「折られた翼」 テレンス・ファハティ ハヤカワ文庫

2005-07-31

Tag :

☆☆

「わたしは夢に破れた男だ。念願だった司祭にもなれず、今は友人の法律事務所で調査員をしている。今度の仕事は、四十年前の自家用飛行機墜落の事故状況を探ることだった。
事故で兄を失った大実業家の依頼だ。調べるうち、何者かが飛行機に細工していたらしいことが判明した。そして背後に潜む複雑な人間関係も……」(あらすじより)

作者が意図的に描いているのか主人公が周囲に甘えているように感じます。司祭になれなかったみたいだけど理由が書いてないからどういう事情があったのか分からない。
今は学生時代からの親友が経営者でもある法律事務所で調査員をさせてもらっています。
その友人の奥さん(主人公の元カノです、ありがち)に電話で愚痴ってみたり、資料調べを手伝ってもらったりする図書館司書である恋人の部屋に、幽霊が怖いと逃げ込んだり…でもユーモアミステリではありませんから。

みんなが心配して気を使っているのに主人公は素直じゃない。

自己再生ならかなりの試練を経験するのかなと思っていると森で迷子になるくらいなんですよ。ストイックで渋いディック・フランシスものを想像してると期待はずれになります。

四十年前の事故を再調査する設定や当時の関係者を訪ねてまわるところは良い感じです。

町でいちばん賢い猫 リタ・メイ・ブラウン スニーキー・パイ・ブラウン ハヤカワ文庫

2005-07-29

☆☆

トラ猫ミセス・マーフィシリーズの一作目ですね。
飼い主のハリーと飼猫のミセス・マーフィ、飼い犬のティー・タッカーが連続猟奇殺人事件を解決するという物語です。

三作目を最初に読んでいたので猫、犬が会話しても大丈夫でした。
そう猫と犬が話し合うんですね!

しかし、これ感想が書きにくい。すらすら読めるしそれなりに面白いけど、なんだかソーメンを食べたみたいで。食べてる間はまあ美味しいけど食べ終わると物足りない。余韻といいますか後に何も残らない。どうしてそうなのか考えるのも面倒くさいくらい。人間の主人公の離婚問題や母娘間の葛藤とかあるんですけどね。まっ、それも添え物のサクランボみたいなもんで。

とにかく殺人の原因となる犯罪と動機がこれではどうなんでしょうね。「かくれんぼが好きな猫」のほうが良く出来てました。

作者は自分の意見を登場人物に饒舌に語らせる傾向があるけど、気になったのは猫、犬の会話の中で飼い犬タッカーが言ったこと。「心の病気に体の病気。もし、わたしに弱い子が生まれたら、わたしはその子を始末するわよ。そうすることが、ほかの子に対するわたしの義務だから。でも、人間は間引こうとはしないのよね」どういう意図があるのだろう?作者は今どき優生思想の持ち主じゃないよね。

ところで、ミステリファンにとってはアーモンドの香りといえば、、、青酸カリが常識ですね、でも青酸カリはカメの臭いにも似てるみたいですよ。猫と犬が言ってます。
猫好きな方にはお勧めです。

「クモはなぜ糸から落ちないのか-自然から学ぶ〈安全〉と〈信頼〉の法則-」大崎茂芳 PHP新書

2005-07-28

Tag :

☆☆☆☆(但し前半だけね)

かなり変な構成の本。

前半は!すごく興味深い。糸の使用目的によって七個の絹糸腺があるとか紫外線UV-Aは巣を力学的に強化するとか等など。
つっこみどころもあります。例えば、子グモにリーダーがいるとか、かなり疑義あり。「子グモ同士には友情と信頼関係のあることを認識したのである」って科学で一番やっちゃいけない対象の擬人化をしてしまってますよぉ、先生。

百ページ過ぎたあたりの後半はクモの牽引糸(命綱)をたとえにした社会学(ビジネス書?)的内容。
なんだこれ?
線形、非線形(エクセルじゃん!)で現代社会の生き方、考え方について書いてあります。訳わかんないないでしょ?わたしもわかりません(泣)。
第2章 クモから学ぶ危機管理と信頼性
第3章 人間はどこに信頼を置くのか
第4章 どのようにすれば時代が読めるか
ですって。先生は遠くに行ってしまわれました。

真面目なんだろうなあ。

大崎先生は奈良県立医科大教授。

amazonのカスタマーレビューを見てみました。5人全員☆五個。そろいもそろって激賞コメント。おかしいだろこれ。
みんな大阪、京都、奈良在住じゃないか。おまいら大崎先生の教え子だろ。(乱暴な言葉使い許してね)

どうみても違和感あるはずだ。それともわたしの感性がおかしいのかな???

