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『ラスト・ワン』アレクサンドラ・オリヴァ ハヤカワ文庫NV

2020-06-30

Tag :

☆☆☆

空前のスケールのリアリティショー番組『闇のなか』の収録が始まる。未開の荒野に集められた12名の参加者が、体力とアウトドア生活のスキルを試される。〈チャレンジ〉に挑み、賞金を争うのだ。単純なトレッキングを皮切りに徐々に困難な課題へと番組は進み、参加者たちは次々にふるい落とされていく。平凡な主婦のズーは粘り強く生き残るが、彼らの知らないうちに外の世界では……気鋭が放つ注目のサバイバル。スリラー 内容紹介より



以下、ネタバレ気味です。ご注意ください!


サバイバルを主題にしたリアリティ番組に参加した12名の男女が単独またはチームを組んでアウトドア生活に必要な道具や食料を賭けた〈チャレンジ〉を行う様子と参加者の一人であるズーが独りで行動する様子が交互に挿まれて物語が進んでいきます。チーム行動の場面では参加者の人となりから彼らのチームワークやいざこざが描かれるいかにもリアリティショーらしい情景が続き、ズーの視点では番組が用意したと思われる目的地へのヒントを探しながら体力を消耗した彼女の心理状態と異様な周囲の光景が描かれていきます。実は番組の収録が行われていた頃、世界では謎の疾病が流行して大勢の死者が出る状況に陥っており、ズーが番組が用意した舞台セットだと思い込んでいる荒廃した無人の町は、実際には住人たちが死に絶えた現実世界だったのです。
さて、ここで気になるのはリアリティショーとポストアポカリプスのそれぞれの物語の配合だと思うのですけれど、リアリティ番組で培ったサバイバル技術をポストアポカリプスの世界で発揮して生き抜く話じゃなく、番組内のエピソードの割合が大きめなところです。終末後のことはいささか添え物みたいな感じであり、ズーの想念は民家で見た人形だと思っていた瀕死の赤ちゃんと自宅で待っているであろう夫のこと、この二つの個人的な想いがしつこいくらい繰り返されています。この奇妙なアンバランスさが気になりました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『鈎』ドナルド・E・ウェストレイク 文春文庫

2020-06-09

Tag :

☆☆☆

きみの小説をおれの名前で出版しよう。ベストセラー作家の提案に、中堅作家ウェインの心は揺れた。収入は山分け、55万ドルが手に入るのだ。だが条件がひとつあった―ウェインはその作家の妻を殺さねばならないのだ。殺しに狂わされ、徐々に荒廃してゆく人間の内面を描き、傑作『斧』に続いて名匠が放つ戦慄の犯罪サスペンス。 内容紹介より



以下、ネタバレを含んでいます。ご注意ください!

この作品のテクニック上の肝は、読者の意表を突く、わざと狙いを外すという点のような気がします。まず25ページ目で早くも妻殺しの話を持ちかけるところ。妻に殺人の依頼があったことを打ち明けたこと、さらに、それに対する妻の反応。そして殺人がいきなり始まってしまうところ。殺しを成し遂げた後の感情の変化。このように本来であれば、読者をじらすなり効果を高める目的で割と長めに時間をかけて持っていくキーポイントとなる場面をいきなり提示してしまう手法です。依頼者側からのアプローチにもためらいや不安を絡めて描き、普通なら殺人の場面は依頼された側の動揺や逡巡などの心理描写をかなり書き込んだ後、後半過ぎたあたりで実行させるのが常道な気がしますが、本書では約四分の一ページ目で行われています。このように読み手の予想を上手くそらす技術が巧みに効いている印象が残りました。さらに罪悪感を抱く人物もこちらの思い込みをはずして意外性を持たせている点も特徴になるのでしょう。個人的には心が壊れていく様がもっと強く描かれていたら良かった気がします。とにかく『斧』みたいな悪夢的な衝撃度は心配したほどにはありませんでした。

『逃げだした秘宝』ハヤカワ文庫
『弱気な死人』ヴィレッジブックス
『悪党パーカー/エンジェル』 ハヤカワ文庫HM




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『哀しきギャロウグラス』バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル) 角川文庫

