『丘をさまよう女』シャーリン・マクラム ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2017-04-03

Tag :

☆☆☆☆☆

年老いた脱獄囚がアパラチア山脈近くの故郷へ向かっていた。保安官のスペンサー,保安官助手志願のマーサらが追い始めるが、その矢先、奇怪な事件が続発する。折しも、二百年前の事件を調べるため、若い男が山道に踏み入るが……いくつもの運命が絡み合い、やがて緊迫の結末へ。アンソニー賞,アガサ賞,マカヴィティ賞の最優秀長篇賞を受賞した注目作! 内容紹介より



訳者の浅羽莢子氏の訳者あとがきによると、本書は〈アパラチア・シリーズ〉の第三作目にあたるそうです。ドタバタ風だった『暗黒太陽の浮気娘』と較べると、かなり作風が異なっている印象でした。
ストーリーには二つの流れがあり、ひとつは三十年前の殺人事件で有罪判決を受けて服役していた老囚人が脱獄して故郷を目指す話。もうひとつは十八世紀前にインディアンの部族にさらわれた後、彼らから逃れて何百マイルもの山道を歩いて帰還した白人女性の論文を書くために、彼女の辿った道中を歩いている若手の歴史学者の道中話。ふたりに加えて、その他の主要登場人物たちは、老脱獄囚について意見の別れる彼の故郷の保安官事務所の保安官とその助手、次第に脱獄囚に対して同情的になる地元のラジオ局のDJ、それから登場機会は少ないものの、山道を家へと急ぐさらわれた若い女性の姿を見ることができる、特殊な能力を持った老女がいます。脱獄囚はコルサコフ症候群による健忘の症状が現われていて、三十年前で時が止まり、自分が脱獄したことも忘れて二三日自宅を留守にしたものだと思い込んでいます。これによって彼の身に起きた境遇の悲惨さが軽減されてもいます。また、まったく山歩きなど無縁の学級の徒である大学院生の不慣れな山行の様子はいかにもな笑いを誘っています。そして、保安官事務所の通信係から保安官助手志望になった女性は同僚との男女間の問題が持ちあがり、そのサイドストーリーも作品に主題とは別の味わいを添えているように感じました。近代化によって時代遅れとなり失われてしまった習慣や生活、山を故郷とする者たちの悲哀をさりげなく醸し出し、その上に、さらわれた若い女性と脱獄した老囚人、このふたりの悲運を紡ぎだす物語は読み手に深く迫るものがあります。しかし、それが行き過ぎた深刻さをもたらす前に各エピソードの細やかな挿入によって良い具合に押さえられ、とてもバランスのとれた、単なるミステリを超える巧緻に組み立てられ仕上げられた味わい深い文学作品になっているように思いました。

『暗黒太陽の浮気娘』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『73光年の妖怪』フレドリック・ブラウン 創元SF文庫

2017-02-09

Tag : SF

地球から73光年の彼方にある惑星からアメリカに飛来した知性体という奇怪な生物。これは自由自在に他の動物にのり移れるという不可思議な力を備えている妖怪だった。知性体の到来とともに、その地方には人間や家畜や野生動物が自殺するという異様な現象が起り始めた。この怪現象にいち早く注目したのは、たまたまその土地に来ていた天才的な物理学者だった。この姿なき怪物の正体を看破して人類を破滅から救おうとする教授の頭脳と、知力の塊ともいうべき知性体が演じる虚々実々の知恵くらべ! 内容紹介より



