『死の宣告』ポーラ・ゴズリング ハヤカワ文庫
2010-10-01
あの金を返せ ― 受話器から響いてくる無気味な声に、デザイナーのテスは総毛立った。自動車事故で夫を亡くし、ようやくそのショックから立ち直ったというのに、誰がこんな悪戯を?数日後、不安に怯えるテスのもとを刑事が訪れた。夫の死に不審な点があるらしい。はたして謎の脅迫電話は夫の死と関連が?彼女は夫の知られざる素顔を探りはじめるが……気鋭の女性作家が満を辞して放つ最新サスペンス。文庫オリジナル 内容紹介より
ヒロインの亡夫の元共同経営者、彼女が勤める会社のオーナー、間借人の大学教授、新米の部長刑事、こういったヒロインをめぐる男たちの人物描写が相変わらずとてもこなれていて巧いです。それ以外の登場人物も重要度に応じた加減で描かれています。一方、ヒロイン自体に強烈なキャラクター付けをしているとは言い難く、作者には、彼女を取り巻く男性陣によってヒロインを際立たせる意図があったようなきもしました。実際に、古くからいる家政婦(すでに中性的な位置付け)の他にヒロイン以外の女性の登場機会は非常に少なくて、彼女のみに四方からスポットライト(男性陣という光源)が当たる仕様になっているのです。また、かなり曲解してみるならば、中世を舞台にしたお姫様と騎士たちの物語の設定に似ているのかもしれません。
ストーリーはヒロインと部長刑事のふたりの視点で語られるためか、彼女からのアクションが少なめ、かつ受動的なので中盤にかけて停滞及びダレてます。犯人の意外性や真相の衝撃度も少なくてミステリ作品としては平凡だと思います。
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死の宣告 (ハヤカワ・ミステリ文庫) (1993/02) ポーラ・ゴズリング 商品詳細を見る |
テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