「グリーン・ティーは裏切らない」ローラ・チャイルズ ランダムハウス講談社

2007-08-26

☆☆☆

チャールストンの夏の恒例行事といえば、ヨットレース。ゴール地点で開かれる「浜辺のお茶会」では、セオドシアも新作のミント・グリーンティーを振舞うのに大忙し。さあいよいよ、ゴールの号砲が撃ち鳴らされ―と同時に、銃が暴発!号砲係の資産家は即死。警察は事故と判断したが、セオドシアの謎解きの虫はむずむずと頭をもたげ……!?
焼きたてスコーンに夏向けブレンド。紅茶情報とレシピも増量したシリーズ第2弾  
内容紹介より



ミステリ小説としてはすべての要素がB級。しかし、作者もそのファンもそんなことはたいして気にしてないようなきもしますが…。というのも、作者の意図は《お茶》の普及と啓蒙にあるのではないのかと思ってしまうほどお茶についての記述に力が込められているからです。ミステリ作品とは仮の姿であって、それは実は《お茶》の布教のための一つの手段でありテキストに過ぎないのではないかと思ったりなんかして。

そのようなことなので、銃の暴発事故をすぐさま殺人事件と決めつけるセオドシアの根拠なき確信、ティドウェル刑事を自分の店に呼びつける何様な態度などの違和感を覚える場面もありますが、細かいことに一々こだわらないようにしましょう。きっと作者は《お茶》について書くのが楽しいのであり、その楽しさが読者にも伝わっているのでしょうから。


グリーン・ティーは裏切らない お茶と探偵(2) (ランダムハウス講談社文庫)グリーン・ティーは裏切らない お茶と探偵(2) (ランダムハウス講談社文庫)
(2006/04/01)
ローラ・チャイルズ

商品詳細を見る

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

「吠える男」エドワード・マーストン ハヤカワ・ミステリ

2007-08-24

Tag :

☆☆☆☆

時は十六世紀末、エリザベス朝のロンドン。町は天才科学者トマス・ブリンクロウが殺害され、首謀者の妻とその愛人、そして直接手を下した殺し屋の三人が絞首刑になったスキャンダラスな事件の話でもちきりだった。折しも劇団ウエストフィールド座の舞台進行係ニコラス・ブレースウェルのもとに《吠える男》と題する匿名の脚本が持ち込まれた。
それはブリンクロウ殺しで死刑になった妻とその愛人は冤罪で、実は無敵の騎士として勇名をはせる人物の陰謀であったことをほのめかす大胆なプロットだった。一読するやすっかりこれにほれこんだニコラスは上演を決意するが、その直後彼は暴漢に襲われ、劇団にも次々と災難が……はたして脚本の内容は真実なのか?そして匿名の作者の正体とは?
内容紹介より



ブレースウェルを主人公にしたシリーズものの一作だそうです。しかし、邦訳されているのは本書のみです。冒険活劇と呼ぶには少しスケールが小さめながら、時代設定や状況設定がともにユニークであって、普段読むことがない種類の時代ミステリだったので興味深かったです。かすかに“三銃士”の雰囲気もあるような、ないような。できればちゃんばらの場面が欲しいところですが、主人公は剣士じゃないので腕力より頭脳で相手を打ち負かす感じですね。劇団の座長や一癖ある俳優が出てくる場面はユーモラスで、ストーリー進行にも手馴れていて、まとまりも良く読みやすかったです。BBCで映像化されてもおかしくないような。ただ、ラストでのトマスの妹エミリアの告白には少々違和感を覚えました。果たして必要なのかな。

こういう目先の変わったミステリは希少なので他の作品も読みたいけれど、出版してはくれないでしょうね。


吠える男 (Hayakawa pocket mystery books (1645))吠える男 (Hayakawa pocket mystery books (1645))
(1997/02)
エドワード・マーストン大庭 忠男