侵略ものSFでよく名前が挙げられる作品のひとつです。
母星で犯罪を犯したために追放され、ランダムに瞬間移動させられた場所が地球だったという異星人。姿形は亀の甲らに似ていて移動ができないかわりに、他の生き物の心を乗っ取って自由に操る能力を持っています。その能力を使うには距離的な制限があり、また、相手が眠っていなければならず、そして乗り移った生き物から元の身体に戻るには、その生き物つまり宿主が死んでしまう必要があるという設定です。異星人は人間をはじめ鼠や犬猫、鳥などの心を乗っ取り、目的を果たすとかれらを自死させますが、この設定が、ブラウンの持つ軽妙さに加えて作品にグロテクスな雰囲気を与えるとともに、地球人の主人公の注意を引いてしまうキーポイントとなり、クライマックスのスリリングな場面への伏線にもなっている、そういう巧みさを備えているように感じました。異星人と地球人の二人の主人公の視点から事件出来事が描かれて緊迫感がつのり、余計なもの(例えば、あえてラブロマンスに仕立てていない)を省いているところ、こういうポイントが発表されてから半世紀経つにもかかわらず、現在でも色あせずに第一級のSF娯楽小説として楽しませる所以なのかもしれません。しかも、著者はそれをわずか254ページで成し遂げているのですからたいしたものだと思います。

ユーザータグ:SF




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テーマ : SF
ジャンル : 本・雑誌

『ゴッサムの神々』リンジー・フェイ 創元推理文庫

2016-12-01

Tag :

☆☆☆☆☆

1845年、ニューヨーク。バーテンダーのティムは街を襲った大火によって顔にやけどを負い、仕事と全財産を失ってしまう。新たに得た職は、創設まもないニューヨーク市警察の警官だった。慣れない仕事をこなしていたある夜、彼は血まみれの少女とぶつかる。「彼、切り刻まれちゃう」と口走って気絶した彼女の言葉どおり、翌日胴体を十字に切り裂かれた少年の死体が発見される。だがそれは、ニューヨークを震撼させた大事件の始まりにすぎなかった……。不可解な謎がちりばめられた激動の時代を生き抜く人々を鮮烈に活写した、圧巻の傑作ミステリ。 上巻内容紹介より



〈ニューヨーク最初の警官〉シリーズ第一作目。
いわゆるジャガイモ飢饉によってアイルランド移民が大量にアメリカに移民し、その窓口となったニューヨークを舞台にした歴史ミステリです。移民の流入によって起きた差別や嫌がらせなどの地元民との軋れきを、正確な時代考証を経て描かれています。こういうしっかりとした基盤の上に構築された物語なので、ミステリとしてやや拙い面もあるにもかかわらずとても興味深く読むことができました。特に、カトリックであるアイルランド移民とプロテスタントのアメリカ人の対比が鮮明で、カトリック教への恐怖心、警戒心の根深さとそしてそれに対する排斥運動の激しさはこの作品で初めて知りました。その様子はまるでヨーロッパへ流れ込むアラブの難民と、イスラム教への偏見をオーバーラップさせます。ニューヨークのこうした社会状況とともに、一つの事件に止まらずその事件が政治的な影響へ波及し、政治状況を一変させる問題になりかねないことを恐れる、アイルランド系に票田を持つ民主党の思惑も絡んできます。齟齬のある兄弟同士、思慕する幼なじみ、娼館にいた少女、宿敵となりそうな娼館主、探し物の達人の同僚、などなど主人公を取り巻く一癖ある人物たちも魅力的で、これからが愉しみなシリーズです。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『人形つかい』ロバート・A・ハインライン ハヤカワ文庫SF

2015-08-14

Tag : SF

☆☆☆☆☆

アイオワ州に未確認飛行物体が着陸した。その調査におもむいた捜査官六名は行方不明になってしまった。そこで、秘密捜査官サムとその上司、そして赤毛の美人捜査官メアリは、真相究明のため現地に向う。やがて、驚くべき事態が判明した。アイオワ州の住民のほとんどは、宇宙からやってきたナメクジ状の寄生生物にとりつかれていたのだ。人間を思いのままに操る恐るべき侵略者と戦うサムたちの活躍を描く、傑作冒険SF 内容紹介より



