「幻のペニー・フェリー」リック・ボイヤー ハヤカワ文庫

2005-10-30

☆☆☆

主人公ドクの友人でメッセンジャーをしている男が飼い犬とともに殺される。彼が配達しようとしていた物が犯人の狙いだったらしく、それは過去に起きた冤罪事件に関する書類だった。ドクは義弟である警部補の捜査に協力するが彼の身にも危険が迫る。

この作品はミステリというよりは冒険小説です。と言っても、嵐の中の航海とか吹雪の中の登山とかではなくていわゆる“ご近所冒険小説”ですね。
主人公のキャラクターは全く違いますが、主人公の味方がマッチョで強い男ばかりなので、なんだかB・パーカーのスペンサー・シリーズを思い浮かべました。州警察の警部補の義弟、地方警察の署長、武術の達人、被害者の仕事のパートナーなど、味方多過ぎ。

主人公は口腔外科医という設定なので、P115に第三臼歯を抜歯する場面が出てきます。
その描写がすごく苦手でした。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ブック・フェスティバルの殺人」キャロリン・G・ハート ハヤカワ文庫

2005-10-28

☆☆

五人の作家たちのスキャンダルを小説化しようとしていた出版会社社長が
パーティーの席上で毒殺された。パーティの参加者の中にはアニーと五人の作家たちがいたが、毒が入っていたグラスにはアニーの指紋が付いていた。しかも、彼女は被害者と
口論していたのだった。

前回の『ミステリ講座の殺人』より面白くなかった。どうも、全体に冗漫です。
アニーが殺人容疑をかけられてテンションが下がり気味なうえに、あのローレル、ヘニー、ドーラの婦人たちが大人しい。三人それぞれ本を執筆し、それを出版してもらおうと一生懸命になり過ぎているみたいで…迫力が感じられません。
この三人がお節介をやいてアニーに迷惑をかけながらも活躍し、四人で解決してゆくパターンが魅力だと思いますが今回は失速ぎみ。主人公のアニーの場面が延々と続くので起伏に乏しく退屈してしまいました。ダーリング夫妻の相変わらずの仲良しぶりだけが目立って、はいもう分かりましたっていう感じです。今思ったんですがクリスティの“トミーとタッペンス”物をモデルにしているのでしょうか?

テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

「犯人にされたくない」パーネル・ホール ハヤカワ文庫

2005-10-25

Tag :

☆☆☆

息子の幼稚園料という経済的な理由のため、再度保険会社の調査員を始めた
主人公ヘイスティングズは妻の女友達の問題を解決してやることになる。女友達のトラブルの元凶である男の家を訪ねた彼は男の刺殺体を発見する。

これ読んだ後、すぐに次作「お人好しでもいい」を手にとってしまった。
一日に2、3冊読めそうな軽さはペリー・メイスンシリーズっぽい。
メイスンよりヘイスティングズのほうが好感が持てますけど。

カテゴリーでは、なんだか中村主水みたいな昼行灯タイプなんですか?
一作目は人知れず事件を解決したんですが、第二作目の今回は殺人課のマコーリフ部長刑事に顔バレしちゃってますので、最初から疑われています。なので前作ほどの活躍はできませんが、それでも不思議なくらい事件が解決に向かうのはどうしてなんでしょうか?
普通、私立探偵って優先順位を無視した行き当たりばったりの調査をしながらも、どういうわけか事件の核心に迫って行くという不自然さを感じるものですが、このヘイスティングズは常道を行って結果をだしています。

プロの私立探偵が事件を解決してもあたりまえだけど、ヘイスティングズのような“アマチュア”が警察の鼻を明かしているところに爽快感を感じますね。まあ、彼が出しゃばらなければもっと早く上手く警察が解決してたかもしれないんですけどね。
でも、この主人公に何故だか妙に親近感が湧くのでした。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「パンプルムース氏のおすすめ料理」マイケル・ボンド 創元推理文庫

2005-10-23

Tag :

☆☆☆☆

犬派は犬ミスに冷たいのか?