「公爵ロビーの大逃走」グレゴリー・マクドナルド サンケイ文庫

2005-07-27

Tag :

☆☆☆☆

「ドイツ軍の空襲で両親を失った、英国の名門プラドロマン家の8歳の若き公爵ロビー・バーンズは、ニューヨークにいるという叔父のもとへ疎開させられることになった。だが、港でロビーを出迎えたのは飲んだくれの新聞記者だった。小学校を探しに出たロビーは、誘拐騒ぎにまきこまれ、さらに殺人犯に追われ逃げ回るはめに!!」(あらすじより)

身長五フィート以上の男性には「サー」、女性には「マーム」を付けて話す紳士ロビー。
両親が死んでしまい悲しみに泣いた彼ですが、「弱味はみせない」と決意し泣くのを止めます。けなげ。

飲んだくれの新聞記者とアル中の妻。
ロビーを誘拐した変な一家。
自分勝手なお金持ちの実業家の家庭。
大勢の孤児を引き取り自分の子供として養う黒人女性。
作者はこれらの階層の抱える問題を皮肉やユーモアを交えて風刺しています。誇張が過ぎるところもありますが…

様々な人々とかかわり合い、色々な事を見聞きし、無気味な殺し屋に追いかけられながら、今まではどこに行くか自分で決める必要がまったくなく、いつも誰かが教えてくれたロビーは自分で行くところ、することを決めなくてはならない。
月並みな表現ですが精神的にたくましく成長していくのですね。
特に黒人女性ミセズ・クリアウォーターとのやり取りにはじーんとしました。

100ページまでは進行が遅いけど誘拐されてから徐徐にテンポが良くなり緊迫してきます。最初から最後までどんな状況になっても頭の半分は食べ物のことが占めているロビーが可笑しい。

「おやつ泥棒」アンドレア・カミッレーリ ハルキ文庫

2005-07-26

☆☆☆

イタリアのミステリです。
チュニジア艦艇のイタリア漁船への銃撃死亡事件、エレベーター内での男性の刺殺事件と彼の事務所の掃除婦とその5歳の息子の失踪事件、子供のおやつ(弁当)泥棒事件。
主人公の警部は行方不明だった男の子を自宅にかくまうことにする。

彼は仕事はとても有能なのに上層部うけが悪く、唯一の理解者は退職間近の署長。本人も出世する気はないけど。
私生活では結構駄目男で、車がガス欠でエンストしたのにその原因さえ分からなかったり、ビデオカメラの録画ボタンを押し間違えてたり機械には弱い。44歳の彼は33歳の恋人と付き合って六年になるけど結婚の話はいつもうやむやになっている。恋人と男の子が仲良くしているのを見て疎外感を覚えたりする。やがて彼女の中に母性本能が生まれて彼にある決断を迫る…

そんな状況の中、長く疎遠になっている父親が瀕死の病床にあるとの連絡が入るが、死んで行く姿を見るのが恐ろしくて見舞に行けない。逃げるようにやって来た休暇先の宿で、ついに哲学教授から「いつになったら大人になる決心をなさるのですか?」と看破されひとつの決心をする。

ミステリは派手さに欠けますが、登場人物の描き方が上手。

米英ミステリに馴れているとイタリア人の名前には戸惑う。軽く右脳を刺激される感じがします。それから、やはりイタリア、出てくる料理の種類が豊富ですね。主人公もグルメだしね。
で、米英の各ミステリの中での定番飲み食い、わたしなりの印象。
アメリカ
やはりハンバーガー、TVディナー(先日、発明した方が亡くなりましたね)とマティーニ、缶ビール。
イギリス
サンドイッチ、キドニーパイとシェリー酒、パイントグラスでビール。

TVディナーについては、
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200507210026.html

「消えたモーターバイク」ネヴィル・スティード ハヤカワ文庫

2005-07-22

Tag :

