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『影の王国』 アラン・ファースト 講談社文庫

2008-10-16

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☆☆☆☆

パリに住むハンガリー人モラートは、二つの顔を持っていた。ひとつは広告代理店の共同経営者、もうひとつは秘密活動を行うスパイである。第2次大戦開戦直前のパリで、優雅な暮らしを満喫しながら、一方でヒトラーに抗い、祖国を守ろうと暗躍した男の姿を描いた傑作スパイ・スリラー。ハメット賞受賞。  内容紹介より



長編と思っていたら連作短編集でした。冒頭で殺人や人捜しの依頼などの具体的な出来事が起きるわけではないので読み始めは少々かったるいです。ミステリ刺激過多症の症状ですね。みなさんも注意しましょう。

まだ、CIAやKGBは存在していない時代設定なので、スパイ・スリラーというより密偵譚のようなどことなく古風な雰囲気を感じさせるとともに、主人公の良い意味での素人っぽさが西欧の伝統的冒険譚を想わせます。命令系統が貴族である伯父のみであることで、主人公がスパイ組織の一員との感じを与えず、いわゆる密使の役割とも言えること、そして伯父からの指令に主人公が振り回されているようにも見えるため、前述のような巻き込まれ型冒険譚の印象を受けるのかもしれません。
なので主人公の年齢が四十歳代なのは残念です。二十代後半から三十代前半の設定にして成長小説の側面をあわせ持っていたらさらに優れた作品になったのではないかと思うのです。同じような時代設定の冒険小説でいうなら、S・ハンターの『さらば、カタロニア戦線』みたいな。

ヒトラーの台頭と大国に翻弄される小国の悲哀、第二次世界大戦前の重苦しい空気を描き出している本書はミステリの範疇に留まらず文学作品の様相を呈していますが、そこらあたりの事情は訳者あとがきで黒原敏行さんが触れられていて参考になりました。
そういえば、本作品はストーリーこそ違いますが、ヘミングウェイの短編「十字路の憂鬱」(『何を見ても何かを思いだす』収録)を想起しました。



影の王国 (講談社文庫)影の王国 (講談社文庫)
(2005/08/12)
A. ファースト

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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