2020-05-31

☆☆☆

鬱の病を持つ青年ジョー。病院から追い出された上に、里親からも見棄てられ、絶望した彼は遂に自殺をはかる。その命を救ったのは、謎のインテリ青年シャンドー。この時からジョーは、彼の服従者(ギャロウグラス)になることを決意する。今まで愛された経験のないジョーが、初めて出会った「運命の人」であった…。実は、大富豪夫人ニーナの誘拐を、シャンドーは企てていた。その彼に、ジョーは邪険にされ、冷たく利用されても、盲目的に愛を捧げ続ける。しかし事件は意外な展開へ……!無気味とユーモア、欲望と狂気、悲劇と喜劇が交錯する、異色の力作。 内容紹介より



本書は1990年に発表されたバーバラ・ヴァイン名義の四作目の作品にあたります。
愛情のない里親の家庭で育ったジョーは、精神病院を退院させられ、親からも独り立ちするように告げられます。途方に暮れた彼が地下鉄の電車に飛び込みそうになるところをシャンドーと名乗る青年に救われます。定職を持たない彼らは安宿を転々としますが、やがてシャンドーが身代金目的の誘拐事件を企てていることを打ち明けるのです。目当ては元モデルのニーナなのですが、彼女は前夫とともにイタリアで暮らしていた時に誘拐された過去があります。現在の夫は警備会社を営む大富豪で、要塞のように警備を固めた屋敷で暮らしています。物語は大部分がジョーの視点で語られますが、富豪の住み込み運転手ポールの視点も混ざります。ある人物に対して狂気をはらんだ執着心を抱くシャンドーの造形や彼の対して同性愛のような危うさを帯びた(彼本人はそれを否定しながらも)想いを寄せるジョーの心情が物語の奇妙さを際立たせているように見えます。さらにジョーと同じく里子の姉ティリー、この二人には社会病質を思わせるような薄気味悪さを感じさせるところも作者の筆致の冴えを思わせます。終盤の展開はレンデルらしいかなりトリッキーな様相を見せて本領を発揮していますが、ぷつんとぶった切ったみたいな事件の決着の付け方がなんだか不自然な感じもしました。ポールのその後も含めて。

ユーザータグ:ルース・レンデル





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『スフィア-球体-』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫NV

2020-05-25

☆☆☆

航空機墜落調査班のメンバーである心理学者ノーマンは、召集を受け、南太平洋へ飛んだ。海底に沈んでから少なくとも三百年は経過している宇宙船が発見されたというのだ。ノーマンをはじめとする科学者チームは、海底居住施設を拠点にして、船内の調査を開始する。未知の生命体との遭遇に脅えながらも船内深く到達した彼らの前に、不思議な球体が出現した!『ジュラシックパーク』の著者が放つ傑作エンターテインメント 上巻内容紹介より



本書は1987年に発表された作品です。
政府の依頼でかつて未知の生命体との接触に関する報告書を提出した経歴を持つ心理学者ノーマンは、南太平洋に沈んでいる謎の宇宙船の調査チームに参加することになります。彼以外に宇宙物理学者、数学者、動物学者、そして米国海軍兵士が海底に作られた施設で調査を始めます。やがて船内に入った彼らは宇宙船の来歴について意外な事実を発見し、さらに不可思議な球体を発見します。それ以来、海底施設の周りに不思議な現象が起こり始めます。
SFと海洋冒険小説に作者お得意の最新テクノロジーを加えた物語なのかという思い込みは読み進めると意外な方向に展開していきました。本文中でも登場人物たちが心理学が科学と言えるかどうかという会話を行っていて、この定番の言説の成否は置いといて、いわゆる科学者たち(物理、数学、生物)の中にいる心理学者の立ち位置みたいなものと、科学技術(宇宙船、海底施設、潜水艇ほか)のなかにある球体の存在は、科学(数式)で量れるものとそうではないものという関係性を表しているように思えました。テクノロジーに対しての心(精神ないしは心理)、この図式はテクノロジーへの過度の依存や偏重についての警鐘と人間性の重要さをあらためて問いているのでしょうか。さて、それが娯楽小説として面白かったかといえば、話のスケールが矮小化されて今一つだった気がします。

