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『脅迫なんか恐くない』パーネル・ホール ハヤカワ文庫HM

2019-11-30

Tag : パーネル・ホール

☆☆

自分をゆすっている男に金を渡して—わたしを訪ねてきた美女は訴えた。が、彼女は何も事情を話さない。揉め事は苦手だが、法外な報酬につられ、わたしは脅迫者に会いにいった。そこでわたしが金と引き替えに受け取ったのは、見知らぬ男女が写っているポルノ写真だった。彼女と写真には何の関係が?謎だらけの仕事は、やがてわたしをとんでもない窮地に陥れるが……相も変わらず美女に弱い控えめ探偵が奔走する第九作 内容紹介より



地元ニューヨークを離れ、またシリーズの常連たちも不在だった第八作目の『俳優は楽じゃない』から、九作目の本書ではホームに戻り、脇を固める人物たちも頻繁に登場しています。特に、主人公の奥さんはこれまでにないくらい登場機会が設けられ、主人公と行動を共にしたりして積極的に調査に加わっているほどです。また、主人公の雇い主である弁護士や腐れ縁の殺人課の刑事とやり取りする場面もいつもより多い印象でした。これは各人との会話形式によって目先を変えながら物語進行させる工夫であるとともに、作者お得意の軽口を披露する機会を設けるためでもあるのでしょう。狙いどおりに話は、さほどだれることも少なく軽快に進み、脅迫事件と連続殺人事件の真相にはいっこうに迫っていきません。誰にも依頼されていないにもかかわらず、調査を続ける理由として、死体発見者の主人公が部長刑事に不当逮捕されてトラ箱にこう留されたことを根に持ち、その担当刑事に一泡喰わさてやりたいという動機を付けているところは妙に細かい。希薄な状況証拠ばかりで、犯人が自白してしまう安直さがどうしようもなく、どんでん返しとまでは行かないけれど、物証の一つでも用意して欲しかったところ。

ユーザータグ:パーネル・ホール



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『九十歳の誕生パーティ』レスリー・メイヤー 創元推理文庫

2019-11-27

☆☆

弁護士ボブがパートナーのシャーマンの死体を発見した。警察は自殺と判断したが、ボブはどうしても納得できず、パートタイムの新聞記者で、殺人事件を何件も解決(?)してきたルーシーに調査を依頼。一方、元司書のミス・ティリーの九十歳の誕生日に町を挙げてのパーティを開くことが決まり、親友スーの采配のもと、当然ルーシーもこき使われることに。思春期に突入した次女、大学での成績不振に悩む長男、おまけに夫ビルが仕事中に足を折る大けが。家族の世話に新聞記者の仕事、殺人事件の調査にパーティの準備と、主婦探偵は今日も大忙し! 内容紹介より



本書は、主婦探偵ルーシー・ストーン・シリーズの第九作目です。コージー・ミステリに欠かせない、今回のイベントごとは町の図書館で長らく司書をしていた女性の九十歳の誕生パーティです。町の住人の誰もが知っている彼女の誕生お祝いを、行政からでなく、友人たちが発起人となって計画し、企業や商店から寄付を募り、住人たちを巻き込んで進めていくという、おおらかでポジティブな活動が非常にアメリカらしさを感じました。こういう雰囲気を味わえるところがコージー・ミステリの魅力のひとつなのかもしれませんし、ミステリが拙いとか言っている場合ではないのかも。そしてヒロインは、不審な死を遂げた老弁護士の調査をするかたわら、新聞記者の業務に加えて、元司書である老婦人へのインタビューやら、さらに家族に持ち上がった色々な問題への対処、交通違反や事故、ダイエットに努めたり加齢に抗ったりと公私ともにてんてこまいの状態に陥ります。こんな日常を描き出すのもまた魅力なのでしょうから、ミステリの粗さには目をつぶっても良いのかもしれません。

ユーザータグ:レスリー・メイヤー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『夏の夜のわるい夢』ジェイニー・ボライソー 創元推理文庫

2019-09-19

Tag :

