『草原のサラ』 パトリシア・マクラクラン 徳間書店

2011-12-31

Tag :

☆☆☆☆

パパと結婚するために、大草原にやってきたサラ。家族四人で幸せに暮らしていたのもつかの間、大草原は大かんばつにみまわれ、井戸の水もかれてしまいます。住み慣れた土地を捨てて、つぎつぎと出ていく近所の人々。ぎりぎりまでがんばるサラたちも、火事で大切な納屋を失い、とうとう海辺の故郷メイン州へ旅だつことになるのでした。パパをひとり、大草原に残して…。厳しい大自然を背景に、家族の絆を描いた、やさしい愛の物語。 内容紹介より



この物語も『のっぽのサラ』同様にサラの義理の娘アンナの視点から描かれているので、穏やかで抑制が利き、サラの趣味の一つである水彩画のような雰囲気を持っています。しかし、本書では、サラたち家族が暮らす土地が干ばつに見舞われることになり、普段はあまり見せないサラの内に秘めた強い気性が表れる場面があります。親しくしていた隣人にこの地を離れると打ち明けられた時、サラは「わたし、ここの土地、だいっきらい」だといいます。この土地になにもかも捧げたのに、この土地はなにも返してくれない、からだと。やがて池も井戸も涸れたため、サラと二人の子供たちはメイン州にいる身内のもとに身を寄せることになりますが、サラの夫であり子供たちの父親のジェイコブだけは家に残ります。自然環境がときには過酷過ぎるものになる土地に彼がとどまる理由は、「この土に自分の名前が書いてある」からです。生まれ育った場所とまったく違う土地で暮らすギャップに戸惑い、愛する者から離れて故郷に戻り、愛する者たちとの絆がより深くより強くなってゆくさまを描いた優れた作品です。

『のっぽのサラ』パトリシア・マクラクラン 徳間書店


最後になりましたが、今年一年、森のお友達ももんがちゃんブログ“本みしゅらん”を訪れてくださった皆様、本当にありがとうございました。どうか良いお年をお迎えください。




草原のサラ草原のサラ
(1996/01)
パトリシア マクラクラン

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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

『のっぽのサラ』 パトリシア・マクラクラン 徳間書店

2011-12-28

Tag :

☆☆☆☆

ママが死んでしまってから、何年かたちました。大草原にすむパパと私と弟のケイレブのところに、はるか遠い海辺の町から、サラがやってきました。パパの新しいおくさんに、それからわたしたちのママになってくれるかもしれない人です。のっぽでぶさいくなサラは、わたしたちにいろんなことを教えてくれます。歌、海のこと、水にうかぶこと……。でもサラは、海がこいしくてたまらないのです。サラは、ずっとうちにいてくれるのでしょうか……? 大草原にくらす家族を描いた、やさしい愛の物語。一九八五年ニューベリー賞、第三回スコット・オデール賞受賞作品。 内容紹介より



メイン州の海辺の町から大草原にやって来たお嫁さん候補のサラをめぐる134ページの児童文学です。
短い物語にもかかわらず、作者の飾らないシンプルで優しい描写と金原端人氏による丁寧な訳出によって、大草原の自然の風景や家族の日々の暮らしぶり、そしてサラが教えて聞かせる海やそこに棲む生き物たちのイメージがまざまざと伝わってくる作品です。読者は二つの異なった情景を思い浮かべることでき、それによって物語に広がりもでてくるわけで、まったく海とは無縁な土地に海辺育ちのサラを登場させた着想が非常に効いています。また、子供たちにとって海とはサラをその場所へ再び呼び戻してしまうかもしれないものでもあり、サラが海を恋しがる様子を見て感じるたびに心配になる要素でもあります。寂しさ、期待、喜び、不安、楽しさ、哀しみ、こういう子供たちのそのときどきの様々な感情の変化が、さりげなくも生き生きと描かれている味わい深い作品です。




のっぽのサラのっぽのサラ
(2003/09/21)
パトリシア・マクラクラン

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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