ユーザータグ:マイクル・クライトン




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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

『水晶玉は嘘をつく?』アラン・ブラッドリー 創元推理文庫

2020-05-19

Tag :

☆☆☆

ジプシーの占い師から、水晶玉に将来の姿が見えると言われたフレーヴィア。亡き母を思い出して動揺したあまり、ちょっとしたアクシデントでジプシーのテントを炎上させてしまい、自宅の屋敷近くの林へこっそり彼女を招待することに。その夜、屋敷に侵入した村の厄介者を追い出したあとで、ジプシーに大変なことが起きているのを発見し……。内緒で屋敷へ泊めることになったジプシーの孫のお世話に、姉たちのいじわるへの仕返し、そして殺人事件の捜査と、今日もフレーヴィアは大忙し!CWAなど九冠受賞の世界中で大人気の少女探偵シリーズ! 内容紹介より



シリーズ第三弾。
ジプシーの占い師の言葉にうろたえてテントを燃やしてしまった主人公は、ジプシーの馬車を自宅の地所に父親に内緒で駐めさせることにします。具合の悪いジプシーの見舞いに行った彼女は、頭から血を流して倒れているジプシーの姿を発見してしまいます。さらにその夜に屋敷に侵入していた密猟者の男の死体に遭遇したりなどの大事件が降りかかるうえに、二人の姉にいじわるをされたり、ジプシーの孫娘を秘密に自室に匿ったり、屋敷の財政問題が深刻な状態になったり、亡き母の肖像画を発見したり、小さな出来事も主人公の身の回りに次々と発生します。
姉たちに対して口では一歩もひかない、化学(特に毒物)の知識に長けたおしゃまな11歳の少女の強烈なキャラクターは相変わらず健在です。また、ミステリ部分の弱くてゆるいところも相変わらずで、今回の真犯人は特にいきなり感が強いです。しかし、普段のおてんばでおませな姿とは別に、自転車を友として語りかけたりする際にうかがえる彼女の寂しさや孤独な心情、それを隠そうとする健気さみたいな別の一面を感じてやるせない気持ちになったりするところもシリーズの魅力なのでしょう。

『パイは小さな秘密を運ぶ』
『サンタクロースは雪のなか』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『過去、そして惨劇の始まり』デイヴィッド・マーティン 扶桑社ミステリー

2020-05-16

Tag :

☆☆☆

ワシントンD.C.郊外の古い1軒家〈カル・デ・サック(袋小路)〉。ポール・ハミルトンはこの邸宅を買い取り、転売のために修復にあたっていた。妻のアニーは、その屋敷に住み込んで仕事をしている夫を久し振りに訪ねる。が、夫と対面した彼女は仰天した。夫は不可解な言葉をつぶやきながら、何かにひどく怯えている様子なのだ。その夜、屋敷に泊まった彼女の前にも見知らぬ男が姿を現し、謎めいた言葉を残すと姿を消した。思いあぐねた彼女は、かつての恋人テディ・キャメルに電話をかけた―。〈解説・茶木則雄〉 内容紹介より



親友や知人の偽証によって殺人の罪を着せられ、さらに刑務所で受けた虐待によって精神を病んだ男の壮絶な復讐譚に、『嘘、そして沈黙』の主人公であるテディ・キャメルがかつての恋人を介して事件に巻き込まれてしまう、サイコとオカルトとバイオレンスなどの風味がてんこ盛りの物語です。さらに復讐の話は「象」「写真」というキーワードが絡んで被害者と容疑者たちを結びつけて進みます。自らを悪魔に仕立て上げる男の存在感は非常に強いものがあるとともに、彼が受けた仕打ちと境遇にはかなりの哀れみを感じさせる二面性を持たせているところは印象に残る姿になっています。それに比べるとテディ・キャメルのイメージはおとなしめであり、物語に別の側面を与えているにしても、かつてのラブロマンスの場面は、事件の荒々しさの前では霞んでしまっているように感じました。

