『チャリティ岬に死す』ウィリアム・G・タプリー サンケイ文庫
2010-04-16
- Category : ☆☆☆
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ボストンの弁護士ブレイディ・コインのもとへひとりの老婦人が訪ねてきた。息子のジョージが死んだ。自殺ということだが信じられない。真相をさぐってほしいというのだった。コインは、ジョージが勤めていた高校へ行き、調査をはじめたが……。新人タプリーが詩情豊かなハードボイルドタッチで描いた注目のデビュー作、スクリプナー犯罪小説賞受賞作。本年度、英国推理作家協会最優秀処女長編賞(ジョン・クリーシー賞)候補作!! 内容紹介より
地元ボストンでは一般的なハーバード卒で大きな弁護士事務所に勤めているのではなく、エールのロウ・スクールを出て個人事務所を構えている主人公はお金持ち相手に法律問題の相談にのっています。愛車はBMW(ここ重要)、趣味は釣りとゴルフ(ここ注目)。離婚歴がある四十代の独身で、別れた元妻と二人の息子たちとは定期的に会う仲です。つまりハードボイルドタッチといいながらも、決して“一匹狼”の体ではなくて一匹犬みたいな存在なのですね。ステレオタイプのハードボイルドの主人公ならば、古めでこだわりのアメ車を乗り回し、スポーツと言えばTVでアメリカンフットボールか野球の観戦、離婚歴はあっても家族とは疎遠という設定だったでしょう。
こんなふうなソフトボイルドタッチの主人公なので、ストーリーは事件の被害者や加害者の心の奥底に入り込むことなく、やや体裁を整えて進み、主人公の日常生活の些末な事柄を細々と描くより、もうちょっとテーマを掘り下げてみても良かったんじゃないだろうか、という感想を持たせつつ途中でぶった切ったみたいにあっけなく終わるのでした。
チャリティ岬に死す (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ) (1986/05) ウィリアム G. タプリー 商品詳細を見る |
テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