『猫は日記をつける』 リリアン・J・ブラウン ハヤカワ文庫HM

2011-12-26

☆☆

これまで数々の難事件を解決してきた元新聞記者にして地元の名士クィラランと不思議な推理力を持つ飼猫のココ。彼らの知られざる日常や、事件の裏エピソードを知りたくはありませんか?本書ではクィラランがつけている日記の一部をご紹介し、ココやヤムヤムの秘密や、登場猫物紹介、ためになるココの格言など、クィラランの猫たちに対する愛情に迫ります。豪華イラスト入り、全22篇収録のシリーズ番外短篇集をどうぞ 内容紹介より



一般的な短篇集とは違う、これまでに過ごしてきたココとヤムヤムとの生活(シャム猫ココ・シリーズ)を振り返った思い出話やココの格言みたいなもの、または猫全般についてなどをクィラランが書き綴ったという形式の作品集です。もちろんわたしはシリーズのそれぞれの作品の内容は覚えてはいないのですけれど、本書で語られるエピソードのほとんどが欠片として記憶に残っており、あんなことやこんなことがあったなあと懐かしく感慨深いものがありました。『シャム猫ココの調査報告』(シャロン・A・フィースター著)というハンドブックが出るほど本国でもかなりの数のコアなファンを抱えている作者らしい内輪受けを狙ったもので、それが出版できるほどに需要があるのだからすごいものです。その一方、このシリーズを読んだことがない読者にとっては訳が分からないと思うだろうことも確かで、あくまで想像ですけれど、ファン層のがつがつとした新規開拓などはあまり考えていなくなっていたのかもしれません。

タグ:リリアン・J・ブラウン




猫は日記をつける (ハヤカワ・ミステリ文庫)猫は日記をつける (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/07)
リリアン・J・ブラウン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クリスマス・ラテのお別れ』 クレオ・コイル RHブックス・プラス

2011-12-22

☆☆☆

サンタクロースが遅刻 ― といってもクリスマスにではなく、クレアが招待したラテの試飲会に遅れていた。ボランティアでサンタをしているアルフは町の人気者で、「クリスマスの味」をラテにしようと発案したのも彼だった。心配したクレアが雪の中を捜し回ると、なんと高級アパートの裏庭で殺されているアルフを発見。しかも死の直前に、不法侵入しようとした形跡があった。サンタが泥棒?朗らかなサンタの意外な一面と、事件の真相とは。シリーズ第8弾。 内容紹介より



以下、少々ネタバレ気味です!ご注意下さい。

〈コクと深みの名推理〉シリーズ 8。
他のコージーミステリのシリーズ作品に比べて何かいつも生臭く感じるのは、登場人物たちの恋愛沙汰が多いせいなのでしょうかね。特にヒロインの中年同士、義母の老年同士の恋愛が生々しいのかも。しかもヒロインの場合は、年がら年中発情している元夫が毎回絡んできて、清々しさの欠片もないし、俗な面が出過ぎているような気がします。いい加減にこのパターンは止めたほうが良いかも、飽きたかも。それから登場人物が多過ぎるし、プロットも整理してもっと簡潔にして欲しいです。真犯人と繋がっていたらしい黒幕なんて登場するのがいきなりだし、遅過ぎるし、というか特別登場させなくても処理できるだろうし。実はサンタクロースが二人存在していたことを犯人が知らなかったという設定は評価しますけれど、二人が似たようなことをしているなら、ストーリーをシンプルにする意味では、最初から一人のサンタだけでもよかったんじゃないかとも思ったり。ところで、本書では被害者の娘に懇願されたからなのですが、ヒロインが事件の調査に乗りだす理由を毎回のように書いているのは面白い。作者って律儀な人なんでしょうか。

タグ:クレオ・コイル




クリスマス・ラテのお別れ コクと深みの名推理8 (RHブックス・プラス)クリスマス・ラテのお別れ コクと深みの名推理8 (RHブックス・プラス)
(2010/11/11)
クレオ・コイル

