『翡翠の家』ジャニータ・シェリダン 創元推理文庫

2008-12-29

Tag :

☆☆☆

「部屋求む。ルームメイト応相談」ニューヨーク二来たものの、住みかにさえ不自由している新人作家ジャニスが出した個人広告。それを見て連絡をくれた中国系女性リリー・ウーと一緒に引っ越したのは、ワシントンスクエアの元実業家邸、今はアーティストたちが住むアパートだ。が、入居するや不審事が続き、さらには殺人事件が! 犯人は住人の中に? コージー・ミステリ第一弾。 内容紹介より



物語のほとんどがアパートの中で起きて、犯人も入居者のなかにいるという設定は、わたしが思うコージー・ミステリとはちょっと違いますが、これもコージーなのでしょう。
少々エキセントリックながらも、アパートの唯の住人たちと思われた登場人物たちが物語が進むにつれ、実はそれぞれ訳ありな事情を抱えていた、という展開は個人的に好きです。ちょっと残念なのは、語り手である主人公が新人作家の設定にもかかわらず、小説や自分の作品について語らないことです。小説を書かずに、買い物したりエステに行ったりして小説を書いている様子が全く見られません。だから彼女のキャラクターに魅力が足りない印象を持ってしまいます。そのため容姿端麗で行動的でミステリアスな設定の中国系女性が目立ち、読者の関心が二分されるような気がします。他の作品もホームズとワトスンみたいなものになっているのでしょうか。どちらかと言えば女性読者向き。



翡翠の家 (創元推理文庫)翡翠の家 (創元推理文庫)
(2006/06/10)
ジャニータ・シェリダン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『おばけ桃が行く』ロアルド・ダール 評論社

2008-12-26

Tag :

☆☆☆

両親をなくし、ぐうたらで意地悪な二人の叔母に引き取られたジェイムズ少年の毎日は、つらくて悲しいことばかり。そこへ、奇妙な老人があらわれて、奇妙なプレゼント。ある日、庭の桃の木に、りっぱな実が生って、みるみるうちに家の一軒ほどの巨大桃になり、中にいたのは、これまた巨大で不気味な虫が七匹……。やがて、ジェイムズ君と虫たちを乗せた巨大桃は、木から離れ、断崖から海に飛びこみ、はるかな冒険の旅に出発した! 内容紹介より



たぶんダールの悪ふざけのみの一応主題は冒険と友情の話。
虫の冒険談といえば、ロフティングの短編集『ドリトル先生の楽しい家』に収録されている名作「虫ものがたり」を思い浮かべます。しかし、あの作品のように冒険譚を全面に出したものではなく、ドタバタ色を強くした、主人公の少年や虫たちとの話のやり取りを楽しむ作品です。『チョコレート工場の秘密』に通じるダールの発想の奇抜さがよく現れていると思います。おばけ桃が辿り着いたのはアメリカなのですが、ダールの児童文学を装った諸作品が持つ単純さ、分かり易さってとてもアメリカ的だなと感じました。イギリスの作家にしてはストレートだと思います。最初に登場したキーパーソンである「奇妙な老人」に対する作者の放り投げっぷりがダールらしいとも言えますが、物語の最後にでも彼の正体を明かすなりしても良かったでしょうに。荒唐無稽な作品に荒唐無稽な「訳者から」をあとがきに付ける柳瀬氏がちょっとウザイ。勝手に登場人物にインタビューするな。



おばけ桃が行く?ロアルド・ダールコレクション (1)おばけ桃が行く?ロアルド・ダールコレクション (1)
(2005/04/30)
ロアルド・ダールクェンティン・ブレイク

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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

『招かれざるサンタクロース』J・D・ロブ ヴィレッジブックス

2008-12-24

☆☆

近づくクリスマスに華やぐニューヨークで、残虐な連続レイプ殺人事件が発生。不可解なことに、被害者の顔には入念な化粧が施され、“わが真実の愛”という文字が体に記されていた。セキュリティカメラの記録から判明したのは、犯人がサンタクロースの扮装をし、プレゼントの配達人を装っていたこと。イヴにとって、レイプ事件は自らの辛い過去を想起させるものだった。被害者たちが味わった恐怖と苦痛をわがことのように感じつつ、彼女は犯人を追う。そんなイヴを理解し、その心を癒せるのはロークだけだった……。 内容紹介より