☆☆

だれもかれもローズに打ちあけ話をしたり、問題を解決してくれとたのむらしい。若い女性のレイプ事件を捜査中のジャック・ピアーズ警部は心のなかでつぶやいた。ローズときたら被害者の親友の母親がたまたま絵画教室の生徒だった関係で、何やら相談を受けたというのだ。できることならローズには事件にかかわってほしくなかった。だが、レイプ事件はいっこうに解決せず。ローズもジャックの懸念をよそに、どんどん事件に深入りしていってしまう。英国の西の果て、風光明媚なコーンウォールの魅力満載。好評、コーンウォール・ミステリ第6弾。 内容紹介より



空き巣事件が頻発する町に、新たにレイプ事件が発生し、ついに犯行は殺人事件までにエスカレートしてしまうことに。ヒロインは、講師をしている絵画教室の生徒の娘が、最初の被害者となった女性の親友だったことから事件にかかわることになります。色々な人たちから慕われ、好かれているヒロインの魅力がいっこうに伝わってこない描写力を備えている作者ですけれど、シリーズ六作目においてもそれは変わらず。ミステリ部分でも、わざとらしく、かつ強引に感じるくらい容疑者候補を並べるたてる始末です。300ページに収めるために、あえて容疑者をはじめとした人物の心理描写を軽くし、それぞれの過去の背景を膨らませていないのかもしれませんが、それが作品を非常に凡庸にしているように思います。しかし、作者が目指していることが、コーンウォールにおける自然と町の風景、ヒロインの私生活と交遊、そして申し訳程度の推理なのだったら作品としては立派に成り立っていることになるのでしょう。このシリーズも安野玲氏の訳者あとがきによると次作で最終巻だそうです。

ジェイニー・ボライソー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『呪われたブルー・エラー』ウィリアム・G・タプリー サンケイ文庫

2019-08-11

Tag :

☆☆

世界に一枚しかないという伝説の切手“ダッチ・ブルー・エラー”。その所有者で大富豪のウェストンのもとに一通の手紙が舞い込んだ。自分もダッチ・ブルー・エラーを所持しているので買いとってほしいというのだ。だが、売買の前日、思わぬ事件が起きた。手紙の主が撲殺され切手が消え失せたのだ。ダッチ・ブルー・エラーに隠された驚くべき秘密とは……!? 『チャリティ岬に死す』で大好評を博した新鋭の弁護士B・コイン・シリーズ第2弾。 内容紹介より



希少な切手をめぐる連続殺人。
弁護士志望をするロウ・スクールの学生で、主人公の弁護士事務所の臨時秘書となった黒人青年を登場させています。その彼を警察による黒人への人種差別、そして裕福な依頼人の顧問弁護士を務める主人公に対比して理想に燃える法科学生として象徴させているところが、物語の良いアクセントになっていると思います。端から見ると自分本位ともいえる理屈で離婚した元妻に対する複雑な感情とか、わびしい私生活を送る中年男性の姿と心情を描いたりする、こういうところが他のリーガル・サスペンスに出てくる色々と達者な主人公たちとの違いを感じさせます。しかし、それに比べてミステリ部分が非常に拙く前述の良さを損ねてしまっている印象です。犯行現場で目撃されている重要参考人と見なされる黒人の存在(臨時秘書との関連を疑わせる)が伏線として回収されていない、殺人事件の犠牲者が主人公に慌てて電話をしてきた理由が説明されていない、犯行動機が突拍子もなくて腑に落ちない感じが残るなど。

『チャリティ岬に死す』
『悪魔の仕事』
『狙われた大リーガー』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『血盟の箱 続・古書店主』マーク・プライヤー ハヤカワ文庫NV

2019-07-24

Tag :

☆☆

1795年パリ。一人の老人が手紙をしたためていた。「多くのものがこれにかかっているのです」血で署名されたその手紙はひとつのチェストとともに、いずこへかと送り出された……二百年後、外交会談のために訪れたアメリカ上院議員が怪事件に遭遇。大使の命で議員に同行していた外交保安部長ヒューゴーはパリ警視庁の友人の手を借りて捜査を始めるが、事態は意外な方向に発展した!好評の『古書店主』に続いて放つ第2弾 内容紹介より