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悲劇はクリスマスのあとに』 ノーラ・ロバーツ 角川文庫

2011-12-20

☆☆☆

ドーラはフィラデルフィアでアンティークショップを経営する美しく活発な女性。クリスマスを前にヴァージニアでおこなわれたオークションで商品を仕入れて戻ってきた。しかしそれからというもの、ドーラの周囲で事件が次々に起こり、常連客が殺され、店も荒らされる。ドーラは、店の二階に部屋を借りた元警部のジェドとともに事件の解明に乗りだすが……。 上巻内容紹介より



もちろんロマンティック・サスペンスなので男女いちゃいちゃします。家族間に問題を抱えた家庭に育ったという陰影を男性に与えてあり、一方、女性は風変わりだけれど愛情深い家族に囲まれて育ったという(男性に対し陽の)設定です。人を愛することに臆病な彼。お約束通りに惹かれあいながらも反発しあう彼女と彼。素人探偵と元警察官のお決まりの確執。必定のベッドシーン。このようなロマンティック・サスペンスに付き物の要素でもってミステリをケーキのようにアイシングしてあるので、ひとそれぞれ、それが好きな読者もいるだろうし、わたしみたいにちょっとくどいと感じる読者もいるでしょう。また、事件が一通り起きてからは、同じような男女間のやりとりが繰り返されるために下巻に移る頃にはやや飽きてしまいがちです。四散した芸術品を取り戻す目的で送り込まれた犯人が次々と犯行を重ねていく部分が、ミステリ的には早目のクライマックスであり、後は惰性でだらだら恋愛話を中心に進むだけであまりエキサイティングな様は見せず、分量としてはこの半分のページ数で済みそうな話でした。

タグ:クリスマス・ストーリー




悲劇はクリスマスのあとに (上) (角川文庫)悲劇はクリスマスのあとに (上) (角川文庫)
(1997/12)
ノーラ・ロバーツ

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悲劇はクリスマスのあとに (下) (角川文庫)悲劇はクリスマスのあとに (下) (角川文庫)
(1997/12)
ノーラ・ロバーツ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クリスマス・ボックス』 リチャード・P・エヴァンズ 講談社文庫

2011-12-18

☆☆☆

ひょんなことから、老婦人の住む豪奢な館に移り住むことになった「わたし」は、ある日、屋根裏部屋で美しい小箱を見つける。その箱に隠されていた秘密とは?「人生でいちばん大切なものは何?」永遠の問いへの答えが告げられる、まさにその時……。雪が振り積む天使像に、世界が涙した感動のベストセラー。 内容紹介より



笹野洋子氏の文庫版訳者あとがきによると、本書は「世界中で1100万部以上売れた」らしいです。
こういう言い方をするといろいろ語弊があるかもしれませんけれど、わたしが思ったことは、こんな基本的なことを作品のテーマにしなくてはならないほど、そしてこういうテーマをわざわざストーリーにして説いて聞かせなくてはならないほど、また、それほど多くの人が購読し、それに感動してしまうほど、現代における親子や家族の心のつながりが希薄であり、情緒や精神的な面において本書のような作品を読んで再確認しなければいけないくらい、世の中の状況はそんなにも切実になっているのだろうかということでした。一方、子供がいる方はより身近に感じられるテーマであり、強く心に迫るだろうし、受け止め方も深くなるかもしれません。とにかく、家族に限らず愛する者がいつまでもそのままの状態でずっとそばにいるわけではない、という当たり前だけど当たり前に肝に命じているわけでもないことを気づかせてくれる作品なのでしょう。

タグ:クリスマス・ストーリー




クリスマス・ボックス (講談社文庫)クリスマス・ボックス (講談社文庫)
(2005/11/15)
P・リチャ-ド・エヴァンズ

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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