ロマンス小説の人気作家ノーラ・ロバーツが別名義で贈る〈イヴ&ローク〉シリーズの七作目だそうです。

○…主人公が少女の頃のある出来事により心の傷を負っていること。主人公の夫もストリートチルドレンだったらしくて、クリスマスの祝い方も知らない、共に不幸な子供時代を過ごしている。この要素がなければ、この作品はただのアメリカン・コミックの亜流になってしまうところでした。

△…時代設定を2060年代にしている必然性が見当たらない。ただし、他の巻では意味があるのかもしれませんが。アンドロイドを作り出しているわりに、科学捜査の部分が現代の技術と較べてほとんど進化していない不自然さ。他の惑星を開発した記述や空飛ぶ自動車(?)みたいな物に乗っているシーンはあるけれど、SFを読んでいるような高揚感が感じられない、物珍しさのみを狙ったなんちゃってSFか。
 
X…主人公以外の主要登場人物の類型化と馴れ合いが煩わしい。特に主人公の部下は、主人公の夫がいかにセクシーで素晴らしいかを読者に伝える役を担っており、造形が浅すぎて白々しい感じがします。そんな眉目秀麗な夫は、ビル・ゲイツみたいな超大金持ち。いるのか?そんな奴!

X…主人公夫婦の頻繁なラブシーン。この擬似SF風「ロマンティック・サスペンス・シリーズ」の“ロマンティック”の部分は飛ばし読みしても一向に不具合は生じません。

X…今から50年後でもこれを使うのか、と言いたいくらい犯人の動機が陳腐。事件解決が場当たり的。



招かれざるサンタクロース (ヴィレッジブックス F ロ 3-7 イヴ&ローク 7)招かれざるサンタクロース (ヴィレッジブックス F ロ 3-7 イヴ&ローク 7)
(2004/12)
J.D.ロブ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クリスマス・プレゼント』ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫

2008-12-18

☆☆☆

スーパーモデルが選んだ究極のストーカー撃退法、オタク少年の逆襲譚、未亡人と詐欺師の騙しあい、釣り好きのエリートの秘密の釣果、有閑マダム相手の精神分析医の野望など、ディーヴァー度が凝縮されたミステリ16作品。リンカーン・ライムとアメリア・サックスが登場する「クリスマス・プレゼント」は書き下ろし。 内容紹介より



この短編集は六月末に読んで感想はクリスマスシーズンにでも書こうと思っていたら当然内容のほとんどを忘れておりました。16作品中、ストーリーがおぼろげに記憶に残っているものは、「釣り日和」と「クリスマス・プレゼント」のみです。いくら娯楽小説といえども、この自分の脳のメモリ量の少なさとフォーマットの速さはさすがに情けないです。次から次にミステリ小説を読んでも端から忘れてしまうなんて記憶障害を負っているみたいで唖然とします。厳選した300冊くらいのミステリ作品を十年ほど繰り返し読んだほうが良いのではないだろうかと真剣に考えてしまいました。

まあ、しかし一方、記憶に残らない作品しか書けない作家も…以下略、と居直ってしまいますが、この作家は、ジェフリー・ディーヴァーとウィリアム・ジェフリーズの二つの顔を持っていて、当然ここに収められた諸作品の作風も〈リンカーン・ライム〉系と〈ジョン・ペラム〉系とに分けられると思います。前にも書きましたが、この人は長編向きですね。




クリスマス・プレゼント (文春文庫)クリスマス・プレゼント (文春文庫)
(2005/12)
ジェフリー ディーヴァー

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『スキッピング・クリスマス』ジョン・グリシャム 小学館文庫

2008-12-16

☆☆☆☆

リーガルサスペンスの巨匠ジョン・グルシャムが、ハート・ウォーミングなホームコメディに挑んだ異色作。 感謝祭直前、会計士ルーサーとその妻ノーラは、海外ボランティアに行く一人娘を見送り、ふたりきりになった。これを機にルーサーは、今年はクリスマスを「スキップ」しカリブ海旅行に出かけようとノーラに提案する。だが、この決断は町中に大きな波紋を投げた。各種寄付金は? 恒例のパーティーは? 町内一丸のクリスマス・コンテストはどうする? 数々の妨害やプレッシャーをはねのけ、明日は出発というクリスマスイブの朝、大騒動が……。 内容紹介より