☆☆☆
ホンダのバイクで出かけたまま行方不明になった私立探偵。探偵は三つの調査を手掛けていた。その恋人に頼まれて彼を捜すことになったアンティーク玩具屋素人探偵ピーター。
調べて行くうちに探偵の意外な真実が明かになる。シリーズ三作目。

前二作の内容はすっかりさっぱり忘れていますね。

どうしてなのかわたしはこの主人公に馴染めません。以前も言ったように軽口がすぎると
嫌になるのですが、この主人公はそうでもないけどなんか斜に構えてるようで。万年三十九歳のわりには人間的魅力が少ないような。
これはですね主人公にからむサブキャラの不足に原因があると思うんですよね。
今回、恋人アラベラはアメリカに行っていて留守。漁師のガス、こいつは無愛想なんですがなかなかいい奴です。しかし、ビール飲んだくれてばっかりでいつ仕事してるんだ?主人公の恋人のいとこフィリッパはステレオタイプのいい人。
この二人では主人公の性格に深みを持たせるのは難しいですよ。

玩具や古い車に対するこだわりは読んでいて興味を引かれます。
それから、少女モリーに優しくするシーンは良かった。

「難事件鑑定人」サリー・ライト ハヤカワ文庫

2005-07-20

Tag :

☆☆

資産家で大学教授であるジョージーナが急死する。財産の一部を贈与されたエレンのもとにジョージーナが生前書いた“自分の死は自然死に見えたとしてもそれは仕組まれたものだ”という内容の手紙が届く。エレンは大学の記録保管人ベンに調査を依頼するが稀覯本をめぐる殺人事件も浮かび上がって来る。

「知識マニアの琴線をくすぐる知性派ミステリ」なんて紹介されたら読んでみたくなるでしょ!アメリカ人女性作家で舞台がスコットランド、500ページと結構長編でとくれば重厚で主人公が細かい知識でオタクぶりを披露するのかと思うじゃないですか。

まあ、たしかに驚きましたね、登場人物の欄に52人も名前が載ってるんだから。あの「夜のフロスト」でさえ44人ですよ。

もっとウイットにとんだものかと期待してたんですけどねー。読後感は大きな軽石といったところですかね。(良いのかこんな表現で)
ちゃんと推敲してないのか締まりがない(主人公がいきなり登場人物のひとりを力でねじ伏せるのですが(!)その人物が以後全く登場してこない)。主人公の人物造形をしようと努力のあとは認めるが結果が出てない。容疑者たちも魅力がなく存在感もない。
稀覯本の蘊蓄にしても作者が語らせてるだけで講義を聴いてるみたい(だいたい稀覯本なんて基本的な知識すらないので語られてもへ~って言えないし)。
ミスディレクションの意図が露骨に分かりすぎ。
巻末の主人公と作者!との〈特別インタビュー〉などふざけたお遊びにすぎない。
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アメリカ探偵作家クラブ賞最終候補作になってるけど前の二作はどんな内容なんだろう?

「出会いがしらのハッピー・デイズ-人生は五十一から(3)」- 小林信彦 文春文庫

2005-07-19

Tag :

☆☆

週刊誌に連載されているエッセイをまとめたものです。
わたしはこの人の物事に対するスタンスが好きだし共感を覚えるのでよく読みます。

失礼ですがこのお歳でこんなに年齢を感じさせない文章を書かれるのは大したものです。普通なら庭の松の木の枝振りとかどこそこの関節がリューマチで痛いとか書いてそうなもんです…
しかし、著作から受ける一時期の圧倒的な情報量は減りました。一冊の本としてはかなりお買得感があったのですが。以前と比べるとかなり枯れてます。枯れるとは枯渇するという意味ではなくて諦観みたいな感じでしょうか。政治やマスメディアに対しては相変わらず痛烈な批判をしていますが、読書、映画、芸人の批評がかなり少ない。
ウラを返せば娯楽をうんぬんしている場合じゃない世の中になっているということかもしれませんね…、しかもいくら言っても良くならないし。

個人的には昔の東京物語より辛口の現代時評がもっと読みたいものですが、このように長期間に渡り一定の立場で時代をトレースしてくれる人はすごく貴重な存在だと思います。

現代〈恥語〉ノートの恥語として〈お笑い〉〈ぼく的には〉など取り上げていますが、〈今日はこんなところです〉に笑いました。T○Sのニュース番組で某キャスターが言うシメの言葉ですが、「『今日はこんなところです』って、おまえは魚屋か。(略)ドコモ疑惑も、残酷な殺人も、警察の驚くべき不祥事も、そんなところなのか!」と怒ってます。

わたしが気になる恥語は〈言うまでもない〉なら言うな!なら書くな!
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「煙が知っている」 エリック・ライト ハヤカワ・ミステリ文庫

2005-07-17

Tag :

☆☆☆

「神々がほほえむ夜」に続く二冊目。第一作より面白いです。さらにくよくよ悩むところが・・・更年期障害かな?

