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「カポーティ短篇集」トルーマン・カポーティ ちくま文庫

2006-04-30

Tag : 短編集

☆☆☆☆

12編が収められた文庫オリジナル短篇集。初訳の「楽園への小道」を収録。
その他の作品は、「ヨーロッパへ」「イスキア」「スペイン縦断の旅」「フォンターナ・ヴェッキア」「ローラ」、「ジョーンズ氏」「もてなし」「窓辺の灯」「くららキララ」、「銀の酒瓶」「無頭の鷹」。どれも完成度の高い作品ばかりですが、収録順に違和感を覚えました。初訳の作品を巻頭に持ってきたかったのは分かるけれど、「楽園への小道」は、(『犬は吠える』に収められている)「ヨーロッパへ」以下五編の後に載せたほうが良かったと思うな。

「楽園への小道」
妻の墓参りにきた中年男が見知らぬ女に話しかけられる。女の微妙に無気味な存在感。漠然とした不安を読み手に与えながら、亡き妻や女に対する男の心の動きを上手く描いていると思います。最後のオチがだめ押し的に効いてます。

「ヨーロッパへ」
城の庭園で見た竪琴を弾く若者とそれを聴く三人の老人たちの情景が、「ぼく」の中にあるイメージどおりのヨーロッパだとしたら、アメリカ人的気安さで知り合ったイタリア人女性にストーカーまがいの行為で悩まされ、逃げるように旅立つ羽目になったのもまた現実(その女に受けた仕打ちと最後に発せられた言葉との矛盾が象徴的なのですが)であり、そのギャップに戸惑っている話。 

「イスキア」
カポーティが、「六月五日。午後は白い真夜中だ。」と書く、イタリア、イスキア島の滞在記。
「スペイン縦断の旅」
古ぼけた列車による旅の途中で起きたある事件。主人公が最後に言われた言葉が可笑しい。とにかく、この人のこの描写は二六歳にしてヘミングウェイを超えていたのでは。
「フォンターナ・ヴェッキア」
これもシチリア島タオルミーナ滞在記。躾のためという名目で、兄が妹に暴力を振るうシチリアの習慣に困惑する「ぼく」を通して、文化の相違を伝えようとしているのでしょうか。「イスキア」にしても、散文風な記述が美しいです。
「ローラ」
クリスマス・プレゼントに貰ったカラスに対する主人公の感情の変化。作者が示唆し、読者が予感する悲劇的な結末と比べて、あまりにも微苦笑を誘うラストシーン。

「ジョーンズ氏」
目と脚が不自由なジョーンズ氏が行方不明になり、十年後に現れた場所と様子は…。意外性にとんだショート・ショート。

「もてなし」、「銀の酒瓶」
共にイノセントもの。訳者の河野一郎さんは、「《陽のあたる》部分」とか「《明るいカポーティ》と《暗いカポーティ》」と表現していますが、カポーティ自身は、インタビューのなかでこのラベリングを否定しているようです。

「くららキララ」
『あるクリスマス』と『クリスマスの想い出』との間に感じられるように、イノセントものの中にも微妙な差、あるいは《陽のあたる》部分にも微かな陰影があると思いますが、この作品は『あるクリスマス』側に振れている作品だと思います。わたしには、この系統の作品が一番カポーティの心情を素直に表現しているように感じますが…。
「窓辺の灯」
猫好きだった作者が猫好きな老婦人を描いた作品。小道具が効果的。
「無頭の鷹」
あとがきに、「音痴には聞こえないだろうが、この作品にはある独特なリズムがある」と、作者自身の解説が引用してあります。わたしはこの手の作品は苦手です。もしかしたら音痴なのかもしれません…。すこしショック。

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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