わたしは、グリシャムのリーガル・サスペンス初期作品におけるキャラクター造形の浅薄さが嫌であまり読んでいません。しかし、この作品ではそういう傾向がだいぶ軽減されていると思いますし、いつもは鼻に付くまるで映画化を前提にしたかのようなハリウッド的エンタメな作風が、ここではプラスに働いていると思います。読んでいる途中、これまで観たアメリカ映画のクリスマスシーンが頭に浮かび、まるで出来の良いレンタルDVDを一枚観ているような気がしました。この物語の特徴は、クリスマスをスキップしようとするルーサーとそれを阻止しようとする近隣住民たちのどちらの言い分ももっともな点です。誰が良い悪いではなく、どちらかが相手に屈服してしまうのでもなく、共に痛み分けの結末が読後感を良くさせています。ルーサーを「スクルージ」化したり、あるいは町民たちを集団主義の集まりにしたりすることは簡単だったでしょうが、あえてそれをせずあくまでも中庸でバランスのとれた作者の描き方は好感が持てます。ややグリシャムを見直しました。

ボランティアとして南米へ旅立った娘のその後の顛末には、作者のシニカルさを感じました。



スキッピングクリスマス〔文庫〕 (小学館文庫)スキッピングクリスマス〔文庫〕 (小学館文庫)
(2005/11/05)
ジョン グリシャム

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『クリスマス12の死』マリアン・バブソン 扶桑社ミステリー

2008-12-14

☆☆

クリスマス近いロンドンでは毎日のように、奇妙な殺人事件が起こっていた。新聞販売店の老婦人、薬屋の店員、駅で地下鉄を待つ女性。みな手近にあるものを凶器として殺されていた。被害者に一貫性はなく、物盗りでもない。犯人はただ衝動的に殺人をくりかえしているのだ。「切り裂きジャック」の再来か、と警察は色めきたつが、手掛かりはない。 さて、ロンドンはベーカー街にある下宿屋。この下宿に関係する、狂気にとりつかれた謎の人物「私」がどうやら、この一連の殺人事件の犯人らしいのだが―? クリスマスまでに十一人が殺された。そしてパーティの席できらきら光る肉切りナイフに手をのばしたのは、だれ? クリスティにありそうな、にぎやかな下宿を舞台に、ルース・レンデルばりの異常心理を軽快に描いた、楽しくてこわい傑作クリスマス・サスペンス! 内容紹介より



主に「私」、アイリス、警視の三人の視点から描かれるサイコ・サスペンス。下宿屋の女主人とそこに下宿する計八人の誰が連続殺人犯なのか?というところに興味を引かれます。しかし、登場人物のすべてに読者が疑いを持つくらいのミスリードをしていない甘い設定のせいで、息苦しくなるほどのサスペンス性はありません。警察の捜査が犯人に迫って来なかったり、犯人の正体が判明した後の展開がややあっけなかったりともの足りなさを感じます。訳者の片岡しのぶさんが「ホリブルな連続殺人事件をあつかいながら、全体の雰囲気はいたってユーモラス」と書いているように、これが作者の持ち味らしいです。ほとんど下宿屋の狭い空間で物語が進み、狂言回し役のアイリスと下宿人たちが入れ代わり立ち代わり絡む場面が主なので舞台劇に向いていそうです。

この内容で252ページの小品ですから、この時期あまり重くて長い作品は読みたくないと思っている方にはちょうど良いかもしれません。



クリスマス12の死 (扶桑社ミステリー)クリスマス12の死 (扶桑社ミステリー)
(1988/11)
マリアン バブソン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺意のクリスマス・イブ』ウィリアム・バーンハート 講談社文庫

2008-12-12

☆☆☆

孤独な女弁護士メガンを訪れた美女マギー。息子に会わせろと暴れるアル中の元夫が子供に近づけぬよう、法的処理をしてほしいという。しかも元夫には家庭内暴力、毒殺未遂の前歴が! 同僚がイブで休む中、メガンの運命は劇的な変貌を遂げていく。素敵な奇跡の行方を描く、ハートウォーミングなサスペンス。 内容紹介より



