「遥かなるセントラルパーク」トム・マクナブ 文春文庫

2006-07-31

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☆☆☆☆

元オリンピック選手も失業労働者も、イギリス貴族もインディアンも、さらにはバーレスクの踊り子まで、世界60カ国から2,000人が馳せ参じた大賞金ウルトラマラソン。ロスーニューヨーク間5,000キロ、3カ月の行程にどんな冒険と人間ドラマが待つのだろう?これぞ“面白い”小説の見本と激賞された気宇壮大、爽かな感動を呼ぶ傑作。
                     上巻あらすじより



とりあえず読んでいる途中でなんだか走り出したくなりました。

有名な陸上競技のコーチであった作者が、実際に行われたアメリカ大陸横断マラソンに着想を得て書いたフィクションだそうです。第二次大戦前、何がしかの事情を抱えたランナーたちが賞金やプライドを懸けて長距離マラソンに挑み、その行程の中で様々な妨害や資金不足、自然現象との戦いなどに苦しみながらも走り続けるというストーリーです。

このような話はアメリカ人作家が書いたらもっとベタで大甘な歯の浮くような話にしてしまうところでしょうが、作者はイギリス人(特にスコットランド人のためか)なので結構抑制されていると思います。確かに、ありえないエピソードも数々ありますが、労働争議などの時代背景を織り込んだりしたりして、あっけらかんとしたハリウッド的ストーリー展開ではありません。ただ全般的にいい人ばかりが登場していて、悪役のキャストに欠けるのが物足りなかったような気がします。興行主のフラナガンがもっと血も涙もない嫌なやつだったら話に締まりが出たかもしれません。

遥かなるセントラルパーク〈下〉 遥かなるセントラルパーク〈下〉
Tom MacNab、飯島 宏 他 (1986/08)
文藝春秋

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「シャイニング」スティーヴン・キング 新潮文庫

2006-07-30

☆☆☆☆

《景観荘》ホテルはコロラド山中にあり、世界で最も美しいたたずまいをもつリゾート・ホテルのひとつだが、冬季には零下25度の酷寒と積雪に閉ざされ、外界から完全に隔離される。そのホテルに一冬の管理人として住みこんだ、作家とその妻と5歳の少年。
が、そこには、ひそかに爪をとぐ何かがいて、そのときを待ち受けるのだ!
                    上巻あらすじより



キング初心者のわたしが読んだ長編二作品目です。
気になったのは、登場人物の動作や言葉、イメージを反復し、それによって執拗に読者の意識にそれらを刷り込んでいく方法です。たとえば、ジャックについていえば「手のひらでくちびるを拭う」という生理的に不快感を与える仕草や「おまえは癇癪を起こした」という感情が爆発することを予感をさせる独白の繰り返し、感情がたかぶるとアルコールを一杯飲みたくなる元アルコール依存症の衝動など。
ジャックの不安定な気持ちを表現し、読む者の不安感を煽る上手いやり方だと思いました。なかなかここまで徹底してやる作家はいないのではないでしょうか。

『呪われた町』のマークに続いて五歳のダニーの早熟ぶりに少し違和感が…。

シャイニング〈下〉 シャイニング〈下〉
Stephen King、深町 真理子 他 (1986/11)
文藝春秋

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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

平田桃子さんに意見する

2006-07-28

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【ファンキー通信】ツバメの巣撤去で有名ホテルが謝罪!
 新宿から小田急ロマンスカーで1時間30分で行ける箱根。温泉地で有名な箱根は、週末に行くプチ旅行にはピッタリだ。そんな癒しの地、箱根を代表する有名なホテル「箱根ホテル」のWebサイトにこんな謝罪文が掲載された。
 「ホテル外壁看板取付工事の実施に際し、燕の巣を撤去したところ、『鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律』に抵触する行為と関係当局より指摘を受け、現在、警察等の調査に協力しております。(略)・・・この度の事態により、燕の保護にご対応下さった関係者の皆様、日頃ご利用いただいておりますお客様、ならびに関係官庁等の多くの方々に対し、改めて心から深くお詫び申し上げます」
 えぇ!? ツバメの巣を撤去して謝罪文? しかも警察の調査? どうやら、客からの「糞が汚い」という苦情を受けていたことや、外壁に看板を取り付ける都合で、子育て中だったツバメの巣を片っ端から撤去してしまったというのだ。しかもまだ、抱卵中だった卵と生きているヒナ40羽ほどを無惨にも裏山に捨ててしまったらしい。
 この有名ホテルの冷酷な行動は、「箱根&芦ノ湖の環境問題を考えるブログ」によりすぐに知れ渡り、しまいにはホテルにTV取材がくる始末。ホテル側は慌てて、謝罪文を掲載したというわけだ。
 まだ小さなヒナを捨てるなんて可哀そう・・・という声はもちろんあるが、ホテル周辺はヒナの産卵時にすごい悪臭が漂っていたそう。「うげっ!」とくる糞の匂いは、休みを利用して癒されにきた私たち観光客からすれば迷惑なこと。その証拠に利用客からの相当な数の苦情が寄せられていた。謝罪文の最後はこう締めくくられている。
 「この事態を厳粛に受け止め、かかる法令の理解と自然愛護の精神を深めると同時に、鳥獣保護活動等への支援を通じて、皆様の信頼回復に全力で取り組んでまいります」
ヒナの命を大切にすべきだったか、観光客の快適さを大切にすべきだったか。あなたはどう思いますか?(平田桃子/verb)
■関連リンク
箱根ホテル - 謝罪文を出した「箱根ホテル」のWebサイト
2006年07月27日22時37分 ファンキー通信 / 提供元一覧
以上、livedoor’NEWSより転載。



一連の報道を見る限り、当然ホテル側の対応は非難されてしかるべきものですが、反省し謝罪している以上これからの対応を見守るべきだと思います。しかし、見過ごせないのは、時代錯誤な二者択一的選択を迫る記者の貧弱な発想によって書かれたこの記事です。有力なポータルサイトにリンクする記事に、これほど見識のない考え方がいまだに存在しているのかと唖然としました。「私たち観光客」と書いているのでホテル側寄りなのでしょうが…。
ツバメは主に夏に繁殖し冬には東南アジアに渡る渡り鳥です。繁殖する際に既存の巣を使用する習性があるので、もし巣が迷惑ならば巣がからっぽな冬期に巣を壊し、また、新しい巣を作りそうな場所にはネットを張るなりしてツバメを近付けないようにするという方法があります。それにも関わらずこの記事のように「ヒナの命」か「観光客の快適さ」かなどと、次元が違う上にどちらを選んでもマイナスの結果しか残さないような時代遅れな選択を迫るこの記者は一体どれくらいの認識を持っているのでしょうか?「ヒナの産卵時」などという意味不明な文章しか書くことができず、物事の表層しか見れないこの平田さんには猛省を促したいです。

テーマ : 気になるニュース
ジャンル : ニュース

「料理人」ハリー・クレッシング ハヤカワ文庫

2006-07-11

Tag :

☆☆☆☆

平和な田舎町コブに、自転車に乗ってどこからともなく現われた料理人コンラッド。町の半分を所有するヒル家にコックとして雇われた彼は、舌もとろけるような料理を次々と作りだした。しかし、やがて奇妙なことが起きた。コンラッドの素晴らしい料理を食べ続けるうちに、肥満していた者は痩せはじめ、痩せていた者は肥りはじめたのだ……。悪魔的な名コックが巻き起こす奇想天外な大騒動を描くブラック・コメディの会心作。 
                      あらすじより



コンラッドのラストシーンの姿を見る限り、彼は悪魔というより、美食のために悪魔に魂を売り渡した人間のような気がします。そこには食欲という欲望を追い求めた人間の醜さが現れているような…。後半以降はストーリー展開が読めて少々冗漫な感じもしますが、かなり奇妙で無気味な名作であることには間違いありません。

小林信彦氏は、「日本人はケータイと〈食〉にしか興味を持っていないのではないか。」(『物情騒然』文芸春秋)という達見を数年前に示しましたが、まだまだ日本人は甘いのではないでしょうか。本書にもありますが、たくさん食べるためにわざと嘔吐した古代ローマ人の健啖家、美食家ぶりのレベルにはまだまだ追い付いていないし、マスコミに取り上げられるグルメ料理も単品中心ですよね。ヨーロッパの晩餐のように延々と何時間も続く食の饗宴(質と量を共に兼ね備えた)、それに興じることのできるマナーを持った人間がいる食文化は日本には未だ存在していないと思います。しかし、それが日本において普通になった暁にはこの寓話も現実味を帯びることでしょうね。

料理人 料理人
ハリー・クレッシング (1972/02)
早川書房

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「囁く谺」ミネット・ウォルターズ 創元推理文庫

2006-07-06

Tag :

☆☆

食料の詰まった冷凍庫を目の前にしながら飢え死にしていた、身元不明の浮浪者。
ある裕福な家のガレージに潜りこんだその男は、死後五日にしてようやく発見されたのだった。この事件の取材に訪れたマイケルは、家の女性から意外な話を聞かされる。
彼は自ら餓死を選んだのに違いないというのだ。なぜ餓死?なぜこの家で?だが、それよりも不可解なことは、彼女が死んだ男に強い関心を抱いていることだった。興味を引かれたマイケルは、この浮浪者の素性を調べ始める。二人の間に、どんなつながりがあるというのだろうか?             あらすじより



ミネット・ウォルターズといえば、良くも悪くも徹夜本の印象があって、本書にもそういう面白さを期待していましたが……、全く期待外れ。
女性作家が男同士の交流なり友情なりを描く時に、勘違いして美化し理想化してしまうという往々にして現れる欠点が出ていると思います。四十二歳にしては青臭くて年相応とは思えないマイケルをはじめとして、バリー、テリーの三人の関係についての妙に甘ったるい描写と会話は読んでいると恥ずかしくなりました。このあたりは翻訳にも責任の一端があると思います。
狂言まわしのようなテリー・ダルトンの存在もとても十四歳とは思えないし現実味がない。作者が頭の中で作り上げたような(まあ、小説なので当然なのですが)不自然な人物造形の印象を強く受けました。(登場人物の)人間関係についての脇の甘さは、この作者の特徴的弱点だと思うのですが…。

ウィリアム・ブレイクの詩を引きながらビリー・ブレイクの苦悩を強調したかったにしても、ウィリアム・ブレイクに無知なわたしにはとうてい無理というものです。
ただし、アマンダ・パウエルだけは存在感を示していました。

囁く谺 囁く谺
ミネット ウォルターズ (2002/04)
東京創元社

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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