本書は新装版です。
ミステリ好きのわたしにとって、ミステリも含めたいろいろなジャンルのエンターテインメント作品のなかで、もう一度読み返してみたいと思う作品が多いのが、意外にSFのような気がします。それは、初めて読んだ際の、未知の世界観や非日常感、宇宙を冒険する様子などにミステリとは特別異なる強い印象を受けたからだし、もう一度それを味わってみたいと望むからなのでしょう。
この地球侵略物の名作である本書は、帯にうたってあるとおりに“必読SF”のなかの一冊です。初めて読んだとき、この人間の身体と心に寄生する宇宙生物のイメージは強烈でしたし、再読してもそのグロテスクさを変わらず感じさせる作品です。さらに、主人公自身がその生物に寄生され、操られてしまうというショッキングな展開以外にも、一市民だけでなく米国大統領から議員、軍人までナメクジ状の寄生生物に取り憑かれていないことを示すために、ほとんど全裸状態で生活しなければならなくなるという、異様な状況のなかでのユーモラスな面が備わっていることに今回改めて気づきました。一方、キャラクターの造形、人物の関係、そして訳文などにちょっと古さを感じてしまいました。




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テーマ : SF
ジャンル : 本・雑誌

『三十九階段』ジョン・バカン 創元推理文庫

2015-02-01

Tag :

☆☆☆☆☆

アフリカからロンドンへ帰って来たリチャード・ハネーは退屈しきっていた。人生とはかくも退屈なものか、と。しかしふと知りあった男が殺されるにおよんでハネーはおそるべき国際スパイ団の大陰謀にまきこまれてしまった。世界大戦勃発の危機をはらむ陰謀!しかし単身それを阻止する手がかりは「三十九階段」という謎の言葉だけ。ハネー青年のゆくてには、つぎつぎとスパイ団の魔手がのびる。スパイ文学史上、不滅の名作! 内容紹介より



冒険小説の歴史を語る上で必ず名前が上がる不朽の名作なのですが、昔読んだ記憶はあるけれど、内容を覚えていないので古本屋で見かけたついでに購入し再読してみました。前半は逃亡劇で後半にかけて追跡劇へと変わるという構成になっていて、敵と対峙する後半部分のサスペンスの場面も見事ですが、それ以上に敵の追跡をかわして逃げ続ける様子が非常にスリリングでした。特に道路工夫に化けて敵の目を欺く場面は秀逸だと思います。この作品において作者がその時々において強調しているのは、正体を隠して相手をだますためには、変装する人物にいかに心からなりきれるかという精神面の重要さです。つまり、上面より心理面がとても大事だというわけです。これは道路工夫になった主人公や中流階級の暮らしに溶け込んで目をくらます敵の場合以外にも、主人公の友人が語った自説、フランスの将軍のアフリカでの狩猟の逸話などにも当てはまっています。発表されてから百年も経つにもかかわらず、本書のように魅力があせない娯楽小説なんてなかなかないでしょう。




三十九階段 (創元推理文庫 121-1)三十九階段 (創元推理文庫 121-1)
(1959/11/06)
ジョン・バカン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『縮みゆく男』リチャード・マシスン 扶桑社ミステリー

2014-10-06

☆☆☆☆☆

スコット・ケアリーは、放射能汚染と殺虫剤の相互作用で、一日に7分の1インチずつ身長が縮んでゆく奇病に冒されてしまう。世間から好奇の目、家庭の不和。昆虫なみの大きさになってなお、孤独と絶望のなか苦難に立ち向かう男に訪れる運命とは?2013年6月に逝去した巨匠マシスンの代表作を、完全新訳で25年ぶりに復刊。巻末には『ランボー』の原作者デイヴィッド・マレルによる詳細なあとがきも収録。ジャンルを超えて人間の実存と尊厳を問う感動のエンターテインメント!〈解説 町山智浩〉 内容紹介より



これほど荒唐無稽な物語なのになぜかとても身につまされました。たぶん人生を生きていく過程において否応なく身に降りかかる不運や嫌な出来事、具体的には大病や大怪我、失業、障がい、貧困、差別、こういったことを主人公が冒された奇病に象徴させているように感じるからかもしれません。何の落ち度もない主人公が陥った不条理な運命は、彼の身体が縮んでゆくことで妻の愛情を疑い、愛娘から受ける父親としての尊厳も失っていきます。そしてさらに縮むことで物理的な苦難がますます大きくなり彼を苛むのです。つまり、彼のサイズが周りの環境に適応したとしても、それはほんのいっときの気休めであって、しばらくするとまたサイズが小さくなりやっと馴染んだ環境が巨大化しさらに過酷に変化してしまうわけです。あれ以上は小さくなることない、周囲の状況が変化することのない一寸法師などは主人公からしたらよっぽど恵まれていることになります。さて、いよいよ主人公は『ぼくのつくった魔法のくすり』のおばあちゃんみたいに消えてなくなるのでしょうか。
あとどうでもいいことですが、主人公と死闘を繰り広げる黒後家蜘蛛は造網性だから、この話にあるような徘徊性あるいは狩猟性の行動はとらないと思うのですけれど……。