シリーズ第一作目の『古書店主』は未読です。本のカバーとタイトルを見て、歴史ミステリを鍵にした国際謀略を扱い、また古書(店主)が重要な役割を果たす衒学的な濃い物語かと勝手に思って読んだ訳ですがまったく予想はずれでした。元FBIで駐仏アメリカ大使館外交保安部長の主人公、元CIA局員であるその友人。この二人がパリにやってきたアメリカ上院議員に起きた不法侵入事件の調査をパリ警視庁の警部の協力を得てするのですけれど、彼らが当地の警察を差し置いて捜査に図々しくしゃしゃり出てくる展開が違和感ありすぎです。しかもこのコンビがいかにもハリウッド映画に登場しそうな造形で、さらに彼らの会話に「○そったれ」とか「○そ」という言葉を頻繁に使います。著者はアメリカ在住のイギリス人らしく本書は英国的な諧謔趣味でアメリカ的娯楽小説を風刺した作品なのかもとか考えたいのですけれど、非常にアメリカナイズされていて英国風味が微塵も感じられませんでした。フランス革命に関する逸話も伏線にするほどの効果も説得力もないように思います。しばしば感傷に依存しがちな、お手軽で安っぽい突っ込み所満載なB級娯楽作品だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ジューンブライドはてんてこまい』クリスタ・デイヴィス 創元推理文庫

2019-07-18

Tag :

☆☆

イベントプランナーのソフィは、ここのところ妹ハンナの三度目となる結婚式の準備にかかりきり。新郎クレイグには何か秘密があるようだし、いちいち張り合ってくるナターシャとの共同作業があるのも気が重い。とはいえ、妹には幸せな式を挙げてほしい。とことが当のハンナが結婚をやめると言いだすわ、クレイグの元妻が突然現れ、こともあろうにナターシャの家の四阿で死体となって発見されるわで、一気に先行きが怪しくなる始末。はたしてこの結婚、無事に執りおこなわれるのか?愉快な人々が美しい町で織りなす、コージー・ミステリ第2弾。 内容紹介より



家事アドバイザーの事件簿シリーズ。前回同様に今回も、ヒロインの屋敷にこれでもかというくらい登場人物(前回足りなかった子供も含め)24人と猫一匹、犬三匹が入り乱れ、彼女の妹の結婚式をめぐってドタバタやる設定はまるでシチュエーション・コメディみたいです。ただし当然文章だけで映像を伴っていないので誰が誰だったか混乱しがちなところはあります。人物だけでなくハプニングまで一章ごとに毎回のように詰め込んでいるために過多な感じがするので、緩急なり強弱なりを付ける必要があるかもしれません。作者のスタイルはほぼ出来上がっているみたいなので、その辺りの変化は期待薄ですけれど。今回のイベントはヒロインの妹の結婚式です。三度目の式にこれほどの時間と労力をかけるということに非常に驚かされます。様々なトラブルが持ち上がっても放り出さず、しかも幾人もの招待客を自宅に泊まらせてその世話もし、ライバルとのさや当てをしつつも準備を行うヒロインの姿には感心させられます。いわばミステリなんて添え物みたいな感じで読むのが良いのだと思います。

『感謝祭は邪魔だらけ』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『出張鑑定にご用心』ジェーン・K・クリーランド 創元推理文庫

2019-05-16

Tag :

☆☆

ニューハンプシャー州の港町ポーツマスでオークションハウス〈プレスコッツ〉を営むジョシーは、ある日地域の警察署長アルヴェレスの訪問を受ける。家財の買取を依頼され、出張鑑定をした老富豪グラントが自宅で殺されたのだ。最愛の父の死をいまだに引きずるジェシーだが、自らが容疑者らしいと悟っては、行動せずにはいられない。家財リストに載っているルノアールの絵が屋敷から見つからないことを出発点に、仕事と並行して調査を進めるが—確かな審美眼を持つ腕きき女性オーナーが主人公となる、アンティーク×ミステリの新シリーズ第一弾。 内容紹介より