『嘘、そして沈黙』
『誰かが泣いている』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クッキング・ママの告訴状』ダイアン・デヴィッドソン 集英社文庫

2020-05-04

Tag :

☆☆☆

郡の衛生局検査官が抜き打ちに現れ、一時休業を言い渡されたゴルディ。キッチンを見ながら心配するのは夫トムも同様。愛蔵の歴史的価値のあるスキーを売ることにした。息子アーチの親友トッドのママも大協力。テレビの料理番組出演も決めてくれた。しかも収録は高級スキー・リゾート地。トムのスキーもそこで売ることにして出かけたが……。人気料理ミステリー第9弾! 内容紹介より



自宅のキッチンが衛生検査に引っかかり、衛生局から休業を言い渡されたヒロインは、クリスマス・シーズンを前にしてケータリングの仕事ができなくなってしまいます。そこで息子の親友の母親からの口利きで公共放送の料理番組を担当することになります。またキッチン改修の資金にと夫が所有するいわれのあるスキー板を過去にデートしたことがある男性に売却することに。しかし、彼はスキー・リゾートのコース外で撲殺死体となって発見されます。そのリゾートでは、過去に未解決殺人事件と雪崩による死亡事故が発生しています。美術評論家で仮釈放審査委員会長でもあった被害者にはいかがわしい噂と恨みを持つ人物の存在が明らかになります。ヒロインの元夫がDVで服役中ということもあって、あらぬ疑いをかけられないか心配する彼女は関係者に聞き込みを始めます。被害者が二つの顔を持っていたことから、容疑者とその動機の幅も広げるなかなかのプロットで、料理番組の場面も良いアクセントになっていると思います。コージー・ミステリというのは、普段うかがい知れない海外の文化や日常生活とか仕事とかを読んで楽しめるところが一番の魅力なのだという気が最近になってしてきたこのシリーズです。

ダイアン・デヴィッドソン





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺人オン・エア』ウィリアム・L・デアンドリア ハヤカワ・ミステリ文庫

2020-05-01

☆☆☆

開局50周年の記念番組を週末にひかえたテレビ局で、不穏な事態が、次々と起こった。資料室の係員が何者かに殴打され、大量の古いフィルムとある女優のシンボルともいえるボーリング・ボールが盗まれたのだ。誰が、何のために?数日前には、今回の番組に出演予定のコメディアンの自宅のプールで、作家の溺死体が見つかっていた。特別企画部のマット・コブは、一連の事件の究明に乗りだしたが、やがて、数千万の視聴者が見守るなか、記念番組を放送中のスタジオで、ついに大事件が……!MWA賞受賞作『視聴率の殺人』に続くシリーズ第2弾。 内容紹介より



マット・コブ・シリーズ第二作目。
テレビ会社〈ネットワーク〉でトラブルの予防と処理を担当する部署である特別企画部担当副部長が主人公です。テレビ局の歴史を振り返り、大物ゲストも大勢登場する開局50周年記念番組の準備で大わらわの局内では、ボーリングのボールと古いフィルムを狙った強盗事件や発火事件と盗まれたボールの落下事件が立て続けに起きます。さらに記念番組に出演予定のコメディアンも殺人事件に関連しており……。テレビや映画界を舞台にしたミステリでは、俳優やコメディアン、監督やプロディーサーなどの製作者たち、奇人変人が大勢出てきて賑やかだけど割と煩わしかったりしがちですが、本書では登場人物が絞ってあってごちゃごちゃした雰囲気はありませんでした。そのため容疑者の数も限られているので目星は付けやすいです。ハードボイルドと本格ものの謎解きを融合させたみたいな内容で、主人公の軽口がやや気になりつつも気楽に読める作品でした。

ユーザータグ:ウィリアム・L・デアンドリア




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『帽子屋の休暇』ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ文庫HM