『ある日どこかで』リチャード・マシスン 創元推理文庫
『奇蹟の輝き』リチャード・マシスン 創元推理文庫
『奇術師の密室』リチャード・マシスン 扶桑社ミステリー
『アイ・アム・レジェンド』リチャード・マシスン ハヤカワ文庫   


縮みゆく男 (扶桑社ミステリー)縮みゆく男 (扶桑社ミステリー)
(2013/08/31)
リチャード・マシスン

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テーマ : SF
ジャンル : 本・雑誌

『老検死官シリ先生がゆく』コリン・コッタリル ヴィレッジブックス

2014-05-29

Tag :

☆☆☆☆☆

シリ・パイプーン、72歳。みごとな白髪に透き通るような緑の目をした老人だが、ただの年寄りではない。ラオス国内で唯一の検死官だ。引退して年金生活を楽しもうと思った矢先に任命され、やむなく勤務することになった検死事務所は、医薬品も乏しく、設備もお粗末。しかし、障害があるが解剖の腕は抜群の助手、しっかり者のナースなど一風変わったメンバーに囲まれて、訳あり死体続々のスリリングな日々が待っていた!そこでシリ先生は、死者が語る真実にやさしく耳を傾け、事件を解き明かしてみせる。気骨と人情で慕われる老医師が渋い推理を披露する、素朴なアジアン・ミステリー。 内容紹介より



タイ在住のイギリス人作家による1976年のラオスを舞台にしたミステリです。東南アジアでもそれほどメジャーな存在ではないであろうラオス、しかもその国が社会主義体制になって間もない頃を時代設定にした非常に珍しいミステリであり、また、霊魂、呪術、悪魔祓いなどのロウファンタジー風要素もあわせ持っている作品です。ラオスの少数民族であるモン族の古代の英雄の生まれ変わりらしい主人公の前には、事件の犠牲者たちの霊が現れ、いろいろなことを訴えかけるのですが、これが過度に超自然には走らず適度なアジアンテイストを作品に醸しだしているように感じました。そして、なによりこの作品が見事だと思わせるのは、飄々としながらも反骨精神を持つ主人公を始めとして、登場人物の造形とその配置の巧みさにあるように思います。様々な人物が登場するのですけれど、川辺りの浮浪者や主人公にいつも吠えかかる近所の犬にまでキャラクターが付けられているのところには作者の仕事の細かさを感じました。ストーリーは複数の事件(それにまつわる死体も)が起きるモジュラー形式で展開し、終盤のミスリードにも優れたところを見せ、全体にほのぼのした雰囲気のある癒し系のミステリです。

『三十三本の歯』





老検死官シリ先生がゆく (ヴィレッジブックス)老検死官シリ先生がゆく (ヴィレッジブックス)
(2008/08/20)
コリン・コッタリル

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ハローサマー、グッドバイ』 マイクル・コーニイ 河出文庫

2013-06-04

Tag : SF

☆☆☆☆☆

夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流(グルーム)が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ……少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。 内容紹介より



