『ダーク・リバー』マライア・スチュアート 集英社文庫

2009-01-31

Tag :

☆☆☆

子どものスポーツ活動を熱心にサポートする愛情深い母親、〈サッカー・ママ〉ばかりを狙った連続殺人事件が自然豊かで静かな町を震撼させた。人相書画家として活躍するケンドラは、F BI捜査官で元恋人のアダムと組んで、事件解決に乗り出す。変装をし、意のままに姿を変える犯人。次々と発見される、乱暴され無残に捨てられた遺体。やがて魔の手はケンドラへと忍び寄るのだった……。 内容紹介より



人相書画家が主人公なのは斬新ですけど、かなり地味な職業ですよね。目撃者からいろいろ聞き取って人相画を描く、お終い。この作品において、主人公がこの職業でなければならないという必然性がないと思うのですが。主人公は捜査官でもないから捜査の初期の段階に関わって、それ以降はあまり必要ないし。だから作者は事件を主人公にまつわるものにしたのでしょうけど、なあんだって感じな展開でした。大量殺人を犯した犯人の動機にもあまり納得できません。作者はロマンス小説出身だそうで、元恋人同士の話の進み方なんていかにもありがちなパターン。459ページ以降のエピローグぽい箇所は冗長過ぎでしょう。それからストーリーには全く無関係の食べ物に関しての会話も長すぎて無駄に感じました。

カバーイラストは奇想コレクションも手掛けている松尾たいこさんです。松尾さんのサイトのコメントによると、
「ミステリーです。静かな町で起こった連続殺人事件。色は明るくして、でもちょっと不気味な誰もいない湖と森を描きました」とのことです。



ダーク・リバー (集英社文庫)ダーク・リバー (集英社文庫)
(2006/06)
マライア スチュアート

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『幽霊探偵とポーの呪い』アリス・キンバリー ランダムハウス講談社

2009-01-22

☆☆

「先祖代々、蒐集してきた蔵書を今すぐ手放したい」幽霊屋敷に住む、風変わりな老紳士から依頼を受けた書店主ペネロピー。膨大な数のコレクションの中にはなんと幻のエドガー・アラン・ポー全集まで! よろこんで引き取ったまでは良かったけれど、この本に関わった収集家たちが次々に死亡。まさかポーの呪い!? そんなとき耳にしたのは奇妙な噂―全集には秘宝の隠し場所を示す暗号が隠されている、というもので……。 内容紹介より



ミステリー書店シリーズ第三弾。このシリーズには、コージーミステリにハードボイルドの要素を加えて新味を出そうという意図があるのでしょうか。学校での我が子へのいじめを心配する主人公とタフな私立探偵の話、この非日常性は良いと思うのですが、女性作家のためなのか幽霊探偵の描き方が軟化してしまっていてキャラクターにインパクトが足りない感じがします。後見人兼ロマンスを予感させる幽霊の立ち位置、想いを寄せる女性を見守る厳つい騎士というステレオタイプな設定が、そういう甘い印象を与えているのではないのかと。主人公が巻き込まれた事件と幽霊探偵が調査していた事件(これでよりハードボイルド風味を出そうとする作者の考え)の二本立てのストーリーがどうも中途半端で企画力不足に思えました。ネタバレ→「だいたいこの二つの事件に接点が皆無だし

一児の母親であり書店主である主人公と昔気質の剛腕探偵の日常生活上でのギャップを面白可笑しく描いたほうが良いのではないでしょうか。

『幽霊探偵からのメッセージ』アリス・キンバリー ランダムハウス講談社



幽霊探偵とポーの呪い [ミステリ書店3] (ランダムハウス講談社文庫)幽霊探偵とポーの呪い [ミステリ書店3] (ランダムハウス講談社文庫)
(2007/08/02)
アリス キンバリー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ガラスのなかの少女』ジェフリー・フォード ハヤカワ文庫

2009-01-13

Tag :

☆☆☆☆

降霊会が開かれる邸で起きた不可思議な出来事。数日前から行方不明になっていた少女の姿が、突如ガラスに浮かびあがったのだ…… いんちき降霊術師ディエゴら一行は少女の行方を追い、彼女が謎の幽霊におびえていた事実を知る。まもなく本物の霊媒師を名乗る美女の導きで、ディエゴらは少女の居場所に辿りつく。そこで見たおぞましいものとは?眩惑的筆致で読者を驚愕させる著者が放つ、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。 内容紹介より



以下、ネタバレ気味です!ご注意下さい。

オオアメリカモンキチョウから追想が始まり、マツノキシロチョウで終わる物語。蝶々についての描写が幻想性および華やかさと儚いイメージを作り出し、とても印象深い効果を作品に与えています。また、降霊術師やサーカスの見せ物小屋にいるような奇人たちといった登場人物たちがさらにノスタルジックな時代的効果を高めています。時はベーブ・ルースがカブス戦で予告ホームランを打った1932年。つまり二つの世界大戦のはざまの出来事で、この設定は後半において大きな意味をなしてきます。