まず、14歳の息子がポルノ雑誌を隠し持っていた。妻の仕事が忙しく自分が捨てられるのではと心配している。健康診断で血尿が出て再検査。網戸が壊れ近くに巣があるスズメバチが部屋に入って来る。

前回の事件を解決して少しは評判が良くなったソールター警部ですが、相変わらず雑用ばかり。しかし、他の事件で人手が足りなくなったので放火殺人事件の捜査が廻って来た。事件現場に行ってつまらない冗談を言って反省し、見張りの警官に嫌われたとクヨクヨしたり。
床屋に行ったばかりなのに、女友達にきちんとした髪にしたらとアドバイスされる。
なにげなく買ったクッキーが一個2ドルだったのでかなりショックを受ける。
息子の問題を人に聞いてまわるうちに父親失格ではないかと思う。

これはユーモアミステリですね。主人公が庶民的で普通なのが笑える。
事件に派手さはありませんが中年警部が家庭、仕事に悩みながらも地道に解決して行く。悩みといってもそう大したものでもなく、本人の気持ち次第なんですけどね。

浮世絵も事件の背景になっていてキーパーソンとして日系二世のおじいさんが出てきます。カナダでも大戦中に日本人、日系人は収容所に入れられていたんですね。

神々のワード・プロセッサ   スティーヴン・キング  扶桑社ミステリー

2005-07-16

☆☆☆

キング初心者が読むキング二冊目。まだ短篇集。

八百万の神様がいて、いろんな物に魂が宿る日本でもさすがにワープロには神様も
魂もないですよね。しかし、この短篇集ではワープロ、トラック、タイプライター、サルの玩具にいろいろなものがついてます・・・神、怨念、妖精、邪悪。
以下、少々
ネタばれがあります。








「神々のワード・プロセッサ」
ワンアイデアだけどワープロを魔法の箱にしなかった設定がこの話をただの寓話で終わらなかったのでしょう。
しかし、主人公が今後の幸せをワープロに打たなかったため、二年後には新しい妻は太り始め息子も父親を馬鹿に仕始めるのでした、みたいな展開に成りかねないかもね。

「オットー伯父さんのトラック」
作者も気に入ってる短篇の一つだそうだ。このアイデアでこれだけよく書けますよね。
この力まかせ、キングさんはお相撲さんで言えば朝青龍なのか?

「ジョウント」
結末予測付きますよね。そこら辺が詰めが甘いような・・・
しかし、『意外と長いよ。パパ!見たんだ!見たんだ!長いジョウントなんだ!』と叫び目玉に爪を食いこませた少年は、一体何を見たんだ?何を見たんだ?

「しなやかな銃弾のバラード」
気がおかしくなった小説家は近隣の住人、新聞配達の少年、郵便配達夫などをCIA,FBI,KGBのスパイや国税庁の役人と思い込んでいる場面がありますが、
わたしは筒井康隆氏の短編を思い出してしまった。ストーリーは全然違いますけどね。
妖精が出てこなきゃ普通にアメリカ文学として読めますよね(カポーティみたいな、違う?)。

「猿とシンバル」
これがわたしのイメージするキングの作品ですよ。最後のエピソードは余計な気がするけどなあ。魚殺してどうする?
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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「パンプルムース氏の秘密任務」マイケル・ボンド 創元推理文庫

2005-07-13

☆☆☆☆

「元刑事のグルメ・ガイドブック覆面調査員パンプルムース氏と元警察犬ポムフリット
の今回の任務は、編集長の叔母さんが経営するさえないゼロ星ホテル・レストランの
たてなおし作戦。靴底とまごう肉や、キツツキもビックリのこちこちパイを出すこの店
には、何やら怪しい秘密があるらしい。媚薬がらみの事件に巻き込まれ、ポムフリットまでも大興奮!」
(「キツツキもビックリ」が妙に笑える)

