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『幻想と怪奇 ―宇宙怪獣現わる― 』 仁賀克雄 編 ハヤカワ文庫NV

2012-02-19

☆☆☆☆

ひとくちに恐怖といっても、その対象はさまざまである。超常現象への恐怖、殺人者への恐怖、死や病気への恐怖、未知の生物への恐怖、そして人の心への恐怖―実在しないはずの子供が恐怖をもたらす「ハリー」、不定型の怪物が襲いかかる「それ」、サイコ・スリラーの元祖的傑作「ルーシーがいるから」、さらにはホラー映画ネタ満載で爆笑させつつも恐ろしい表題作など、ホラー短篇の名作が勢揃いの11篇を収録〈全三巻〉 内容紹介より



屋根裏部屋に仕舞ってあったものみたいに、少し褪せて埃の匂いがするような、ノスタルジックな作品が多いような気がします。

「こおろぎ」リチャード・マシスン
こおろぎの鳴く音の暗号を解読した男と旅先で知り会った男女の話。西洋人って虫の音は騒音にしか聴こえないとか言われてますけれど、それ以上の意味付けをしたところがユニークなのでしょう。バッタは草食ですけれど、コオロギは雑食で肉も食べるから……。

「なんでも箱」ゼナ・ヘンダースン
『果しなき旅路』の作者。持ち主の少女にしか見えない《なんでも箱》。その箱には少女の叶った夢が詰まっていて、見ると幸せな気持ちになり、その中へ入って行きたくなるのです。《なんでも箱》を作り出さなくてはならないような、少女の不幸な家庭環境とその内での孤独が切ない。

「それ」シオドア・スタージョン
『千の脚を持つ男』にも収録されている作品です。ここに登場する怪物「それ」は、人間に敵意や悪意を抱いているわけではなく、幼児が虫の羽をむしり取ったり踏みつぶしたりするのと同じで、好奇心から人間をばらばらにしてしまいます。それがかえってじわじわと恐いのです。

「ルーシーがいるから」ロバート・ブロック
『殺しのグルメ』(ロバート・ブロック 徳間文庫)には、「ルーシーがいてくれると」
として収録されています。
これはサイコパスをテーマにした作品の模式標本みたいなものではないかと。それゆえ、今読むと早々にネタが分かってしまいます。

「その名は悪魔」ヘンリー・カットナー
どこからかやってきて、穴蔵に巣食い、子供たちからの供え物である生肉を食べる「悪魔」は、寄生する家族のなかに偽者の叔父を入り込ませますが、子供たち以外にはそれが偽者とは分からない。残酷を極めればキングの作品みたいになるかもしれませんけれど、それほどでもないので少々安心。

「埃まみれのゼブラ」クリフォード・D・シマック
偶然、異次元に住む者たちと物々交換を始め、彼らが送ってくる器械で金儲けを企んだ男たちの顛末。
星新一のショートショート「穴」に似ているような。

「トランク詰めの女」レイ・ブラッドベリ
個人的にブラッドベリはとても尊敬する作家です。しかし、この作品にある謎解き色が、ブラッドベリの作品が備える独特な雰囲気を薄めているように感じました。トランクに詰められた被害者を殺したのは誰なのか?死体発見者である少年以外の家族全員に動機付けをして容疑者にする流れがどうもあざとく思えました。

「裁きの庭」デイヴィッド・イーリイ
「裁きの庭」と名づけられ呪いがかけられた名画を不正な手段で手に入れた、金に困っている退役少佐の話。どこかで読んだような気がするから、同じようなストーリーがたくさん派生しているのでしょう。

「ハリー」ローズマリー・ティンバリー
この作者の代表作だそうで、「子供にだけは見える“お友だち”」をモチーフにした話。
養女にした女の子の過去を調べた母親が見つけた真実とは……。

「かたつむり」パトリシア・ハイスミス
伝説の巨大かたつむりを再発見し捕獲しようと無人島に渡った大学教授の話。
短編集『11の物語』で、初めて読んだときもなんだこれって思ったけど、今回読んでもなんだこれって思いました。そもそもどうして主題がかたつむりなのか、しかしまた、かたつむりだからどうでもいいような、議論をする気持ちも失せるような、ハイスミスさんだから許されているような、ハイスミスさんはこれを書いたことでかなり得してるような。

「宇宙怪獣現わる」レイ・ラッセル
全身に毛が生えてて、べたべたした液体が付いている怪物が女性を襲うという恐怖映画を、マリリン・モンローや合衆国大統領や元恋人や知り合いとかが周りに座っている映画館でパジャマのズボンだけを履き、ポップコーンを食べながら観ている男の話。

タグ:ホラー




幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる (ハヤカワSF)幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる (ハヤカワSF)
(2005/03/24)
仁賀 克雄

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

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