/04)
ジョン アボット

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☆☆☆

黒い傘に風変わりな帽子—生徒たちを引率して水族館へ見学に来たミス・ヒルデガード・ウィザーズ。ペンギン水槽で不思議な事件が起きる。凶器、目撃者、動機など、容疑者や被害者にまつわる謎はますますもつれていき、やがて事件は思わぬ方向へ…。パイパー警部の捜査に一役買って出た女教師の動きと推理が冴える…愉快でなつかしいミステリ。
(amazon,「BOOK」データベースより)



私立探偵でもない、ずぶの素人である小学校の女性教師が警察の捜査(おもに事情聴取ですが)に同行、同席するところ以外は時代を感じません。推理作家たちが頭を悩ませている、素人探偵をいかに事件の捜査に関わらせるかという大義名分の問題にひとつの答えが出ているわけで、それは、そんなことはたいした問題じゃないとばかりにまったく気にせず書いてしまうことです。それがどうした?書いちゃえば勝ち、という態度をとることが大事。

さて、〈エラリー・クイーンのライヴァルたち〉会員番号1番のミス・ヒルデガード・ウィザーズは、冒頭登場するや否やスリを捕まえる華々しいを活躍を見せるわりに、その後、キャラクターに個性的な味付けがなされていない感じがして読後の印象が薄いです。彼女の年齢は39歳の設定なのですが、1930年代と現代ではその年齢にたいする受け取り方に差があり過ぎてキャラクター・イメージがあやふやになってしまうのでしょうか。解説の大津波悦子さんによれば、当時は「オールドミスととらえられて」いたそうなので。

以下、ネタばれ気味です。ご注意下さい!

なにせクイーンを読んだのはかなり昔のことなので、ここからうろ覚えで書いてしまいます。彼の作品における男女の恋愛話はストレートで、探偵が助ける恋人たちはあくまで淑女であり紳士であって犯罪の嫌疑をかけられた恋人の身代わりになることはあっても、渦中の恋人たちが心変わりしたり相手に罪を押し付けるなどというようなことはなかったと記憶しています〈たぶん〉。ミス・ウィザーズも元恋人たちが元の鞘に収まることを期待して警察に協力していたのに、本書にでてくる元恋人同士は、はじめは身代わりになるにしてもその後様子が変わってきたり、他の男性に惹かれたりとクイーンとは違ったパターンを示してしまいます。そんな現実的なところやアイロニカルな展開が面白かったです。




ペンギンは知っていた (エラリー・クイーンのライヴァルたち)ペンギンは知っていた (エラリー・クイーンのライヴァルたち)
(1999/06)
スチュアート パーマー

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☆☆☆

【ころしや 殺し屋】主に金銭の報酬と引き換えに、他人の生命を奪うことを職業としている人—ミステリの世界では欠かすことの出来ない存在である殺し屋だが、彼ら彼女らが主役となることは滅多にない。いつの世にも殺し屋たちは脇役であり、敵役だった。だが本書では、殺し屋たちはその立場に甘んじてはいない。ここでは殺し屋が堂々の主役なのだ! アンソロジーの名手がオールスターキャストで送る、殺しの旋律15篇! 内容紹介より



ヘミングウェイでさえ「殺し屋」という作品を書いているくらいだから、ミステリに登場する機会は多いけれど、殺し屋が主役になっている作品はたしかに少ないですね。本書にも収録されているローレンス・ブロックの〈ケラー・シリーズ〉、フォーサイス『ジャッカルの日』、ノエル『長く孤独な狙撃』、ヒギンズ『死にゆく者への祈り』、イーヴリン・スミスの〈ミス・メルヴィル・シリーズ〉、ざっと思い付くのはこれくらい。本書の収録作品には頭抜けたものはないけれど、さすがにどれもレベルが高いと思います。タイトル『GREATEST HITS』の”Hits"を命中とかhit manに掛けたのはややオヤジギャグぽいです。

『殺し屋』に収録されている「ケラーのカルマ」
ケラーが犬を飼い始め、仕事で出張するためにペットシッターを雇ったころの話。あまり描かれない殺し屋の普通な日常とスリリングな仕事との対比が異様な雰囲気をかもし出す。

「隠れた条件」ジェイムズ・W・ホール
格安の値段のお得な殺し屋。でも殺すべき理由に納得がいかないと仕事はしないよ。殺し屋の職域を超えてます。孫ガキがギャーギャー騒ぎまわる住居環境と部屋の壁についた血や骨片。生活感ありすぎ。

「クォリーの運」マックス・アラン・コリンズ
リタイヤした殺し屋の回想。結局、懐古するところはそこなのかと突っ込みたい。

「怒りの帰郷」エド・ゴーマン
別れた息子の葬式に帰ってきた殺し屋の話。ウェット&クール。

「ミスディレクション」バーバラ・セラネラ
なかなか見られない女殺し屋の話。このトリックはありえない。

「スノウ、スノウ、スノウ」ジョン・ハーヴェイ
長編の冒頭を切り取ったみたいな作品。続きが読みたいものです。しかし、どうして強盗の犯行に見せかけないのでしょうね。

「おれの魂に」ロバート・J・ランディージ
雇い主から姿を消した元殺し屋と元警官の友情がなかなか良いです。腕の良い職人はどこも手放したくない。

「カルマはドグマを撃つ」ジェフ・アボット
ジョニーはドッグを轢く、マシーニはエームズを雇う、殺し屋は標的の意外な正体を知る。

「最高に秀逸な計略」リー・チャイルド
こんな小賢しいことをしていたら仕事の依頼が来なくなりそうですけど。

「ドクター・サリヴァンの図書室」クリスティーン・マシューズ
クレージーユーモア系でユニークな作品。このような作風は貴重だし、好みです。

「回顧展」ケヴィン・ウィグノール
一転してしみじみ系。ちょっと簡単に納得し過ぎる気もしますが。

「仕事に適った道具」マーカス・ペレグリマス
バイオレンス系。山口さんや住吉さんそれから稲川さん、適材適所という言葉を組長さんに教えるときはこれをテキストに使いましょう。

「売出中」ジェニー・サイラー
男女の違いと言いますか、考え思い込み過ぎる男と合理的現実的な女。要するにやるかやられるかというのをいまいち男というのは分かっていない。頭では分かっているけど。

「契約完了」ポール・ギーヨ
アイデアが変わっていてプロットも良くできている。

「章と節」ジェフリー・ディーヴァー
いかにもディーヴァ—らしい。このひと、こんなことばかり考えて頭疲れないんだろうか。長編むきな作家ですよね。




殺しのグレイテスト・ヒッツ―アメリカ探偵作家クラブ賞受賞 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 332-1))殺しのグレイテスト・ヒッツ―アメリカ探偵作家クラブ賞受賞 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 332-1))
(2007/01)
エド・ゴーマンロバート・J.ランディージ

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