そのホテルで食事をした後に破廉恥な事件を起こした同僚と同じような不祥事を起こした
ポムフリット(ボルドーの赤が大好き)。かれは後にライオンに変身させられます。身分を隠して宿泊したパンプルムース氏は何者かに頭を殴られたり尾行されたり部屋に侵入されたりひどい目にあいます。

でも、ミステリとしてはもうひとつです。

目的地に行く途中にゾラやモネ、プルーストなどのゆかりの地を訪ねて彼らが好きだった食べ物について考えてみたりして、解説にもあるように観光ガイドブックにもなりそうです。
主人公が乗る車はシトロエン2CV!(渋)仕事用七つ道具のライカRカメラ!(欲しい)、ライツ社の双眼鏡!(これも欲しい)出てくる小道具もこだわってますね。

著者は『くまのパディントン』(読んだ事がない)を書いたイギリス人ですが作風がフランス風な感じ。美食と酒にこだわるところはもちろんですが、ちょっと艶っぽい話やマスコミが大挙してやって来るいきなりのドタバタの場面なんかは。しかし、抑制が効いてるので下品な感じはしませんよ。

上質なユーモアミステリだと思います。4488215033.09.LZZZZZZZ.jpg

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ある魔術師の物語」-イギリス・ミステリ傑作選 ’76 ヒラリイ・ワトスン編  ハヤカワ・ミステリ文庫

2005-07-12

Tag : 短編集

☆☆

短篇が10篇収められています。知ってる作者はエリス・ピーターズ、P・D・ジェイムズ、デズモンド・バグリイくらいです。

「風邪を引かないで」キリル・ボンフィグリオリ
前払金を払ったのにしょうもない原稿しか送ってこない小説家を訪ねた出版会社社長の運命。奇妙な味的ブラック・ユーモア。

「ベラミーのバス」ジョン・バクストン・ヒルトン
路地に停まったバスの中に青酸ガスで死んだ十二人の死体。車内に残されたテープレコーダーから事件が解明されて行く。

「死の影なる生」メアリイ・ケリイ
やはり女の子は男子より格段成長が早いなと思わせる辛辣で残酷な物語。でも、どこがミステリなんだよぉ。

「教会の猫」エリス・ピーターズ
可愛がってくれた老婦人を殺された黒猫が犯人を追いつめるがそれは復讐のためだったのか?なんて言う話。ま、他愛無いといえばそうかもね。でも猫だから許す。

「豪華美邸売ります」P・D・ジェイムス
妻に対する殺人未遂容疑をかけられた夫。その同僚が事件を語りますが…
さすがジェイムス、ただじゃ終わらない。ひねったオチにさらに意地悪な香辛料を効かせてます。

「ジェイスン・Dの秘密」デズモンド・バグリイ
バグリイはやっぱり冒険小説書いとけば、みたいな消化不良気味な物語。

「妹の名はネメシス」マイルズ・トリップ
タイトルが大げさな割には中味はしょぼい。第二次大戦中に殺人を犯した男の前にその被害者の娘が現れる。

「ティメオ・ダナオス」ウイリアム・ハガード
キプロス島らしき島を舞台に、トルコ人の肩を持つオランダ人の夫人がギリシャ人警部からスパイ容疑をかけられ国外退去を迫られる。アンブラーなみの陰謀サスペンスかと思ったらイギリス人の夫がやって来て子供騙しの解決。なんだそれ?婦人のキャラクターが良かったのでそれで押して欲しかった。穿った見方をすれば英国の外交政策のずるさを皮肉ってるかとも。違うけどね。

「二本のキアンティ・ワイン」A・E・リンドップ
主人公の家系の説明が長過ぎ、どうでも良いと思う。最初はユーモア物かと思ってたら最後は全然違うし。これって長編のためのあらすじをふくらませたものじゃないのか?話の終わり方が不自然。

「ある魔術師の物語」デズモンド・コーリイ
約80ページ程の作品ですが、イライラしてくる前半20Pは、はしょっていいでしょう。その後、持ち直しますが後半はどうでも良いです。全体に作者の悪ふざけに付き合わされている感が強い。

「オールド・ディック」L・A・モース ハヤカワ・ミステリ文庫

2005-07-10

Tag :