『勝手に来やがれ』 ジャネット・イヴァノヴィッチ 集英社文庫

2011-12-16

☆☆☆

奇人変人や怪事件を引きつけてしまう、あたしはステファニー・プラム。今度は超能力を持つ男ディーゼルがあたしの前に現れた。ヤツが追う男と、あたしが探している保釈逃亡者が関係していると知って、あたしも仕方なくディーゼルに協力することに。何の因果か「縁結び業」をするうちに、とんでもない事件に巻き込まれた!?米国では本編をしのぐ勢いの、爆笑ミステリーシリーズ番外編! 内容紹介より



唇に美容整形を施したメイザおばあちゃんをはじめとして、番外編とはいえあいかわらず常連の登場人物たちが濃い。また、モレリとレンジャーがほとんど登場せず、彼らとステファニーとのやりとりも少なめなので、本編で感じるマンネリした雰囲気が薄らぎ目先が変わっていました。今回の番外編は、クリスマスを舞台にした『お騒がせなクリスマス』からバレンタイン・デーを間近に控えた時期が舞台になっています。イヴァノヴィッチ版のハートウォーミングなバレンタイン・ストーリーみたいなものでしょうか。主人公がバウンティ・ハンターとして行方を追っている女性が手掛けていた五人の人物の恋愛や結婚を、ステファニーが肩代わりして成就させなくてならなくなります。それとともにしょぼい超能力を持った男の行方も突き止めなくてはならず……。超能力者が登場するわりに悪ふざけが抑えられ、237ページの短い物語でしたが、ドタバタさとシンプルなストーリー展開のバランスがとれた気分の佳い作品でした。

『お騒がせなクリスマス』ジャネット・イヴァノヴィッチ 扶桑社ミステリー

タグ:ジャネット・イヴァノヴィッチ




勝手に来やがれ (ステファニー・プラム・シリーズ) (集英社文庫)勝手に来やがれ (ステファニー・プラム・シリーズ) (集英社文庫)
(2010/01/20)
ジャネット・イヴァノヴィッチ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『見習い女探偵』 リザ・コディ ハヤカワ文庫HM

2011-12-14

Tag :

☆☆☆☆

初めての本格的な仕事にアンナ・リーは張り切った。警察の捜査結果に納得できない両親が、娘の死因を調べてほしいというのだ。親元を離れロンドンで映画の勉強をしていた娘の死因は、交通事故とされていた。アンナは娘の暮らしぶりと交友関係を探っていくが、他殺の手掛かりはなかなか出てこない。やがて、アンナの調査を拒んだ若者が謎の自殺を遂げ……健気な新米探偵の奮闘を描く英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞作 内容紹介より



このアンナ・リー シリーズどころかリザ・コディの長編作品さえ初読なのでよく知りませんが、アンナ・リーは元警官の経歴を持っているのでまったくの探偵業の素人というわけではないらしいです。
アメリカの同業者のなかには“女性”探偵であることを常に意識していくことでアイデンティティを保ち続け、商売にプラスに働くような方向に向けたがる探偵たちもいると思います。ただ、アンナ・リーの場合はそこらあたりの主張が相対的に低く、どちらかと言えば男女を問う前に人であることを認めてもらいたがっていると思うのです。上司から軽んじられても、男性の同僚から気を使ってもらう場合でも、女であることを前面に出して憤慨したり拒絶する傾向が、なくはないけれどさほど目立ちません。女性であることでどこか常に構えている様子があまり感じられないところがこのヒロインの特徴の様な気がしました。そういう面で肩が凝りません。一読して感じるのは、アメリカの女性探偵ものに比べて人間観察や相手に思いを巡らす場面が多いということです。それにともなってイギリス的に文章や描写がきめ細やかです。プロットは、事件の調査を通して被害者、その家族、被害者の知人の姿を浮かび上がらせていくというオーソドックスなものですが、被害者の家庭における境遇の変化から端を発した事件をいかにもイギリス・ミステリらしい滋味のある落ち着いたリズムで綴った作品でした。




見習い女探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)見習い女探偵 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1997/07)
リザ・コディ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『黒いカーテン』 ウィリアム・アイリッシュ 創元推理文庫

2011-12-12

Tag :