村上貴史さんが解説で、当初このシリーズが売れなかった原因として
色気、犬、フランスの三つの要素を挙げています。

うーん、犬はミステリにおいて敬遠されているのだろうか?「バスカヴィル家の犬」の呪いなのか?確かに猫ミスに比べると犬ミスって聞いたことがない。
基本的に犬はアウトドアだし、犬好きは外で遊んでばっかりで読書をしないのか?
犬派はミステリを読まないのか?

しかし、このシリーズがなかなか受け入れられなかった一番の理由は、やはり「お色気」なのでは?ドタバタ、ユーモアまでは許すがお色気は許さんみたいな。だって日本人は真面目な本格ミステリ好きだから。しかし、このフランス艶話的要素は、
「パンプルムース氏のシリーズは『イギリス人が描くフランス人』という事で(モンティパイソンのスケッチのように)フランス的なものを多少誇張しすぎているかもしれません」、
とamaguri313さんがわたしの以前の記事にコメントで鋭く指摘されているように、イギリス人作家ボンドの“洒落”なんですけどね。そこを意識して読んでみると、ドタバタ、お色気にしてもかなり上手にコントロールされて書かれていることが分かります。
まだ二冊しか読んでないわたしが小理屈こねてもあれなんですが…

このシリーズ一作目はグルメ犬ポムフリットがかなり活躍しているし、いろんなものに対する犬の立場からの感想が可笑しい。ブラッドハウンドを飼っている方はぜひ読んだほうがいいです。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ハロウィーンの死体」ポーラ・ゴズリング ハヤカワ文庫

2005-10-21

☆☆☆☆

ハロウィーンといえば、スヌーピーとカボチャ大王が思い浮かびますね、……ね。

かなり時宜にかなった本、ブラックウォーター・ベイ・シリーズ第二作目。
一作目の「ブラックウォーター湾の殺人」より良かった。

ある男の死をきっかけに、三十年前ハロウィーンの夜に少年が事故死した事件の
経緯がしだいに明らかになっていく。保安官マットが調べる当時の関係者たちは、現在、町長を初めとして町の有力者や億万長者などになり、マットの周辺の人たちは調査に難色を示す。そして町を挙げてのハロウィーン祭りの会場で関係者の一人が殺される。

なんだかよくある過去ほじくり返し的陰湿系ミステリに思えるかもしれませんがそんなことはないです。基本的にコージーなので、ユニークな登場人物と猫のマックスのおかげで全体に明るいミステリになっているし、作者がハロウィーンのどんちゃん騒ぎの様子を楽しんで書いているような気がします。
一方、生前の少年の生い立ちや性格を母親や知り合いの女性に語らせることによって物語に深みを与えていると思います。それほどメインでない登場人物たちの表に現れない事情も丁寧に描き込まれていて感心します。このあたりの話になるとリリアン・J・ブラウンにとっては不利かなと…

前作にも登場した謎の家族「アドコック一家」が今回も町に現れますが、この先、どういう風にこのシリーズに係わってくるのか、結構楽しみです。

*マットの飼猫マックスの楽しみは、凍った歩道の上を人が滑ったり転んだりしながら通って行くのを見ること。
*リリアン・J・ブラウン…シャム猫ココ・シリーズの作者。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「サキ短篇集」 サキ 新潮文庫

2005-10-19

Tag : サキ

☆☆☆

サキ傑作集」岩波文庫と同じく21の短篇が収録されています。どうして半端な21篇なのでしょうか?なにか意味でもあるのかな?
サキ傑作集」とのだぶりは「二十日鼠」「狼少年」「話上手」「開いた窓」「宵闇」「セルノグラツの狼」「七つのクリーム壺」の七篇です。あの猫好きにはたまらない「トバモリー」が入ってない!どうも選択の基準が甘いような気がしますね。

