「殺人ウェディング・ベル」ウィリアム・L・デアンドリア ハヤカワ・ミステリ文庫

2005-12-28



ケーブル・テレビの契約をめぐるトラブルの調査に学生時代を過ごした町を訪れていたマットは、旧友の女性の結婚式にも参列する予定だった。
しかし、結婚式を間近に控えた夜、その女友達が殺害されたうえに親友ダンが逮捕されてしまう。親友の嫌疑を晴らすためにマットは調査を始めるが、彼の身にも危険が及ぶことに。

マット・コブ・シリーズ3作目。
かなりすごい邦題ですが、原題は『Killed With A Passion』。どちらにしてもよく分からない題名です。ウェディング・ベルは登場しません。

デアンドリアといえば『視聴率の殺人』、『ホッグ連続殺人』など名作を書いた人だし、事件に関係する人物が少なく、犯行状況も単純なのでよほど奇抜なトリックが用意されているのかと、結構期待して読んだのですが……

登場人物の印象が薄いし人物設定もありふれている。唯一、存在感があるのはサモイェード犬(サモエード犬)スポットくらいでした。

軽ハードボイルド風だけれど、テレビのサスペンス・ドラマにもなりそうなミステリです。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「化石の殺人」サラ・アンドリューズ ハヤカワ文庫

2005-12-26

Tag :

☆☆

法地質学を専門にする女性学者エムに古脊椎動物学会での講演依頼が舞い込む。
依頼主の古生物学者ディシー博士の自宅に宿泊した翌朝、外出したディシーの他殺死体が発見され、エムに容疑がかかる。学会のシンポジウムに参加して、関係者に話を聞くうちに被害者は日頃から評判が悪く、いかがわしい人物だったことが判明する。

作者は地質学者の肩書きもあるミステリ作家です。長々と書いている著者あとがきによると、この本を書いた“目的と意図”は、自分達の意見を押し付ける“一部の創造論者”がむかつく(あくまでわたしの解釈)ので、「読者のために数時間の娯楽を構築するという枠組みを越えた、どちらかというと個人的な探求にあった。それは、科学における信念および実践と、宗教におけるそれらとのあいだの類似と差異を考察」(P493,494)したのだそうです。

はい、アンドリューズさん、そういうことは余所でやって下さい。結果、ミステリも宗教・科学論も中途半端で印象が薄いものになってしまっていますよ。ラストも尻切れとんぼだし。モルモン教徒との創造説をめぐる会話(作者の自説主張目的)も浮いています。ミステリ・ファンはミステリを期待して読んでいるのですから、自説を述べたいのであれば、上手くストーリーに同化させるか、ミステリ形式ではない啓蒙書を執筆すべきだと思います。

気になったことは、文中に「ブロントサウルス」という恐竜の名称が幾度かでてきますが、この名称はかなり前から使用されていません。「アパトサウルス」が正式名称です。
ついでに、ヘラジカと恐竜のたとえ(P57)も誤解を招きやすいと思います。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「逃げだした秘宝」ドナルド・E・ウェストレイク ハヤカワ文庫

2005-12-23

Tag :

☆☆☆

泥棒ドートマンダー・シリーズの長篇5作目。

〈ビザンチンの秘宝〉と呼ばれる、いわく付きのルビーの指輪がアメリカからトルコに
返還される途中でギリシャ人過激派によって強奪された。
隠し場所の宝石店から偶然、事情を知らないドートマンダーがその指輪を
盗んでしまったため一大事に…
ニューヨーク市警察、FBI、各国の過激派集団、その上に警察の取り締まりが厳しくなって、仕事に差し障りが出てきた泥棒仲間までもが秘宝と犯人探しを始めだした。