この作品のテーマや登場人物たちの行動は蝶と幼虫、サナギに関連付けされていて、語り手である少年が精神的成長を遂げる場面をサナギの羽化に象徴させる一般的なものから、蝶の美に対する幼虫、サナギの醜は、優生学が目指すものと、そのターゲットとなりうるサーカスの奇人たちを表しており、愛蝶室を持つシェルがその部屋をたたもうとして言う言葉「できるからといって交配させて蝶を増やすという考えは趣味が良くないように思えてきてね」も優生学への批判と捉えることができると思います。

“眩惑的”と書いてあるから、きっと他人が見た夢を書いたような(つまり、とりとめがなく、よく理解できない)サスペンス・ミステリ作品かと思っていたら、第一次大戦後を時代背景にした少年の回想談という個人的に好きな設定の冒険物語でしたので、かなり満足しました。


降霊会関連作品
『雨の午後の降霊会』マーク・マクシェーン
『降霊会の怪事件』ピーター・ラヴゼイ



ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2007/02)
ジェフリー フォード

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『四つの雨』ロバート・ウォード ハヤカワ文庫

2009-01-09

Tag :

☆☆☆☆

夢やぶれた心理療法士ボブ・ウェルズは、50歳を越えた今、妻に逃げられ、酒に溺れ、独り極貧にあえいでいた。しかし、ジェシーとの出会いがすべてを変えた。美しく、愛らしく、自分と同じく苦労を重ねてきた女性。彼女を一緒に幸せになりたい。その一心で、ボブは患者の美術商が持つ貴重な古美術を盗み、転売しようともくろむが……絶望から絶頂へ、そして絶頂から絶望へ。五十男の悲哀がにじみでる感涙のノワール小説。 内容紹介より



中年男に愛欲というスイッチが入ると行き先は奈落の底へという現実でもよく見られる物語。それだけに、やり直しが利かない世代の疲弊とか絶望とかの感情や切羽詰まったときの愚かさが身につまされますね。しかし、鬱々と暗い雰囲気が全編を覆っているわけではなく、ジム・トンプスンばりの奇妙にあっけらかんとしたものも漂っています。そして軽いヒネリはあるもののシンプルなプロットとストーリーの疾走感、ていうか急斜面を転がり落ちる石を観ているような主人公の滑落感ぶりがなぜか爽快に思えてきます。理想に燃えていた男がいかに陳腐で利己主義な人間だったか。人間性の変容というより、もともと主人公の根底にあったものが浮かび上がって来る様相、恋人への愛も過去の善行でさえ彼の自己満足の行為にすぎなかったという、化けの皮が剥げていく展開が読みごたえがありました。

ただ、心理療法士にしては愚かな行動をして、かなり自己分析に劣る印象を受けますけど、それも作者の狙いなんでしょうか。



四つの雨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 21-1) (ハヤカワ・ミステリ文庫)四つの雨 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 21-1) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2007/08/25)
ロバート・ウォード

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『猫はひげを自慢する』リリアン・J・ブラウン ハヤカワ文庫

2009-01-07

☆☆

古書店からたくさんの本を引き取って大喜びのクィララン。一方のシャム猫ココは、本が詰まったダンボール箱に異常な興奮ぶりを示す。ココの行動は何を示しているのか? クィラランはそれとなく調査を始めるが、ほどなくしてココがおなじみの「死の咆哮」を発した。まもなく女性が蜂に刺されて死亡するいたましい事件が起こってしまう。さらにクィラランの恋人のポリーの身になんと……シリーズの大転機を迎える注目作。 内容紹介より



遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

今年は丑年だそうなので、牛が登場するミステリはないかと考えたのですが思いつきませんでした。ミステリではないのですが、サキの作品に、画家と隣家の婦人とのかみ合わない会話をだしにして画壇や美術界の風潮を痛烈に揶揄した「肥った牡牛」(『サキ短篇集』収録 新潮文庫)という佳作がありますね。

さて、本作は〈シャム猫ココ・シリーズ〉の二十九作目。わたしの中で、このシリーズはミステリの殿堂入りしているから作者が何をどう書こうが、やりたいようにやって下さいという感じです。ミステリの出来不出来などどうでも良いのです(主に不出来ですが)。
粛々と読ませていただき、静かに本を閉じる。でもしかし、もしもシリーズ初読のひとが
初めての作品に本作を選んだとしたら・・・、という危惧の念を抱いてしまうのもファンの一人として否めないわけです。どう見てもブラウンさんは、読者がこのシリーズを以前から読んでいるものという前提で書いてますもんね。このシリーズに今から手を出そうという読者は、デアゴスティーニを購入するのと同じように最初の作品から読むくらいの覚悟と忍耐と寛容が必要かと。〈ピカックス・サーガ〉はまだまだ続く。

ポリーの件については、(ネタバレです→)「もともとキャラが立ってなかったし、最近のふたりの“アビアント”な関係が気持ち悪くなってきたところだったので、これで良かったのではないでしょうか。てっきり飛行機事故で死んでしまうものだと思い込んでいたので、そうじゃなかったことがびっくりでしたね。



猫はひげを自慢する (ハヤカワ・ミステリ文庫)猫はひげを自慢する (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2007/06)
リリアン・J. ブラウン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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