1975年に発表された作品。主人公が少年であり、かつ語り手であること、また、成長小説的な内容でもあり、読みやすいこともあってヤングアダルトっぽい感じがしました。主人公は反抗期の真っただ中で、頭の中の大部分を占めているのは去年の夏に港町で出会った少女のことです。彼はいよいよ彼女と再会する時が来ても、意識しすぎて会話はおぼつかなく、ぎこちない態度をとってしまう有様です。読んでいて微笑ましくも青春恋愛小説としては並の展開でしかありませんが、ここで気を抜いてしまうとその後の流れに驚かされます。一見、ヤングアダルト風青春恋愛友情物語を装ってはいますけれど、中盤から徐々に、そして終盤にかけて非常に内容はシビアになっていきます。例えば、少年が恋する純真な女の子が嫉妬を覚え、やがて少女から女になっていく過程や別の少女のイメージの変化とラスト部分の劇的な変わり様。これは他の主要登場人物たちにもいえることで、皆それぞれ時々によって多面的な性格付けをなされ、敵味方、悪人善人という一面的な描き方、または画一的な分け方をしていません(但し、主人公の母親だけは終始どうしようもないスノッブな人物としか描かれていない)。物語が進むにつれ主人公の少年(読者)が見たいと思っている面以外に、決して見たくない面も作者は容赦なく見せているような印象を受けました。爽やかななかに英国文学らしい残酷さを充分含んだ作品だと思います。




ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)
(2008/07/04)
マイクル・コーニイ

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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

『ハリウッド警察25時』 ジョゼフ・ウォンボー ハヤカワ・ミステリ

2013-05-10

Tag :

☆☆☆☆☆

この街の大通りは、いつも光に満ち溢れている。蛍光灯やネオン、ヘッドライトやテールライト、空へむかって放たれているさまざまな光の反射などが、入り乱れ、重なり合い、洪水になって「ここがハリウッドだ!」と宣言している。その中を、今夜もパトロールカーが行く。待ち受けるのは、麻薬、売春、喧嘩、窃盗、殺人……警官ひとすじ勤続五十年のベテラン警官を中心に、サーファー警官、若きママさん警官、超映画マニア警官、金持ちのボンボン警官ら個性豊かな面々が、毎晩のように起きる事件に立ち向かう。警官出身の巨匠が久々に放つ話題作 内容紹介より



以前読んだ『デルタ・スター刑事』同様、エド・マクベインの87分署シリーズが好きなわたしにとってはとても面白く読むことができました。ただ、同じモジュラー型の様式でも、87分署シリーズのいくつかの作品に見られるメインの事件と一見無関係に見えるその他の事件との関連性が、本書でも同様の仕掛けはしてありますが、さほど印象に残りませんでした。この点はマクベインの鮮やかな手並みとはちょっと違うところです。テレビ局による警察を密着して取材したドキュメンタリー番組みたいな邦題のように、パトロール警官たちが勤務中に遭遇する大小さまざまな事件や人間臭い犯罪者たちを取り上げ、彼らが味わう苦労や喜怒哀楽をユーモアを交えつつリアルに描き出しています。それは作者自身も同じくパトロール警官の経歴を持っているからでしょうし、彼らをネガティブに描かないのは、警察官に対する仲間意識と親愛の情、その仕事への敬意があるからだと思います。そういうことが感じ取れるため、読後感がとても爽やかです。
女性警官が勤務中に暴行され、その犯人を逮捕する際に過剰な暴力で負傷させた同僚警官がメディアなどからの非難を受けそうな状況にある中、ハリウッド署のパトロール警官たちの精神的支柱ともいえるベテラン巡査部長ジ・オラクルが夜勤に就く部下を前にして言った言葉、「おまえたちがつけているバッジは、世界でいちばん美しく有名なバッジだ。多くの警察がそれをまねしたり、うらやましがったりしているが、おまえたちはほんものをつけている。批評家や政治家やメディアの連中からいろいろ言われても、おまえたちのバッジは変わりはしない。(中略)警官としてちゃんと仕事をすることは、最高に楽しいことだ。人生でいちばんの楽しみを見つけられる。だから、今夜も外へ出て行って、楽しんでこい。」(p201)。ここが作者の気持ちがよく表されている箇所なのではないでしょうか。

『デルタ・スター刑事』ジョゼフ・ウォンボー 早川書房




ハリウッド警察25時 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)ハリウッド警察25時 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2007/08/08)
ジョゼフ・ウォンボー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『1/2の埋葬』 ピーター・ジェイムズ ランダムハウス講談社

2012-11-10

Tag :

☆☆☆☆☆

結婚前夜。新郎マイケルを祝うために悪友たちが仕掛けた悪戯 ― それは酔った新郎を棺桶にいれて生き埋めにし、数時間後に堀だすという他愛もない計画だった。だが、埋めた直後に仕掛け人全員が事故死。ほんの悪ふざけのはずが、最悪の事態にまで発展し……。目撃者ゼロ。当事者全員死亡。絶対的不利な状況下で、孤独な中年警視グレイスがマイケルの救出に乗り出す!仏・独でミステリ賞に輝いた瞠目のシリーズ第1弾。 内容紹介より



本書を読もうとお考えの方は、下記の感想文は読まないほうが作品を楽しめると思います。

以下、ネタばれ気味です。ご注意ください!