ウェストレイクといえば、このお笑いシリーズのイメージがあったわたしは、あの悪夢のようなノン・シリーズ作品『斧』(文春文庫)を読んでぶっ飛んだ思い出があります。
それに較べてこの作品は、推理ものではないし、人も殺されないので、気楽に主人公たちのドタバタぶりを笑って楽しめる一冊です。
これを読んで、レッドへリング、ミスディレクション、ミスリードに騙され、疲れさせられた灰色の頭脳と眉間の縦じわをリラックスさせ、また明日から本格ミステリの手強い犯人たちに挑もうではありませんか。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ 創元推理文庫

2005-12-20

Tag :

☆☆☆☆

寒波お見舞い申し上げます。
こんなに寒くて、年賀状も書いておらず、クリスマスも近いというのに
幽霊話ですよ。

日向ぼっこしながら幽霊話を読むなんて、やっぱり合いませんね。
コタツでかき氷を食べているような。
寒さで震えているというのに、なぜ心まで震わせなければならないのか、
というか、身体が寒すぎてそれどころじゃないし。といささかくどいわたし。

尼僧の幽霊が出現し、誰もいない部屋からハープの音が聞こえると、
不吉なことが起きるという言い伝えのある貴族屋敷。
客人を交えた晩餐の夜、ポルターガイスト現象の後、尼僧の姿が目撃される。
怪現象の調査を依頼された心霊探偵ヒーローが屋敷に赴いた。

ギャリコだから、ハートウォーミング系ファンタジーなのかと思っていた
しだいですが、なな、なんと……何を書いてもこれから読まれる方の興を
削ぐような気がします。あらすじも解説もネットレビューも読まず、
噂も耳に入れずに読めば、さらに楽しめる作品だろうと思います。

主人公のヒーローって、なんだか雰囲気がM・グライムズが創出したキャラクター
の(元)貴族探偵メルローズ・プラントに似ているように思います。ちょっと、
女性に対してガードが甘いけど、子供に優しいところに好感が持てました。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「消えたドードー鳥」ジェーン・ラングトン ハヤカワ文庫

2005-12-16

オックスフォードのカレッジに招かれ、はるばる大西洋を渡ってやってきた元刑事で大学教授のホーマー・ケリー。だが彼を迎えたのは怪事件の数々だった。構内で目撃された奇怪な生物の影、長年失われていた貴重な標本の再出現、大学名物の絵画の紛失……そして死体が次々と!


裏表紙あらすじより

オックスフォードにある(らしい)ダーウィンやニュートンの像、生物標本、街並などの挿絵が豊富でイメージがしやすかったです。アメリカ人のケリー夫妻とケンブリッジのカレッジや街を観て廻っているようで、擬似アカデミックな感覚が味わえました。

ダーウィンが収集し、一部が行方不明になっていたカニの標本の謎など、ダーウィンとか進化論あるいはIDとかに興味がある人は、より面白く読めると思います。といっても、衒学趣味的な作品ではなくてユーモアものです。

ただし、ミステリについては根底となる主題が古く、大山鳴動して鼠一匹みたいな感じがしました。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「動物好きに捧げる殺人読本」パトリシア・ハイスミス 創元推理文庫

2005-12-13

Tag : 短編集

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☆☆

動物13種13話の短編集。
カバーイラストからすると、一見ユーモアミステリかと思ってしまいそうですが、ハイスミス女史ですからそんなわけはなく、ほとんどストレートな話ばかり。
少し捻れよ、ブラックユーモアでも良いから…しかし、女史は直球ビシバシ投げ込んできます。
唯一、「ゴキブリ紳士の手記」がユーモアもの。
その他の物語は、二つに分けられると思います。

動物たち(象、駱駝、犬、猫、豚、鼠、馬、猿、山羊)が、直接、肉体的暴力をもって、飼い主をはじめとする人間たちに復讐を果たす話を、動物の視点から語ったもの。様々な国々に舞台を移し替えているものの、ストーリーが皆ワンパターンになってしまっているのは残念。暴力だけでなく、バリエーションを持たせていればもっと面白かったのではないでしょうか。