岩波文庫版が発行されたのが'81年で新潮文庫版が'58年です。新潮文庫版は改訳や新訳
をせず当時の訳のままなのでさすがに古めかしいです。河田智雄訳とくらべて中村能三訳は直訳かと思うほど堅い感じがします。それが旧版と相まって見た目にもかなり読みにくい印象。そろそろ新訳と西暦表記もお願いしますよ、新潮文庫編集部さま御中。

岩波文庫版に収録されていない作品で今回気に入ったものを上げておきます。
庭に牝牛が入り込んだ家の女性と隣人の画家との毒のある会話がすごく可笑しい「肥った牝牛」、自己中心的なバカップル(古)がでてくる「十三人目」、「開いた窓」の登場人物の“姪”が再び現れたような「休養」。

岩波版は品切れみたいで現在は手に入らないようですが、もし目の前にニ冊あったら岩波版「サキ傑作集」を選ぶと思います。しかし、絶版にせずに長年出版してきた新潮社は偉い、と素直に誉めたいです。

テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

「だれも猫には気づかない」アン・マキャフリー 創元推理文庫

2005-10-16

Tag :

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☆☆

amazonのレビューを見てみると、結構良い点数を貰ってるんですね。ふ~ん。
まあ、作品を面白いと思わなければ、わざわざここにレビューを書き込んだりはしないだろうから、結果的に高得点になるんだろう。フッ…でも、甘いよみんな、いくら猫本だからって…わたしはファンタジー系ジュブナイルといえども厳しく採点しますよ…などと軽く余裕をブチかましていたら、なんとこの作品は孫娘に捧げられているではないですか。ということはですよ、この本をamazonの人たちが評価しているにもかかわらず、あんまり面白くないと思ったわたしは「子供心」とか「純真」とか「ピュア」とかを失ってしまったということになるのですか?すれちゃって汚れちまってるわけ?そうだったのか…
それとも、猫が跳ねたり飛んだり化けたり噛み付いたりして、もっと活躍して欲しいと感じたわたしは「子供心」以前にただの「幼稚」なのか?どうなんだろ…


中世の公国の若き領主を、亡くなった摂政の飼猫が守って、領主の結婚を手助けしたり隣国の陰謀を防いだりするファンタジーです。小学生三四年向き(?)。

テーマ : ファンタジー小説
ジャンル : 本・雑誌

「追憶のローズマリー」ジューン・トムスン 創元推理文庫

2005-10-14

Tag :

☆☆☆

日本のブロガーの皆さんの間では吉田兼好が人気があるようですが、イギリスのミステリ作家はやはりシェークスピアをよく引用してますね。またかって言うくらい。この本の題名も『ハムレット』におけるオフィーリアの死の場面にかけてあります。
といっても、ローズマリーが浮かんだプールで殺されていたのは男ですけど。


それにしても、
なんだか毎回、毎回、フィクションとはいえ、殺したとか、殺されたとかブログに書くわたしは人格的にどうなんだろう?とふと思った。変わってるかなあ…

つづき、
ミステリはそれほど奇をてらったものではなく地味め、かなり展開に予測が付きます。
しかし、前半部分は視点が次々に変わりストーリーに入り込めるし、登場人物の心理描写がとても上手く飽きません。
ただし殺人が起きてフィンチ警部らが出て来るとテンポが遅くなるけど、これは仕方がないかな。
あと登場人物の設定が若干ありきたりなところが弱いかも。特に被害者はただの女たらしにすぎないし、家政婦頭の女性の考え方も現代的じゃないように感じたんですけど。

作者はこのフィンチ首席警部ものを18冊(!)とホームズのパスティーシュを何冊か書いているそうです。この人がレンデルのノン・シリーズみたいなものを書いたら面白い作品になりそうな気がします。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「ブラックウォーター湾の殺人」ポーラ・ゴズリング ハヤカワ文庫

2005-10-11

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☆☆☆

五大湖のブラックウォーター湾に浮かぶ人工島パラダイス島。
そこには十軒の家があり住人の多くは昔なじみだった。
画家のダリアはDVの夫から逃れて、島の伯母宅に身を寄せていたが、
そこにも夫の影がちらつく。
おりしも湾の開発話が持ち上がり島の住人たちの間に動揺が広がっていた。
ある朝、ダリアの夫の射殺死体が隣家の庭で発見される。