C・SにはH・W、これ基本です。ただ、H・Wなサスペンスだとぉ!と思った方もいるでしょう。C・Sにしては確かに悪役が鬼過ぎて洒落になりませんし、サスペンスにしては類型的でシンプルな悪党ぶりですが、譲るところは譲りましょう。そこを大目に見れば、ちょっと掘出しものです。それは話がこちらの予想とはまったく違う展開を見せるからです。それと小道具としてのC・Pの使い方が上手いところ。十九世紀の高価な絵皿がポーカーをしているブルドッグの絵に、それがバランスボール(衝突玉)からマウス・ウォッシュ、『理想の恋人をゲットして逃がさない百の方法』本、バス型レコードプレーヤー、〈マイティ・ムービング・ディノ・ファイター〉へと、主人公のC・Pが贈り贈られて変わっていくエピソードがクリスマスらしくて楽しいです。
ただ、主人公のある人物への印象が、あまりにも急に変わり過ぎる様子はやはり不自然に感じてしまいます。なにかしら別の説明付けがあったほうがいいような気がしました。

C・S…クリスマス・ストーリー、H・W…ハート・ウォーミング、C・P…クリスマス・プレゼント



殺意のクリスマス・イブ (講談社文庫)殺意のクリスマス・イブ (講談社文庫)
(2002/11)
ウィリアム バーンハート

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クリスマス12のミステリー』アシモフ 他編 新潮文庫

2008-12-10

☆☆☆☆

ジングルベルのメロディーが流れ、樅の木の飾り付けが終り、ケーキも用意して、あとはサンタの小父さんを待つばかり。でも、油断してはいけません。犯罪者は、クリスマスだからってお休みしたりしないから……。ユーモア・ミステリーから本格密室殺人まで、聖誕祭にまつわる12編をDr.アシモフが精選。ミステリー・ファンのための、知的で素敵なクリスマス・プレゼント。 内容紹介より



クリスマス・パーティ レックス・スタウト
クリスマスの万引はお早目に ロバート・サマロット
真珠の首飾り ドロシー・L・セイヤーズ
クラムリッシュ神父のクリスマス アリス・S・リーチ
仮面舞踏会 S・S・ラファティ 
フランス皇太子の人形 エラリー・クイーン
煙突からお静かに ニック・オドノホウ
尖塔の怪 エドワード・D・ホック
クリスマス・イヴの惨劇 スタンリー・エリン
ディケンズ愛好家 オーガスト・ダーレス
目隠し鬼 ジョン・ディクスン・カー
クリスマスの十三日 アイザック・アシモフ 

「物語作者には一つの不文律が課せられている。もともとは、読者の強い要望で編集者がそのような習慣を作ったとされているのだが、クリスマスの話には、必ず子供が登場しなくてはならない」「クリスマスに材を取った物語の鉄則は、ほのぼのとした温もりと明るさを備えていなくてはならない」と、「フランス皇太子の人形」の冒頭において、クイーンがクリスマス・ストーリーの約束事について言及しています。以前、『修道士カドフェルの出現』(エリス・ピーターズ 光文社文庫)で触れましたが、クリスマス・ストーリーの条件はディケンズが言い出したらしいので、クイーンがいう編集者とはチャールズ・ディケンズのことかもしれません。ちなみに、ディケンズの条件は、子供が登場し、奇跡が起きなくてはならないというものです。

さて、そうそうたる作家の作品がそろっているからか、このアンソロジーを手に取ると心持ち重いような…、まあ、気のせいですが。前記のクイーンおよびディケンズのクリスマス・ストーリーの諸条件を満たしていない作品もあるけれど、さすがにどれも完成度が高いです。一番は、やはり「目隠し鬼」。これは何回読んでも恐いですね。ストーリーはまったく違いますが、状況はサキの「開いた窓」を思わせます。訪問先の屋敷のドアは開け放たれ、暖炉には火が焚かれ、明かりは煌々と灯っているにもかかわらず全く人気がない邸内の様子。そこに現れた女が醸し出す薄気味悪さ。訪問者の突飛な想像。
カーの巧みなところは、冒頭、短い時間で緊迫感、不安感を作り上げていることだと思います。特に、女の目、瞼や姿態の描写がただの無気味さじゃなく、下品な艶かしさをそなえた妖気を感じさせるあたりはすごい。

スタンリー・エリンの作品は、とても苦くて、しれも漢方薬の苦さではなく、摂り続けると身体がおかしくなりそうな苦さです。サマロットの作品で口直しを。

タグ:クリスマス・ストーリー



クリスマス12のミステリー (新潮文庫)クリスマス12のミステリー (新潮文庫)
(1985/10)
アイザック・アシモフ池 央耿

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『お騒がせなクリスマス』ジャネット・イヴァノヴィッチ 扶桑社ミステリー