☆☆☆

エド・マクベインは78歳で亡くなりましたが、
もうすぐ78歳になる主人公はこの歳で再び探偵家業を始めました。

しかし「もうこの五年間勃○した覚えもない」(淑女の皆様がもし読むといけないので伏せ字にしました)オジイさんですから、ものすごくセクシーなおネエさんの代わりに、ものすごく不味いロールキャベツを作る65歳の未亡人に惚れられてるし、知り合いで一杯だったアドレス帳はほとんどみんな死んでしまって横線ばかり、ようやく残った仲間を頼って行ったところは老人ホーム。尾行して入った店では客に「あんなに年をとるまで生きていたくないわ」と陰口を叩かれる・・・

でも、再び仕事をして現役に戻るということで周囲のお年寄りにも影響を与えて行くところが面白いです。生き生きしたりして… それに主人公が寡黙でもなく、饒舌過ぎないところも良い。

よく機知というかただの減らず口ばっかりたたいて、仕事は一向にはかどらない探偵がいますが、ああいうのはすごくむかつきますね。軽口言ってないでさっさと仕事をしろ!!と。たとえばハードボイルドではないけどデミルの「将軍の娘」のブレナーみたいな男(いちいち例に挙げなくてもいいんですけどね)。

とにかく史上最年長の私立探偵という設定が秀逸でした。

わたしも歳をとって「間抜けな老いぼれめ!!」なんて面と向かって言われる日が来るかもしれないんだなあ。しみじみ。

「愛は血を流して横たわる」 エドマンド・クリスピン 国書刊行会

2005-07-08

Tag :

☆☆☆

貴族屋敷の書斎に胸に象牙の柄の短剣を刺した貴婦人の死体が…(?!)
やがて英国王室をも巻き込むスキャンダルが!!(もしもし?)
そこにこつ然と現れたインド帰りの象使いの探偵。(おい、おい?)
人間並みの知性を持った象が本を落としたり、言葉遊びゲームで探偵に事件のヒントを与える。(それはシャム猫ココです!)

などという愛と死の物語ではありませんでした。

女子学生の失踪、化学実験室での劇薬の盗難、二人の教員殺人、そして第三の殺人が。
その上、シェイクスピアの未発表原稿まで?!てんこ盛り。

沢山の事件が次々に起こるので、前半は頭が混乱しました。さあ、謎を解いて犯人逮捕しちゃると思ってたら・・・自作の探偵小説の筋を聴かせたがるフェン教授、犯人解るのが早すぎですよぉ。レッズ戦のヴェルディみたいに戦意喪失ですよぉ。7:0… あっ、余計なお世話か。

老女が殺される中盤以降、動きが出て来て面白くなってきますね。特に鬱蒼とした夜の森の中で犯人と対峙する場面が良かった。それから、犯人とそれを追跡する側が車で同じ道を行ったり来たりする場面がおかしかったです。「消えた玩具屋」の女性を追跡する場面ほどはドタバタではなかったし。

犯人があまり存在感がないので、エッーーーー!!!!!という驚きがないのと
トリックのためのトリックが込み入ってるのが難点でしょうか。

しかし、いい具合にドタバタが押さえられて、ユーモアがありの本格ミステリでした。

最後に老犬メリソートをとても誉めてあげたい。メリソートに紐鶏頭の花を捧げましょうね。

「味こごと歳時記」 高橋治 角川書店

2005-07-05

Tag :



以下、かなりわたしの感情的な批評が書いてあります。著者の意見の一部はわたしが共感できるものもありますが…

食材についてのエッセイです。題名通り味について「こごと」を言ってます。ようするに昔は食材の味が良かった、それに比べて現代は…嘆かわしい、といったような主張。

養殖魚、醤油、オキアミと鯛など。

この人もかなりスノッブな傾向が強いと思っていたが、朝日文庫の「旬の菜滋記」「くさぐさの花」はそれがうまいこと押さえられており、きれいな写真と相まって良い感じだった。ところがこの本は老害というか年寄りの偏屈さが全面に出過ぎて正直うんざり。昔は良かっただの現代は駄目だのと書くばっかり。