☆☆☆☆

ショックを受けたタウンゼンドは記憶喪失症から回復した。しかし三年の歳月が彼の頭の中で空白になっていた。この三年間なにをしてきたのか自分にはわからない。教えてくれるものもいない。しかし無気味につけ狙うあやしい人影が、タウンゼンドの周囲にちらついている。異様な状態のもとで殺人罪で追われる人間の孤独と寂寥を、圧倒的なサスペンスで描くスリラー派の驍将アイリッシュの一連のブラック・シリーズもの。 内容紹介より



1941年、コーネル・ウールリッチ名義で発表された記憶喪失をテーマにした作品です。
三年前に何らかの原因で記憶を喪っていた主人公がある事故で記憶を取り戻したが、逆に三年間の記憶を喪っていることに気づくというところから物語が始まります。事故現場で主人公の意識が戻り、拾ってもらった帽子に見知らぬイニシャルが施され、自宅に戻ると妻は引っ越した後で、管理人から知らされた新しい住所を訪ねてようやく彼は妻から自分が失踪していたことを聞かされます。この一連の出来事の流れと彼のなかで次第に膨らんでいく不安感と焦燥感の描写が相まって導入部からサスペンス性が高まります。目つきの鋭い怪しい男からつけ狙われ始めた時から、主人公は記憶に無い三年間を危惧し始め、その時に追い立てられるように失われた自分を求めて見知らぬ場所をさまよいます。194ページの物語であるためにスリリングな要素が凝縮されているようであり、突き放したような筆致が独特な雰囲気を放っているように思いました。ただ難を言わせてもらうと、二人の女性の存在が重複しているので、一人は妹という設定にしてラストの処理の仕方を変えて欲しかったです。

記憶喪失をテーマにした作品
『見知らぬ顔』アン・ペリー 創元推理文庫
ウィリアム・アイリッシュの他の作品
『暁の死線』 創元推理文庫




黒いカーテン (創元推理文庫 120-1)黒いカーテン (創元推理文庫 120-1)
(1960/02/19)
ウィリアム・アイリッシュ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ベーカリーは罪深い』 J・B・スタンリー ランダムハウス講談社

2011-12-10

Tag :

☆☆☆

とうとう体重125キロを超えた図書館長ジェイムズ。バツイチでデブ。そんな負け犬はもう嫌だ!思い切って、誘われたダイエット・クラブに入ってみることにした。その名も、〈デブ・ファイブ〉。ところが、敬愛する町一番のベーカリーで殺人事件が起ったものだから、みんなで犯人探しヘ乗りだすことに。何とも美味しそうな事件現場のケーキにクッキー、焼きたてパン。甘い誘惑にも負けず、みごと事件解決なるか?コージーミステリ・シリーズ第1弾。 内容紹介より



ダイエット・クラブ 1。
離婚、母親の病死、父親との同居、転職といったストレスをたくさん抱えた込んだ主人公が太らないほうが不思議なくらい。そんな彼は35歳で125キロ。しかし、性格は米国ミステリの主人公たちには稀なおとなしくで内省的なため非常に好印象です。主人公のキャラクターだけでなく、このシリーズが他のコージーミステリと比べて秀逸なところのひとつは、五人の太り過ぎの人物を組ませてダイエットに励む様子を描くことで、読者は事件の謎解きだけでなく彼らのダイエットの進行状況も楽しめるというところでしょう。それとともに、主人公と父親のなりゆきや保安官事務所の事務員で〈デブ・ファイブ〉の一員であるルーシーがいつかは本人の希望通りに保安官代理の試験を受けられるのだろうかというところも次回作以降への興味を引きます。また、彼女の存在が素人探偵が犯罪捜査にかかわれる理由にもなっているわけです。
そして、義援金集めのための慈善活動や犬小屋作りのくだりなど、作品全体にポジティブな雰囲気が感じられるのも魅力だと思いました。