飼い主が間接的に動物(鶏、ハムスター、イタチ)の共犯になってしまったもの。
「鼬のハリー」は少年とイタチの物語ですが、サキの短篇作品の「スレドニ・ヴァシター」に似ています。少年期の残酷さみたいなものとイタチのイメージが重なるのか。
「ハムスター対ウェブスター」も、少年と動物の関係で見れば同じような傾向の作品かもしれません。「ハムスター対…」はややB級動物ホラー映画っぽい感じですが。

作者は人間という動物が、他の動物に意地悪だったり、残酷だったりすると、当然それに対する報いがあると言いたかったのでしょうか。
それならば、題名は「動物いじめに捧げる殺人読本」が相応しかったような気がします。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「パンプルムース家の犬」マイケル・ボンド 創元推理文庫

2005-12-09

☆☆☆

来年の干支は犬なので、犬本だぁ~~。
パンプルムース氏はグルメ・ガイドブック「ル・ギード」の覆面調査員なのです。
三つ星ホテル・レストラン《レ・サンク・パルフェ》で休暇を過ごしていたら、
国家的危機に巻き込まれてしまいました。
デザート目当てにアラブの石油王がホテルに投宿するというのに、当のデザート・
シェフが失踪してしまったのです。石油王の機嫌を損ねるとフランスへの石油供給
が断たれてしまうことに。

パンプルムースとは、フランス語でグレープフルーツのことだそうですが、フランス、グレープフルーツといえば、そうです、フランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』が思い浮かびますね。主人公が朝食にグレープフルーツしか食べずに、義理の母親に注意されてしまう場面がありました。あくまでも私的な推察ですが、作者ボンドはこの場面から…
などと、仏文学に造詣が深いことをにおわせながら、サガンとボンドとの比較文学論を展開したいところですが、すべてが思いつきなのでこれで限界です。
次回、グルメ犬ポムフリット(フライドポテトの意)について考察したいと思います。

でもって、面白かったところ。
パ氏が『ミシュラン』の調査員と疑われるも、車のタイヤがピレッリなので違うと
判断される。
ポムフリットの○しっこが入ったシャトー・ディムケ45年もののワインボトルの行方。
とても盛り上がるはずの肝心の救出劇の場面がまったく省かれているところ。
パ氏が女性の胸と勘違いしたものの正体。

これまでの作品よりまとまっている感じです。ドタバタは押さえられていますよ。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

「オールド・カントリーの殺人」エリック・ライト ハヤカワ文庫

2005-12-06

Tag :

☆☆

窓際中年更年期障害系ソールター警部の三作目だぞ。カナダ推理作家協会賞受賞。
夫婦そろって英国旅行していたカナダ警察のソールター警部は、交通事故に遭遇したため田舎の宿屋に宿泊することになる。そして、その宿屋の主人が殺害される事件に巻き込まれてしまう。被害者には過去の経歴に三十年間の空白があった。
今回はソールター警部がくよくよしないどころか、地元の警察から捜査協力をお願いされてしまうという意外な展開。

前ニ作はカバーがイラストだったのに、この本は、英国政府観光庁が提供した写真を使用しています。鴨なんかが写っているのどかなイギリスの田舎の風景写真なんですが、本の内容は天気が悪いとか、大衆相手に商売する人間は、善意の固まりでサーヴィス精神旺盛のトウィ-ドルダムと、金目当ての豚野郎のトウィ-ドルディーの二面性があるとか(「不思議の国のアリス」の登場人物らしい)、あんまり良いことは書いてないです。被害者の過去を探るために行ったイタリア・フィレンツェのことはすごくほめてるのとは大違いです。たぶん、作者の主観がかなり入っているのだと思います。
スコットランドヤードの介入さえ嫌う地元警察(所轄つうんですか)が、他国の警察の警部に捜査協力なんてしないよな、など思いました。登場人物は魅力的なのに、ミステリは
地味な感じです。

クリスマスに関連した本を紹介しようと思って、読みかけたミステリを二冊とも挫折してしまいました。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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