じゃあ、あなたはその変化の過程で何を世の中に訴えてきたのでしょうか?ただの物書きではなく、映画監督で直木賞作家ですし自分の経歴にはかなり自負してらっしゃる。そうとうの影響力を持ってたはずですね。その力をどう行使してきたのでしょう?
他人を批判する前に(実際、実名?入りで糾弾してます)あなた自身の反省から始めるのが筋なのではないでしょうか?何をして何ができなかったか。

一人だけ離れた立場に身を置いて一方的に批判することなど誰にでも出来ますよ。

「指に傷のある女」 ルース・レンデル 角川文庫

2005-07-04

指に傷のある女 ルース・レンデル 角川文庫
☆☆☆

わたしは繊細な人間(ああ、この際どうとでも書くぞ)なのでレンデルのノンシリーズは苦手です。どよ~んとした読後感、閉塞感。
重い、暗い、澱む。

それでウェクスフォード警部シリーズを読むのですが、これとて読む前のワクワク感が湧いてくるわけでもない。

シリーズ物はだいたい馴染みの登場人物が出て来て、どんな事件が起こるんだろう?なんて期待しますよね。しかし、このシリーズは、まあレンデルの作品だからつまらなくはないだろう、くらいの感じで手に取ります。

確かにレンデルは上手い、名人だ。でも、なんか作り込んだ、技量に長けた、計算した印象を受けるんですね(特に『運命のチェスドード』など)。そのあたりがノンシリーズ物では成功し、シリーズ物では少々欠点に思えるのかもしれません。あくまでも私的な感想ですが…

読者の感想については訳者の深町眞理子さんがあとがきで触れています。読者の指摘がかなり興味深くて笑えます。

ということで、この作品についてですがトリックがすれすれだなあと思う。うまく丸め込まれたなあ、とも感じる。三十年前に書かれてますが、当時読んだとしたらどうなんだろう?結構センセーショナルだと思う。

日本の首都圏の警察では、この犯行が発覚するかはかなり微妙ではないでしょうか?ありえなくもない。

今回のウェスクフォード警部は「鬼平」みたいに配下の者(もと悪人、かなり頼りにならない)を使って内偵させます。その男の話し方も江戸の町民みたいです(笑)。署長から手を引けと言われてるのに休暇を使って単独で捜査を続けてるし、甥の警視にまで手伝わせる。執念ですね。タイムリミットまで設定してあって緊迫感あり。

それにしてもウェスクフォード警部がいまいちメジャーに成りきれないのは何故?
事件の地味さ故?レンデルがクールすぎるのか?これから解明して行きたいです。

余談ですが女性に対して、警部あんたも男だったのねと思わせる場面もあります。ダイエットで自信が付いたのかな?感心しませんね!

「砂洲の死体」マーガレット・マロン ハヤカワ文庫

2005-07-03

Tag :



期待高かったです。海、アビ(鳥)、女性判事。
カバーの鳥瞰図も良さげ。

が、

これミステリではないよな、犯人に銃を向けられるまで他の人物を犯人と思ってたんだから。

サスペンスにしてはハラハラドキドキがないし、犯人が冷酷残忍なわけでもない。

ハードボイルド?なんかちょっとひねった口のきき方をするな。ソフトボイルド系か?
でも、殴り合ったりはしない。

もしかして、あれ?ハーレークインロマンス?
昔の男に誘惑されていい雰囲気になるし、最後の方になって別の男といちゃつき出すし。(あんたどっちに惚れてんだよ?)

主人公の人物造形はどうなんだ。性格がよくつかめません。主人公の心の中の「牧師」と「現実主義者」が会話するところもすべりぎみ、一人称は失敗。ついでに各章の始めにあるイェーツなどの詩の引用も邪魔臭い。(一章目の詩のエドワード・ホッパーってあの画家のホッパーなの?わたし彼の絵のファンです)、意味ありげに思わせて全然そうじゃない。

マロンさん、ミステリが書きたいのかHQが書きたいのか、なにが書きたいのかハッキリしなさい!!そんなに詩が好きなら一人で書いてなさい、隅っこで!

初記事なのに面白くない本を読んでしまった。4151001174.09.LZZZZZZZs.jpg


はじめまして!!

2005-07-02

Tag :

某ブログがとても重いので、こちらのブログの評判を聞いて移住したいなと思って開設しました。読んだ本の感想(おもに海外ミステリや自然科学系)を書いて行きたいと思ってます。
どうかよろしくお願いいたします。

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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