ダリアに想いを寄せる保安官マットが休暇中のストライカー警部補に助力を求めるという展開になります。
ストライカー・シリーズではなくブラックウォーター湾・シリーズの第一作だそうですが、これからシリーズの主人公になると思われる保安官マットの影が薄いですね。
そういうことなら、もうちょいマットを魅力的に描いてあげてたらと思うのですが…
きっとこの作品を書いた後にシリーズ化を思い付いたんじゃないのかなあ。

ストライカー警部補とトスカレリ部長刑事の会話がこっぱずかしいところがあります。
ミセス・トービイとミセス・ノートンの老婦人コンビ、副保安官パトナムやアドコック家族などユニークな人物が登場しますが、それらのキャラが微妙に軽いのは作者がコージー・ミステリにする意図があったためなのだろうか。もっとどろどろした人間関係を描いた作品かと思ってた。邪悪で深刻な動機を想像していたわりにはしょぼい結末。
でも、楽しめたしマットの活躍を期待して次も読みます。ニ作目がbオフにあったし。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「ニューヨーク・デッド」スチュアート・ウッズ 文春文庫

2005-10-10

☆☆☆

マンションから突き落とされた人気女性キャスターが病院へ運ばれる途中に行方不明になる。落下現場に居合わせた刑事が犯人と被害者の行方を追う。

ジャーナリストが被害者なので権力機関の謀略ものかと思ってましたが違ってました。
途中で主人公の刑事が辞職して弁護士になったりして…なんか間延びした展開。

訳者あとがきにもあるように、いかにも“ハリウッドのアクション映画”的物語。
ノベライズと言ったら言い過ぎかもしれないけど軽い読後感。
あるいはレンタルビデオを一本観終わったような気持ち。
どうなんだろう、グリシャム、デミル、ディーヴァーに通じるマクドナルド型エンターテイメント小説というようなものは。『警察署長』は傑作だと思うのですが。

たしかに原作は'91年だから当時読めばまた違った感想なんだろうけど、こういうエンターテイメントを読み馴れてしまった身には、もういいかなあ。ウッズに罪はないけど飽きてしまってるんですね。
もう少しベッドシーンを増やしてカーチェイスもあったほうが読者受けするし…などというエージェントのいらぬアドバイスがあったんじゃないかと勘ぐってしてしまう。

あと、主人公がWASPでニューヨーク市警では少数派だということと、十二階から落ちた被害者が生きている可能性について終端速度という言葉を何回も出すのが面白かったです。

タグ:スチュアート・ウッズ

テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

「殿下と七つの死体」ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ文庫

2005-10-07

歴史上実在した人物を主人公にしたミステリ“殿下シリーズ”の第二作目。
水戸黄門や暴れん坊将軍みたいなもんですよね。

ヴィクトリア女王の長男、皇太子アルバート・エドワード(バーディ殿下)はイングランド中部バッキンガムシャーの貴族の大邸宅に狩猟パーティーのため滞在していた。
月曜日、晩さんの途中で突然倒れた招待客の女優が病院で死亡したとの知らせが入る。
火曜日、その女優のパトロンだった公爵が自殺する。
水曜日についに殺人が起きる。

王室や上流階級のスキャンダルになってしまうので警察に通報するわけにもいかず、
また、自分を名探偵だと思い込んでいるバーディ殿下は事件を解決したくて仕方がない。
でも、ますます死体は増えていく。本格派ユーモアミステリ。

シリーズ第一作目の『殿下と騎手』より面白かったです。
クリスティ生誕百周年を意識して書かれたらしく、クリスティのある作品を思い起こさせるような設定になっています。
警察が捜査すれば簡単に解決できそうな事件なのに、ラヴゼイが上手なのは時代設定をヴィクトリア朝にもって来て、やんごとない身分の方々を登場させ警察に介入させない状況を作ったところでしょう。クリスティの作品のように派手で劇的状況ではないけど、こんなふうにも書けるんだよというラヴゼイなりの彼女へのオマージュなのかな(少し、対抗心ありの)。