いわゆるタイムリミット型の作品、さらに、もしスティーヴン・キングクラスの力量が作者に備わっているならば、生きながら埋葬された男の状況を内面や外面から延々と描写する作品になっているのかなと想像しつつ読み始めました。物語は徐々に警察小説の色合いが強くなって進み、上巻の終盤あたりで一つ目の衝撃を受け、その箇所を二度三度読み返しました。下巻に入るとやや強引な部分(男女の恋愛感情)や都合の良い展開(二度の交通事故など)みたいに感じるところもありましたが、脚本家や映画プロデューサーの経歴もある作家らしく、意外性を持たせたストーリーテリングが非常に達者であり、一方、そういう職業に就いている者にありがちな読者に押し付けるような、また映画化を狙ったみたいなエンタメ臭がほとんどないところが好ましく感じられました。確かに下巻から話が俗っぽくなってしまったけれど、二転三転のサプライズを入れつつも英国ミステリらしい抑制の効いた雰囲気とそれに合ったシリーズキャラクターとしての魅力を持つ主人公が良い味を出していると思います。




1/2の埋葬 上 (RHブックス・プラス)1/2の埋葬 上 (ランダムハウス講談社文庫)
(2008/01/07)
ピーター・ジェイムズ

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1/2の埋葬 下 (ランダムハウス講談社文庫)1/2の埋葬 下 (ランダムハウス講談社文庫)
(2008/01/07)
ピーター・ジェイムズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『特捜部Qー檻の中の女ー』 ユッシ・エーズラ・オールスン ハヤカワ・ミステリ

2012-04-23

Tag :

☆☆☆☆☆

「特捜部Q ― 未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。カール・マーク警部補は「Q」の統率を命じられた。しかし、あてがわれた 部屋は暗い地下室。部下はデンマーク語すら怪しいシリア系の変人アサドひとりのみ。上層部への不審を募らせるカールだが、仕事ですぐに結果を出さねばならない。自殺と片付けられていた女性議員失綜事件の再調査に着手すると、アサドの奇行にも助けられ、驚きの新事実が次々と明らかに ― 北欧の巨匠が本邦初登場。デンマーク発の警察小説シリーズ、第一弾。 内容紹介より



とりたてて斬新なトリックや奇抜なアイデアが盛り込まれているわけでもないのに、非常に面白く、いわゆるページをめくる手が止まらない作品でした。やはり味のある人物造形と配列に優れているからでしょうか。とにかく主人公の助手である、戦車も運転できて、記憶力も抜群で、女性ウケもめっぽう良い謎の外国人アサドのキャラクターが秀逸です。部下を自分の不手際で失ったという、ありがちなトラウマを抱えた主人公もただただ暗いわけではなく、心理学者に色目を使ったり、義理の息子の進学問題や別居してても離婚しようとはしない妻の素行に煩わされたりするコミカルなシーンも挿んであり、バランスが保たれています。また、それ以外の登場人物も魅力的な味付けがしてあります。
ストーリーは、体よく閑職に追いやられた主人公が助手とともに未解決事件に挑むというもので、次第にタイムリミット型ミステリの要素も取り入れられ、サスペンス性もどんどん高まっていきます。ただ、終止、サスペンスフルというのではなく、上記のようなコミカルさが息抜きとなっていいるとともに、警察小説らしく別の事件の捜査も同時進行で取り上げるモジュラータイプをとっていますから、全体のリズムに強弱が付き読んでいて疲れず飽きませんでした。とにかく、過去の事件を掘り起こすというシリーズ・テーマにはとても惹き付けられます。これは当たりでしょう。