2008-12-08

☆☆☆

今年のクリスマスは、悪い冗談としか思えない ―“サンディ・クローズ”という名の法廷未出頭者を追いかけるのに忙しく、ツリーやプレゼントを買う暇もない。おまけに、自宅に突然見知らぬ男が現れて、あたしにつきまとうのだ。彼は幽霊? 宇宙人? ディーゼルと名乗るこの男は、来訪の方法も目的も明かさずに、クローズ探しに奔走するあたしにつきまとう。さらに苛立たしいのは、彼が最高にイイ男だということだ! イヴァノヴィッチがファンの皆様に贈る「感動」のクリスマス特別編!  内容紹介より



サンディ・クローズという人物を捜す主人公の前に、異界からやって来たバウンティ・ハンターみたいな男が現れる。サンディ・クローズは小さな妖精エルフもどきの小人たちを雇っておもちゃを作らせていて、リングという謎の男に命を狙われているらしい。というようなクリスマス・ストーリーらしいナメきった話です。個人的には、もっと弾けるか、あるいは逆にシリアスなバージョンで意外性を狙ってもとも思ったのですが。

まあ、ジャネット・イヴァノヴィッチがファンに贈るだけあって、ファンじゃないひとが読んだら低評価でしょう。ストーリー自体はたいしたことがないです。このシリーズの雰囲気、お馴染みの登場人物たちのドタバタを楽しめる読者でないと無理なのではないかと思います。
もともとが荒唐無稽な色合いが濃い内容のシリーズで、その上さらに非現実的な人物を登場させてしまっているので、たまたま本書がシリーズ初読だという読者にはふざけ加減がキツイかもしれません。
しかしファンにとっては、ピストルを携帯するおばあちゃん、自分を馬だと思っている姪、家庭の問題に若干ヒステリー気味のお母さん、舌好調のルーラなどいつもの登場人物とお約束の車の破壊が笑わせてくれる作者からのクリスマス・プレゼントになっています。ただし、レンジャーは登場しません。




お騒がせなクリスマス (扶桑社ミステリー)お騒がせなクリスマス (扶桑社ミステリー)
(2003/10)
ジャネット・ イヴァノヴィッチ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『小さな星の奇蹟』メアリ・H・クラーク 新潮文庫

2008-12-06

☆☆☆

7年前の12月、ソンドラは生んだばかりの娘を教会に置去りにした。子は偶然この教会に忍び込んだ泥棒に、ベビーカーごと連れ出された。成功目前の新進ヴァイオリニストとしてNYに戻ったソンドラは、自責の念と娘に会いたい一心で、リハーサルにも身が入らない。―富くじで四千万ドルを当てた強運のアルヴァイラ夫婦が大活躍する、ハートウォーミングなクリスマス・サスペンス。 内容紹介より



メアリ・H・クラークが贈る恒例のクリスマス・ストーリー
クリスマスシーズンに読むのに適した程よいゆるさと短さ。結末は十二分に見当が付くわけですから、そこに辿り着くまでの道筋をうまいこと張り巡らせるかが作者の腕の見せ所ですね。予定調和の物語においては、何と言っても『水戸黄門』を観て育った日本人の目は肥えていますから、もう一捻りが欲しかったところです。こそ泥のレニーがただのケチな泥棒のままというのは芸がない。せっかくだから甘味料をもっと大量に投入し、『水戸黄門』みたいに、このレニーが心を入れ替え、身を犠牲にして義理の娘を助け、「おとっつぁん、死んじゃ駄目だ!」「おめえに看取られながらあの世へいけるだから、父ちゃんは幸せだぜ」などと言いながら娘の腕の中で息絶えるとかしないとですねぇ。さらに、ソンドラの恋人が高名な医者で、赤ん坊の育ての親である伯母さんの病気をたちどころに治しちゃうくらいしないとねぇ。あと四五滴泣かせてくれてもいいような、大団円より小団円みたいにちょっと物足りなさが残りましたね。




小さな星の奇蹟 (新潮文庫)小さな星の奇蹟 (新潮文庫)
(1999/11)
メアリ・ビギンズ クラーク

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム 扶桑社エンターテイメント

2008-12-04

☆☆☆☆

あのサンタクロースにも、少年時代があったことを知っていましたか?―赤ん坊のときにバージーの森に捨てられ、森の精ニシルに育てられた少年クロースは、あるとき自分におもちゃ作りの才能があることに気づきます。子供たちがおもちゃをもらうと大喜びすることを知ったクロースは、もっとたくさんの子供たちを喜ばせようと、仲間の妖精やトナカイたちの助けを借りて、おもちゃを配る旅に出かけることにしたのですが…… 『オズの魔法使い』の作者ライマン・フランク・ボームが贈る、心暖まるクリスマス・ストーリー! 内容紹介より



