ラリー・バラッドは、DKA探偵事務所の所員である。この事務所は、代金未払いのままになっている車を、債権者の依頼を受けて持主から引き上げるのを主な仕事にしている。ある日、同僚のバートが、何者かに棍棒で殴られ、引き上げてきたばかりのジャガーごと崖から落とされるという事件が起きた。そして、バートが保管していた書類の一切が盗まれていることも判明した。彼が接触したうちの何者かが、バートを殺して書類を破棄しようとしたことは明らかだ。いまバートは瀕死の床にあり、事務所はジャガーの引き上げ依頼人から多額の損害賠償を求められ、危機に陥った。所長のカーニイは犯人探しをバラッドに命じた。それも72時間内という制限つきで……。内容紹介より
代金を支払えない、支払わない者から車を回収する仕事は、様々な事情を抱える多種多様な人間を相手にしなければならないため、作家、読者とも非常に興味を引かれる設定でしょう。元私立探偵の経歴を持つ作者だけあって良いところに目を付けたものです。しかも、72時間の制限時間を設けるとともに、多くのハードボイルドに見られる当てもなく(わたしにはそう思える)うろついているうちに都合良く事件が解決してしまうパターンではなく、六人の容疑者を本格物みたいに最初から列挙していて分かりやすい構成になっています。
無駄を排した描写と軽快な展開、語り口がとても読みやすい。ネオ・ハードボイルドの主人公たちに往々にしてみられる〈心の傷〉や〈陰影〉みたいなものが本書の探偵たちには見受けられません。彼らが多かれ少なかれ一様にプロに徹して脆い面を見せないのは、元私立探偵だったゴアズの矜持なのかもしれません。想像ですけど。
ただ、後半展開が読めてしまうのはちょっと残念なところ。
![]() | 死の蒸発 (角川文庫 (3222)) (1974/07) 村田 靖子、ジョー・ゴアズ 他 商品詳細を見る |