『アイスクリームの受難』 J・B・スタンリー ランダムハウス講談社




ベーカリーは罪深い ダイエット・クラブ1 (ランダムハウス講談社文庫 ス 5-1)ベーカリーは罪深い ダイエット・クラブ1 (ランダムハウス講談社文庫 ス 5-1)
(2009/06/10)
J・B・スタンリー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ゴーストタウン』 メルセデス・ランバート ハヤカワ文庫HM

2011-12-08

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これは絶対のチャンスかも!国選弁護人の仕事でたまたま担当したレッド・ウルフという男からの深夜の電話。駆けつけると、そこには女性のバラバラ死体。凄惨な殺人事件とあればマスコミは殺到し、弁護士として自分の名前も売りだせる。貧乏生活とはおさらばだ。奮い立つホイットニーだが、助手のループは懐疑的……空回り気味ながらも果敢にLAの闇に挑むホイットニーを待つ結末とは?鮮烈の三部作、ついにフィナーレ 内容紹介より



女性弁護士ホイットニー・シリーズの第三作目。第二作目の『ソウルタウン』は未読です。
本書もリーガルじゃなくハードボイルド調です。
主人公がむごたらしい事件現場にショックを受けつつも、この事件の弁護を引き受ければ有名になり大金を稼げると皮算用する箇所など所々に第一作目には見られなかったコミカルさがありました。しかし、それ以外の部分は酷く低調です。一作目に街娼で登場していたループが秘書として主人公の事務所に勤めていて外面的には二人の関係性が進展していますが、内面的にはあまり緊密になっているようには描かれていません。著者としてはこのシリーズをさらに書き続けていく意図があって、徐々に二人の関係を発展させていくつもりだったのかもしれませんけれど、本書が遺作になってしまったので……。
とにかくそれは置いといて、被害者、容疑者たち共に「インティアン」(注)であるために魔術、超自然現象、固有の風習といった類型的な要素が相変わらず持ちこまれていること。本シリーズでは特に目に付くハードボイルド小説につきものの行き当たりばったりさと偶然性の多さ。こういうところにげんなりしてしまいました。そして致命的なのは何がなんだかさっぱり訳が分からないラストの展開(p328~330)で、まさかとは思いながら、不覚にもあっけにとられてしまいました。

(注)インディアン、ネイティブ・アメリカンといった呼称問題についてはウィキペディアを参照してください。

『ドッグタウン』 メルセデス・ランバート ハヤカワ文庫HM




ゴーストタウン(女性弁護士ホイットニー・シリーズ)ゴーストタウン(女性弁護士ホイットニー・シリーズ)
(2009/02/25)
メルセデス・ランバート

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ママ、嘘を見抜く』 ジェームズ・ヤッフェ 創元推理文庫

2011-12-06

☆☆☆

三年に一度の地方検事選挙を控え、町はなにかと騒がしい。そんなある日、デイブたちは殺人容疑をかけられたホームレスの弁護を引き受ける。とても勝ち目があるとは思えなかったが、ママの推理は選挙の行方も左右する、思いも寄らぬ事実を明らかにしていくのだった。いくつもの嘘を暴いた後に現れる、意外な真犯人!綿密な伏線とあざやかな謎解きが快感の傑作シリーズ第四弾。 内容紹介より



地方検事選挙には、仕事を部下の地方検事補に任せっきりで、地元での政治活動にいそしむ現職と急進的な辣腕女性弁護士の二人が立候補しています。ママの息子のデイブたちが運営する公選弁護人事務所の予算に強い影響力を持つ地方検事の職を巡る争いだけに、両陣営がアメとムチをちらつかせて自陣への協力を迫り、公選弁護人事務所は板挟みになってしまいます。こういう状況や政治や選挙についてママが自説を披露する場面が、このシリーズにお約束である彼女の身内エピソードとともにストーリーにアクセントを付けていると思います。真犯人の正体と何故コーヒーに薬が混入していたのかが大きな謎になっています。コーヒーについての真相は、ママしか知らない事実を日記に書き記しるすかたちで読者に明らかにしているのですが、その行動をにおわせる伏線としての感情を発露する場面が不足している気がしました。妻子を事故で一遍に喪ってからホームレスに身をやつした元大学教授の姿に、デイブが妻を病気で亡くした我が身を重ねるしんみりした場面もあるだけに。