オール アバウト サンタクロースみたいな。いかにして、森の奥深く置き去りにされた赤ん坊がサンタクロースになったのか、みたいな。

サンタさんが飼っているペットとは?どこに住んでるの? 初めて作ったおもちゃは? 子供たちを怖がらせたおもちゃとは? サンタさんは普段は何を食べてるの? サンタさんにいじわるをしたとんでもない奴らとは? 最初に橇を引いたトナカイは何頭? どうして煙突から入るの? サンタさんがクリスマスイブにだけやってくる理由は? なぜ靴下を吊るしているの? どうしてモミの木のクリスマスツリーを飾るの? サンタさんがいつまでも元気な訳、プレゼントを配る手伝いをしている仲間たちとは? サンタクロースにまつわる13の謎。ジャーン、すべての答えがここにあります。良い子たちにサンタさんのことを訊かれたら、この本を読んであげれば大丈夫、おそらく尊敬の眼差しで見られること間違いなし。

タイトルにうたってある冒険談というほどのものはありません。徳が高い人物は、本人はあまり動かなくとも自然と周りの者たちがもり立てるということでしょうか。人の良い若旦那って雰囲気。



サンタクロースの冒険 (扶桑社エンターテイメント)サンタクロースの冒険 (扶桑社エンターテイメント)
(1994/10)
ライマン・フランク・ ボーム

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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

『クリスマス・トレイン』デイヴィッド・バルダッチ 小学館

2008-12-02

☆☆☆☆

トム・ラングドンは過去にピューリッツァー賞を受賞したこともある根っからのジャーナリスト。かつては世界中の戦場を駆け巡ってきたが、40歳を過ぎてにわかに情熱を失い、いまは旅行やグルメのライターとして糊口をしのいでいる。ある事件で飛行機に乗ることができなくなったトムは、ロサンゼルスに住む恋人とクリスマスを過ごすため、大陸横断鉄道を使ってニューヨークから西へ向かう。しかし、車中で、彼に戦場取材をあきらめさせるきっかけをつくった昔の恋人、エリーに再会するのだった。大陸横断鉄道に乗り合わせた人々の悲喜こもごもの人間模様の中で、トムとエリーとの間に再び愛は芽生えるのか。アメリカのベストセラー作家、デイヴィッド・バルダッチが贈る、クリスマス・シーズンに相応しいハートウォーミングなラブ・ストーリー。内容紹介より



主人公のジャーナリストとしての目標が、ペンの力で人々に悲惨な状況を知らしめ、世の中を変えること。しかし、世の中はよくなるどころか、ますます悪い方向へ向かっているからジャーナリストを辞めた、なんて冒頭のこういうのが主人公の青臭さとストーリーの生ぬるい雰囲気を現していています。戦場や暴動、飢饉の現場を数多く踏んできた四十のいい大人の設定にしては、キャラクターにそれらが活かされているとは言い難い。年齢を考えたら、遠い昔の失恋の痛手から抜け出せないのも軟弱だし、それ以外の心に傷を持った、もうちょと渋めのオジさんにした方が主人公の魅力が増したのではないかと。

他の登場人物たちも同じように軽めの性格設定で、群像劇の要素は薄く、ほとんど悪人、嫌な奴も出て来ません。作者が意図して、ハートウォーミングなクリスマス・ストーリーとバランスをとった人物設定、造形にしたのでしょう。そのため全体を覆うノベライズ風な安っぽさ、弛めの展開などいろいろありますが、それがまさしくクリスマス・クオリティなので、あえてそれを味わって楽しむべきなのでしょうね。

ワシントンからシカゴ、シカゴからロスアンゼルスへ、アムトラックの大陸横断鉄道による五千キロの列車の旅が一番の読みどころ。この鉄道を舞台に誰かトラベル・ミステリを書いてくれないでしょうか。西海岸に「新幹線」が建設されたら、鉄道への関心が高まりそうですし。



クリスマス・トレインクリスマス・トレイン
(2006/10/21)
デイヴィッド・バルダッチ

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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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