特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)特捜部Q ―檻の中の女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1848)
(2011/06/10)
ユッシ・エーズラ・オールスン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『見知らぬ顔』 アン・ペリー 創元推理文庫

2011-11-16

Tag :

☆☆☆☆☆

夢も見ない眠りから覚めたとき、彼は病院の寝台に横たわり、全ての記憶を喪っていた。自分がウィリアム・モンクという名の刑事だと知らされた彼は、病状を隠して職場復帰したが、そこで割りふられたのは、万全の態勢で臨んでさえ解決困難と思わせる難解な殺人事件だった……!十九世紀ロンドンに孤立無援の警部が展開する、自分探しと真相究明の旅。時代ミステリの決定版。 内容紹介より



ウィリアム・モンク シリーズの一作目です。
記憶喪失をテーマにした作品には、ジェイムズ・ヒルトンの『心の旅路』やロバート・ラドラムの『暗殺者』といった傑作がありますが、本書もそのひとつに入ると思います。記憶を喪った人物がそれを隠して職場復帰するという不自然さも、舞台を十九世紀半ばのビクトリア朝時代に設定したために違和感がありません。上流階級の人間が関わっている殺人事件、個人的に調査していたらしいある出来事、そして主人公の自分探し。やがてこの三つの事態とそれぞれの関係者たちが複雑に絡み合っているという事実が浮かび上がってきます。特におぼろげに記憶にある一本のステッキが鍵となってストーリーが急展開する流れは印象的です。そしてまた、身の回りの人たちの反応から、自分が仕事一筋の上昇志向にあり、非常に自分本位な性格だったことが薄々判明していく主人公とともに、殺された被害者とその家族たちの人間関係、そして彼らの本当の姿も否応なく明らかにされていくという二重の構成も見事だと思いました。それから、主人公がすべての記憶を取り戻さないまま終わっていることで次回作に興味が引かれます。




見知らぬ顔 (創元推理文庫)見知らぬ顔 (創元推理文庫)
(1995/09)
アン ペリー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『虚栄は死なず』 ルース・レンデル 光文社文庫

2011-10-01

☆☆☆☆☆

― 富裕なウィッタカー一族の一員、アリスは、38歳でようやく幸せをつかんだ。9歳年下のハンサムでやさしい夫アンドリューとの新婚生活は、彼女にとって夢のような日々だった。二人の結婚式から三カ月後、花屋の美しい未亡人、ネスタが町から出ていった……手紙を頼りに、アリスはネスタを訪ねるが、その住所は実在しない。ネスタが消えた。そして、アリスの体調にも異変が……。― 名手レンデルが女性の微妙な心理を描いた傑作サスペンス! 内容紹介より



以下、ネタバレしています!ご注意下さい!

わたしの思考回路が単純ということはこの際置いといて、なぜまたまたレンデルさんにしてやられたのか?
まず、本書がノン・シリーズ作品の二作目だということで、習作とまではいわないけれど、いくらルース・レンデルであっても人の子、最初からそれほどの完成度の高い作品を書ける作家だとは思っていなかったこと。ようするに甘く見ていたわけです。
そして、ヒロインの夫や道路工事などきわめてあからさまな赤いニシンを、一般的に初期作品に見られる設定の甘さによる伏線配置だと信じて疑わなかったこと。
さらに、この作品以降もレンデルさんが好んで使っていた“失踪事件”がまた同じパターンをとるとは思わなかったこと。これでも読みはじめはうっすらと疑いはしたんです(天敵の匂いを嗅ぐ野うさぎのように鼻をヒクヒクさせたのです)。しかし、いかんせん人間の思考というものは目の前にある安易な道を選びたがるもので……。
ということで、たとえば本書を研究施設の迷路実験とするなら、さながらわたしはレンデル博士の作った道を彼女の思った通りにひたすらまっしぐらに進むモルモットにしか見えなかったことでしょう。
とにかく、たった256ページですが、人物造形も巧みで、非常にトリッキーで周到な作品でした。やられーでまいったので☆をいっぱい付けました。べつに酔ってはいません。

