新兵器のテストのさなか、NATOの実験機がソ連のスパイにハイジャックされた。乗組員がなんとか機を奪還したものの、ミグの攻撃を受けて大破、ソ連・トルコ国境にまたがるD13峰の頂上に墜落してしまった。西側は新兵器を爆破すべく、また東側は新兵器の奪取をめざし、それぞれ精鋭の登山隊を送りこむ。人跡未踏のD13峰。その極寒の地獄で、いま決死のサバイバルが始まった。内容紹介より
初版は1971年。作者はあの『ヒルダよ眠れ』を書いたひとなので意外です。なぜならなんと本書は山岳冒険小説だから。山登り小説=冒険小説の単純な公式が成り立つ傾向があるのではないかと勝手に想像してしまいますが、しかし、山岳小説とはようするに急勾配の坂道を上って下ってくるだけの話なわけで、それにクレバスとか雪崩、落石などの自然現象が加わるだけで、あまりバリエーションが豊富じゃないし、それ以外の要素を付け加えにくいからどれも似たような話になりやすいのも事実です。
本書の登山部分は、わたしごとき素人が読んでもまじめでかなりしっかりした小説だと感じるけれど、冒険に関してはやはり目を引くところがありません。これより三年後に出版されたトレヴェニアンの『アイガー・サンクション』がより娯楽小説として成功しているのはその辺の違いなのでしょう。
KGB職員の描き方は相変わらずですが、ソ連については結構公平な見方をしているように思いました。ソ連のその後を予見するような政治体制の流動性について言及している箇所があって面白い。冒険小説といえば、どうしてもイネス、バグリイ、マクリーンを先に読んでしまっているから、本書みたいに年数を経た内容がおとなしい作品は今読まれると不利ですね。
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