本書は、アンティークと稀覯本の店を経営していた経歴を持つ作者の小説家デビュー作でシリーズ化しているそうです。ニューヨークの大手オークションハウスをある事件が原因で退職したつらい経験と、父親の死で心に深い傷を抱えたヒロインは心機一転ニューハンプシャーでオークションハウスを営んでいます。そんな彼女が顧客だった地元の老富豪が自宅で刺殺された事件で、被害者に最後に会った疑いのある人物として容疑者にされてしまうというところから物語が始まります。恐らくコージーミステリ史上で、こんなにやたらと涙を流す主人公は初めてではないかと思うくらい度々情緒不安定に陥るヒロインです。それも前の職場での不当な扱いと最愛の父親を亡くしてまだ間もないという理由があります。昨今の鼻っ柱の強めのキャラより、こんな泣き虫みたいなネガティヴ的感情放出型キャラのほうが新鮮に映って良いのかも知れません。一方彼女の商売に関しては、オークションハウスにおける競売や品物の買取などの業務内容についてはいくぶん具体的に書いてありますが、期待していたアンティークそのものについての記述はほとんどないところはもの足りませんでした。ミステリの面では、容疑者の振り幅が狭いうえに、真犯人につながる布石やヒントがまったく配されずクライマックスといえる場面もなくて、これならいっそ犯人に危険な目に遭わされる従来のコージーの形式を用いたほうがスリルはあったのではないかと感じた次第です。ロマンス要素はちゃっかり入っている訳ですから、




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『掘り出し物には理由(わけ)がある』シャロン・フィファー コージーブックス

2019-04-16

Tag :

☆☆

アンティークのボタンに陶器、絵葉書に古い結婚式の写真—興味のない人にはただのがらくたでも、蒐集家(コレクター)にはうっとりするような宝の山。そんな貴重なアンティークを探し出すのが、蒐集家にしてフリーランスの「拾い屋(ピッカー)」であるジェーンの仕事。といってもまだ駆け出しで、ついつい自分の好きな雑貨に目がいってしまうのが玉にきず。その日も七つ道具をひっさげ、お宝をさがしに朝からガレージセールへ、美しい植木鉢と出あい、最高に幸せな気分で帰宅した彼女に予期せぬ事態が!隣家の主婦が何者かに殺されたのだ。そして、遺体の服から消えていたアンティークのボタン。いったいなぜ?蒐集家の鋭い観察眼で事件の真相に迫る! 内容紹介より



〈アンティーク雑貨探偵〉シリーズの第一作目です。ふだんジャンク品や雑貨を漁ってばかりのヒロインが古美術や由緒ある陶磁器に手を出さない理由は、もちろん予算の関係が大きいのですけれど、やはり元の持ち主の愛情や思い入れを品物から感じ取れるからです。そういう彼女の姿勢がこのシリーズの魅力になっているポイントだと思います。本書では、広告代理店を辞めた彼女は専業主婦のかたわらアンティーク雑貨の拾い屋として活動し、プロになろうかと考えているところでしたが、隣人とのある出来事を契機に夫婦間のすれ違いが表面化して、彼女は夫と別居中の身になっています。これまでの夫への言動を省みて後悔したりする場面が、それほど深い掘り下げている訳ではありませんが、ヒロインの内面を描いている点は好ましく思えます。また彼女の母親のユニークなキャラクターも印象的ですし、それ以外にも彼女の親友やコレクターの師匠みたいな人物みたいに味のある登場人物が多く揃っています。ミステリとしてはコージーの域を出ていないものの、読みどころはそういうところにあるように感じました。拾い屋たちの生態は興味深いので、これに骨董品に関するうんちくやこぼれ話がもっと多く披露されていれば良いのですけれど。

『ガラス瓶のなかの依頼人』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『海辺の幽霊ゲストハウス』E・J・コッパーマン 創元推理文庫

2018-09-11

Tag :

☆☆

ニュージャージーの海辺に建つヴィクトリア様式の屋敷を買ったアリソン。シングルマザーの彼女は、築百年以上のこの屋敷を自らリフォームしてゲストハウスにし、9歳の娘メリッサと新しい生活を始めようとしていた。だがひょんなことから、屋敷に取り憑いているふたりの幽霊が見えるようになってしまう。それは、屋敷の前オーナーでツンツンしたマキシーと、気弱な私立探偵ポール。誰に殺されたか調べてほしいというポールの頼みで、調査を手伝うことにしたアリソンだったが、事件が起きてしまい……。明るく楽しい、コージーミステリ・シリーズ。 内容紹介より 