商品詳細を見る

テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

「盗まれた街」ジャック・フィニイ ハヤカワ文庫SF

2007-08-24

☆☆☆☆

アメリカ西海岸沿いの一小都市サンタ・マイラに、奇怪なマス・ヒステリー現象が、めだたず、静かに進行していた。夫が妻を妻でないといい、親が子を、子が親を、友人が友人を、偽者だと思いはじめる。心理学者も医師も、これを、稀ではあるが時おり発生する集団的な心理錯覚だと考えていた。だがある日、開業医のマイルズ・ペンネルは、友人の家のガレージで奇怪な物体を見せられた。それは、人間そっくりに変貌しつつある謎の生命体―宇宙からの侵略者の姿だったのだ!奇才フィニイが、カリフォルニア州の小都市を舞台に、サスペンスフルに描く侵略テーマSFの傑作!内容紹介より



誰でも知っている地球侵略ものの古典的名作ですね。わたしは『人形つかい』、『トリフィドの日』、『呪われた村』なども読んでいないので、今回、手始めに本書を読んでみました。フィニイの作品は、いわゆる時間の経過による劣化が目立たないものが多いと思いますが、本書も五十年以上前の作品とは感じられませんでした。

ウエルズの『宇宙戦争』がエイリアンと人間との目に見える直接の対決だったのに対し、本書のエイリアンたちは戦わずして住人と置き換わり街を侵略していきます。街がじわじわと汚染される様子はキングの『呪われた町』を思わせます。外見のみならず仕草、過去の記憶に至るまで完全にコピーしてしまいますが、それでも、肉親、友人など親しい者は何かが今までとは違う気がしてしまう。この感覚は醜悪な外見をしたウエルズの火星人に対峙する以上に無気味に思えます。靴磨きのビリイのエピソードで語られるように、自分が良く知っていると思っていた気の良い人物の普段とはまったく違った陰の部分を覗き見してしまったような衝撃を主人公が受ける記述はすごく良く理解できます。人間の精神面を最重要視するフィニイの姿勢が描かれている作品に思えました。そして侵略者の弱点もまた…。それから、(エイリアンに語らせている)文明や環境破壊への批判も隠れたテーマとして含まれているように感じました。


盗まれた街 盗まれた街
ジャック・フィニイ (1979/03)
早川書房

この商品の詳細を見る

テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

「ドティおばさん、銀行に押し入る」C・クラーク・クリスクオーロ 集英社文庫

2007-08-11

Tag :

☆☆

ドティ、58歳、未亡人。ある日道で転んで骨折し、七週間入院したら失職した。年齢を聞いただけでどこも雇ってくれず、残ったのは病院の請求書だけ。ふと目にしたのが、強盗で捕まった重病人の優雅な看護付き独房生活、長年まじめに税金を納め、一人息子もお国のために戦死したのだ、わたしにだってリゾート監獄に行く権利はある!銀行を襲って逮捕され、国に老後の面倒を見てもらおうという無茶な計画はうまくいくのか?
内容紹介より



邦題から、明るくて豪快な下町のおばさんのドタバタコメディを想像していたら、ちょっとシリアスな内容でした。主人公のドティって性格明るくないし、だいたい誰も彼女を“ドティおばさん”とは呼んでないし。

58歳という年齢のために職に就けず、病気(骨粗鬆症)の治療方法に保険がきかない。こういう医療保険制度の不備や中高年の雇用問題を作者としては、ストーリーに絡めたかったみたいで、別の登場人物の場合も似たシチュエーション(こちらは家族問題付き)になっています。ただし、二人とも同じ状況だと芸がない感じ。

ドティが銀行強盗に使う拳銃を手に入れるために訪れた店で昔の恋人と巡り会う展開。なにも本物の拳銃でなくても良いと思うのですが。
なんとなくですが、その後の展開が少し洗練されていない中高年向けのハーレイクイン・ロマンスと言えなくなくもない…かもしれない。ハーレイクイン読んだことがないから分かりません。

銀行強盗つながり
『わたしにもできる銀行強盗』ジーン・リューリック


ドティおばさん、銀行に押し入る (集英社文庫)ドティおばさん、銀行に押し入る (集英社文庫)
(1997/05)
C.クラーク クリスクオーロ

商品詳細を見る

テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

「ダークライン」ジョー・R・ランズデール 早川書房

2007-08-04

☆☆☆☆

テキサスの田舎町デューモントに引っ越してきた私は、まだ13歳だった。父さんのドライヴ・イン・シアターで映画を観て、新しく出来た友達と遊び、姉とそのボーイフレンドを冷やかして、夏休みを過ごすはずだった。ところがある日、家の裏で犬と遊んでいた私は、地面に埋められていた古い手紙と日記の断片を発見する。それは思春期の少女が綴った恋の記録だった。さらにその先の森には、焼け落ちた屋敷の跡が黒々と聳え立っていた。好奇心にとらわれた私は、古い事件を調べてみた。そこでは13年前、火災で一人の少女が命を落としていたのだ。さらに奇怪なことに、同じ夜、町外れにすむ別の少女が、首無し死体で発見されていた。どちらの事件も真相ははっきりしないままだ。私と姉は、事件の真相を突き止める決心をするが…… 内容紹介より