2020-04-25

☆☆☆

英国最大の避暑地ブライトン。光学器械店を営むモスクロップは、海岸でゼナという女性に一目惚れし、やがて彼女と近づきになる。ある朝、水族館で女性の片手が発見された。地元警察はスコットランド・ヤードに応援を求め、クリッブ部長刑事とサッカレイ巡査が駆けつけ捜査を開始する。一方、ゼナを見かけなくなったモスクロップは、彼女が殺されたのだと思い警察に赴くが……英国ミステリ界を代表する著者の初期の話題作 内容紹介より



なんといっても物語の導入部分が長い、光学機器店主が避暑地に到着し、双眼鏡で海岸にいる避暑客を眺める様子を約20ページ、気に入った女性に目を付けて跡を追いかけ、使用人に声をかけるまで約30ページかけています。1882年当時の避暑地の光景や風俗を詳しく描写しているにしても英国人ではないわたしには冗長に感じました。確かにこの部分では彼のストーカーじみた異常性に繋がるような奇妙さも匂わせているわけですけれど。話は水族館のワニ展示室で女性のものと思われる片手が発見され、地元警察がスコット・ヤードに応援を求め捜査官が派遣されて警察小説になり、店主モスクロップは狂言回し的な役に回ります。警察小説の部分では、これからも凶悪な犯罪を犯すであろうサイコパスの人物をどのように処遇するべきか、という難しいテーマを持ち出しています。また、それと関連付けるかのように、物語の最後でモスクロップが記したメモ書きが、彼の滑稽さの中にある気持ち悪さを指し示しているような気がしました。

ユーザータグ:ピーター・ラヴゼイ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ウイニング・ラン』ハーラン・コーベン ハヤカワ文庫HM

2020-04-19

Tag :

☆☆☆

マイロンの前に現れた元恋人のエミリーは、病気の息子を助けてほしいと懇願した。遺伝性の貧血症を患う息子には骨髄移植が必要なのだが、手術を前に骨髄提供者が謎の失踪を遂げたのだという。突然の依頼に戸惑うマイロンに、さらに彼女は衝撃の告白をする。「子どもの父親はあなたなの」―死の淵に立たされた我が子を救うべく、消えたドナーを追うマイロンは、やがて哀しき真実にたどりつく……感動のシリーズ最高傑作。 内容紹介より



色々なプロスポーツ選手に降りかかった、さまざまなトラブルや事件に主人公が取り組むパターンが多いこのシリーズですが、今回は主人公自身に問題が発生します。それは学生時代に恋人だったものの、結局別の男と結婚した女性から難病の息子を助けて欲しいという依頼です。しかも、子どもの父親が主人公だと告白されるのです。さらに彼女が結婚した相手は主人公がプロバスケットボール選手を断念することになった怪我の原因になった因縁の人物です。調査するうちに姿を消したドナーと誘拐殺人犯との間に何らかの結び付きがあることが浮かび上がってきます。一方、主人公の父親が心臓に問題があることが明らかになり……。主人公と思いがけない息子の出現、その息子と法律上の父親、主人公と父親の関係の変化、そしてもう一組の父子の関係、このように「父親と息子」が分かりやすいテーマとして取り上げられています。これに残忍な誘拐犯を絡ませているのですけれど、個人的にはこれが余計に目立ちすぎて効果的だったかどうか迷うところです。また、ラストにかけての二重のひねりには煩わしさを感じてしまいました。

『沈黙のメッセージ』
『偽りの目撃者』
『ロンリー・ファイター』
『スーパー・エージェント』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悪友クラブの殺人』J・G・サンドム 扶桑社ミステリー

2020-04-13

Tag :

☆☆☆

〈ハンティング・クラブ〉……学生時代からつづく遊び仲間を男たちはそう呼んでいた。成功した株式仲買人のグレンをリーダーとする彼らは今も遊び仲間だ。メンバーの一人、トムの結婚式の三日前の夜、羽目をはずして飲みに出た四人は、ダンサーの女を買った。だが、四人目のジョンがセックスを終え、目覚めてみると女は頭から血を流して死んでいた。明るみ出れば人生はおしまいだ。男たちは女の死体を始末したが、事態は思わぬ方向に…。破滅に突き進むエリートたちを描いた異色サスペンス。〈解説・関口苑生〉 内容紹介より