幽霊探偵というと、アリス・キンバリーの〈ミステリー書店〉シリーズが浮かびます。幽霊が地縛霊みたいになって屋敷の敷地以外に移動できない設定は同じですが、本書には探偵以外に屋敷の前の女性オーナーもに幽霊なって登場しています。さらにヒロインの他にも幽霊を見ることが出来る人物も複数いるという設定です。その幽霊の一人がヒロインに対してあまり協力的でないところと、ヒロインが料理はからきし駄目なのに、亡き父親譲りのDIY技術に長けているという点が特徴的なところでしょうか。ちょっと面倒くさい母親におしゃまな娘、親友一家、心惹かれる二人の男性、といった要素はコージーミステリの類型的な構造パターンを備えていると思います。ミステリとして見るべき点も特になく、443ページがかなり長く感じてしまうくらい話の進展が遅くて、内容に乏しい感じがしました。シリーズ第一作目ですからこれから変わっていくのかもしれません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『衝動買いは災いのもと』アン・ジョージ コージーブックス

2018-08-24

Tag :

☆☆

まじめで几帳面なパトリシア・アンは料理もお菓子作りもお手のもの。二人の孫にも恵まれ、教職を引退した今、気に掛かるのは夫の食生活くらい……と思っていたら大間違い!事の始まりは、お金持ちの姉のとんでもない衝動買いだった。思いつきで店ごとウェスタン・バーを買ったはいいが、まもなく店内で前オーナーの死体が発見され、パトリシア・アンの元教え子が警察に連行された。まさかそんなはずは!彼女はこれまでの平穏な日々(アップルソース作りに老眼鏡の置き忘れ、娘の婿さがしetc.)に、真犯人を捜すという大仕事を加えることに—。姉妹歴60年、仲が悪いようで仲がいい(!?)おしゃべり凸凹コンビによる珍捜査の行方は?アガサ賞受賞作。 内容紹介より



凸凹コンビというと、〈老人たちの生活と推理〉シリーズ(コリン・ホルト・ソーヤー)を、退職した元教師では、〈お料理名人の事件簿〉シリーズ(リヴィア・J・ウォッシュバーン)が思い浮かぶのですけれど、本書の主人公姉妹は60歳と65歳、妹が身長154センチ、体重48㌔、かたや姉は178センチ、113㌔という体形体格から肌や髪の色、性格、これまでの人生の歩みまで様々な違いがあります。そんな二人がケンカしたり身を案じたり、くっついたり離れたりして事件に巻き込まれて右往左往する話です。元教え子にかけられた容疑が薄れたため、主人公たちは途中で事件から手を引いてしまいたいのですが、それにもかかわらず色々トラブルが降り掛かってきます。展開はドタバタ寄りなのに、物語が妹による一人称で語られるため落ち着いた感じで、夫婦間のやり取りを始めとして日常生活の描写が多く、それがいつものコージー作品とはひと味違った雰囲気を醸し出しているような気がしました。ただミステリとしては場当たり的でレベルはかなり低いように思うので、アガサ賞受賞作といえども期待しないほうが良いでしょう。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『贋作と共に去りぬ』ヘイリー・リンド 創元推理文庫

2018-08-18

Tag :

☆☆

世界的な贋作師である祖父に仕こまれたアニーは、本物そっくりの偽物を作る画家兼疑似塗装師(フォーフィニッシャー)。腕前は超一流だが、贋作作りの前科のため美術館での絵画修復師の職を失い、サンフランシスコの美術業界では鼻つまみ者になっている。美術館キュレーターの元カレに呼び出され、古巣の美術館でカラヴァッジョの真贋を鑑定すると作品は贋作、殺人事件が起こり元カレは行方不明に。一流の画廊主から巨匠の素描の鑑定を頼まれたがそれもまた贋作、真作の行方を探すアニーのもとにはハンサムな探偵が……。アップテンポで小気味よいアートミステリ開幕。 内容紹介より



「何日も仕事をほったらかしたまま、調子に乗って絵画泥棒を自認する男と駆けずり回り、不法侵入に探偵ごっこ、ハルクをぶちのめし、置いてきぼりをくらい、誘拐され、ハルクにぶちのめされ、ついにはスタジオに放火されるとは」(p327)。三十一歳の女性画家を主人公に、美術業界を舞台にしたソフトボイルドみたいな、ドタバタ調コージーミステリの一種。ヒロインが惹かれる良い男が二人登場して、一人はワルでもう一人は堅物というお馴染みの設定。ライトなユーモアミステリでありながら、死体と殺人がわらわら、しかしミステリの出来は箸にも棒にも引っかからないレベル。エピソードには事欠かないがストーリー自体は単調で強弱に乏しく、行動と思考がティーンエイジャー並みのヒロインの軽口がかなりうっとうしい。「アート・ラヴァーズ・ミステリ」シリーズの第一作で、アガサ賞候補作になり、続編も全米でベストセラーになっている(藤原えりみ氏の解説より)そうですが、わたしはp270あたりで読み始めことを久しぶりに後悔するくらい、個人的にあわない作品でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『休日には向かないクラブ・ケーキ』リヴィア・J・ウォッシュバーン RHブックスプラス