前回の『ボトムズ』をMWA賞狙いの作品とするならば、本書はニューベリー賞狙いみたいな雰囲気を持った作品。こちらの主人公の少年も『ボトムズ』同様にお行儀がよくイノセントであり、“人種差別は間違ったこと”という訓戒が繰り返されていて、(もちろん人種差別は悪ですが)少々説教臭く感じる部分もあります。人種差別批判に力が入るのはランズデールの特徴か。ただ、少年の造形がこういうタイプになってしまう要因は、川本三郎さんが『フィールド・オブ・イノセンス』(河出文庫)で指摘したように、アメリカの男性作家たちのなかに「無垢」への過剰な思いや憧れの気持ちがあるからなのか、彼等が描く少年小説の主人公は皆似た傾向になるのかもしれません。
また逆に、そのステレオタイプをランズデールが脱することが出来るなら、この少年を主人公にしたジャンルにおいてもう一皮むけてものすごい傑作をものにできるのではないかと思った次第です。


ダークライン (Hayakawa novels)ダークライン (Hayakawa novels)
(2003/03)
ジョー・R. ランズデール

商品詳細を見る

テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF クリスマス・ストーリー アンソロジー ルース・レンデル アーロン・エルキンズ スティーヴン・キング デイヴィッド・ハンドラー キャロリン・G・ハート ジョー・R・ランズデール ローラ・チャイルズ マイクル・クライトン ジョアン・フルーク ジョージ・P・ペレケーノス ドン・ウィンズロウ ポーラ・ゴズリング ジェームズ・パターソン エド・マクベイン ジェイムズ・パタースン ジル・チャーチル ヘニング・マンケル C・J・ボックス ローレンス・ブロック リチャード・マシスン D・M・ディヴァイン レジナルド・ヒル スチュアート・ウッズ リリアン・J・ブラウン ジャネット・イヴァノヴィッチ ピーター・ラヴゼイ パーネル・ホール アリス・キンバリー レックス・スタウト S・J・ローザン ジョルジュ・シムノン ジョー・ゴアズ マーガレット・ミラー ウィリアム・カッツ クレオ・コイル カール・ハイアセン レスリー・メイヤー アイザック・アシモフ ヒラリー・ウォー エド・ゴーマン カーター・ディクスン マイケル・ボンド ルイーズ・ペニー マーシャ・マラー ジェフリー・ディーヴァー ジョン・ディクスン・カー リタ・メイ・ブラウン ジェームズ・ヤッフェ イーヴリン・スミス ジャック・カーリイ キャロリン・キーン ウィリアム・L・デアンドリア コリン・ホルト・ソーヤー ローラ・リップマン フレッド・ヴァルガス ポール・ドハティー ロブ・ライアン ジェフ・アボット G・M・フォード エヴァン・マーシャル オーサ・ラーソン ジョアン・ハリス サイモン・カーニック リン・S・ハイタワー ドナ・アンドリューズ ファーン・マイケルズ アンソニー・ホロヴィッツ ジャン=クリストフ・グランジェ スタンリイ・エリン レイ・ハリスン ケイト・ロス アンドレア・カミッレーリ レニー・エアース ジョン・クリード コニス・リトル デイヴィッド・マレル クリスチアナ・ブランド ウイリアム・P・マッギヴァーン ウィリアム・ランデイ ジャック・フィニイ リック・ボイヤー サキ ジェーン・ラングトン ユージン・イジー ウォルター・モズリイ アン・クリーヴス ビリー・レッツ イーサン・ブラック ダナ・レオン エーリヒ・ケストナー ウォルター・サタスウェイト スタンリー・エリン ポール・ドハティ トバイアス・ウルフ 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント