『キャンティとコカコーラ』シャルル・エクスブラヤ 教養文庫

2010-11-29

Tag :

☆☆☆

「すべての犯罪の動機は愛である」。これがヴェローナ警察警部ロメオ・タルキニーニの持論である。家族を愛し、正義と名誉を重んじるが、想像力が過剰な男ロメオ。そんなロメオが、心配のあまり愛娘ジュリエッタの嫁ぎ先に出かけたからさあ大変。ボストン上流社会で起こった殺人事件に首をつっこんだロメオの活躍とともにアメリカ文化をアイロニカルに描くユーモア・ミステリ。 内容紹介より



短くて軽いユーモア・ミステリ。
ポール・ギャリコの『ハリスおばさんニューヨークへ行く』やジョルジュ・シムノンの『メグレ、ニューヨークへ行く』みたいな感じで、イタリアの警部がボストンに出かけて事件に巻き込まれるというお話です。イタリアとアメリカのそれぞれの国を代表するような飲み物がタイトルになっています。本来、イタリアがキャンティならばアメリカはバーボンやカクテルあたりが適当なのかもしれませんが、そこがお酒ではないのは主人公の警部がお世話になる娘の嫁ぎ先が禁欲的なピューリタン一家であるためです。つまり、陽気なイタリア人が厳格なボストン人社会に入り込み、いろいろな波風を立てるという筋書きなのです。人物像がカリカチュアされているところ、なかでも筋金入りのプロテスタントのオールドミスが彼に感化されてしまう展開はお約束事ではありますけれど、かなり滑稽でした。
また、本書の作者がフランス人であることで、イタリア、アメリカ双方の文化や気質を第三者的立場から気兼ねなく揶揄し、わざとステレオタイプに描写することでユーモラスな効果を上げているのではないでしょうか。

キャンティとコカコーラ (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)キャンティとコカコーラ (現代教養文庫―ミステリ・ボックス)
(1994/05)
シャルル エクスブラヤ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『負け犬のブルース』ポーラ・ゴズリング ハヤカワ文庫

2010-11-26

☆☆

クラシックを断念し、ジャズ・ピアニストに転向したジョニーは、無気力な毎日を送っていた。だが昔の恋人が何者かに殺され、彼の生活は一変した。彼女を熱愛していた骨董商が、ジョニーこそ殺人犯だと信じ、復讐してやると脅してきたのだ。数日後、彼は暴漢に襲われ、ピアニストの命である左手を砕かれた。はたして骨董商の差し金か?胸に怒りを秘め、彼は姿なき敵に立ち向かう ― 気鋭の女性作家が放つ傑作サスペンス  内容紹介より



女性が好みそうなロマンティック・サスペンス。ただし、男は四十一歳、女は三十九歳(いづれも離婚歴があり、子供はいるけれど同居はしていない)ですから対象年齢は高めです。男は、演奏のほかに作曲もしているためお金には不自由していない、少年のような心を持ち、女性にモテる。そして女は、地味でやや自分に自信がない性格のソーシャルワーカー。つまり、基本的な設定は白馬に乗った王子がお姫様を迎えに来た風な中年版Boy Meets Girlなのです。ここで男が、音楽上の挫折感から飲んだくれで貧乏なうえに、暴行によって手が使えなくなった状態(ベタな設定ではありますが)、つまり、お伽話でいうところのカエル化なり野獣化なりしていたら、もう少し物語に起伏が生まれていたののではないのかと思いました。読んでてどうも小っ恥ずかしくなる恋愛場面ばかりが目立っていました。ただ、364ページから始まるカーチェイス(おおよそふさわしくないブランデンブルク協奏曲第一番がカセットデッキから流れる中での)場面は、主人公がある理由により非常にハイテンションになっていることもあり、とてもユーモラスでした。

タグ:ポーラ・ゴズリング




負け犬のブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫)負け犬のブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1993/11)
ポーラ・ゴズリング

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『レモンメレンゲ・パイが隠している』ジョアン・フルーク ヴィレッジブックス

2010-11-23

☆☆

レイク・エデンも今は夏。暑さとダイエットに苦しみながらも毎日クッキー作りに忙しいハンナのもとへ、ノーマンからびっくりニュースが届いた。なんとエデン湖畔にある古い屋敷を土地ごと買い取り、ハンナと設計した「夢の家」を実際に建てるつもりだと言う。「ついにふたりが結婚?!」と盛り上がる周囲をよそに、ノーマンとハンナがその家の片付けに行くと、キッチンにはハンナご自慢のレモンメレンゲ・パイの食べ残しがあり、地下室には元所有者の死体が・・。今度こそ事件に関わるのはごめんだわ、と固く決意するハンナだったけれど……。今回もスイーツなお菓子探偵ハンナ・シリーズ第4弾! 内容紹介より