物語は、親の引いたエリートコースからドロップ・アウトしたヘリコプターのパイロットであるペインの視点で、ニューヨークに暮らす遊び仲間のヤッピーたちがある事件を契機に堕ちていくさまを描いています。結婚を間近に控えた仲間の一人のために催したバチュラー・パーティー後、ストリップ・バーで羽目を外したメンバーの四人は、閉店後に帰宅途中のダンサーと出くわして彼女の部屋で飲みなおすことにします。酒とドラッグをきめた四人が彼女とセックスを行った後、彼らは頭から血を流して横たわるダンサーの死体を発見することに……。三十代半ばの彼らは妻や子供がおり、社会的地位もある人物であり、偶発的に起きた事件を隠蔽しようとして、それがまた新たな犯罪を起こしてしまうというややお決まりの展開をとります。メンバーの誰かの裏切り行為による脅迫でもなされるのかと想像していたのですがプロットはシンプルなもので、話にはやや強引さが目に付きました。事件に加担しなかったメンバーの役どころが物足りないのと、事件の捜査を行う刑事が添え物みたいに何の絡みもなく中途半端のまま終わったのはなにかの意味があったのでしょうか。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ダンスは死の招き』ロバート・フェリーニョ 講談社文庫

2020-03-29

Tag :

☆☆☆

最高裁判事の父親が殺された夜、事件記者クィンは別れた妻と愛娘のダンスを見に行っていた。そのステージに、死んだと思っていた「ダンスの天才」ジョーおじさんが車椅子で登場した!喜びもつかの間、愛する者たちに迫る殺人者の魔の手。犯人を捜すクィンだが……。最高傑作ハードボイルド・サスペンス! 内容紹介より



義理の父親である判事が最初の被害者となって始まった連続殺人事件を追う事件記者が主人公です。殺人犯の正体は物語のはじめで明かされていますが、その動機は伏せられています。次第に疎遠になったままの関係で亡くした義父への悲嘆を抱えつつ、また別れた妻と一人娘、そして現在の若い恋人、この二組の間を複雑な感情を抱いてうろうろする主人公の造形とその感傷がやや鼻についてしまいました。ハードボイルドとノワールをくっつけたみたいな作品ですけれど、主人公は今ひとつだし、殺人犯をこんなふうに奇天烈な造形にする必要があったのか不思議だし、裏で糸を引いていた人物も彼が持つ理想と比べて不自然だしで全体的に完成度が低いように感じました。なので個人的には決して「最高傑作」というほどの出来ではないという印象です。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『魔笛』ディラン・ジョーンズ 講談社文庫

2020-03-17

Tag :

☆☆☆

闇に響く口笛とともに黒いドレスの美女が惨殺された。猟奇的な連続殺人事件の現場で、なぜか耳にする恐怖の高音。心を病む弟への疑いと不安を胸に秘めながら、シカゴ市警ルー・ベック刑事は、必死に犯人を追う。動機は何か。次第に明らかになる恐るべき真相。戦慄のサイコ・キラーを追う長篇ミステリー。 内容紹介より



心に障碍を抱える弟が殺人事件を目撃したものの、血だらけになった彼の支離滅裂な話から兄であるベック刑事は弟の犯行なのではないかと危惧します。また母親の懇願で弟をかばおうとするも、当人は家を飛び出し行方がわからなくなってしまいます。ベックは弟と事件の関わりを隠して彼を捜しながら、捜査を別の方向へと導こうとしますが、英国から来た被害者の弟に不信感を持たれてしまいます。ベックのパートナーである女性刑事マッキーが被害者の弟と警察との連絡係になり、別の角度から事件の捜査を行うという内容紹介とは違った展開をとります。市に多大な経済効果を生むコンベンションの参加者が被害者になったため、なるべく事件を早期に解決したい市政側と警察上層部の思惑やマッキー刑事と大物企業家である彼女の父親との確執が話に絡んで進みます。ミステリとしてもサイコ・スリラーとしても目新しいものはなく、犯人も欲望に駆り立てられる変質者でしかなく深みや複雑さは見当たりません。舞台が米国のシカゴということもあいまって、イギリス人作家らしいものが作品に見当たらなかったことも物足りませんでした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『捜査官ケイト 消えた子』ローリー・キング 集英社文庫