タグ:ルース・レンデル




虚栄は死なず (光文社文庫)虚栄は死なず (光文社文庫)
(1988/03)
ルース・レンデル

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『犬の力』 ドン・ウィンズロウ 角川文庫

2011-09-03

☆☆☆☆☆

キシコの麻薬撲滅に取り憑かれたDEAの捜査官アート・ケラー。叔父が築くラテンアメリカの麻薬カルテルの後継バレーラ兄弟。高級娼婦への道を歩む美貌の不良学生ノーラに、やがて無慈悲な殺し屋となるヘルズ・キッチン育ちの若者カラン。彼らが好むと好まざるとにかかわらず放り込まれるのは、30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争。米国政府、麻薬カルテル、マフィアの様々な組織の思惑が交錯し、物語は疾走を始める……。 上巻内容紹介より



この作者の作品に一貫しているのは、良い意味で青臭い正義感を持つ人物を主人公に据えていることだと思います。本書においてもそのような人物が、家族や私生活ときには良心をも犠牲にして愚直にそして孤高を持して敵と戦う様が30年のスパンで描かれています。もちろんここに現される対立構図は、麻薬捜査官と麻薬組織という単純なものだけではなく、中南米政権の左傾化を阻止しようとする米国政府や右派勢力、それに対抗する左翼革命勢力、バチカンの意をくむ現地のカトリック教会など政治的または宗教的信条や思惑もそこに入り込んでいます。決して断つことのできない悪にも向かうしかない主人公の姿は、清濁が渦巻く巨大なハリケーンに対するドンキホーテみたいにも見えます。また、彼の闘い以外にも敵味方になる登場人物たちの姿も綿密に描写されており、まるでミステリの大河小説*みたいです。傑作というよりものすごい力作だと思いました。

*人物によっては精神的な面での成長が感じられないところもあって、そこらがやや作品の難になっている気もします。

『ウォータースライドをのぼれ』ドン・ウィンズロウ 創元推理文庫
『砂漠で溺れるわけにはいかない』ドン・ウィンズロウ 創元推理文庫
『ボビーZの気怠く優雅な人生』ドン・ウィンズロウ 角川文庫
『カリフォルニアの炎』ドン・ウィンズロウ 角川文庫




犬の力 上 (角川文庫)犬の力 上 (角川文庫)
(2009/08/25)
ドン・ウィンズロウ

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犬の力 下 (角川文庫)犬の力 下 (角川文庫)
(2009/08/25)
ドン・ウィンズロウ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『二年間の休暇』 J・ベルヌ 福音館書店

2011-08-20

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本書は、『十五少年漂流記』の名で親しまれてきた作品の初の完訳本。夏の休暇を、スクーナーでニュージーランドの海岸を一周して過ごすことになっていた十 五人の少年たちが、思いがけない事故のため、無人島に漂着する。ときに反目しながらも、さまざまな困難を乗り越え、彼らは島での生活を築きあげていく。小 学校中級以上。 福音館文庫「BOOK」データベースより



子供の頃に抄訳でしか読んでいなかったのでこの完訳本を読んでみました。 やはりあたりまえにすごく面白かったです。大人になって再読した時、子供時代に感じた感動が損なわれない作品が傑作だと思いますが、この作品はそのひとつです。自分の読書体験というものは本書や『ロビンソン・クルーソー』から始まっていると思いますし、こういう作品によって読書の愉しみを知り、今に至るまでその習慣が続いているわけですから、個人的には冒険小説における聖典としてあがめたいほどにありがたい作品です。とりあえず読んでいない人にはぜひ読んで頂きたいし、抄訳しか読んでいない人も完訳本を手に取って欲しいです。
J・ベルヌ(ジュール ヴェルヌ)の作品一覧を見て、改めてこの人はすごい作家だったんだと思いました。抄訳でしか読んでいない作品もあるでしょうから、少しずつ他のものも読んでみようと思います。




二年間の休暇 (福音館古典童話シリーズ (1))二年間の休暇 (福音館古典童話シリーズ (1))
(1968/04/01)
ジュール ヴェルヌ

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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

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