このシリーズのなかではまとまりがあって良く出来ている感じです。本書を読んで、今さらながら分かったことなのですけれど、ハンナの男友達である歯科医のノーマンと刑事部長のマイク、このふたりはヒロインにとって理性に働きかけるのがノーマンであり、感性に訴えかけてくるのがマイクなのですね。つまり結婚するなら前者で、恋愛するなら後者といった存在なのでしょうか。今まで、どちらも似た者同士だし、煮え切らない優柔不断な女だなとか思っていましたが、そういう違いがあったのでした。そりゃあヒロインもいろいろと迷いますよね。
さて今回は、事件現場に残されたヒロインの店〈クッキー・ジャー〉特製のレモンメレンゲ・パイやテイクアウトされたオッソブーコ、自家製瓶詰めといった食べ物が事件の謎を解いていく手がかりになっているところが飲食系コージーらしくて洒落が利いていました。

タグ:ジョアン・フルーク




レモンメレンゲ・パイが隠している (ヴィレッジブックス (F-フ2-4))レモンメレンゲ・パイが隠している (ヴィレッジブックス (F-フ2-4))
(2004/10)
ジョアン・フルーク

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『炎に消えた名画』チャールズ・ウィルフォード 扶桑社ミステリー

2010-11-19

Tag :

☆☆☆

若き美術評論家フィゲラスは、ハングリー精神を武器に頭角を現してきた。そんな彼に、ある老画家に面会する話が持ちかけられる。その人物こそ、現代美術史上最も重要な存在でありながら、作品はすべて火災で失われ、その後は沈黙を守っている、まさに幻の画家なのだ。彼に会うだけでも世界的事件だ。だが、この話にはとんでもない裏があった……あふれるペダントリー、予測不可能な展開、芸術の深層を衝く驚愕の謎!偉大なるパルプ作家が放つ、史上最強のアート・ノワール。〈解説・滝本誠〉 内容紹介より



主人公が美術評論家なので、美術に関していろいろ語られているからアカデミックなジム・トンプスン作品みたいな感じですかね。それにしても実在した画家をモデルにするのではなくて、架空の画家を実際の美術史や画家に絡ませて描き、かつ読者が納得するほどの人物像を作り上げるという作業はなかなか大変なわけで、デイヴィッド・ハンドラーのホーギー・シリーズはその点よくやっていると思うけれど、本書の「幻の画家」のすごさはどうも伝わってきませんでした。その画家について書いている作者の作り話の部分がフィクションとして愉しめなかった。そして、その作り話に付随して披露される主人公のペダンティックな語りも退屈でした。さて、本書がアート・ノワールと名付けられているとおり、ジム・トンプスンの作品における金や女への執着や欲望がここでは美術や美術界における名誉、名声への欲求に入れ替わっており、さらにその欲求を達成する手段が芸術とは対極の下卑で矮小なものに成り下がっているという痛烈な皮肉も込められています。




炎に消えた名画(アート) (扶桑社ミステリー)炎に消えた名画(アート) (扶桑社ミステリー)
(2004/08)
チャールズ ウィルフォード

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『封じられた指紋』アントニイ・オリバー 扶桑社ミステリー

2010-11-16

Tag :

☆☆

北フランスのリゾート地。浜辺を散歩中のイギリス人老夫婦が突然炎に包まれ焼死した。両親の不可解な死の真相を求め、娘は老探偵ウェバーに調査を依頼する。さっそくウェバーは、女性パートナーのリジーと捜査を開始するが、ただ一人の事故目撃者は車に轢かれ死亡していた。しかも、何者かが彼等の捜査を止めさせようと圧力をかけてきた。捜査を続けるウェバーが次に見つけたものは、老夫婦の息子の無残な死体だった……。これら一連の事件の背景には、もし公開されてしまえば、英国の骨董美術界が大打撃を受けるであろう重大な事実が隠されていた。陶人形にひそかに仕込まれた秘密とは何か。世界最高水準の陶器コレクションをめぐる本格推理小説。 内容紹介より



「老探偵」とか書かれてると、よぼよぼのお爺さんみたいな探偵をイメージしてしまいますが、一応、五十歳代です。ただし、非常に魅力がない、地味、一回出汁をとった煮干しみたいなひとです。こういう派手さがない感じがイギリス的なのかイギリス人好みなのでしょうか。いっそのことウェバーを補佐役にして、キャラが立っているもうひとりの主人公であるリジーを一貫して全面に出したほうが面白かったような気もします。
探偵が登場し、あちらこちらを調査してまわるわりに、ハードボイルド風味にならずに一風変わった雰囲気を出しているところはさすがに英国ミステリだなあと思いました。でもこれが本格推理小説かというと違和感があります。焼死のトリックもいまひとつだなあってなるし、解んなかったけど。それから、主人公カップルの(枯山水的)恋愛の妙味にもハマらなかったのでした。




封じられた指紋 (扶桑社ミステリー)封じられた指紋 (扶桑社ミステリー)
(1990/03)
アントニイ オリバー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悪戯』エド・マクベイン ハヤカワ文庫

2010-11-14

☆☆☆

アイソラで近ごろ流行の悪戯は、無邪気とは言い難い。街頭の壁に絵を描くストリート・アーティストを狙った連続殺人。現代版姥捨山ともいうべき、痴呆老人の置き去り。家庭内三角関係の果ての人質立てこもり……続発する事件に頭を悩ませる87分署の刑事キャレラに、天才犯罪者デフ・マンからの大掛かりな犯罪計画をほのめかす挑戦状が舞い込んだ。累積する事件を解決しつつ、87分署の面々はデフ・マンを阻止できるか! 内容紹介より



デフ・マンが登場したわりには、いつものねちっこさがなく何か淡白な印象だったのと、
マクベインお得意のモジュラー形式のストーリーも事件がやたら頻発するだけに終わった
感じがしました。いつもはもっと個々の事件や出来事に関連性が見られたと思うのですけど、本書ではそれぞれが乱立気味で、たとえば別の事件を追っていた警察官が偶然もうひとつの事件を解決してしまい、手柄をかっさらってしまうような展開にもなりませんでした。それが現実的なのでしょうけどね。また、アルバイトの少年が意味もなく殺されたり、保護観察官が復讐のために銃殺されたり、麻薬の売人夫婦が何者かに殺害されたりするのですが、これらの事件が未解決のまま終わってしまうのは、銃社会の怖さを表現する意図でもあったのでしょうか?デフ・マンも統計の数字を持ち出して言及してますし。

『マネー、マネー、マネー』エド・マクベイン ハヤカワ・ミステリ
『ビッグ・バッド・シティ』エド・マクベイン ハヤカワ文庫

タグ:エド・マクベイン




悪戯―87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)悪戯―87分署シリーズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2002/05)
エド マクベイン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『奇妙な道』ディーン・クーンツ 扶桑社ミステリー

2010-11-11

Tag : ホラー

☆☆☆

酒におぼれる人生の敗残者ジョーイ。ある日彼に、父親が死んだとの知らせが届いた。驚いたことに父親はジョーイに巨額の遺産を遺しているという。いぶかりながら故郷に向かう彼が車を進めた道のその先は……サスペンスホラー長編「奇妙な道」。ハロウィーンの日、少年は不思議なかぼちゃ売りに出会った……幻想恐怖短編「ハロウィーンの訪問者ん」。SFから異色ハードボイルドまで、三十年にわたる最強のベストセラー作家クーンツの軌跡を集成した唯一無二の傑作集〈ストレンジ・ハイウェイズ〉ここに登場! 内容紹介より



サブタイトルは「ストレンジ・ハイウェイズ 1」。
クーンツの作品は、『ウォッチャーズ』と『ベストセラー小説の書き方』(これはノンフィクションですが)しか読んだことがないのです。キング同様にクーンツについても超初心者なのです。まあ、それがどうしたっていうことなんですけど。

以下、ネタばれしています!ご注意下さい。


「奇妙な道」
若い女性の他殺死体の幻覚に脅える四十歳の主人公が帰郷し、父親の葬儀に参列したその後、町を離れる途中で廃道になったはずの道が元通りになっていることに気付く。その道は廃鉱跡地から地下火災が広がっている上に建っているゴーストタウン化した田舎町に続いていた。彼はなにかに導かれるようにその道に車を進めた……。この物語の中においても触れられているように、まさしく〈トワイライト・ゾーン〉的な雰囲気を持っている作品です。地下から吹き出す炎やガスがまるで地獄の業火の様相を呈し、教会でクライマックスを迎え、なにかしら定番化している兄が悪で弟が善というパターンは、旧約聖書のカインとアベルの話を強くイメージしているのかも。ケン・グリムウッド の『リプレイ』なみにこれでもかというほどのリプレイには失笑してしまいました。

「ハロウィーンの訪問者」
弟はやめろと言うのに、いじめっ子の兄はその忠告を聴かずにハロウィーン用に彫刻された不気味なカボチャを買ってしまう。ハロウィーンの当夜、兄弟の家に悲鳴が……。
ストレートなハロウィーン・ホラーでした。




奇妙な道―ストレンジ・ハイウェイズ〈1〉 (扶桑社ミステリー)奇妙な道―ストレンジ・ハイウェイズ〈1〉 (扶桑社ミステリー)
(1999/05)
ディーン クーンツ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『消え失せた密画』エーリヒ・ケストナー 創元推理文庫

2010-11-09

☆☆☆

とある事情で訪れたコペンハーゲンで、肉屋の親方オスカル・キュルツは美術品蒐集家の秘書イレーネ嬢と知り合う。高価な密画を携えるイレーネが新聞を賑わす骨董品盗難事件にドッキリ、一計を案じて協力を乞うや胸を叩いた親方は、他人を装って行を共にする。“白鬚ボス&心もとない三下”の盗賊団が虎視眈々、人品卑しからぬ挙動不審青年も接近し、密画の行方は神のみぞ知る……。 内容紹介より



『雪の中の三人男』や『一杯の珈琲から』ほどには楽しめなくて残念。大人が読むにはプロットが子供っぽすぎてるような気がしました。肉屋の小父さんを少年に代えて、ヤングアダルト作品にしたら良いような。こういう物語なら、青年より小父さんを主役にして活躍させないと面白くないです。青年が優秀すぎるし、悪党たちが間抜けすぎるうえに、展開が予測できてハラハラドキドキしないのですね。それから翻訳に違和感があって、たとえば肉屋の小父さんの話し言葉が田舎風と下町風が混ざったように訛っているのですけれど、それがなにか野暮った過ぎて馴染めませんでした。ベルリンといえば当時だって大都会だったろうし、もうちょっと何とかなりませんかね。
肉屋の小父さんは仕事中に、奥さんや家族に黙って失踪したみたいにコペンハーゲンにやって着たわけですが、後で家に電話をしてみると奥さんが泣き出してしまいます。「〈二十年前にこいつをやってりゃよかったんだ〉彼はこう思った。〈今じゃもう遅かった。今じゃもう、泣いたってなんにもならねえ〉」(p136)、電話を終えた後で小父さんは失踪したことをこう振り返って傍白します。本書の滑稽さや明るさのなかにあって、この台詞だけがいやにシリアスなので印象に残りました。

『雪の中の三人男』エーリヒ・ケストナー創元推理文庫




消え失せた密画 (創元推理文庫 508-1)消え失せた密画 (創元推理文庫 508-1)
(1970/02/13)
エーリヒ・ケストナー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『神の家の災い』ポール・ドハティー 創元推理文庫

2010-11-07

☆☆☆

摂政の宴に招かれたクランストン検死官は、四人もの人間を殺した、〈緋色の部屋〉の謎を解くはめになる。一方、アセルスタン修道士の教会では、改修中に発見された人骨が治癒の奇跡を起こしたと評判になっていた。さらに、かつてアセルスタンが籍を置いた修道院で、神をも恐れぬ連続殺人が発生する……。いずれも手ごわい三つの謎に、さしもの名コンビも苦戦する、人気シリーズ第三弾。 内容紹介より



相変わらずクランストン検死官とアセルスタン修道士の主人公ふたりと彼らを取り巻く人々の人間的な魅力で読ませます。本書では解決すべき謎が三つ設定されていて、かなり数的に盛ってある感じですけれど、主となる修道院連続殺人事件をはじめとして意表をつくようなトリックが設けてあるわけではありません。前二作を読んだ限りでは、この作者はトリック部分で大向こうを唸らせるようなタイプのミステリー作家じゃないみたいなので、本作はその弱いところを数で補ったみたいな印象を受けました。
さて、このシリーズの特徴のひとつだと思う下層階級とそれ以外の階級との対比の妙が、今回は修道院、修道士たちとの比較にあると思います。非衛生的で猥雑で混沌としたロンドンの下町とそこに暮らす者たちのしたたかな日常、一方、そのような俗界から隔絶した清潔な修道院で神学論争にふける食べるものに事欠かない浮き世離れした修道士たち。このふたつの世界が、作者の庶民よりの視線からアイロニカルなユーモアを持って描かれています。