2020-03-14

Tag :

☆☆☆

あの子が消えた……。旅の途中で突然姿を消した少女。ホテルの部屋には争ったあとはない。しかしその地域では女の子を狙う連続殺人犯が潜伏中だという。旅に誘った責任を問われるサンフランシスコ市警の捜査官ケイト。少女をつけまわしていた不審な人物はいなかったか。周囲の冷たい視線に耐えながら、必死の捜査が始まった…。MWA(アメリカ探偵作家クラブ)の最優秀長編賞にノミネートされたベスト・ミステリー。 内容紹介より



主人公ケイトの仕事のパートナー、アル。彼の婚約者の一人娘ジュールズから公園で知り合ったホームレスの少年の行方を捜して欲しいという相談を受けたケイト。彼女は捜索で踏み込んだホームレスのねぐらで頭部を殴られ意識を失う怪我を負ってしまいます。彼女は公傷休暇中、アルたちが新婚旅行の間、ジュールズと二人で旅に出ることにしますが……。物語の前半は少女ジュールズとの交流と姿を消したホームレス少年の捜索、そして同居していたケイトの恋人が家を出て遠い叔母の元で暮らし始めた問題が主になり、後半はジュールズの失踪とその捜査が描かれています。
恋人への喪失感と二人の関係の変化にたいする焦燥感がないまぜになり、憤りや不安が主人公に次々に湧き上がってくる心理描写が丹念になされている一方で、ジュールズの心の内に目覚めた思春期の複雑な心理状態や変化については描き方が今ひとつのような気が個人的にしました。突発的な行動を取ると思われる前兆が伏線として若干不足気味にも思います。

『捜査官ケイト』
『愚か者の町』
『夜勤』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悪意』ホーカン・ネッセル 東京創元社

2020-03-11

Tag :

☆☆☆

「トム」
夜中にかかってきた一本の電話、それは二十年前に死んだはずの息子からのものだった。
「レイン」
亡くなった著名な作家の遺作には、母国語での出版を禁じ、翻訳出版のみを許可するという奇妙な条件が付されていた。
「親愛なるアグネスへ」
夫の葬式で久しぶりに会ったかつての親友。二人の交わす書簡はやがて……。

デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返しを兼ね備えた全五編の傑作短編集。 内容紹介より



「トム」
以前に読んだことがあるけれど誰の作品だったか思い出せないミステリのプロットに非常に似ています。ただ本作では最後にもう一捻りが施されています。

「レイン ある作家の死」
これもままあるトリックを使った作品です。
過去と現在、妻の失踪と作家の死、そして移ろう意識と観念的描写、文学的な表現など、少々読みづらいです。この作品の難点は死んだと思われる作家の死体が発見されていないこと、そしてその事実を裁判の場で誰の指摘しないままでいること、これはかなり不自然な成り行きであり、作者はこの問題に何らかの理由付けを行うべきではなかったのではないでしょうか。

「親愛なるアグネスへ」
作品中でも言及されているパトリシア・ハイスミスの作品から材を取ったみたいな物語ですが、残念ながらハイスミスほどにはサスペンスフルでもないし、まあこうなるだろうなと結末が予測しやすい話です。

「サマリアのたんぽぽ」
これまたどこかアメリカの田舎町で起きた、どこかで読んだことがあるような話で、男性(青年)側を魅力的に見えるように描いていないせいで物語に深みが足りないように感じました。

「その件についてのすべての情報」
深夜までかけて学校の課題を仕上げたことが遠因となって少女が命を落とした、と匂わせ、彼女が遺したその課題に優秀点をつけるという教師の立場、その無意味さ皮肉さ暗示しているのでしょうか、よく分かりません。

『終止符(ピリオド)』講談社文庫




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プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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