2018-07-31

Tag :

☆☆

海辺にある朝食つき民宿(B&B)の留守番を任されたフィリス。のんびりと休暇気分で、その朝も美しい景色に一杯のコーヒー、そして釣を楽しもうとしていた。それなのに桟橋で宿泊客の遺体を発見してしまい、お気楽な留守番は一転!死因が朝食のクラブ・ケーキだと判り、宿泊客が次々とキャンセルする事態に。なんとか混乱を収めようとするも、不愉快な遺族が押し掛けてきたり、料理人に容疑が掛かったり……。B&Bを守るため、フィリスは捜査に乗り出す! 内容紹介より



お料理名人の事件簿シリーズ4です。
今回はテキサス州の湾岸地域に実在する町フルトンが舞台で、いとこが営む海に臨んだB&Bの留守番役を引き受けたヒロインが、元教師の友人たちと事件に巻き込まれるというもの。宿の常連である無愛想な宿泊客が毒殺されます。不仲な被害者の娘息子たち、被害者の会社を買収しようとしていた大手企業の経営者など怪しい人物が現れ、またB&Bの料理人夫婦と宿泊客とのもめ事など明らかになり、さらに二組の夫婦で滞在していた常連客の一人が刺殺されるという事件が立て続けに起こります。凶器に指紋がついていた料理人が容疑者として逮捕されにあたって、B&Bの評判にかかわるとヒロインが調査を開始するものの地元を離れた場所での調査は勝手が違ってなかなか上手く進みません。コージーミステリのどのシリーズも、だいたいにおいて地元を離れる設定になると面白さのレベルが落ちる傾向があると感じているのですけれど、それは地元の脇役陣がいなくなってしまうからではないかと思います。しかし、このシリーズはもともと個性的な名脇役は存在していないので、その影響はないみたいな気がしますし、それよりキャロリンとイヴの地味な存在でしかない二人の下宿人の起用法をいい加減になんとかして欲しいです。それからミステリ部分のかなり強引な動機付けにはかなり飽きれてしまいました。

『桃のデザートには隠し味』
『かぼちゃケーキを切る前に』
『クッキー交換会の隣人たち』
『焼きたてマフィンは甘くない』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『出生地』ドン・リー ハヤカワ文庫HM

2018-06-30

Tag :

☆☆

1980年、東京で一人の女性が失踪した。名前はリサ・カントリーマン。日本人と黒人の間に生まれたアメリカの大学院生で、博士論文のリサーチのため母国の日本を訪れていた。姉から失踪の知らせを受けたアメリカ大使館の職員は調査をするが、行方は知れず、麻布警察署の刑事・太田が捜査を始める。やがてリサが日本に来た本当の目的が明らかになるが……アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞した胸を打つサスペンス 内容紹介より



日本人と黒人の間に生まれアメリカ人の養父母に育てられた大学院生、白人と韓国人の両親を持つ米国大使館職員、そして元帰国子女で職場ではうだつの上がらない刑事。この三人の視点から、いわゆる“自分探し”というような帰属意識の問題を抱える人間たちの物語が語られます。ルーツを探しに来日し、ホステスとして働くヒロインの失踪に至るまでの話はほとんど最初から読者には提示され、それをどういう具合に、離婚歴があり、やや心に変調をきたし気味な刑事が解明するのかを私的エピソードを交えて進展させていく流れと、ある人妻との不倫に溺れる下っ端大使館職員の話が並行して語られる構成をとっています。すごく昭和臭のする風俗小説みたいな雰囲気を醸し出す作品で、それは作者の狙い通りに仕上がっているということなのでしょう。たぶんそのあたりがMWA賞処女長編賞の選考者の琴線に触れたのしょうか。ほとんどミステリとしては見るところがない作品ですし、ルーツだとかアイデンティティというテーマの切り口も斬新さがない気がします。良くも悪くも異国情緒を売りにしている傾向が見えるのは2009年に同賞を受賞したフランシー・リンの『台北の夜』と同様です。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クッキング・ママの真犯人』ダイアン・デヴィッドソン 集英社文庫