『毒杯の囀り』ポール・ドハティー 創元推理文庫
『赤き死の訪れ』ポール・ドハティー 創元推理文庫




神の家の災い (創元推理文庫)神の家の災い (創元推理文庫)
(2008/11)
ポール・ドハティー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『幽霊派遣会社』エヴァ・イボットソン 偕成社

2010-11-05

Tag :

☆☆☆

魔女になるための夜間学校でしりあったミス・プリングルとミセス・マナリングは、幽霊が見えるという能力をいかして、幽霊派遣会社をつくることにした。家がなくてこまっている幽霊と幽霊をひきとりたいという人間の仲介をするのだ。ふたりの事務所には、人のいいおだやかな幽霊の家族やもと貴族のいかにもおそろしげな幽霊の夫妻が、それぞれにふさわしいすみかを求めてたずねてきた。 内容紹介より



幽霊派遣会社という発想が楽しい児童文学です。
ヴィクトリア女王時代に幽霊になり、何か生前に恨みつらみを持っているらしい凶暴な貴族夫妻と第二次世界大戦中、爆撃によって亡くなり、偶然幽霊になった人の良い歯医者さん一家ならびに謎の女の子の幽霊。この幽霊二組にお屋敷を相続した孤児の男の子と彼の親戚にあたる兄妹の人間二組が主な登場人物です。二組の幽霊が手違いによりそれぞれ間違った場所に派遣されたためにいろいろな出来事が起きてしまうというお話。
大人が読んでも十分面白い作品ですが、邦題になっている幽霊派遣会社はあくまで話の取っ掛かりに過ぎないので、会社に登録された様々な幽霊たちがあちらこちらに派遣されるというエピソードが描かれているわけではないことと、また、児童文学作品であるためなのか、人物の掘下げ方が浅く、ストーリー自体も若干ダイジェスト版みたいに感じられるとことがやや物足りない気がしました。子供向けの作品にも関わらず、随所に垣間みえる残酷な描写とかブラックユーモアとかがいかにもイギリス文学らしいと思いました。




幽霊派遣会社幽霊派遣会社(偕成社)
(2006/06)
エヴァ イボットソン

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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

『白い雌ライオン』ヘニング・マンケル 創元推理文庫

2010-11-03

☆☆☆☆

スウェーデンの田舎町で、不動産業者の女性が消えた。失踪か、事件か、事故か?ヴァランダー警部らは彼女の足取りを追い、最後に向かった売家へ急いだ。ところが近くで謎の空き家が爆発炎上、焼け跡から黒人の指と南アフリカ製の銃、ロシア製の通信装置が発見される。二つの事件の関連は?スウェーデンとロシア、南アフリカを結ぶ糸は?CWAゴールドダガー受賞シリーズ。 内容紹介より



以下、ややネタばれしています!ご注意下さい。


スウェーデンの片田舎で起きた殺人事件と南アフリカで画策された暗殺計画、この北と南の地にポイントを据えたスケールの大きな流れに、非常に人間的な主人公ヴァランダーが否応無しに巻き込まれる物語です。作者の優れた構成力がよく表れていると思います。
感心した部分が、プロローグにおけるカフェでボーア人が黒人給仕へ暴力行為を働くシーンで、冒頭にこの小さなエピソードひとつを入れることにより、読み手にボーア人へのマイナスイメージを植え付ける効果があがっていること、それから、女性不動産業者宅にあった手錠の由来を終盤において明らかにする箇所を設け、最初の被害者である彼女の存在を再度読者に思い出させ、同情心をそそる手法、こういうところが作品全体への作者の目配りが効いているように感じました。
一方、これはどうかなという点が、元KGBの工作員が執拗にヴァランダーの命を狙うことで、用意周到で優秀なプロならもっとクールな行動を取りそうなもんだと思ったんですけど。それから、旅券審査所での審査官とインターポール事務所の事務員、このふたりがおかしたミスが立て続けに起きてしまう展開はやや都合が良すぎです。また、大事な場面ではいつも単独行動を取らざるを得なくなる状況に陥るヴァランダーも気になりますけどね。
とは言っても、本書が警察小説とタイムリミット型謀略小説を見事に融合させた力作なのは間違いありません。

『殺人者の顔』ヘニング・マンケル 創元推理文庫
『リガの犬たち』ヘニング・マンケル 創元推理文庫




白い雌ライオン (創元推理文庫)白い雌ライオン (創元推理文庫)
(2004/09)
ヘニング・マンケル

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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