ママ、嘘を見抜く (創元推理文庫)ママ、嘘を見抜く (創元推理文庫)
(2000/11)
ジェームズ・ヤッフェ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『パンプルムース氏とホテルの秘密』 マイケル・ボンド 創元推理文庫

2011-12-04

☆☆☆

『ル・ギード』調査員志望のイギリス娘、編集長宅の元料理人・魅惑のエルシー(!)の研修を担当し、彼女を落第させるのが今回のパ氏の任務。編集長夫人には絶対秘密だ。彼女はなぜ、名もないさえないホテルを選んだのか?オーナー・シェフは行方不明だし、彼女の振舞いもおかしい。おまけにポムフリットは怪しい拾い物をし、事態はとんでもない方向に。ホテルになにが……? 内容紹介より



シリーズ八作目。
隠されたボールペンや写真への細工がパ氏の目論見とは反対にあっさりばれてしまう場面でひと笑いありましたが、中盤あたりまではこのシリーズに期待と警戒を持ちつつ、個人的に抱いているエキセントリックな要素をあまり感じませんでした。ところが、パ氏が調査員志望の女性を捜しながらいつのまにかヌーディストビーチに迷い込んでしまうあたりから、ポムフリットの活躍(!?)もあってストーリーが加速し始めました。ヌーディストビーチの場面や犬との追いかけっこや別人に成り済ます行為など作者のユーモアの発想は古典的あるいは保守的と言えるような定番の型を踏襲したものながらも、かなりセンスがあってついつい笑ってしまうくらいの効果をあげているのです。その点はシリーズの中でも本書はとくに秀逸だと思います。ミステリについてはあいかわらず添え物程度なので、これまでのように事件のクライマックスといえる部分はあっさりと触れられているだけです。




パンプルムース氏とホテルの秘密 (創元推理文庫)パンプルムース氏とホテルの秘密 (創元推理文庫)
(2007/05)
マイケル・ボンド

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『相棒は女刑事』 スーザン・ウルフ ハヤカワ文庫HM

2011-12-02

Tag :

☆☆☆☆

ハワードはカリフォルニアの弁護士事務所に勤める見習い弁護士。バレエ鑑賞と料理が趣味という気の優しい男だ。そんな彼の事務所で腕利きの弁護士が刺殺された。捜査にやって来たのは、料理が苦手でアウトドア派の女刑事サラ。ハワードは内部の協力者が必要だというサラの求めに、探偵役を引き受ける。かくて奇妙な二人組の謎解きゲームが始まった。おしどり探偵物に新境地をひらくアメリカ探偵作家クラブ賞新人賞受賞作 内容紹介より



カバーイラストをみるとロマンティック・ミステリっぽくて実際に主人公二人の恋愛模様が描かれています。しかし、それはかなり抑制が利いていて、べたべたしたものはありませんし、メインで扱われてもいません。さらに、弁護士事務所が舞台になっているので当然聞き慣れない法律用語が使われていますが、その用語についての講釈がほとんど省かれているにもかかわらず不親切な感じはせず、かえって非常にさっぱりした印象を受けました。また、これまでの男女の立場を逆転した設定も含めて、作品全体にソフィスティケイトされているように思いました。やり手でもなくマッチョでもなく饒舌でもない、上司から狩猟に誘われても仮病で休んでしまう、主人公のひとりである新人弁護士の等身大の人物造形が面白く好感が持てました。時間に追われ、ハードワークを強いられる職場で、不器用ながら彼の持つ人間的な魅力によって、彼よりも地位の低い事務員たちに信頼され好意を寄せられていく展開も、地味目な犯人捜しであるミステリ部分を補っているように思いました。




相棒は女刑事 (ハヤカワ・ミステリ文庫)相棒は女刑事 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1992/03)
スーザン ウルフ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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