2018-05-15

Tag :

☆☆

ケータリング業が順調にいってほっとひと息のゴルディ。けれど料理の先生アンディが妻の病気で家計に不安をきたし、ケータリング業を始めた。その上、前夫が彼女の幸せを妬み、知人にケータリングをやらせたからたまらない。狭い地域に三人のケータラー。頭をかかえるゴルディに、アンドレが火傷による心臓麻痺で死んだニュースが飛びこんだ。おかしい。彼は日頃から心臓が強かったのだ……。 内容紹介より



クッキング・ママ・シリーズの第八弾。
建設業者の男が、主人公の友人である地元の歴史協会会長の自宅にある改築現場で他殺体で見つかります。彼は主人公を含めあちこちの住宅の改装を請け負ったものの、いい加減な施工で迷惑や損害をかけていたのだが、死体が発見された場所でもトラブルを起こしていた。彼女の友人はそのトラブルが動機だとして逮捕される。被害者が夜間警備のアルバイトをしていた歴史博物館では、展示されていた昔の料理本が盗まれていたことも明らかになります。友人が殺人犯だとは思えない主人公は、ファッション写真の撮影現場となっている、西部時代の銀行強盗が所有していたいわく付きの山荘でケータリングを始めたかつての料理の師匠を手伝っています。工事が中断した自宅の台所がひどい状態のうえに、新手のケータラーに顧客を次々にとられていったり、何者かに彼女の料理に細工をされたり、殺人事件捜査で、彼女の夫は日頃から不仲の検事補から停職処分を受けてしまうはめに。様々なトラブルが降り掛かるなか、料理の師匠が不審死を遂げます。なんといっても多くの登場人物や登場しないけれど人名だけ出てくる人物とか、それが一番ごちゃごちゃして煩わしさを感じました。多くの容疑者をとり揃えようという作者の意図なのかどうかわかりませんが、主人公は出来事に流されるままで容疑者をあげたり、それらの人物を検証することすらしないのです。事件の動機となる張られた伏線の先にある作者の目論みには読者はかなり始めから気が付いている訳で、主人公がそれに気づくのが遅すぎてもどかしかったりしました。ミステリとしては究極の成り行き任せなのに、それでも読ませてしまうコージー・ミステリのシリーズ物は恐ろしいものです。

ダイアン・デヴィッドソン




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『ただでは乗れない』ラリー・バインハート ハヤカワ文庫HM

2017-11-27

Tag :

☆☆

私の追っていた弁護士は、レストランの駐車場で撲殺されていた。八百万ドルにも及ぶ横領が発覚し有罪となったが、証券取引委員会にすべてをぶちまけると宣言し、ある場所に隔離されていた男だ。こうなると、不利益を被った法律事務所からの依頼も水の泡だ。誰が何を目的として、彼を葬ったのか。私はいつのまにか事件に深入りし、気づいたときはのっぴきならない状況に追い込まれていた。ウォール・ストリートに巣くう巨大な悪にただ一人立ち向かう元ジャンキーの私立探偵の苦闘。アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞受賞の傑作ハードボイルド 内容紹介より



三十年前に発表された作品ですが、古めかしさは感じません。やや軽めのハードボイルド小説です。
主人公は元警官で離婚歴のある私立探偵で、現在は恋人の女性とその息子と同居中で、彼女に操を立て、薬物依存の過去から立ち直っています。ここまでは良しとしましょう。だがしかし、事件の調査を依頼された、殺された弁護士の娘と会った途端に発情するは、暴漢に襲われてぼこぼこにされると、痛み止め目的であっさりコカインに手を出すはで、しかも良心の呵責にさいなまれるとか、心理的な葛藤に苦しむとか、そういったことがまったく見られない無節操ぶりにはあきれて付いていけませんでした。人物造型が表面的で心理描写が浅く、どこにも“苦闘”など見当たらない主人公には人間的魅力を感じませんでした。かといってミステリ部分が優れているとも思えず、なぜこの作品がMWA賞の新人賞を受けたのか、私にはまったく理解できません。




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プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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