「地球温暖化を考える」を考える。

2005-10-05

Tag :

「地球温暖化を考える」宇沢弘文 岩波新書
☆☆

以前、フランスの科学者が牛のげっぷも温暖化の原因になる、なんて言ってる報道が
あって冗談半分なのかと思っていたら、メタンガスの温暖化効果ってCO2の20倍から60倍の効果があるんですと。

地球が温暖化しているとか寒冷化してるとか、CO2の所為とか違うとか、一体どうなってんの?というわけで読んでみました(実はbオフで百円だったので)。

この本は『地球温暖化の経済学』(岩波書店)の内容を一般読者、中高生向けに書いたものだそうです。だから、序章から第三章までなんだかジュニア新書みたいな書き方だったのね。それに著者は経済学者だったんだ。しかも、かなり偉い学者なんだ。最初のはしがきを飛ばしてたのでわからなかったんだ。(だったんだ現象)
地球科学の専門家が温暖化現象について書いているのかと思ってました。それにしては
これまでの流れを説明するだけで、あまり興味を引くような記載がないように感じたのは
そういうことだったのね。(と偉そうに言ってみる)

第四章からいきなりトーンが変わったのでなんだこれ、と思ったんですよね。
ダムとか自動車とか自動車道路とかの現代文明と経済活動の負の部分が、いかに自然環境の破壊と人々の生活にたいして決定的な打撃を与えてきたかを産業革命まで遡って書いてあります。「むつ小川原の悲劇」とか「地球温暖化と成田問題」の項はちょっと細か過ぎといった感もありますが…

大気は、地球全体にとっての社会的共通資本であり、大気中のCO2濃度の安定化のために
炭素税(環境税)と大気安定化国際基金(後に世銀炭素基金)構想が述べられています。
'95年発行なので'97年の京都議定書 については言及されていません。京都議定書後の状況とアンチ地球温暖化に対するきちんとした科学的反証を読みたいです。

トヨタって経常利益が一国の国家予算に相当してますよね。

関連本
『地球温暖化を防ぐ』

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

「自殺の殺人」エリザベス・フェラーズ 創元推理文庫

2005-10-02

Tag :

☆☆☆

飛び下り自殺を止められた男が翌朝、職場で死亡しているのが発見される。
自殺なのか他殺なのか?
自殺だとしたら原因は何なのか?
他殺だとしたら自殺しようとした男をなぜ殺さなければいけなかったのか?

という割りには他殺でストーリーが進んでいってるように思えるんですけど。
だって警察も他殺って言ってるじゃないですか。
で終盤になって実は自殺なのかも、という証拠が出てきたりするけど
遅きに失するような。
以下、ネタばれあり。“トビーとジョージ”シリーズを未読の方も読まないで下さい。






つまり作者としては実は他殺と見せかけた自殺だったのだと、一度読者を驚かせたいのですね。
そして、最後にもうひとひねりしてホントは他殺なんだよ、と謎解きをすることで
読者をもっと驚かせたいわけです。そういう展開にするには、あまり最初から自殺の可能性を強く印象づけるとサプライズ効果が薄くなるというジレンマがあったのではないのでしょうか?
最初の謎解きが効果的であればあるほど最後の解決が一層際立つわけですから。
その微妙なバランスが崩れて作品全体がどっち付かずのストーリーになってしまったのではなかろうか?

また、前作「猿来たりなば」においてトビーが“迷探偵”ということを知っている
読者は、端からトビーの推理を疑ってかかるので彼の謎解きを信じないのですね。
最後にどんでん返しがあることを学習しちゃってるので。
わたしが思うにトビーとジョージをシリーズ化した時点でこの弱点が発生したのです。

以上いろいろ言いましたが、フェラーズの作品はただの謎解きだけの小説ではないのでぜひ読んで頂きたいです。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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